ロストワックス(精密鋳造)の発注——寸法公差・中子・ワックス用金型で決めること | newji
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投稿日:2026年10月17日

ロストワックス(精密鋳造)の発注——寸法公差・中子・ワックス用金型で決めること

この記事のポイント(結論先出し)

工業部品のロストワックス(インベストメント鋳造)は、ワックス模型を金型で射出成形し、耐火物で覆ってから溶かし出して作るセラミック鋳型に注湯する方法である[2]。砂型より寸法精度と鋳肌が良く、肉厚 0.5 mm 程度の薄肉も作れるが、高価で、ワックス模型用の金型を作る期間がかかる[2][3]。寸法公差は、JIS B 0403 の附属書 A の表では「当分の間,受渡当事者間で協議するのがよい」とされ、規格末尾の「参考」の表で長期製造の目安が CT 4〜6 とされている[1]。どちらも目安なので、図面に公差等級か個々の公差を書き、測る基準点を決める。中空部はワックス中子かセラミック中子で作り、狭く長い穴や開口部の小さい中空は中子の除去が難しい[2]。鋼・ニッケル合金・コバルト合金の鋳物なら JIS G 0307 の通則が掛かり、検査文書は指定したときだけ提出される[5]。

ロストワックスとはどの方法を指すか

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「ロストワックス」はアクセサリーや工芸の検索も多い語だが、この記事は機械部品・装置部品などの工業用の鋳物を発注する話に絞る。

鋳造工学会の連載講座(2014 年)は、精密鋳造法を、鋳型の造型に金型を使わずに、砂型鋳造法より寸法精度や表面粗度に優れる鋳造品を作る鋳造法の総称とし、鋳型の違いからインベストメント法(ロストワックス法)、セラミックモールド法、プラスターモールド法(石膏鋳型法)に分けている。このうちインベストメント法は量産性が高く幅広い産業で使われているので、精密鋳造法といえばインベストメント法を指すのが一般的だとしている[2]。工程が複雑で高価な鋳型材料を使うので、精密鋳造品は一般の鋳造品より高価になり、他の製法では作りにくい複雑形状品や難加工材料の製造に適した方法だ、とも書いている[2]。

工程の流れは次のとおりである[2]。発注で決めることがどの工程に関わるかを見ておくと、見積の中身が読みやすい。

1. 中子の製作
中空部を作るときだけ。水溶性のワックス中子か、セラミック中子を使う。

2. ワックス模型の射出成形
金型にワックスを射出して模型を作る。中子はあらかじめ金型にセットしておく。

3. 模型の組立て
湯口・湯道などのパーツと複数の模型を接着して「ツリー」にする。ここが以後の処理の単位になる。

4. コーティング(造型)
ツリーを耐火物のスラリーに浸し、粗い耐火物をふりかけて乾かすことを繰り返して殻を厚くする。初めの層が鋳造品の表面品質を決める。

5. 脱ワックスと焼成
高温高圧の蒸気でワックスを溶かし出し、一般に 900〜1,200℃で焼成してセラミック鋳型にする。

6. 溶解・鋳造
材料に応じて大気・アルゴン・真空の溶解環境を選び、加熱した鋳型に注湯する。

7. 鋳型除去・切断・中子除去・熱処理・検査
鋳型を壊して取り出し、ゲートを切って製品を分け、中子を溶かし出し、材質によって熱処理をして検査する。

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得意なこと・苦手なことを数字で見る

上の連載講座(2014 年)と、同じく精密鋳造の特徴を解説した鋳物誌の記事(1994 年)は、どちらもインベストメント鋳造の大きさ・精度・鋳肌・肉厚の目安を示している[2][3]。二つの解説の数字は一致していないので、並べて示す。

項目 鋳造工学 連載講座(2014 年)[2] 鋳物 解説(1994 年)[3]
寸法公差(二点間) 100 mm で ±0.48 mm、250 mm で ±0.98 mm 20 mm で ±0.13 mm、100 mm で ±0.30 mm、200 mm で ±0.43 mm 程度
表面粗さ(鋳放し) Rmax 2〜20 μm 普通 Rmax 4〜12 S
最小肉厚 一般に 0.5 mm 程度、部分的には 0.3 mm まで 0.5〜1.5 mm ぐらい(形状・金属による)
大きさ・重さ 国内で最大 直径 1,000 mm×高さ 700 mm 程度、作りやすいのは直径 300×高さ 300 mm 以下。最大 250 kg 程度、多くは数 g〜40 kg 商業的な限界は重さ 100 kg・長さ 700 mm ぐらい。多くは 10 kg 以下、作りやすい長さは 200 mm 以下

