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投稿日:2026年10月2日

中国の工場に図面を出すとき——GB規格との対応、普通公差・投影法・注記の訳と版の合わせ方

この記事のポイント(結論先出し)

中国の工場に日本の図面を出すと、図面に書いた JIS の番号を相手が自国の国家標準(GB)に読み替えたり、書いていないことを工場の企業標準で埋めたりする。中国の標準化法は、輸出する製品の技術要求は契約の定めに従うとしている[1]。つまり、図面と発注書に書いたことが基準になり、書いていないことは相手の標準で決まる。普通公差は JIS B 0405 が ISO 2768-1 を翻訳した規格であることを踏まえて規格番号と等級を明記し[4]、投影法は記号を表題欄に入れ[5]、単位・言語の正本・図面の版を書面で決める。国内の仕入先が作った図面や加工データを、対価を払わずに外国の工場へ渡すことは、取適法の対象取引では違反事例として挙げられている[7]。

中国の工場に図面を出すと、どこで食い違うか

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日本の部品図は、日本産業規格(JIS)を前提に描かれている。普通公差は「JIS B 0405-m」のように規格番号で呼び出し、投影法は第三角法、寸法の単位は mm で記号を付けない。国内の仕入先とは、この前提を言わなくても共有できる。中国の工場に同じ図面を渡すと、前提が共有されているとは限らない。

食い違いが起きやすいのは、次のような箇所である。規格番号で呼び出している指示(普通公差・表面性状・材料記号)、投影図の配置、注記の文章、単位、そして図面の版である。どれも図面の上では小さな記号や一行の注記だが、読み違えると寸法や材料が変わる。見積の段階では食い違いに気づかず、初回品が届いてから分かることが多い。

中国の工場は、日本の顧客向けの仕事に慣れていて、JIS を読める技術者がいることも多い。ただ、慣れているかどうかに頼るより、図面と発注書の書き方で読み違えの余地を減らすほうが確実である。以下、発注側が決めておくことを順に挙げる。

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中国の標準の位置づけ

中国の標準化法(2017 年 11 月改正)は、標準を国家標準・業界標準・地方標準・団体標準・企業標準に分け、国家標準を強制性標準と推薦性標準に分けている。強制性標準は必ず執行し、推薦性標準は採用を奨励するという位置づけである[1]。規格番号の「GB」は国家標準、「GB/T」は推薦性の国家標準を指し、国家標準の公開システムでも GB/T 1804-2000 は「推標」(推薦性標準)と表示されている[2]。

発注側にとって大事なのは、同じ法律の次の二つの条文である。一つは、輸出する製品・サービスの技術要求は契約の約定に従って執行するという条文で、もう一つは、企業は自社が執行する標準の番号と名称を公開し、その標準に従って生産するという条文である[1]。日本向けに作る部品の技術要求は、図面と発注書を含む契約で決まる。そこに書いていないことは、工場が執行している企業標準や推薦性標準で埋められる。図面に書き切ることの意味は、国内の取引より大きい。

図面の指示 日本の規格での扱い 中国の国家標準で確認できたこと 中国向けの図面での書き方
普通公差(長さ・角度) JIS B 0405:1991 は ISO 2768-1:1989 を翻訳した規格。表題欄に「JIS B 0405」と等級を指示する[4] GB/T 1804-2000 一般公差(推薦性・現行)。国際規格を採用した規格と表示され、英文名は ISO 2768-1 の題名から部の番号を除いたものと同じ[2] 規格番号と等級を書き、ISO 2768 の呼び方を併記する
投影法 JIS B 0001:2019 は第三角法を原則とし、投影法の記号を表題欄の中又は近くに示す[5] GB/T 14692-2008 技术制图 投影法(推薦性・現行)。国際規格を採用した規格と表示[3] 投影法の記号を必ず入れ、文字でも「第三角法」と書く
他の規格の記号 JIS 以外の公知の規格の記号を使う場合は、規格番号を図面に注記する[6] (相手が読み替える前提で書かない) 呼び出す規格は番号と年を書く
寸法の単位 長さは通常 mm で記入し、単位記号を付けない[5] (図面の慣習として同じ前提とは限らない) 表題欄に「単位 mm」と明記する

