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基板実装の品質はどう指定するか——レベルは買う側が決め、ボイドと手直しは別に取り決める

この記事のポイント(結論先出し)
基板実装の品質の等級は、仕入先ではなく買う側が決めるものである。はんだ付け実装の JIS(JIS C 61191-1。IEC 61191-1 と一致)は、製品をレベル A・B・C に分け、その製品がどのレベルに属するかを決める責任を購入者に置いている。この 3 レベルは IPC-A-610 のクラス 1・2・3 に対応する[1]。同じ規格は、調達文書に書くことが望ましい事項として、規格の名称・番号・発効年、試作品の試験の要否、製品のレベル、清浄度、静電気対策の包装など 9 項目を挙げている[1]。等級だけでは決まらない項目もある。BGA(部品の裏面にはんだボールが並ぶ部品)のはんだ接合部のボイド(空洞)の割合は当事者間で合意すると定められ[2]、吸湿しやすい部品の扱いは業界規格の分類と取扱い方法を指定する[4][5]。不具合を直す手直しは、記録を残してから行うことが求められる[1]。
目次
実装品の「レベル」は買う側が決める
部品を載せてはんだ付けした基板(実装品、PCBA)の品質の等級は、IPC-A-610 のクラス 1・2・3 で呼ばれることが多い。各クラスの考え方と検査項目の概要はIPC-A-610 の良否判定基準の記事で扱った。この記事では、発注書に何を書けば仕入先との食い違いが減るかに絞る。
日本では、はんだ付け実装の要求事項を JIS C 61191-1(2021 年改正。IEC 61191-1:2018 と一致)が定めている[1]。この規格は、最終製品の意図する用途によって実装品を三つのレベルに分ける[1]。
- レベル A:一般電気製品(民生用)。消費者製品や、主に機能を要求するハードウェア
- レベル B:業務用電気製品(産業用)。通信機器や、高性能かつ長寿命が必要で、必須ではないが中断のない動作が望まれる機器
- レベル C:高性能電気製品(特殊用)。生命維持や危機管理のように、故障による停止が許されない機器
規格は、レベルの間で製品が重なる場合があるとしたうえで、実装品の購入者に、その製品が属するレベルを決定する責任があると書いている。契約書には、要求するレベルと、必要に応じた追加・変更の要求事項を明記するとしている[1]。注記では、出来栄え(はんだ接合の見た目などの良否)の要求事項は IPC-A-610 に記載があり、レベル A・B・C がそれぞれ IPC-A-610 のクラス 1・2・3 と一致すると説明している[1]。
仕入先に「どのクラスで作りますか」と聞くのは順序が逆である。仕入先は自社が普段作っているクラスを答えるだけで、その製品に何が必要かは知らない。買う側が用途から決めて、発注書に書く。
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発注書に書く 9 項目
JIS C 61191-1 は最後の箇条「発注データ」で、調達文書に含めることが望ましい事項を 9 つ挙げている[1]。そのまま発注書の欄に使える。
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| JIS C 61191-1 の発注データ | 発注書での書き方の例 |
|---|---|
| a) 規格の名称・番号・発効年 | 「JIS C 61191-1:2021 による」。IPC 規格に準拠させるなら、その規格の番号と改訂記号 |
| b) 試作品の試験の要否 | 量産前に試作品を作って評価するか |
| c) 必要なら試作品の数 | 評価に使う台数 |
| d) 該当すれば試作品の廃棄 | 試験に使った試作品を出荷に回さないこと |
| e) 評価方法と品質管理システムへの要求 | 工程管理の方法、抜取検査を認めるか |
| f) 必要なら作業者の認定 | 手はんだ・検査の作業者の訓練記録の提出 |
| g) 製品のレベル | レベル B(IPC-A-610 クラス 2 相当)など |