1994 年の解説は、小さな寸法のところで ±0.10 mm 以内の精度にすることは容易でない、とも書いている[3]。2014 年の講座は、実際の鋳造品では 6 点の基準点が定められ、輪郭公差や幾何公差が適用されていることが多い、としている[2]。どちらの数字も「この方法で普通に得られる程度」の目安であって、保証値ではない。寸法の要求は図面で決め、目安は「その要求が無理なく取れるか」を見積の前に確かめるのに使う。

JIS B 0403 での扱い

鋳造品の寸法公差と削り代の規格 JIS B 0403 は、附属書 A(参考)の表 A.1 で、長期間製造する鋳放し鋳造品の公差等級を鋳造方法ごとに示しているが、金型鋳造・圧力ダイカスト・インベストメント鋳造の欄は「適切な表を確定する調査研究を行っている。当分の間,受渡当事者間で協議するのがよい」とされている[1]。そのうえで規格は、末尾の「参考」(金型鋳造品・ダイカスト品・アルミニウム合金鋳物などに推奨する鋳造品公差)の表で、インベストメント鋳造の長期間製造の公差等級を、金属の欄の多くで CT 4〜6 と示している[1]。CT 6 の全鋳造公差は、基準寸法 63 mm を超え 100 mm 以下で 0.78 mm である[1]。削り代の等級は、附属書 B(参考)でインベストメント鋳造が E とされている[1]。

規格の参考表と、上の解説の目安が同じ方向を向いていることは読み取れるが、規格の附属書 A 自体が「協議するのがよい」としている以上、等級は図面か見積の段階で決める事柄である。表の値は公差の幅で、半分ずつを正と負に置くのが原則であること、肉厚には 1 等級大きい公差を当てることなど、JIS B 0403 の読み方は鋳造品の普通許容差の指定で扱った。

図面で決めること:基準点・抜け勾配・削り代

鋳造品の設計を概説した連載講座(2013 年)は、鋳造品の設計では製品図のほかに、機械加工の削り代を含む「素材図」が必要で、設計者が素材図を作らない場合は鋳造の専門家が作り、湯口や押湯を加えた方案図にする、としている。製品図と素材図の内容や設計意図が正しく伝わらなければ意味がなく、特に海外の鋳造業者に製造を依頼する場合は曖昧さの無い図面にしなければならない、とも書いている[4]。ロストワックスの見積で最初に食い違うのは、多くの場合ここである。製品図だけを渡すと、どの面を削るのか、どれだけ削り代を付けるのかが仕入先の判断になる。

決めておきたいことは次の三つである。

1. 測る基準点(データム)
鋳放しの寸法は、どこを基準に置いて測るかで変わる。JIS B 0403 の序文は、注文の最終決定の前に協議することが望ましい事項に、データムターゲット方式を含む特別な要求事項を挙げている[1]。精密鋳造品では基準点を定めて輪郭・幾何公差を当てることが多いので[2]、機械加工の段取りの基準と合わせて図面に示す。

2. 抜け勾配
上の設計講座は、砂型鋳造やダイカストでは抜け勾配が必要だが、ロストワックス法や消失模型鋳造法などでは抜け勾配を設けなくてもよい場合がある、としている[4]。ただし、ワックス模型は金型から抜くので、模型の形によっては金型の側に勾配や割りが要る。砂型の図面をそのまま流用して勾配を残すか、勾配の無い形に描き直すかを、仕入先の金型の作り方と合わせて決める。

3. 削り代
JIS B 0403 の参考ではインベストメント鋳造の削り代は等級 E で[1]、砂型より小さい。精度の良さを生かして削らない面を増やすほど、その面は鋳放しの公差と鋳肌で使うことになる。どの面を鋳放しで使い、どの面を削るかを素材図で示す。

見積と納期を決める金型——試作と量産を分けて考える

1994 年の解説は、ロストワックス法の制約として、模型(ろう)用の金型の製作期間が必要でリードタイムが比較的長く、セラミック中子を使う場合はさらに長くなること、ろう模型の修正と組立作業の自動化は不可能に近いことを挙げている[3]。模型を作る型については、金型以外にせっこう型、ゴム型、樹脂型なども使われるが、寸法精度や作業性があまり良くないので工業的には金型が最善であり、金型はアルミ合金や鋼の機械加工か低融点金属で作る、としている[3]。

