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演習を通して理解を深めるソフトウェア開発におけるDRBFM実施のポイント

目次
はじめに:製造業におけるDRBFMとその重要性
製造業の現場では、生産効率の向上や品質改善といった課題と常に向き合っています。
とりわけソフトウェア開発は、機械要素や電装部品、ITとの接点が増え、より複雑化しています。
このような状況において、「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」は、設計変更や新製品開発時のトラブル未然防止ツールとして、その重要性をますます高めています。
私自身、大手製造業メーカーで20年以上、調達から生産・品質管理まで現場で実践してきた中で、昭和から令和へと時代が流れても、現場の問題意識や本質的な課題はあまり変わっていないことを痛感しています。
本記事では、特にソフトウェア開発におけるDRBFM実施のポイントを、現場での実践演習を通して深く理解するためのガイドとしてまとめました。
バイヤー志望者やサプライヤーの方にも、バイヤーが求める観点を知る上で役立つ内容です。
DRBFMの基本と、ソフトウェア開発との結びつき
DRBFMとは何か?
DRBFMは、トヨタ自動車が開発したとされる、設計変更に伴う不具合の未然防止を目指した「故障モードに基づくデザインレビュー」です。
主な特徴は、「変更点」に注目し、「現場全員で徹底的に議論する」こと。
顧客要求や仕様変更をきちんと因数分解し、従来品・対照部品との差分を深掘りしながら、起こり得る問題・リスクを洗い出します。
従来のFMEA(故障モード影響解析)が机上主義になりやすいのに対して、DRBFMは「現場の気づき・暗黙知」を強く意識しています。
なぜ「ソフトウェア開発」にDRBFMが必要なのか?
2020年代に入り、IoTやインダストリー4.0の流れもあり、モノづくりの現場ではますます「ソフトウェア起因のトラブル」が増えています。
たとえば制御ロジックのコーディングミスや、仕様変更時のパラメータ未調整、意図しない挙動につながるインターフェース問題など、「見えづらい」「なぜ起きるのか直感しづらい」重大な不具合が繰り返し発生しています。
従来のハード中心のFMEAやDRBFMだけでは、ソフトウェアならではのリスクや隠れた落とし穴は見過ごされがちです。
そのためデジタル時代の今こそ、ソフトウェア開発現場にDRBFM手法を根付かせる必要があるのです。
現場で本当に役立つDRBFMの進め方
演習の重要性:「実践経験=気づき/理解」の源
DRBFMは「議論」と「気づき」が命です。
そのためには、座学で学ぶだけではなく、現場メンバーが実際の製品や設計変更テーマを題材にして「演習・ワークショップ形式」でトレーニングすることが効果的です。
どのような進め方がベストなのか、以下にポイントを整理します。
1. テーマ設定のコツ(現場課題×ソフトウェア変更点)
DRBFMは実際の「設計変更」や「新規導入ソフトウェア」をテーマに、出来るだけ実務に近い演習を行うと理解が深まります。
例えば、工場制御システムのアップデートや、生産設備の運転ロジック変更、IoTデバイスの新規仕様追加など、「何が変わったのか」「どこがリスクポイントになりやすいのか」を洗い出します。
実際のBOM(部品表)やソフトウェア設計書、制御フロー図を使うことで、学びが現実的なものとなります。
2. 変更点リストアップ(たった1文字のコード修正でも議論する)
DRBFMで真っ先に問われるのが「何がどう変わったのか」ということ。
人間心理として、つい「大きな変更」や「新規追加機能」にだけ注意が向きますが、実際のトラブルは意外なほど「小さな修正」や「直したつもりの箇所」で発生しがちです。
C言語で1文字スペルミスしただけ、誤って古い変数名を使っただけでも、深刻な不具合を生むことも少なくありません。
この観点を演習で身につけるためには、「どんな微小変更でも全て列挙する」ことが大切です。
「たったそれだけで?」という声が出たら、第1ステップは成功です。
3. 既存(現行)仕様と新仕様の並列比較(“現場らしさ”を出すために)
既存システムと新バージョンを、「処理フロー」「データ構造」「テストシナリオ」など、様々な軸で1つ1つ比較していきます。
このとき、現場担当の声(例:オペレーターの操作手順や苦情、ライン停止時の再起動作法など)も交え、「本当に現場で期待通りに動くのか」を確認します。
