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SC450(JIS G 5101 炭素鋼鋳鋼品)の発注——熱処理の省略・溶接構造用SCWとの違いと検査の指定

この記事のポイント(結論先出し)
SC450 は JIS G 5101(炭素鋼鋳鋼品)の一般構造用の鋳鋼で、規格が決めているのは炭素・りん・硫黄の上限と、降伏点又は耐力 225 N/mm² 以上・引張強さ 450 N/mm² 以上・伸び 19% 以上・絞り 30% 以上である[1]。熱処理は規格で求められていて、省略できるのは注文者が承認したときだけである[1]。一方で SC450 には炭素当量の上限も衝撃試験の規定もない。圧延鋼材などと溶接して組む部品なら、溶接構造用の JIS G 5102(SCW)の SCW450 が別にあり、炭素当量 0.43% 以下と 0 ℃ のシャルピー吸収エネルギー 27 J 以上(3 個の平均)が決まっている[2]。内部の健全性の試験は注文者が要求したときだけで、合否も協定で決まる[1]。検査文書も、注文時に指定しなければ出てこない[3]。
目次
SC450 で決まること:JIS G 5101 の中身
JIS G 5101 は炭素鋼鋳鋼品(遠心力鋳鋼管を含む)の規格で、最新改正は 1991 年 3 月 1 日、2021 年 10 月 20 日に確認されている[1]。種類は SC360・SC410・SC450・SC480 の 4 つで、表 1 の適用はいずれも「一般構造用」、SC360 だけ「電動機部品用」が併記されている[1]。遠心力鋳鋼管には記号の末尾に「-CF」を付ける(例 SC410-CF)[1]。記号の数字は引張強さの下限(N/mm²)に対応している。
化学成分は溶鋼分析値で決まり、SC450 は炭素 0.35% 以下、りん 0.040% 以下、硫黄 0.040% 以下である[1]。けい素とマンガンの上限はなく、規定されていない元素は、特に必要がある場合に受渡当事者間の協定による[1]。機械的性質は表 3 による[1]。並べると次のようになる。
| 種類の記号 | C(%) | 降伏点又は耐力 N/mm² | 引張強さ N/mm² | 伸び % | 炭素当量 | 衝撃試験 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SC410(G 5101) | 0.30 以下 | 205 以上 | 410 以上 | 21 以上 | 規定なし | 規定なし |
| SC450(G 5101) | 0.35 以下 | 225 以上 | 450 以上 | 19 以上 | 規定なし | 規定なし |
| SC480(G 5101) | 0.40 以下 | 245 以上 | 480 以上 | 17 以上 | 規定なし | 規定なし |
| SCW450(G 5102) | 0.22 以下 | 255 以上 | 450 以上 | 20 以上 | 0.43% 以下 | 0 ℃・4 号試験片 3 個の平均 27 J 以上 |
G 5101 の値は表 2・表 3、SCW450 の値は JIS G 5102 の表 2・表 3 から抜き出した[1][2]。SC450 の絞りは 30% 以上と規定されている[1]。G 5101 では、SC360 の磁気特性(磁束密度)について注文者が要求する場合だけ試験を行い、特性値は協定による、とされている[1]。SC450 にはこの規定はない。
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熱処理は「行う」が既定で、省略には承認が要る
JIS G 5101 の 9.2 は、鋳鋼品は炉内で各部を均一に加熱し、焼なまし、焼ならし、焼ならし焼戻し又は焼入焼戻しのいずれかの熱処理を行う、としている。ただし、注文者の承認を得た場合は熱処理を省略することができる[1]。
ここから発注で押さえることが二つ出てくる。一つは、規格は 4 つの熱処理のどれを行うかを製造業者に任せていることである。焼ならしで出したのか、焼入焼戻しで出したのかで、同じ SC450 でも組織と硬さは変わりうる。熱処理の種類を決めたい理由(加工性、硬さの上限、寸法の安定など)があるなら、発注書に書く。JIS G 0307 の附属書 B は追加要求事項として、鋳鋼品に適用した熱処理の方法を注文者に報告すること、合意があれば熱処理時間・温度・冷却方法を報告することを挙げている[3]。
