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投稿日:2025年7月3日

事故分析に活かすFTA手法で管理システムを構築する実践ポイント

事故分析で注目されるFTA手法とは何か

現場の事故やトラブルは、ものづくりの現場で避けて通れない課題です。
品質管理や生産性向上に日々取り組んでいる方なら、その「原因の特定」「再発防止策の構築」に多大な労力を費やしているのではないでしょうか。

そこで今、再び注目されているのが「FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)」という手法です。
FTAは、特に大手メーカーの設計部門や品質保証部門だけでなく、最近では中小の工場でも事故分析や作業リスク評価に活用され始めています。

しかしながら、「名前は聞いたことがあるが、手順や効果がイマイチ分からない」「Excel管理と何がちがうの?」と感じている方も多いはずです。
本稿では、事故分析にFTA手法を活用するメリットや、管理システムとして取り入れる際の実践的なポイントを、現場視点を交えて詳しく解説します。

FTA手法の基本概念と事故分析への応用

FTAとはどのような手法か

FTA(Fault Tree Analysis)は、日本語で「故障の木解析」と呼ばれる非常に論理的な原因分析手法です。
1960年代に米国のベル研究所が航空宇宙分野の安全性確保のために開発した歴史があり、日本では昭和の高度経済成長期に製造業へも波及しました。

特徴は、トラブルや事故という「頂上事象」(アンデシュベースイベント)からスタートし、段階的に原因を「AND/OR論理」で分解(ブレークダウン)しながらツリー状に展開していく点です。

なぜ事故分析にFTAが有効なのか

現場で起きる事故や不具合は、1つの要因だけで生じることはほとんどありません。
複数の偶発的な事象や工程ミス、人為エラー、装置の設計不備などが組み合わさって、はじめて事故に至ります。

従来の「なぜなぜ分析」や「5Whys」といった手法も有効ですが、FTAを使うことで、
・論理性や客観性が担保される
・複雑な因果関係を全体俯瞰できる
・人的要因、設備要因、手順要因など多面的な掘り下げが可能
という強みがあります。

管理システムの一部としてFTAを組み込めば、「再発防止が形骸化した」「対策効果のトラッキングが曖昧になった」といった危うい現場に、確固たる分析軸を提供できるのです。

FTAを管理システムに組み込む際の実践ポイント

アナログから脱却するための最初の壁

昭和から受け継がれる多くの現場文化では、「紙に書いて終わり」「ホワイトボードで擦り合わせて終了」といった事故/不良記録の運用が根強く残っています。
工場長や生産管理・品質担当がデジタル化やロジカルな手法導入に及び腰な場合も多く、FTA手法の導入には一計が必要です。

導入時には以下のようなステップが現実的です。

1. 事故事例を仮想で用意し、FTAのサンプルを少人数で作成する
2. 手書き、Excel、専用ソフトいずれかの形を用いて、具体的なアウトプットを現場に共有
3. 複数部署と「FTAを書くことで得られる効用」(再発防止、作業標準の見直し等)を体感的に伝える
4. 管理システムの一部として運用ルール化し始める

いきなり立派なFTAツリーを求めるのではなく、小さな成功体験をベースに現場に根付かせていくことが肝です。

実用性を高めるFTA手法のコツ

本来、FTAはイベントをAND/ORで厳格に結合し、ロジカルに描くものです。
ですが、「理屈通りにやってみたが、余計複雑になった」「習熟に時間がかかる」と挫折する現場も多いのが実情。
そこで、製造業現場で実用性を高めるコツを3点ご紹介します。

・「深さ」は適切に割り切る
ツリーが際限なく深くなると、現場担当なら誰も手を出せなくなります。
「これ以上下の階層は業務上の意味が薄い」と現場感覚で割り切り、アウトプットをリーダーがジャッジするのが現実的です。

・「設備系」と「人的系」に分けて考える
設備由来のトラブルと、人の作業や判断ミスに起因する要素は分けてツリーを書き出すと、施策の優先順位付けや対策実施の実効性が上がります。

・「なぜなぜ分析」とFTAを組み合わせる
既存のなぜなぜ分析は現場に根付いているケースが多いです。
FTAのトップレベル事象をなぜなぜで深掘りし、得られた因子をFTAツリーでロジカルに再構成するやり方なら、既存手法とのハイブリッドが特徴です。

