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投稿日:2026年10月16日

POM(ポリアセタール・ジュラコン)の選び方——ホモポリマーとコポリマー、摺動部品の発注での指定

この記事のポイント(結論先出し)

POM(ポリアセタール)にはホモポリマーとコポリマーの 2 種類があり、JIS K 7364-1 の呼び方では POM-H と POM-K で書き分ける[1]。一般にホモポリマーは融点と短期の強度で、コポリマーは熱安定性・耐酸性・疲労やクリープなどの長期強度で優れるとされる[3]。「ジュラコン」などの商品名や「POM」の 3 文字だけでは、どちらかが決まらない。実際に、ホモポリマーの歯車が知らないうちにコポリマーに変わり、短期間で歯が摩耗した解析事例があり、赤外分光では見分けにくく熱分析で区別できたと報告されている[5]。だから図面・購買仕様書には H か K か、メーカーとグレード、変える前に承認を取ることを書き、受入で疑いが出たら熱分析で確かめる。同じ呼び方でも同じ性能とは限らないと規格自身が書いているので[1]、摺動や荷重の条件が厳しい部品はグレードで固定する。

POM の材料名は 1 つでも、中身は 2 種類ある

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歯車・軸受・カム・クリップのような機構部品の図面では、材質欄に「POM」「ポリアセタール」「ジュラコン」と書かれていることが多い。ジュラコンは材料メーカーの商品名に由来する呼び名で、JIS の材料名ではない。JIS では、ポリオキシメチレン(POM)として成形用及び押出用材料の呼び方が決まっている。

JIS K 7364-1 は、ポリオキシメチレンをホルムアルデヒドを主成分とする長鎖のホモポリマー及びコポリマーからなる熱可塑性材料とし、この規格がすべてのホモポリマーとコポリマーに適用できるとしている[1]。呼び方の最初の区切り(データブロック 1)では、記号 POM の後ろに、アセタールホモポリマーなら「H」、コポリマーなら「K」を付けて区別する[1]。図面に「POM」とだけ書くと、この区別が抜け落ちる。

規格はさらに、用途・加工方法(射出成形用の M、押出成形用の E など)、重要な特性や添加剤(離型剤処方の R、耐摩擦摩耗処方の S2、自然色の N など)、メルトフローレイトと引張弾性率の範囲、充てん材・強化材の種類と含有率を、続くデータブロックで表す仕組みにしている[1]。耐摩擦摩耗処方を示す S2 は、回転する鋼製シャフトに対するプラスチック軸受の摺動部のように、POM を摺動させる用途で摩耗を減らし摩擦係数を下げた材料であることを示す、と説明されている[1]。

ただし、この呼び方で材料が一つに決まるわけではない。規格は、呼び方が同じ材料でも必ずしも同一の性能を示すとは限らず、特定の用途や加工方法に必要な材料を特定するものではないと書いている[1]。樹脂を種類で書くかグレードで書くかの一般的な考え方は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認で扱った。この記事は POM に固有の、ホモポリマーとコポリマーの選び分けと、摺動部品の発注で書くことに絞る。

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ホモポリマーとコポリマーは、何が違うか

日本機械学会の講演論文(2019 年)は、ホルムアルデヒドだけが重合したホモポリマーと、オキシエチレン単位を含むコポリマーの 2 種類があるとし、一般にホモポリマーは単純な分子構造のため結晶化度が高く、融点がコポリマーより約 10℃高く、短期強度で優れる一方、コポリマーは分解しにくいオキシエチレン単位を持つので熱安定性・耐酸性・長期強度(疲労・クリープ)に優れる、と整理している[3]。

高分子論文集の論文(2004 年)も、コポリマーはホモポリマーに比べて結晶化度が低く短期の機械強度は低いが、成形性・熱安定性・長期の機械物性に優れることが知られているとし、機構部品では信頼性につながる長期の機械物性、なかでもクリープ特性が特に重要だと書いている[4]。成形加工誌の講座(2002 年)は、ホモポリマーは強度と弾性率を、コポリマーは成形性と使用時の熱安定性を謳い文句として発展してきたと説明している[2]。