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もう一つは、仕入先から「鋳放しで納めたい」「熱処理を省いて安くしたい」と言われたときの扱いである。規格上は注文者の承認が要る事柄なので、設計の判断を取ったうえで、承認したことを記録に残す。黙認のまま受け入れると、規格品として受けたつもりの部品が、規格の手順を経ていないことになる。
溶接で組むなら SCW を検討する
JIS G 5102(溶接構造用鋳鋼品)は、適用範囲を「圧延鋼材,鋳鋼品又は他の鋳鋼品との溶接構造に用いるもので,特に溶接性に優れた鋳鋼品」としている[2]。種類は SCW410・SCW450・SCW480・SCW550・SCW620 で、炭素はいずれも 0.22% 以下、そのうえで炭素当量の上限が種類ごとに決まっている[2]。炭素当量は溶鋼分析値から C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 で計算し、各成分は 0.01% 単位の分析値を使う[2]。SCW450 は 0.43% 以下である[2]。
SC450 は炭素の上限が 0.35% で、炭素当量の上限もない[1]。G 5101 は SC450 の溶接を禁じてはいないが、溶接性を条件として保証する規格ではない。架台の脚、フランジ付きの継手、圧延の鋼板と溶接で組むブラケットのように、鋳物を溶接構造の一部にする部品で SC450 を図面に書いているなら、SCW に替えるか、SC450 のまま溶接の施工条件(予熱など)を決めるかを、設計と仕入先で確かめる。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。溶接を含む部品で指定する施工要領・資格・検査は溶接を含む部品の発注で指定することで扱った。
寒い場所で使う部品や、衝撃を受ける部品でも差が出る。SCW には 0 ℃ のシャルピー吸収エネルギーの規定があるが[2]、SC450 にはない[1]。SC450 のまま低温の衝撃特性を求めたいなら、JIS G 0307 の附属書 B の低温衝撃試験を追加要求事項として協定する方法がある。試験温度と吸収エネルギー値は製品規格に定めがなければ受渡当事者間の協定による[3]。試験の考え方はシャルピー衝撃試験を発注で指定するときにまとめた。
成績書の値は「供試材の値」
JIS G 5101 は、機械試験を JIS G 0307 によって行い、供試材の形状と寸法は G 0307 の図による、としている[1]。現行の JIS G 0307:2014 は、供試材を、鋳鋼品と同じ溶解ロットから鋳鋼品と別に鋳込むか、鋳鋼品に付帯・一体化して鋳込むとし、試験片の採取部位の断面を 28 mm×28 mm とする形状か、図 1 の形状を使うとしている[3]。供試材の熱処理は、代表する鋳鋼品と同じ手順で同一の熱処理を行う。同一の熱処理とは、鋳鋼品と同時に積み込んで熱処理するか、保持温度と保持時間が同じ管理範囲内で冷却も同じ方法であることをいう[3]。同じ炉で一緒に熱処理することまで求めるなら、附属書 B の追加要求事項(個別鋳造供試材は代表する鋳鋼品とともに同じ炉で熱処理する)として協定する[3]。
そのうえで G 0307 は、試験結果は鋳込まれた鋳鋼品の材質を代表するもので、必ずしも鋳鋼品本体の特性を示すものではない、と書いている。本体の特性は凝固の状態と熱処理時の冷却速度に影響され、それは厚さ・寸法・形状に影響される[3]。肉厚の大きい鋳物で、厚い部分の強さが設計上大事なら、規格どおりの供試材で足りるかを設計に確かめる。足りなければ、G 0307 が定める鋳鋼品を代表する供試材(代表断面肉厚 t を注文者が指定する t×t や t×3t×3t の供試材)や、製品からの採取位置を協定する[3]。
本体の硬さを確かめたいときは、附属書 B が、試験の種類・抜取個数又は抜取率・測定位置・合否判定基準を協定するとしている[3]。図面に硬さを書く場合の考え方は図面の硬さ指定で扱った。
G 5101 が引く箇条番号は、今の G 0307 と合わない
