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FTA解析でヒヤリハットを防ぐ信頼性トラブル未然防止手法

FTA解析でヒヤリハットを防ぐ信頼性トラブル未然防止手法
はじめに:製造現場におけるヒヤリハットとそのリスク
製造業の現場では、日々さまざまなリスクが潜んでいます。
なかでも「ヒヤリハット」と呼ばれる一歩間違えば事故やトラブルに直結する事例は、現場の安全性や製品の信頼性を大きく左右します。
そうした小さな見逃しが、取り返しのつかない大規模な事故や品質問題に発展することも少なくありません。
特に昭和時代から続くアナログ体質や、経験による目利きに頼りがちな現場では、ヒヤリハットの「気づき」を個人スキルに依存しがちです。
しかし、グローバル競争やサプライチェーンが複雑化した現代においては、個人の経験だけに頼るやり方は限界を迎えています。
そこで注目すべきなのが「FTA解析」です。
この記事では、FTA解析の基本から現場に根付かせる実践テクニック、さらには現代の製造業が抱える課題や業界動向まで、多角的・深層的に解説します。
FTA解析(Fault Tree Analysis)とは何か?
FTA解析(Fault Tree Analysis:フォールトツリーアナリシス)は、特定のトラブルや不具合が発生した場合、「なぜそれが起きたのか」を系統立てて原因を明確化するための論理的手法です。
日本語では「故障の木解析」とも呼ばれ、上位(TOP)に発生したい問題(例:製品の異常停止や安全事故)を設定し、その下に関連する事象を因果関係でツリー状につなげながら掘り下げていきます。
この手法のメリットは、ただ「問題が発生した原因」だけでなく「どんな経路・組み合わせで発生しうるか」まで可視化できる点です。
すなわち、事前に潜在リスクを洗い出し、「どこで予防策を講じるべきか」を論理的に明らかにできます。
また、製造業におけるFTAは品質管理や安全管理だけでなく、調達購買や生産計画、保守保全など多岐にわたる工程で活用が期待できます。
アナログ体質な現場に根差すFTA導入の壁と克服法
昭和時代から続く多くの製造業現場では、依然として属人的なトラブル対応や「経験則の暗黙知」が根強く残っています。
後輩への“口伝”での教育や、マニュアルをめぐる「バージョン不整合」も散見されます。
現場からは、「FTAってなんだか難しそうだ」「そんな分析に時間はかけられない」「図面や工程表だけで十分では?」という声が上がることも珍しくありません。
しかし、FTAは形式張ったお堅い分析ツールではなく、「現場の被害が広がる前に、潜むリスクの芽を摘む」ための極めて実践的な手法です。
大切なのは、以下の3点です。
・実際に現場で頻発したヒヤリハットやトラブルから着手する
・紙とペン、付箋紙、ホワイトボードなど身近なツールで分析を始める
・最初は大掛かりな構築よりも、“小さく素早く”分析をまわし、成功体験から広げる
この導入ステップにより、「FTAは現場の役に立つ」「難しいことではない」という認知と共感を形成できます。
FTAで見えてくるヒヤリハットの“本当の原因”
多くの失敗事例では、事故や品質不良が「ヒューマンエラー」や「オペレーションミス」として結論づけられがちです。
しかし、FTAを使えば、さらに深い“なぜ”が見えてきます。
(例)
・作業ミスの裏には、「異常兆候を知らせるランプが目立たない」設計
・点検漏れの原因は、「手順書に重要ポイントが赤字や図で示されていなかった」
・工具の不具合を報告しなかったのは、「現場リーダーが改善提案を受け入れにくい雰囲気」だった
このように、FTAで論理的かつ俯瞰的に原因を分解することで、個人責任から脱し、「システムや仕組み自体に起因する根本要因」を特定しやすくなります。
これは「ヒヤリハットや再発防止策が空文化する」時代から脱却し、真の未然防止へ舵を切るカギです。