項目 ホモポリマー(POM-H) コポリマー(POM-K)
JIS K 7364-1 の記号 POM の後に H[1] POM の後に K[1]
分子の作り ホルムアルデヒドだけが重合[3] オキシエチレン単位を含む[3]
融点 コポリマーより約 10℃高い[3] ホモポリマーより低い
優れるとされる特性 短期強度・弾性率[2][3] 熱安定性・耐酸性・疲労やクリープなどの長期強度、成形性[3][4]
米国の食品接触の規則(21 CFR) §177.2480 Polyoxymethylene homopolymer[7] §177.2470 Polyoxymethylene copolymer[6]

表の「優れるとされる特性」は、文献が一般的な傾向として書いていることで、個々のグレードの値ではない。コポリマーでもコモノマーの量を減らして剛性を上げた材料があり、ホモポリマーとコポリマーの中間に位置する材料もあると説明されている[2]。最後は、使うグレードのデータで判断する。

米国の食品接触の規則でも、別の材料として扱われている

米国連邦規則集(21 CFR)は、食品に触れる用途の POM を二つの条に分けている。§177.2470 はコポリマーで、トリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)とエチレンオキサイドの反応生成物、又はトリオキサンと最大 5 質量%のブタンジオールホルマールの反応生成物と定めている[6]。§177.2480 はホモポリマーで、重合したホルムアルデヒドと定め、使える安定剤の種類と量を別に挙げている[7]。食品機械の部品を米国向けに出すなら、どちらの条に適合した材料かを仕入先に確かめる必要があり、ここでも H と K の区別が要る。日本のポジティブリスト制度での確かめ方は食品に触れる部品の調達で扱っている。

摺動部品で POM が選ばれる理由と、弱点

先の講演論文は、樹脂歯車の大部分に POM が使われる理由として三つを挙げている[3]。金属を相手にした耐摩耗性はガラス転移温度が低い結晶性樹脂が優位であること、繰り返しの疲労特性は一般に結晶性樹脂が優位であること、そして POM はガラス繊維などで強化しなくても幅広い温度で十分な強度と剛性を持つことである。POM のガラス転移点は −85〜−75℃で、通常使う温度範囲にないため、温度が上がっても曲げ弾性率の低下が緩やかだという。比べて PBT と PA66 のガラス転移点は 40℃と 50℃付近にあり、それより高い温度で曲げ弾性率が大きく下がり、PA66 は吸水が多いので実用上の弾性率はさらに下がるとしている[3]。

同じ論文は、高温で POM と同じ剛性を他の結晶性樹脂で出そうとするとガラス繊維で強化する必要があり、材料費の増加、金型寿命の低下、異方性による歯車精度の低下、耐摩耗性の低下などの副作用が出るとしている[3]。発注側にとっての意味は、「強化材入りのほうが強いから」と考えて、POM の歯車を強化材入りの別樹脂に安易に置き換えないことである。

弱点はクリープである。成形加工誌の講座は、主鎖が脂肪族の樹脂はクリープ特性に弱点を抱えており、POM も自動車部品などで長時間荷重下の変形と破壊が実用上の問題になってきたと書いている[2]。クリープ破壊は、樹脂が本来持つ強度よりかなり小さな荷重が長時間かかることで起き、部品設計で発生応力を見込み違うと重大なトラブルになる危険がある。さらに、製品設計でクリープ破壊寿命が問題になるのは 1 万時間以上の長時間側であることが多い、としている[2]。ばねのように荷重を受け続けるスナップフィットや、締め付けたまま使うボス部は、短期の強度表だけで材料を決めないほうがよい。

どちらが長く持つかは、荷重の大きさでも変わる。成形加工誌の講座は、コポリマーのコモノマー量を減らしてホモポリマーやその中間に寄せ、剛性を上げた材料について、荷重に対する寿命線の傾きは急になるが、荷重の高い領域(短時間側)では比較したコポリマーより寿命が長くなると説明している[2]。高分子論文集の論文も、80℃での引張クリープ破壊をホモポリマーとコポリマーで比べ、破壊寿命の荷重依存性に違いがあることを報告している[4]。「コポリマーは長期強度に優れる」という一般論だけで判断せず、部品にかかる応力の範囲のデータを材料メーカーから取り寄せて比べる、という順序になる。