| h) 清浄度、洗浄の有無、清浄度試験 | 無洗浄でよいか、洗浄するか、残さの試験をするか |
| i) 静電気対策の包装 | 導電性・帯電防止の袋やトレーで出荷すること |
このうち a) の「発効年」は見落とされやすい。規格は改正されるので、版を書かないと仕入先は手元の版で作る。JIS C 61191-1 自身も、2015 年版を 2021 年に改正して置き換えている[1]。
規格と図面が食い違ったら、どちらが優先か
JIS C 61191-1 は優先順位を決めている。規格と購入者が承認した実装図面が食い違う場合は図面を優先する。承認していない図面との違いは、購入者の承認が必要で、承認した場合はその内容を図面上に文書化し、以後はその文書が付いた図面を優先する[1]。
規格の必須の要求事項と違うことを求めるときは、購入者の書面での承諾(組立図面、仕様書、契約など)が必要とも書いている[1]。実務では、「部品の高さの制約でこの部品だけ規格と違う実装をする」といった例外を、口頭や電子メールのやりとりで済ませてしまうことがある。例外は図面の注記として残す。図面の版の管理は図面の版の記事で扱う。
記録の保存期間も規格が決めている。適合性を示すために証拠書類が要る場合、記録は記録した日付から 2 年以上、検査のために利用できる状態で維持する[1]。自社の顧客がこれより長い保存を求めているなら、発注書でその期間を指定する。
吸湿しやすい部品の扱いを指定する
樹脂で封止した表面実装部品は、保管中に湿気を吸い、リフロー(はんだを溶かす加熱)のときにその水分が膨張して内部が割れることがある。JIS C 61191-1 は不適合の一覧に「湿気割れ(ポップコーニング)」を挙げ、部品と構成部材は設計上の制約の範囲内で吸湿させない状態で実装すると定めている[1]。
どの部品がどの程度吸湿に弱いかは、IPC と JEDEC の共同規格で扱われている。J-STD-020(現行は 2022 年 12 月発行の F 版)は、湿気に起因するストレスに弱い非気密の表面実装部品を分類し、適切に包装・保管・取扱いできるようにすることを目的としている[4]。J-STD-033(現行は 2018 年 4 月発行の D 版)は、その分類に基づいて、吸湿に弱い部品の取扱い・包装・出荷・使用の標準的な方法を示す[5]。
発注で決めることは次のとおりである。
- 部品の吸湿の取扱いを J-STD-033 に従って行うこと(版も書く)
- 支給部品(こちらから渡す部品)の場合、防湿袋を開けた日時の記録をどちらが持つか、開封済みの部品を返すときの扱い
- 規定の時間を超えて外気にさらした部品を、乾燥(ベーキング)してから使うか、使わないか
部品の入手経路の管理(模倣品・中古品の混入を防ぐこと)は電子部品の模倣品の記事で扱った。
BGA のボイドは「合意する項目」
BGA のはんだ接合部は外から見えないので、X 線透視で中の空洞(ボイド)を見る。ここで発注側が知っておくべきなのは、ボイドの許容割合は規格が一律に決めていないことである。表面実装はんだ付けの JIS C 61191-2(2020 年改正。IEC 61191-2:2017 と一致)は、BGA の受入要求事項の表で、ボイドの割合は需給当事者間で合意しなければならないとしている。設計に起因するボイド(マイクロビアなど)やめっき工程に起因する微細なボイドは除外し、その許容基準も当事者間で決めるとしている[2]。
測り方と評価の考え方は JIS C 61191-6(2011 年制定。IEC 61191-6:2010 と一致)にある。この規格は、基板に実装した BGA と LGA(はんだボールの代わりに平らな電極が並ぶ部品)のはんだ接合部のボイドに適用し、X 線透視装置による測定方法と、疲労寿命に基づく評価基準を定めている。直径 10 µm から数百 µm のボイドが対象で、それより小さい微細なボイドや、アンダーフィル(部品の下に流し込む補強樹脂)を備えた接合部には適用しない[3]。
