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エキスパンドメタル(JIS G 3351)の発注——XS・XG の品番、SW・LW の向きと開口の安全距離

この記事のポイント(結論先出し)
この記事は、設備のカバー・点検通路の床・フィルタの支え・機械の囲いなど、工業用途でエキスパンドメタルを発注するときの指定をまとめる。JIS G 3351 は鋼製のエキスパンドメタルの規格で、スタンダード(XS)とグレーティング(XG)の品番ごとに、網目の短い方の寸法 SW・長い方の寸法 LW・板厚 T・刻み幅 W・単位質量が決まっている[1]。呼び方は「XG11-S1829×L914」のように種類・品番・製品寸法で書く[1]。S は SW の整数倍なので、どちらの辺を SW の方向にするかを図面に書く。ステンレス・アルミ製や、平らにつぶしたものは JIS G 3351 の対象外で、材料規格と寸法を自分で決める。質量は注文者が指定したときだけ計量され、許容差が適用される[1]。機械の囲いに使うなら、網目の大きさと危険源までの距離を JIS B 9718 で確かめる[2]。
目次
JIS G 3351 の範囲:鋼製で、メタルラスは除く
JIS G 3351(エキスパンドメタル)は、土木・建築およびその他一般の鉱工業などに使用される鋼製エキスパンドメタルの規格で、JIS A 5505(メタルラス)に規定されたメタルラスを除く[1]。メタルラスは別の規格 JIS A 5505 で、形状・寸法・各部の名称から耐食性の試験まで別に定められている[5]。最新改正は 1987 年 9 月 1 日で、2023 年 10 月 20 日に確認されている[1]。製造方法は「鋼板を冷間切延法によって製造する」とされ、材料の鋼板の化学成分と機械的性質は JIS G 3101・JIS G 3131・JIS G 3141 による[1]。熱間圧延軟鋼板の JIS G 3131 は 2024 年 11 月 20 日、冷間圧延鋼板の JIS G 3141 は 2021 年 4 月 20 日に改正されている[3][4]。
つまり、規格品として買えるのは鋼板から作ったものだけである。ステンレス製やアルミ製のエキスパンドメタルは流通しているが、G 3351 の品番では注文できない。材料はステンレス鋼板の規格の鋼種(SUS304 など)や A5052P(JIS H 4000)のように材料規格で書き、網目の寸法・板厚・刻み幅を図面か仕様書で決める(当方の提案)。網目を圧延して平らにした製品(いわゆるフラット)も、G 3351 には種類として載っていない[1]。
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寸法の名前:SW・LW・T・W とボンド
JIS G 3351 は各部の名称を図で定め、表 2 で品番ごとにメッシュ寸法(SW と LW)、ストランド寸法(T と W)、引伸率、単位質量、ボンド長さを示している[1]。SW は網目の短い方の対角寸法、LW は長い方の対角寸法、T は板厚、W は刻み幅(切り込みの間隔で、ストランドの幅になる)である。ボンドは網目の線どうしがつながる部分で、XG の品番 11〜14 は 30 mm 以上、21〜24 は 10 mm 以上と決まっている[1]。
表 2 から何品番かを抜き出すと次のようになる。品番の数字の並びと、網目・板厚の関係が分かる。
| 記号・品番 | SW mm | LW mm | T mm | W mm | 引伸率 | 単位質量 kg/m² |
|---|---|---|---|---|---|---|
| XS32 | 12 | 30.5 | 1.6 | 2.0 | 3.00 | 4.19 |
| XS42 | 22 | 50.8 | 2.3 | 2.5 | 4.40 | 4.10 |
| XS62 | 34 | 76.2 | 3.2 | 4.0 | 4.25 | 5.91 |
| XG21 | 36 | 101.6 | 4.5 | 7.0 | 2.57 | 13.7 |
| XG11 | 34 | 135.4 | 4.5 | 7.0 | 2.43 | 14.5 |
XS の品番は 31 から 93 まで、XG は 11〜14 と 21〜24 がある[1]。同じ網目の大きさでも、板厚と刻み幅で重さと強さが変わる。XS42 と XS43 は SW 22・LW 50.8 で同じ網目だが、板厚 2.3 mm と 3.2 mm で単位質量は 4.10 kg/m² と 8.00 kg/m² になる[1]。
単位質量は「鋼板の単位質量÷引伸率」
