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*2025年4月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年4月26日

実務に応用するためのRによるモンテカルロ法の実践講座

工場のカイゼン現場で定量的な意思決定を下すとき、経験則や勘だけでは説明責任が果たせない時代になりました。
そこで注目されるのが、確率分布を意識したシミュレーション手法、モンテカルロ法です。
本稿では、フリーで強力な統計言語Rを用いて、調達・生産・品質管理の現場にそのまま持ち込めるレベルでモンテカルロ法を解説します。

モンテカルロ法とは何か

モンテカルロ法は乱数を使って不確実性を繰り返しサンプリングし、結果の分布を可視化するアプローチです。
要するに「起こり得る未来を何千回も試してみる」方法です。
サプライチェーンのリードタイム、設備故障、歩留まりなど、確率で揺れる変数を扱う製造業と相性が抜群です。

昭和マインドとのギャップ

「経験30年の勘」が支配的な企業では、シミュレーションは机上の空論とみなされがちです。
しかし、海外顧客は数字でのリスク提示を要求します。
モンテカルロ法は勘を否定するのではなく、可視化してナレッジ化する道具と捉えることで受け入れられやすくなります。

Rを選ぶ三つの理由

1. 無償で導入障壁がゼロ。
2. 統計・可視化のライブラリが豊富で、モンテカルロ関連パッケージも揃う。
3. WindowsでもLinuxでも動くため、現場PCからサーバーまで一貫運用できる。

インストールと基本設定

1. CRANサイトから最新版Rをダウンロードしインストール。
2. 併せてRStudioを導入するとGUIが使いやすい。
3. 最初に以下を実行し必要パッケージを取得します。

“`r
install.packages(c(“tidyverse”,”data.table”,”ggplot2″,”furrr”))
“`

モンテカルロシミュレーションの手順

1. モデル化:対象業務を数式またはロジックで表現。
2. 確率分布の設定:過去データからパラメータを推定。
3. 乱数を生成しシミュレーションを反復。
4. 出力を集計・可視化し意思決定につなげる。

確率分布の決め方

・リードタイム:ガンマ分布や対数正規分布が実務でフィットしやすい。
・欠陥率:二項分布やベータ分布で表現する。
・需要変動:正規分布で近似、ただしピーク時は裾の厚いt分布を検討。

ケーススタディ1 調達リードタイムリスク

中国サプライヤーからの輸送日数は平均30日、標準偏差4日と仮定します。
港湾混雑や通関遅延を考慮し、ガンマ分布 shape=56, scale=0.5 を採用。

“`r
set.seed(123)
n <- 10000 leadtime <- rgamma(n, shape=56, scale=0.5) quantile(leadtime, probs=c(0.5,0.9,0.95)) ``` 結果として90%信頼区間は26~34日と算出。 調達部門は安全在庫を最低4日分ではなく8日分持つべきと判断できます。

ケーススタディ2 ラインスループット能力

設備MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修復時間)を指数分布でモデル化。
稼働率の分布をシミュレーションし、生産計画の上限を確率的に求めます。

“`r
mtbf <- rexp(n, rate=1/480) # 分単位 mttr <- rexp(n, rate=1/30) availability <- mtbf/(mtbf+mttr) mean(availability) quantile(availability, 0.05) ``` 5%点が0.82なら、月次計画は理論能力の82%で組むと遅延確率を5%以下に抑えられます。

ケーススタディ3 品質検査抜取の最適化

ロットごとの不良率pをベータ分布(α=2, β=98)で事前に推定。
抜取検査サンプルn=50で1個以上不良が見つかる確率をシミュレーション。

“`r
p <- rbeta(n, 2, 98) defect_found <- rbinom(n, size=50, prob=p) > 0
mean(defect_found)
“`
検知確率が約63%なら、n=80に増やすと90%超になり、検査工数とのトレードオフが定量化できます。

高度なテクニック

ラテンハイパーキューブサンプリング

多変量のハイディメンション問題では、単純乱数よりも少ない試行で精度が向上。
Rパッケージ lhs を使い、サプライチェーン全体の“感度分析”に適用可能です。

感度分析とスピアマン順位相関

結果変動に影響が大きい入力パラメータを特定し、改善優先度を示せます。

並列計算による高速化

furrr や future パッケージでCPUコアをフル活用し、100万回のシミュレーションを数分で完了。
深夜バッチで回すとメイン業務を妨げません。

データ収集と前処理の落とし穴

・紙帳票→Excel転記の段階で単位ミスが頻発。
 Rに読み込む前にData Validation機能で異常値をマーキング。
・月報の平均値では分散が失われるため、日次・ロット次で原データを確保する。
・対数変換やBox-Cox変換で正規性を向上させると、モデル精度が一気に上がる。

結果の可視化と社内説得

ggplot2でヒストグラムや箱ひげ図を作成し、PPTに貼るだけでは不十分です。
Shinyアプリにすれば、管理職がパラメータをスライダーで動かし「自分で」リスクシナリオを体験できます。
これにより、調達部門⇔製造⇔品質保証の縦割りを突破する共通言語が生まれます。

昭和型アナログ企業に導入するロードマップ

1. 小規模PoC:現行ExcelシートをRスクリプトで置き換え、工数削減を可視化。
2. 社内勉強会:無料のR講習を開き、若手だけでなくベテランも巻き込む。
3. KPI連動:モンテカルロで得たリスク値を部門KPIに正式採用。
4. サーバー運用:GitとRStudio Serverでバージョン管理、属人化を防止。
5. 全社標準化:QC七つ道具に“シミュレーション”を加え、新たな文化として定着。

学習リソース

・R for Data Science(無料オンライン版あり)
・Engineering Statistics with R(製造業の事例が豊富)
・パッケージvignettes:lhs, furrr, sensitivity などの公式ドキュメント

まとめ

モンテカルロ法は、調達リードタイムから設備稼働率、品質検査まで、製造業が抱える“不確実性”を丸ごと見える化する最強の武器です。
Rは無償で導入でき、短期間でPoCを回せるため、昭和型アナログ企業でもスモールスタートが可能です。
まずは一つのExcelシミュレーションをRに置き換えるところから始め、結果を可視化して社内に「確率で語る文化」を芽生えさせましょう。
データとシミュレーションを武器にすれば、勘と経験に科学的裏付けを与え、製造現場の競争力を次のレベルに引き上げられます。

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