同じ規格の参考の附属書は、ボイドの許容限度の目標は工程を管理するためのもので、例えば「ボイドのあるはんだボールが 5 % 未満」といった目標を作ることができ、こうした管理の限度は契約上の義務として顧客との合意の下に取り決めることが望ましいとしている[3]。また、ボイドの数や占有率よりも、ボイドの位置(はんだボールと基板・部品の界面かどうか)が信頼性に大きく影響すると説明している[3]。参考の附属書の記述なので要求事項ではないが、合意の項目を考えるときの手がかりになる。
発注書には、ボイドの評価方法(JIS C 61191-6 による等)、評価の対象(どの部品か)、限度、検査の頻度(全数か抜取りか)を書く。何も書かなければ、仕入先の社内基準で判定される。
外観検査の頻度と拡大鏡の倍率
JIS C 61191-1 は、はんだ付け後の実装品を、確立した工程管理計画に従って評価するか、全数の外観検査で評価するとしている[1]。抜取検査を使ってよいのは、文書化した工程管理の一部として行う場合か、購入者が承認した製品保証プログラムの一部である場合に限られる[1]。工程管理の要素として、ロットのサンプルに不適合があった場合はそのロット全体を全数検査すること、工程が管理限界を外れたら厳しい検査に戻す基準を持つことなどを挙げている[1]。
検査に使う拡大鏡の倍率は、部品の最小のランド(はんだを付ける銅の部分)の幅で決めるとされ、推奨の倍率が表になっている。次はその一部である[1]。
| ランド幅・ランド径 | 検査用の倍率 | 判定用の倍率 |
|---|---|---|
| 1.0 mm を超える | 1.5 倍〜3 倍 | 4 倍 |
| 0.25 mm 未満 | 20 倍 | 40 倍 |
判定用の倍率は、検査用の倍率で不適合となった製品の確認だけに使うと定められている[1]。仕入先の検査工程を見学するときは、細かい部品の検査にどの倍率の機器を使っているかを確かめる。手はんだと検査の作業面の照明は 1,000 lx 以上とされている[1]。
手直しと修理は、記録を先に残す
不具合のはんだ接合を直す「手直し」について、JIS C 61191-1 は、不十分なはんだ接合やその他の不適合の手直しを、不具合を文書に記録するまで実施してはならないとしている。記録は原因を知る指標と、是正処置の必要性の判断に使う。手直しした接合部は、規格の要求事項に対して改めて検査する[1]。
一方「修理」(不適合品を元の要求機能に従って使える状態にすること)の方法は、実装業者と購入者の間の取決めによるとされる[1]。部品の交換やジャンパー線の追加のように、元の設計と違う状態で出荷される修理を認めるかどうかは、買う側が決めることになる。発注書には次を書く。
- 手直しの記録(不具合の内容・件数・処置)を月次などで提出すること
- 修理は事前に承認を得ること。承認なしの修理品は出荷しないこと
- 手直し・修理後に洗浄が必要な場合は、清浄度の要求を満たす工程で洗浄すること[1]
不適合の一覧(規格の表 5)は、実装図との違い(未実装・部品相違・逆実装)、部品や基板の損傷、はんだ接合の不良、安全間隔の違反(はんだボールやブリッジ)、表示の損傷、清浄度の不適合、コンフォーマルコーティング(防湿の保護膜)の不適合、銅の溶解など 10 区分を挙げている[1]。受入検査の不合格の分類にこの区分を使うと、仕入先との集計がそろう。
清浄度と静電気対策
フラックス(はんだ付けを助ける薬剤)の残さを洗浄するかどうかは、発注データの h) に当たる。JIS C 61191-1 は、フラックスを残さの活性度で L・M・H の 3 タイプに分け、実装のはんだ付けにはタイプ L または M を使い、洗浄しない場合はタイプ L を使うことが望ましいとしている[1]。洗浄の有無で後工程(コーティングの密着など)が変わるので、指定せずに仕入先に任せない。部品の表面に残る異物の基準の決め方は部品の清浄度の記事で扱う。
静電気放電(ESD)については、受入・保管・製造・手直し・検査・出荷・輸送の各作業で、文書化した手順を守ることを求めている[1]。発注書には、静電気対策の手順を持っていること、出荷の包装が静電気対策品であることを書く。
二次仕入先への要求の流れ
実装業者は、基板や部品を自分で買って組み立てる。JIS C 61191-1 は、規格の要求事項は実装業者または供給業者によって全ての下請契約と購入注文に課さなければならないとし、購入者が承認したもの以外の変更を課したり許したりしてはならないとしている[1]。ただし、特に指定がなければ、市販の実装品(カタログ品)やサブ組立品の調達にはこの規格の要求を課さないとも書いている[1]。