JIS G 5101 は 1991 年の規格で、形状と寸法は「JIS G 0307 の 3.7」、外観試験は「3.4」、非破壊試験は「3.5」、検査は「5.」、表示は「6.」、報告は「7.」によるというように、G 0307 の箇条番号を引いている[1]。ところが現行の JIS G 0307:2014 は箇条の構成が変わっていて、7 は表示、6.2 が受渡検査及び試験、報告文書は附属書 A の A.4 である[3]。G 5101 の 11(再試験)には「JIS C 0307 の 4.」という表記まである[1]。
実務への影響は、発注書や仕様書で「G 5101 の○○による」と箇条番号を写しても、仕入先が現行の G 0307 のどこを指すのか読めない場合があることである。検査文書・溶接補修・非破壊試験・寸法公差のように、引合いと発注で決めることは、箇条番号ではなく中身で書いておくほうが食い違わない。
健全性・外観・寸法:書かなければ決まらないこと
JIS G 5101 は外観について、使用上有害なきず、割れ、鋳巣などがあってはならないとし、健全性(内部を含む欠陥)の試験は注文者が要求する場合に行い、健全性の合否判定基準は受渡当事者間の協定による、としている[1]。G 0307 は、引合いと発注の文書に含める情報として、模型や図面による鋳鋼品の明確化、製品規格・納入状態・種類、適用する非破壊検査の手順・範囲・合否判定基準、提供される検査文書の形式を挙げている[3]。
非破壊試験の方法を書いても、何を合格とするかは別に決める必要がある。鋳物の内部欠陥の受入基準の組み立て方(方法・等級分類・合格等級・部位・数)は鋳物の発注で決める材質と内部欠陥の受入基準で、方法ごとの指定は非破壊検査を発注で指定するときで扱った。
寸法について、G 0307 は、受渡当事者間の協定がない場合、砂型鋳鋼品の長さ・肉厚・抜け勾配などの鋳放し寸法の許容差を JIS B 0403 によるとしている[3]。JIS B 0403 は、長期間・大量に製造する場合と、短期間・1 回限りの製造の場合とで、普通に得られる公差の目安を分けて参考に示している[5]。試作の 1 個と量産とで同じ等級を求めるかも含めて決める。等級と削り代の書き方は鋳造品の普通許容差の指定にまとめた。G 0307 は、引合い・発注時に記載がなければ鋳鋼品は機械加工されない状態で納入され、押湯と湯道は取り除かれる、ともしている[3]。荒加工まで仕入先に任せるなら、そのことを書く。
G 5101 は、鋳鋼品は検査前に塗装その他、検査の妨げとなるどのような処理も行ってはならない、としている[1]。塗装済みで納入してほしい場合でも、検査は塗装の前に行われるものとして、検査の時期と立会いの要否を決める。G 5101 は、試験場所は原則として当該製造所とし、注文者の要求があれば製造業者は試験に立ち会わせる、と定めている[1]。
溶接補修と検査文書は、注文時に書く
鋳鋼品の通則 JIS G 0307 は、溶接補修について、引合い・発注時に指定がなければ鋳鋼品は注文者の事前の了解なしに溶接することができる、としている。大欠陥の補修は、別に取り決めがなければ、肉厚の 40% と 25 mm のどちらか小さい方を超える深さの欠陥を熱処理後に補修溶接したものとされ、その記録(位置と範囲の図面か写真)を納入時に提出する[3]。SC450 は溶接性を保証する種類ではないので、補修を認めるか、事前承認が要る範囲をどこにするかは、SCW より慎重に決めたい。通則の読み方の詳細はSCS13 の発注でも扱った。
検査文書は、G 0307 では、引合い・発注時に注文者が指定した場合に限り、製造業者が JIS G 0415 の中から指定された文書を提出する。発注時に指定がない場合、製造業者は検査文書などを提出する必要はない[3]。JIS G 0415 は、受渡検査による試験結果を記載し注文書の要求事項に適合していることを宣言して発行する文書を検査証明書 3.1 としている[4]。成分と機械的性質を見て受け入れるなら、「検査証明書 3.1」と、記載してほしい項目(溶鋼分析値、機械試験の結果、供試材の形状、熱処理の種類)を注文書に書く。G 0307 は、発注時に特に指定がない限り、製造業者は実施した試験の記録を少なくとも 5 年間保存する、としている[3]。区分の違いはEN 10204 のミルシート区分で整理している。