同じ解説は、金型の伸尺(金属の収縮を見込んだ倍率)は 10〜35/1000 程度だが、形状・大きさ・部位によって金属の収縮量が異なることが多いので注意が必要で、金型の仕上がり精度はろう型と鋳造品の寸法精度に直接影響する、と書いている[3]。つまり、最初のロットで寸法を測り、金型を修正して寸法を追い込む工程が入りうる。発注の段階で決めておきたいのは、次の点である(当方の提案)。

1. 金型の費用と所有
ワックス模型用の金型を誰の費用で作り、誰の所有にするか。所有・保管・廃棄の決め方は射出成形の金型を発注するときの考え方がそのまま使える。発注を長く出さない型を取引先に無償で保管させる問題は有償支給材と金型代で扱った。

2. 寸法を追い込むための型修正
初回品の寸法が図面に入らなかったとき、型の修正費を誰が持つのか、何回までを見積に含めるのか。

3. 試作の作り方
量産用の金型を作る前に、簡易な型で数個を作るのか、最初から量産の金型で作るのか。簡易な型で作った試作品の寸法は量産品の寸法を代表しないことがあるので、試作で何を確かめるのか(形・組付け・強度)を先に決める。

中空部と中子——除去できるかを先に確かめる

2014 年の講座によれば、中空部を作る中子には、水溶性のワックス中子とセラミック中子の二つがあり、形状の複雑さで使い分ける[2]。

水溶性ワックス中子は、成形品の状態で中空部だけを溶かし出し、その中空部に浸漬で鋳型を作る方法で、安価に中空部を作れるが、深く長い穴のようにスラリーが入り込めない形状には対応できず、強度が低いので微細な形状も作れない[2]。セラミック中子は、鋳造後に製品からアルカリで溶かし出すもので、高価だが、複雑かつ緻密な形状にも対応できる[2]。1994 年の解説も、中子の特性で最も重要なのは鋳造品から除去できるかどうかだとしている[3]。

ここに、発注側が気をつけたい組み合わせがある。講座は、セラミック中子の除去に使う水酸化ナトリウムの水溶液は溶出能力が大きい反面、鋳造品の結晶粒界を浸食するので溶出条件の設定が難しいこと、中子の溶出は開口部から進むので、開口部が小さい形状や細長い形状では処理液が入りにくく滞留しやすく、溶出したシリカ分が濃くなって新たな溶出が進まなくなることを挙げている[2]。開口部の小さい内部流路を持つ部品では、中子の残りと、除去の薬液による表面への影響の両方を、受入で確かめる項目に入れる。流体を通す部品なら、流路の中を何で確かめるのか(内視鏡、流量、X 線など)を協定する。

材質と検査:鋳鋼・ニッケル合金なら JIS G 0307 が掛かる

2014 年の講座によれば、精密鋳造では材料に応じて溶解環境(大気・真空・アルゴン)を選ぶことで、アルミニウム合金・マグネシウム合金・チタン合金・銅合金・鋼・ステンレス鋼・コバルト基超合金・ニッケル基超合金など、ほとんどすべての材料を鋳造できる[2]。材質の記号は、それぞれの材料の規格(ステンレス鋼鋳鋼品なら JIS G 5121 など)で指定する。ステンレス鋳鋼の例はSCS13 の発注で扱った。

鋼・ニッケル合金・コバルト合金の鋳造品には、製造・試験・検査の通則 JIS G 0307 が掛かる[5]。G 0307 は、検査文書は引合い時・発注時に同意しなければならないとし、注文者が指定した場合に限って製造業者は JIS G 0415 の中から指定された検査文書を提出する、発注時に指定がない場合は提出する必要はない、としている[5]。附属書 B の追加要求事項には、鋳肌の粗さについて、粗さを指定する部位・指定粗さ・測定方法又は外観限度見本の取り交しを発注前に協定する、という項目がある[5]。ロストワックスを選ぶ理由が鋳肌の良さなら、その部位と粗さを協定しておかないと、規格上の保証にはならない。溶接補修の扱い(指定しなければ事前の了解なしにできる)は、SCS13 の記事とSC450 の発注で詳しく扱っている。

試験片をどこから採るか

講座は、精密鋳造品の基本的な検査として、寸法検査、表面欠陥検査(目視・磁気探傷・浸透探傷・渦電流探傷)、内部欠陥検査(X 線透過)、組織検査を挙げ、引張試験・クリープ試験・化学分析は、別取り試験片や実体切り出し試験片で行う、としている[2]。薄肉で小さい精密鋳造品では、製品から試験片を採れないことが多い。成績書の機械的性質が、同じ溶解の別取り試験片の値なのか、製品から切り出した値なのかで意味が違うので、発注書にどちらで確かめるかを書く。