つまり、市販の電源モジュールや無線モジュールを載せる場合、そのモジュールの中のはんだ付けには、何も書かなければ自社の指定したレベルは及ばない。モジュールにも同じ水準を求めるなら、発注書に明記するか、モジュールの選定の段階で確かめる。基板そのものの指定はプリント基板の発注の記事、コネクタのような機構部品の指定はコネクタの調達の記事で扱う。
よくある質問
「IPC-A-610 クラス 2」と書けば足りますか
出来栄えの基準としては通じるが、それだけでは足りない。IPC-A-610 は外観の良否の基準で、ボイドの限度、吸湿部品の扱い、清浄度、手直しの記録、記録の保存期間などは別に決める必要がある。JIS C 61191-1 の発注データ 9 項目[1]に沿って、それぞれを発注書に書く。版(改訂記号)も書く。
試作では全数検査、量産では抜取検査にしたいと言われました
JIS C 61191-1 の考え方では、抜取検査は文書化した工程管理の一部か、購入者が承認した製品保証プログラムの一部でなければ使えない[1]。仕入先に工程管理の計画(管理する項目、管理図、抜取りから全数に戻す基準)を出してもらい、それを承認してから切り替える。量産の承認の進め方は量産承認の記事で扱った。
受入で X 線検査まではできません。どうすればよいですか
BGA の接合部を受入で確かめられないなら、仕入先の工程で何を見ているかを確かめる。ボイドの評価方法と限度、X 線検査の頻度、結果の記録をロットごとに出してもらう[2][3]。外観で見えない項目こそ、発注の時点で条件として書いておく必要がある。条件を書かずに発注し、納品後に厳しい基準を当てて不合格にすれば、取適法でいう受領拒否ややり直しに当たるおそれがある。その扱いは受領拒否・返品・やり直しの記事にまとめてある。
まとめ
基板実装の品質の等級は、用途から買う側が決める。JIS C 61191-1 はレベル A・B・C を定め、その決定を購入者の責任とし、IPC-A-610 のクラス 1・2・3 に対応させている[1]。発注書には規格の発効年、製品のレベル、清浄度、静電気対策の包装などを、規格が挙げる発注データに沿って書く[1]。等級で決まらない項目は個別に取り決める。BGA のボイドの割合は当事者間で合意し[2]、評価方法は JIS C 61191-6 を使える[3]。吸湿しやすい部品は業界規格の分類と取扱いを指定する[4][5]。手直しは記録を残してから、修理は承認を得てから行わせる[1]。
出典・参考資料
- JIS C 61191-1:2021 プリント配線板実装-第1部:通則-表面実装及び関連する実装技術を用いた電気機器・電子機器用はんだ付け実装要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- JIS C 61191-2:2020 プリント配線板実装-第2部:部門規格-表面実装はんだ付け要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- JIS C 61191-6:2011 プリント配線板実装-第6部:BGA及びLGAのはんだ接合部のボイド評価基準及び測定方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- J-STD-020F Moisture/Reflow Sensitivity Classification for Non-hermetic Surface Mount Devices (SMDs)(IPC/JEDEC/2022 年 12 月)
- J-STD-033D Handling, Packing, Shipping and Use of Moisture/Reflow Sensitive Surface-Mount Devices(IPC/JEDEC/2018 年 4 月)
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