注文書の書き方の例
書き方に決まった様式があるわけではない。発注側として書いておきたい内容を一つの例にまとめる。
「材質:SC450(JIS G 5101)。熱処理:焼ならし(熱処理の省略は不可。変更は事前承認)。溶接補修:事前承認を要する。大欠陥補修は記録を提出。寸法:図面 No.○○(第○版)、鋳放し寸法の公差は JIS B 0403 の CT○、削り代は図示。健全性:浸透探傷試験を図示部位に実施、合否基準は別紙。検査文書:検査証明書 3.1(JIS G 0415)、溶鋼分析値・機械試験結果・供試材の形状・熱処理の種類を記載。」
この例のうち、熱処理の種類、補修の扱い、健全性の試験と基準、検査文書は、どれも書かなければ規格だけでは決まらない項目である[1][3]。
よくある質問
SC450 と S45C は同じ材料ですか
違う。SC450 は鋳鋼品の規格 JIS G 5101 の記号で、450 は引張強さの下限 450 N/mm² に対応する[1]。S45C は圧延・鍛造した棒などに使う機械構造用炭素鋼の記号で、規格も記号の数字の意味も別である。棒材の指定は機械構造用鋼を材料指定するときで扱った。
仕入先が「熱処理なしで同じ強度が出る」と言っています
JIS G 5101 では、熱処理の省略は注文者の承認が要る[1]。強度の値が出ていても、規格の手順を外れることになるので、設計の判断を取ってから承認し、記録に残す。
SC450 の鋳物を鋼板と溶接してもよいですか
規格は禁じていないが、SC450 には炭素当量の上限がなく、溶接性を保証する種類ではない[1]。溶接構造に用いる鋳鋼品は JIS G 5102 の SCW が別に定められている[2]。SCW への変更か、施工条件の取り決めかを設計と決める。
まとめ
SC450 は JIS G 5101 の一般構造用の炭素鋼鋳鋼で、炭素 0.35% 以下、降伏点又は耐力 225 N/mm² 以上、引張強さ 450 N/mm² 以上、伸び 19% 以上、絞り 30% 以上が規定値である。熱処理は 4 つのいずれかを行うのが既定で、省略には注文者の承認が要る。炭素当量と衝撃の規定はないので、溶接構造には溶接構造用の SCW(SCW450 なら炭素当量 0.43% 以下・0 ℃ で 27 J 以上)を検討する。成績書の値は供試材の値で、本体の厚い部分の強さを示すとは限らない。G 5101 が引く G 0307 の箇条番号は現行版と合わないので、検査文書・溶接補修・健全性の試験と合否・寸法公差は中身で注文書に書く。
同じ束では、Mg の多いアルミ合金の A5056・A5083、導体に使う銅ブスバー、エキスパンドメタル、織金網の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS G 5101:1991 炭素鋼鋳鋼品(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 3 月 1 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS G 5102:1991 溶接構造用鋳鋼品(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 3 月 1 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS G 0307:2014 鋳鋼品の製造,試験及び検査の通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2014 年 10 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS G 0415:2024 鋼及び鋼製品-検査文書(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 6 月 20 日改正)
- JIS B 0403:1995 鋳造品-寸法公差方式及び削り代方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 2 月 1 日改正)
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