FTAをDX(デジタル化)にどう活用するか

FTA記録を「形だけ作って終わり」では意味がありません。
現場で蓄積したFTAツリーや原因分析データは、ぜひサーバーやクラウドで共有し、継続的に改善PDCAに繋げてください。

最近の製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流では
・FTA専用のクラウドアプリ
・Excel×VBAで管理の自動化(再発傾向のアラート等)
・AIによるFTAのシナリオ自動生成・類似事故提案
といった形も本格化しつつあります。

アナログに慣れた現場でも、「まずはExcelのテンプレ化」からはじめ、「積み重ねたFTAを共有サーバーで他部署と見られる状態」にするのがおすすめの第一歩です。

サプライヤーとバイヤーの両視点で考えるFTAの価値

サプライヤーにとってのFTA活用のメリット

部品供給のサプライヤーがバイヤー(大手メーカーやOEM)に対して「事故発生時の原因情報をタイムリーに、論理的に伝える」ことは極めて重要です。
FTAを活用すれば、再発防止策の提案や、不具合報告書の品質そのものを格段に高めることができます。

特に
・バイヤー企業が「なぜ再発したのか?」と疑問を持つ
・「人的エラー?」「設計不備?」と責任論が揺れる
こうした場面でも、FTAツリーを可視化することで「ここまで対策しました/残存リスクの説明が可能です」という根拠を示しやすくなります。

バイヤー視点で見るFTA活用の意義

一方で、購買・調達部門や品質保証担当にとってもFTAの「見える化」は大きな武器となります。
特に、昨今のグローバル調達において、新規サプライヤー候補や協力工場の事故対応力・再発防止力を評価する際、
「しっかりFTAレベルで原因分析をしているか?」
「単なる表面的な対策で終わっていないか?」
といった点が、審査やパートナー選定の材料となることが増えています。

バイヤー側がFTA手法の「型」を理解しておけば、「このサプライヤーの報告書はロジカルか、なぜなぜベースで終わっていないか」を見る目が鍛えられます。

日本製造業にFTAが定着しにくい理由と克服のヒント

なぜFTAが浸透しづらいのか

日本のものづくり現場では、FTAツリーの記述・管理へのアレルギーや工数負担感から、「なぜなぜ分析」や「ヒヤリハット記録」に留まるケースが多い現状があります。
これは、昭和由来のアナログ文化が根強いだけでなく、「論理的に分解するのが苦手」という現場心理が作用していることも要因です。

また、「品質保証部門だけがFTAを使う」「設備保全チームだけで管理」といった縦割り運用も、全社定着を阻みがちです。

現場でFTAを根付かせるヒント

現場でFTA活用を定着化させるには、以下のような小さな工夫や成功体験の積み重ねが有効です。

・「まずは手書き」で始めてみる(デジタル前提にしない)
・改善発表会で良いFTA事例を採り上げ、現場賞賛を与える
・1事故1ツリーではなく、月1回の「テーマ事象FTAワークショップ」など、習慣化の仕掛けを作る
・部門横断でFTAを書き、複数部署の目線でブラッシュアップする

FTAは、「事故が出ない現場」ではなく「事故やトラブルが起きた際の”ナレッジ蓄積の『武器』”」として根付かせる、という視点が欠かせません。

まとめ:FTAによる事故分析は現場改革の原動力になる

事故やトラブルの根本解決力は、これからの日本製造業の国際競争力を左右する重要な要素です。
FTA手法をただ「やったフリ」や「書いただけ」にせず、管理システムとして継続運用できれば、現場の安全レベルも品質管理力も明確に底上げ可能です。

また、サプライヤー側には「高品質な事故報告でバイヤーの信頼を獲得」できるメリットがあり、バイヤーも「ロジカルな再発防止体制構築」を主導できるようになります。

デジタル技術も活かしつつ、現場目線のラテラルシンキングで、「なぜ事故が起きたのか」「なぜ対策が効くのか」という深堀りを続けていく。
その起点こそが、FTAによる事故分析と管理システム構築なのです。

これからの製造現場におけるFTA活用の可能性に、ぜひ挑戦してみてください。

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