現場×カイゼン文化に根差したFTA活用の具体例
実際に20年以上工場現場に携わったなかで、“FTAが役立ったリアルなシーン”をいくつかご紹介します。
【事例1:生産ラインでの小さな機械停止】
ある装置が時折数分停止するものの、自動復帰してしまうため、見過ごされていました。
FTAでツリーを分解して分析した結果、「特定ロットの部品が原因でセンサー感度低下が発生、それがタイミングによってエラーを誘発」と判明。
調達先・Lot管理を起点に改善するとともに、異変ログをデータで早期検知する仕組みも導入できました。
【事例2:安全災害の未遂】
ベテラン作業者が、手順から外れて工具を使い一時的に作業時間を短縮。
現場の“暗黙の合意”が、FTAを通して「手順遵守意識の低下」「納期プレッシャーとの葛藤」「安全指導の質」など複合的原因で構成されていると可視化されました。
これにより「安全教育の再設計」「納期・品質・安全のバランスを考慮した現場ルール」へつなげられました。
調達購買・サプライヤー評価でもFTAは活用できる
FTAの活用領域は自社内にとどまりません。
昨今、サプライヤー品質や調達リスク管理の重要度は増加しており、バイヤーとサプライヤー双方でのFTA活用が有用です。
バイヤー視点では、FMEAなど他の手法と組み合わせ、部品・材料段階でのリスクをFTAで掘り下げることで、
製品仕様だけでなく「なぜそうなるのか」という仕組みや工程リスクを可視化しやすくなります。
調達交渉や契約時に、リスク低減策の明確化や要求事項として具体提示できるメリットも高まります。
一方、サプライヤー側も、自社の品質不良やトラブルをFTAで構造化し、未然防止策として提案することで、
バイヤーへの信頼度アップや、新規案件獲得、QCD競争力の強化につながります。
品質・信頼性向上とFTAの親和性
現代の製造業では「信頼性保証」や「ブランド価値」が生き残りの分水嶺となっています。
FTAはその基盤となる以下の点で威力を発揮します。
・従来型の事後対策型品質管理(起きてから対応)から、未然防止型品質づくりへの転換
・トラブルの個別対応から、横断的ノウハウ共有や再発防止制度化への切り替え
・IoTやデジタル化と組み合わせることで、ビッグデータ解析によるリスク早期発見・予兆管理との連動
一人ひとりの暗黙知や属人技を「見える化・仕組み化」し、“組織資産”として活用できることこそ、FTAの真髄です。
これからの日本製造業がFTA解析で切り拓く未来
業界全体で見れば、デジタル化や自動化が進みつつも、現場ではアナログ作業や属人対応がなお根強いのが実態です。
このギャップを埋めるには、FTA解析のように「現場の知恵と論理で、リスクを見える化する文化」が不可欠です。
世界的なサプライチェーン再構築や人手不足の波のなか、FTAは「未然防止経営」や「品質・安全優先経営」の根本哲学と実践手順を具体的にセットで持てる唯一無二の武器といえます。
自社の“ものづくり”力を引き上げたいバイヤー、現場に根差すサプライヤー、製造業全体の価値を高めたいリーダーすべての方に、FTA解析の導入・実践を強くお勧めします。
今日から一歩、ヒヤリハットを「再発しない仕組みづくり」に変えるFTAの活用を、是非始めてみてください。
まとめ
FTA解析は、単なる故障原因解析にとどまらず、「なぜヒヤリハットが起きるのか」「どうすれば未然に防げるのか」を現場視点で立体的・論理的に解明する強力な手法です。
現場の人・物・工程すべてに横たわる“見えづらいリスク”を共に見える化し、本質から改善する力となります。
現場のアナログ文化や個々の経験を大切にしながら、FTAの活用で「安全」「品質」「信頼性」の新たな地平を一緒に切り拓きましょう。
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