ソフトウェア技術者だけでなく、現場経験者、調達・購買担当、品質保証、さらには取引先(サプライヤー)も交えて多角的に議論しましょう。
ここで「昭和の勘と経験」が役立つ場面も少なくありません。
4. 故障モードの洗い出し(ラテラルシンキングを活かす)
DRBFMの本質は「想定外のリスク」を事前に見つけることです。
製造業の現場は、長年積み重ねてきたルールやマニュアルに従う一方で、「例外」や「現場なりの抜け道」が横行しやすい傾向もあります。
ここで活躍するのが「ラテラルシンキング」です。
例えば、あるインターロック処理を新規追加した場合、「その処理が本当に全てのケースで正常動作するか」「旧バージョンの裏技やショートカット方法をまだ誰かが使っていないか」「伝統的な現場テスト(紙に書いたチェックリストなど)が事実上回避されていないか」など、“横方向の発想”で洗い出すのです。
課題を列挙する際も、責任追及ではなく、「トラブルを楽しみながら発見する」といった空気作りが、演習成功のカギです。
5. 対策アイディアの検討とフォローアップ
不具合の未然防止が狙いですが、「どこまで手厚い対策を打つか」「対策コストと現場運用のバランス」という現実的な視点も不可欠です。
特にソフトウェア開発では、コーディングチェックだけでなく、「現場シミュレーション」「本番データでのテスト」「運転員への説明・マニュアル改訂」など、具体的行動計画を立てましょう。
演習後は「気づきノート」「対策チェックリスト」を残し、次回の演習や、実際のトラブル発生時にも振り返りができるようにします。
DRBFM演習がもたらす現場変革と組織の成熟度
見える化と納得感:「合意形成文化」が生まれる
DRBFMを演習形式で行う最大の効果は、「現場メンバー全員で合意形成できる」点にあります。
会議のための会議や、机上の空論で終わりがちな従来のFMEAと異なり、演習を繰り返すうちに、「きちんと現場仕様を抑えている」「考慮漏れがない」と納得感が生まれます。
これが組織としてのリスク対応力、ソフトウェア品質保証の基盤強化につながります。
ベテラン暗黙知の形式知化:昭和的ノウハウの活用
昭和風の現場では、「○○さんに聞けば分かる」「あのケースは昔こうやってしのいだから」といった属人的ノウハウが蓄積されています。
これらを、DRBFM演習で積極的に引き出し、「知識」として一覧化・形式知化すると、若手技術者やバイヤー志望者に確かな教育資産を残せます。
逆にサプライヤーの立場でも、「我々のプロセスはここまでリスク対策をしている」と根拠を示すことで、信頼向上や取引拡大につなげることも可能です。
昭和から脱却する“アナログ業界”のためのラテラルシンキング
業界に根付く“なぜ?” “本当にそうか?”の風土
日本の製造業(特に自動車や重工、電機などの古い業界)は、良い意味で「疑ってかかる」「検証を重ねる」文化を維持しています。
これ自体は貴重な資産ですが、時に「新しい技術やソフトウェアに対する理解不足」「“昔からこうだ”という思い込み」に足を取られることもあります。
DRBFM演習でラテラルシンキング=「当たり前を疑う」姿勢が根付けば、デジタル変革にも柔軟に対応できる土台が作られます。
調達・バイヤー業務での“DRBFM思考法”の活用
バイヤーを目指す方、サプライヤーの担当者にも、DRBFM演習は有効です。
なぜなら、「現場で起こり得るトラブルを事前に想定し、仕様上の抜けや運用上の課題も洗い出す能力」は、調達交渉や品質契約の際、必ず大きな武器になるからです。
「なぜそれが必要なのか」「変更コストはどこに跳ね返るのか」など、現場で起きうるリアルな事象を話せるバイヤーは、サプライヤーの信頼も得やすくなります。
また、「DRBFMで事前に問題を洗い出し対策する」姿勢を取引先に示すことで、調達リスクや不良品流出の防止にも役立ちます。
まとめ:現場起点のイノベーションで価値創造を
ソフトウェア開発におけるDRBFM実施は、単なる「問題発見作業」ではありません。
現場で培われた暗黙知とデジタル時代の技術発展、そしてラテラルな発想力が組み合わさることではじめて、「真に強い現場」「変化に強い組織」が生まれます。
演習を通した実践的トレーニングこそが、バイヤーやサプライヤー、あらゆる製造業従事者にとって、未来を切り拓き、世界と戦える地力となります。
ぜひ、自社や取引現場でDRBFMの価値と手法を再評価し、現場起点のイノベーションにつなげてください。
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