表の「中国の国家標準で確認できたこと」は、中国の国家標準の公開システムで規格の名称・状態・採用の有無まで確認できた範囲である。これらの規格は国際規格を採用しているため、システム上では本文が公開されていない[2][3]。等級の記号や数値表が JIS と同じかどうかは、規格本文を入手して確かめる必要があり、ここでは書かない。図面の側で読み替えの余地をなくしておけば、本文の細かな違いに頼らずに済む。

普通公差は番号と等級、国際規格の呼び方を書く

JIS B 0405 は、ISO 2768-1 を翻訳し、技術的内容を変更せずに作成した規格で、図面上の指示として「JIS B 0405」と公差等級を表題欄の中又はその付近に書くよう定めている。同じ規格の参考には、ISO 2768-1 では「JIS B 0405」を「ISO 2768」と表示していると書かれている[4]。日本の図面の「JIS B 0405-m」は、国際規格の言い方では「ISO 2768-m」に当たる。

中国の工場に出す図面では、「JIS B 0405-m(ISO 2768-m)」のように両方を書いておくと(ここでの ISO 2768 は ISO 2768-1:1989 の等級 m を指す)、工場が自国の標準に読み替えるときにも ISO を介して同じものに行き着ける。等級を書いていない図面は、国内でも揉める。等級の決め方と、等級のない図面を受けたときの扱いは普通公差(JIS B 0405)の等級指定にまとめた。図面の一般注記に何を並べるかは図面の一般注記に何を書くかで扱う。

同じ規格は、普通公差を超えた工作物でも、特に明示した場合を除き、機能が損なわれない場合には自動的に不採用としてはならないとしている[4]。普通公差の寸法でも外れたら一律に不合格とする運用にしたいなら、そのことを図面か購買仕様書に書く。書かずに不合格を出すと、規格の読み方そのものが争点になる。

投影法は記号と文字の両方で示す

JIS B 0001:2019 は、投影図を第三角法によることを原則とし、第三角法の場合は投影法の記号を表題欄の中又はその付近に示すと定めている。第一角法を使う場合も、記号を表題欄又はその近くに示す[5]。第三角法では平面図を正面図の上に、第一角法では下に置くので、記号が無いと、平面図と下面図、左側面図と右側面図を取り違えて読まれるおそれがある。

中国にも投影法の国家標準(GB/T 14692-2008)があり[3]、現地の技術者がどちらの配置に慣れているかは、工場によって違いうる。記号は小さく、図面の縮小コピーで潰れることがあるので、記号の横に「第三角法」と文字でも書いておく。左右対称に見えて片側だけ穴がある部品のように、裏返して読んでも形が成り立ってしまう部品では、特に注意する。

注記の文章と、どちらの言語が正本か

製図総則(JIS Z 8310)は、図面に書く文章を口語体で簡潔にし、なるべく箇条書きにし、専門用語は JIS に規定した用語を用いるのがよいとしている[6]。JIS B 0001 も、図面の注記は簡潔明瞭に書くとしている[5]。中国語に訳すときにも、この書き方が効く。一文に条件を二つ以上入れない、「適宜」「なるべく」「程度」のような幅のある言葉を使わない、社内の略語を使わない、の三つを守るだけで、訳の揺れはかなり減る。

訳した注記を図面に併記する場合は、日本語と中国語のどちらを正本とするかを発注書で決めておく。日本語を正本にするなら「訳文は参考。食い違う場合は日本語による」と書く。中国語を正本にするなら、その訳文を発注側が確認したことを記録に残す。どちらにしても、訳文の作成と確認を誰がしたかが後から分かるようにする。

「バリなきこと」「糸面取り」のような現場の言い方は、訳語の段階で意味が伝わらない。エッジの指示を記号と数値に置き換える方法は図面のエッジ・バリ・面取り指示で扱った。英語で注記を書く場合の型は英文の見積依頼・発注書も参考になる。

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材料記号は「同じ材料がある」前提で書かない

図面に「SUS304」「S45C」「A5052」と書いても、中国の工場は自国の規格の材料で調達することが多い。成分の範囲や機械的性質の試験条件が JIS と同じとは限らないので、どの材料なら同等と認めるかは、発注側が判断して書面で承認する。同等材の考え方と承認の手順は同等材の指定と承認にまとめた。図面に「JIS 材に限る」と書くのか、「同等材は事前承認」と書くのかを、見積の前に決めておく。