JIS G 3351 は、エキスパンドメタルの単位質量を、その品番の板厚の鋼板の単位質量を引伸率で除して求め、上位 3 けたに丸めるとしている。引伸率は SW の 1/2 を刻み幅 W で除したもので、小数点以下 2 けたに丸める[1]。XS42 なら、板厚 2.3 mm の鋼板の単位質量 18.06 kg/m²(7.85×2.3)を引伸率 4.40(11÷2.5)で割って 4.10 kg/m² になり、表の値と一致する。1 枚の質量は単位質量に面積を乗じ、総質量は同じ寸法の枚数を乗じる[1]。
仕入先が「規格外の網目」で見積を出してきたときも、この式で質量の見当がつく。重量単価で取引するなら、計算の前提(鋼板の密度と丸め方)を見積書でそろえる。鋼材の質量計算の考え方は鋼材の重量計算で扱った。
製品寸法と向き:S は SW の整数倍
JIS G 3351 の標準製品寸法は、S 1829 mm×L 914 mm(面積 1.672 m²)や S 2438 mm×L 1219 mm(2.972 m²)など、S と L の組合せで表 3 に並んでいる[1]。備考で、標準製品寸法では S は SW の整数倍、L は LW/2 の整数倍とし、標準以外の寸法では S は SW の整数倍だが L は LW/2 の整数倍になるとは限らない、としている[1]。
S は SW の方向の辺、L は LW の方向の辺である。網目の向きは、カバーとして見たときの外観にも、どちらの方向にたわみやすいかにも関わる。図面には外形寸法だけでなく、どちらの辺を SW の方向にするかを書く。外形が S の方向で SW の整数倍に合わないと、縁の網目が半端に切れる。縁の網目をどう処理するか(そのまま・縁を折る・枠を溶接する)も決めておく(当方の提案)。
規格の呼び方の例は「XG11-S1829×L914」である[1]。S と L を入れ替えて書くと網目の向きが 90° 変わるので、注文書と図面で S・L の順序をそろえる。
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許容差:規格が決めていることと、鋼板の規格に任せていること
JIS G 3351 の表 4 は、SW の許容差を ±5%、LW を ±2 mm、W を ±10% としている。T(板厚)と L の許容差は鋼板の JIS に示す値による[1]。SW と LW は、連続した 10 メッシュ(10 メッシュに満たなければ最大のメッシュ数)を測って平均をとる[1]。横曲がりは 1 000 mm につき 5 mm 以下、長さの偏差(相対する辺の長さの差)は XG で 1 000 mm につき 6 mm 以下、XS で 10 mm 以下である[1]。
枠に入れて組む部品や、取付け穴を合わせる部品では、この許容差で足りるかを確かめる。足りなければ、切断後の外形の公差を図面で指定し、網目の寸法とは分けて書く(当方の提案)。
質量は、指定したときだけ量る
JIS G 3351 は、質量について注文者の指定があった場合に計量し、その許容差は表 5 によるとしている[1]。たとえば厚さ 3 mm 未満で、同じ種類・同じ寸法を 1 組とした計算質量が 600 kg 未満なら ±10%、2 t 以上なら ±5% である[1]。重量で検収するなら、計量と許容差の適用を注文時に書く。
品質・試験・報告:要求しないと出ないもの
JIS G 3351 は品質として、形状が正しく、刻み幅 W が整一で目切れがなく、有害なさびがあってはならない、としている[1]。引張試験と曲げ試験は成形前の鋼板から試験片を切り取って行い、試験片の数は 25 t 又はその端数ごとに 1 個である[1]。試験はエキスパンドメタルそのものではなく、材料の鋼板について行うものと読む。
報告は、注文者の要求があった場合に製造業者が使用材料の試験成績表を提出する、という形である[1]。材料の成績書が要るなら注文時に求める。表示は 1 結束ごとに種類の記号・品番・寸法・検査済の証印・製造所名を明示する[1]。
防せいと仕上げ:規格の外で決める
JIS G 3351 には、めっきや塗装の規定はない[1]。屋外や湿気の多い場所で使うなら、溶融亜鉛めっき・塗装のどれをかけるか、成形の後にかけるか前の材料にかけるか、切断した縁の扱いを決める。成形後の溶融亜鉛めっきの指定は溶融亜鉛めっき(JIS H 8641)の指定で、塗装の仕様は塗装の仕様の決め方で扱った。網目の内側まで塗膜を回したいか、外観だけでよいかでも工程が変わる。
機械の囲いに使うとき:網目の大きさと安全距離
エキスパンドメタルを機械の囲いやカバーに使う場合、網目から指や腕が届かないかを確かめる必要がある。JIS B 9718(機械類の安全性-危険区域に上肢及び下肢が到達することを防止するための安全距離)は、14 歳以上の人について、定形開口部の大きさ e ごとに、開口部から危険区域までの安全距離 Sr を表 4 で示している[2]。たとえば正方形の開口部で 12 mm を超え 20 mm 以下なら 120 mm 以上、20 mm を超え 30 mm 以下なら 120 mm 以上、30 mm を超え 40 mm 以下なら 200 mm 以上、40 mm を超え 120 mm 以下なら 850 mm 以上である[2]。