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1994 年の解説は、精密鋳造品の微細なシュリンケージ(引け)やポア(気孔)などの欠陥のすべてを同時になくすことはほとんどできない、とも書いている[3]。「巣なきこと」と書いても受入基準にはならないので、部位ごとに許す欠陥の大きさと検査方法を決める。その書き方は鋳物の材質と内部欠陥の受入基準にまとめた。

受け入れるときに確かめること

1. 材質と検査文書
材料記号と規格、指定した検査文書の種類が届いているか。機械的性質の値が別取りか実体か。

2. 寸法
決めた基準点で測っているか。初回品は全寸法、量産は重要寸法、のように測る範囲を決めておく。

3. 鋳肌と外観
協定した部位の粗さ、または外観限度見本と比べる。ゲートを切った跡の仕上げの程度も見る。

4. 中空部
中子の残りが無いか、協定した方法で確かめた記録があるか。

5. 内部欠陥
協定した部位・方法・頻度で検査した記録があるか。

注文書の書き方の例

書き方に決まった様式があるわけではない。発注側として書いておきたい内容を一つの例にまとめる。

「製法:インベストメント鋳造(ロストワックス)。材質:SCS13(JIS G 5121)。図面 No.○○(第○版)・素材図 No.○○ による。鋳放し寸法の公差は図示の基準点 A1〜A3・B1・B2・C1 から測り、普通公差 JIS B 0403-CT6、図示寸法は個々の公差による。削り代は素材図による。鋳肌粗さは図示部位で協定値以下、または限度見本による。中空流路は中子の残りが無いことを ○○ で全数確認する。機械的性質は同一溶解の別取り試験片で確認し、検査文書(JIS G 0415 の 3.1)を添付すること。模型用金型は当社所有とし、保管・廃棄は別紙による。製法・鋳造工場・溶解条件・金型の変更は事前承認を要する。」

よくある質問

ロストワックスなら機械加工を省けますか

精度と鋳肌が良いので削らない面を増やせる方法ではあるが、解説の目安でも 100 mm で ±0.3〜0.5 mm 程度で、小さな寸法で ±0.10 mm 以内は容易でないとされている[2][3]。はめあいや精密な位置決めの面は削る前提で素材図を描く。

試作 1 個でもロストワックスで作れますか

作ることはできる。模型を作る型には金型以外にせっこう型・ゴム型・樹脂型なども使われるが、寸法精度や作業性があまり良くないので、工業的には金型が最善とされている[3]。簡易な型で作った試作品は、寸法では量産品を代表しないと考え、形や組付けの確認に使う。試作で確かめることを先に決め、寸法は量産の型で作った初回品で確かめ直す。

図面に公差を書かなければ JIS B 0403 が当てはまりますか

材料の規格が寸法公差を B 0403 に委ねている場合でも、等級は自動では決まらない。インベストメント鋳造について規格の附属書 A の表は「当分の間,受渡当事者間で協議するのがよい」としている[1]。等級か個々の公差を図面に書く。

まとめ

ロストワックスは、ワックス模型を金型で作り、セラミック鋳型で鋳造する精密鋳造の代表的な方法で、薄肉・複雑形状・難加工材に向くが、高価で金型の期間がかかる。寸法精度の目安は解説によって違い、JIS B 0403 でも協議事項とされているので、図面に公差等級か個々の公差を書き、基準点と素材図をそろえる。金型の費用・所有・修正の扱いを見積の段階で決める。中空部は中子の除去ができるかが要で、開口部の小さい流路は残りと薬液の影響を確かめる。鋼・ニッケル合金・コバルト合金の鋳物は JIS G 0307 の通則により、検査文書も鋳肌粗さも指定しなければ保証にならない。

同じ束では、砂型鋳造、硬質アルマイト、摩擦かくはん接合(FSW)、シルク印刷・パッド印刷の発注も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS B 0403-1995 鋳造品-寸法公差方式及び削り代方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  2. 佐藤茂征「精密鋳造法」(連載「鋳造工学概論」)鋳造工学 86 巻 7 号(日本鋳造工学会/2014 年)
  3. 松野一弘「精密鋳造法の特徴」鋳物 66 巻 9 号(日本鋳物協会/1994 年)
  4. 大中逸雄「鋳造品の設計-概論-」(連載「鋳造工学概論」)鋳造工学 85 巻 6 号(日本鋳造工学会/2013 年)
  5. JIS G 0307:2014 鋳鋼品の製造,試験及び検査の通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2014 年 10 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)

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