図面を渡す前に確かめること

中国の工場に図面を渡す前に、その図面を自社が自由に渡してよいものかを確かめる。社内の設計部門が描いた図面なら問題は少ないが、国内の仕入先が作った図面や加工データ、金型の図面が混ざっていることがある。

公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、不当な経済上の利益の提供要請の違反行為事例として、外国で製造したほうが金型の製造単価が安いことから、中小受託事業者が作成した金型の図面・加工データ等を外国の事業者に渡して金型を製造させるため、それらを対価を支払わずに提出させた事例を挙げている[7]。国内の仕入先が作ったものを海外の工場に出すなら、その図面やデータを発注内容に含めて対価を払っているか、別途買い取っているかを先に確かめる。金型や治具の費用負担の考え方は有償支給材と金型代のルールで扱った。

あわせて、図面は技術の情報なので、秘密保持の取り決めを結んでから渡す。輸出管理の対象になりうる技術に関わる部品では、社内の輸出管理(安全保障貿易管理)の手順に図面の提供を通しておく。どちらも、図面を送ってからでは取り返しがつかない。

版と受領の確認

海外の工場とのやりとりでは、メールで図面を送り、相手が手元の古い版で作る、という事故が国内より起きやすい。発注書には図面番号と版を書き、図面を送ったら、相手からどの版を受け取ったかの返信をもらう。図面の版を発注書でどう指定し、改訂をどう合わせるかは図面の版を発注書で指定し、改訂を合わせるで扱う。3D データを併せて渡す場合の優先順位は3D データで発注するときにまとめる。

初回品が届いたら、図面の全寸法を測った成績を出してもらい、読み違えがないかをまとめて確かめる。食い違いが見つかったら、その原因が図面の書き方にあったのか、工場の読み方にあったのかを切り分け、図面の側で直せるものは図面を直す。同じ工場に二品目、三品目と出すうちに、読み違えの癖は見えてくる。

よくある質問

工場から「GB の材料で見積もった」と言われました

まず、どの規格のどの材料記号で見積もったかを書面で出してもらう。そのうえで、成分と機械的性質を図面の材料と比べ、同等と認めるかを発注側で判断する。認めるなら、承認した材料記号を発注書に書く。口頭で了承すると、ロットが変わったときに別の材料に替わっても気づけない。

工場が「自社の標準どおりに作る」と言っています

中国の企業は、自社が執行する標準の番号と名称を公開し、それに従って生産するとされている[1]。工場の言う「自社の標準」は、この企業標準を指していることがある。その標準の中身を見せてもらい、図面の要求と違う箇所があれば、図面の要求を優先することを発注書に書く。輸出する製品の技術要求は契約で決まる、という条文[1]がここで効いてくる。

中国語の図面を新しく描き起こしたほうがよいですか

描き起こすと、日本の図面と中国の図面の二つが並び、改訂のたびに両方を直す必要が出てくる。どちらかが直し漏れると、どちらが正しいか分からなくなる。原則は日本の図面を一つの正本とし、注記の訳を併記するか、訳文を別紙にして版を合わせる形にするほうが管理しやすい。

まとめ

中国の標準化法は、輸出する製品の技術要求を契約の定めに従うとしており、図面と発注書に書いたことが基準になる。書いていないことは、工場の企業標準や推薦性標準で埋められる。普通公差は JIS B 0405 が ISO 2768-1 の翻訳であることを踏まえて番号と等級、ISO の呼び方を併記し、外れた場合の扱いを決めておく。投影法は記号と文字の両方で示し、単位は表題欄に書く。注記は簡潔な箇条書きにして、日本語と中国語のどちらが正本かを決める。材料は同等材を事前承認にし、図面の版は受領の返信で確かめる。国内の仕入先が作った図面やデータを海外に出す前に、それを渡してよい根拠があるかを確かめる。

出典・参考資料

  1. 中华人民共和国标准化法(中華人民共和国標準化法・2017 年 11 月 4 日改正)(全国人民代表大会 中国人大網)
  2. GB/T 1804-2000 一般公差 未注公差的线性和角度尺寸的公差(国家市場監督管理総局 国家標準全文公開システム)
  3. GB/T 14692-2008 技术制图 投影法(国家市場監督管理総局 国家標準全文公開システム)
  4. JIS B 0405:1991 普通公差-第 1 部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 6 月 20 日確認)
  5. JIS B 0001:2019 機械製図(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 5 月 20 日改正)
  6. JIS Z 8310:2010 製図総則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 2 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  7. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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