エキスパンドメタルの網目はひし形なので、定形の開口部ではない。JIS B 9718 は、不定形開口部では、開口部が完全に入る最も小さい円の直径、正方形の辺、長方形の幅を求め、それぞれについて表から安全距離を選び、三つのうち最も短い値を使ってよい、としている[2]。網目の SW と LW だけでは判断できないので、実物の開口部(ストランドの幅を差し引いた穴の大きさ)で当てはめる。この規格の要求事項に適合できない場合は、他の保護方策を使わなければならない、とも書かれている[2]。
点検通路の床にグレーティング(XG)を使う場合の耐荷重は、JIS G 3351 の規定にない[1]。支点の間隔と載せる荷重から設計で確かめ、図面に支持の条件を書く。床や通路に使うものを、カバー用の XS の品番で代用しない(当方の提案)。
注文書の書き方の例
様式が決まっているわけではない。書いておきたい内容を一つの例にまとめる。
「品名:エキスパンドメタル XS42(JIS G 3351)、製品寸法 S 880×L 600 mm(S 方向を図面 No.○○ の A 寸法に合わせる)。縁は平鋼の枠に溶接、外形の公差は図示。成形後に溶融亜鉛めっき(種類は別紙)。使用材料の試験成績表を添付すること。」
ステンレス製で頼む場合は、「エキスパンドメタル(JIS G 3351 の XS42 相当の網目:SW 22・LW 50.8・T 2.3・W 2.5)、材質 SUS304」のように、規格品番を目安として書いたうえで材料規格を明記する。G 3351 の許容差を準用するかどうかも書く(当方の提案)。
よくある質問
エキスパンドメタルとパンチングメタルはどう選び分けますか
エキスパンドメタルは鋼板に切れ目を入れながら引き伸ばして作る(冷間切延法)もので[1]、網目はひし形になる。穴の形と配列を自由に決めたいならパンチングメタルで、指定の仕方はパンチングメタルの発注で扱った。
カタログの品番で注文してよいですか
JIS G 3351 の品番なら、網目・板厚・刻み幅・単位質量が規格で決まっている[1]。メーカー独自の品番は、仕入先を替えると中身が同じとは限らないので、SW・LW・T・W と材質を図面に書いておく。
網目の向きが図面と違って届きました
S と L の書き方が注文書と図面で食い違っていなかったかを確かめる。JIS の呼び方は S×L の順で、S は SW の方向の辺である[1]。次の発注からは、SW の方向を図面に矢印で示す。
まとめ
JIS G 3351 は鋼製エキスパンドメタルの規格で、XS と XG の品番で SW・LW・T・W・単位質量が決まり、呼び方は種類・品番・S×L の製品寸法で書く。S は SW の方向の辺で SW の整数倍なので、網目の向きを図面で決める。単位質量は鋼板の単位質量を引伸率(SW の 1/2 ÷ W)で割った値で、質量は指定したときだけ計量される。ステンレス・アルミ製やフラットは規格の対象外なので、材料規格と寸法を自分で書く。防せい処理と床の耐荷重は規格の外で決め、機械の囲いに使うならひし形の網目を JIS B 9718 の不定形開口部として安全距離を確かめる。
同じ束では、網目を線で織る金網(織金網)、炭素鋼鋳鋼品 SC450、A5056・A5083、銅ブスバーの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS G 3351:1987 エキスパンドメタル(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1987 年 9 月 1 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 9718:2013 機械類の安全性-危険区域に上肢及び下肢が到達することを防止するための安全距離(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2013 年 5 月 25 日制定・2023 年 10 月 25 日確認)
- JIS G 3131:2024 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
- JIS G 3141:2021 冷間圧延鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 4 月 20 日改正)
- JIS A 5505:2020 メタルラス(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2020 年 3 月 23 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
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