ホモポリマーからコポリマーへの無断変更で、歯車が摩耗した事例

熱測定誌の報告(2018 年)は、分析機器に使われていたモーターの樹脂歯車が、短期間の使用で滑りを起こして動かなくなった不具合を解析している[5]。不具合品は摩耗で歯の頂部がなくなっていた。樹脂の種類を見分ける一般的な方法である赤外分光(FTIR)で測ると、正常品も不具合品も POM と推定できたが、スペクトルに明確な差は見られなかった。

そこで熱重量・示差熱分析(TG/DTA)で測ると、融解の吸熱ピークは正常品が 172.3℃、不具合品が 166.9℃で、融解熱量も正常品のほうが大きく、結晶化度が高いと推定された。分解の始まる温度は不具合品のほうが高く、熱安定性が高かった。報告は、この不具合は歯車の素材が POM のホモポリマーから機械的強度に劣るコポリマーに変更されていたために起きたと結論づけ、赤外分光ではホモポリマーとコポリマーの識別は容易ではなく、熱分析で融解や分解の挙動の差として把握できたとしている[5]。

この事例から引き出せることは三つある。一つ目は、「POM」とだけ書いた図面では、ホモポリマーからコポリマーへの変更は図面違反にならないこと。二つ目は、変更を受入で見つけるには、材料の種類を確かめる一般的な分析だけでは足りないことがあること。三つ目は、変わったことに気づくのは、部品が壊れてからになりやすいことである。発注の時点で H か K かを書き、変える前に承認を取る条文を入れておけば、少なくとも一つ目は防げる。

成形と受入で見ておくこと

成形加工誌の講座は、POM は過酷な条件で酸化分解・熱分解・酸分解などの主鎖分解を起こしてホルムアルデヒドが発生することがあり、金型のガスベントの閉塞、金型の腐食、樹脂の耐久性の低下、製品の色の悪化を招くと書いている[2]。これを抑えるために酸化防止剤・安定剤・加工助剤が加えられ、加工助剤はそれ自身が金型表面への付着物(モールドデポジット)やしみ出しの原因になることもあるとしている。添加剤の処方はグレードの中身そのもので、同じ「POM の自然色」でもグレードが変われば成形の出来も変わりうる。

同じ講座は、POM の射出成形で推奨される金型温度は 80℃だが、ハイサイクル化や後変形の抑制などの目的で 30〜100℃以上の温度が使い分けられていると説明している[2]。金型温度が変われば結晶化の進み方が変わり、成形後の寸法の動きも変わる。成形品の寸法をどの状態で測って合否を決めるかは、樹脂成形品の寸法公差の決め方で扱った手順に沿って、測る前の雰囲気と時間まで書面にしておく。

発注書・図面に書くこと

以下は規格の要求ではなく、発注側の実務としての提案である。

  1. 樹脂の種類を「POM-H(ホモポリマー)」か「POM-K(コポリマー)」まで書く。商品名だけで書かない
  2. 機能に効く部品は、材料メーカーとグレード(銘柄)で固定する。JIS K 7364-1 の呼び方で書くなら、用途・添加剤・弾性率の区分まで書く
  3. 摺動部品なら、耐摩擦摩耗処方のグレードかどうか、相手の材料(鋼・樹脂など)を書く
  4. 強化材・充てん材を入れるか入れないか、入れるなら種類と含有率を書く
  5. 色(自然色か着色か、着色の方法)と、再生材を混ぜてよいかを書く
  6. 材料・グレード・添加剤・成形条件・製造場所を変える前に、承認を取ることを書く
  7. 材料の証明として、ロットごとのグレード名が分かる書類を出させる。必要なら熱分析など識別に使える試験を決めておく

よくある質問

図面に「ジュラコン」と書いてあれば、材料は決まっていますか

決まっていない。商品名はメーカーの製品群の名前で、その中に複数のグレードがある。ホモポリマーかコポリマーかは商品名から推定できることもあるが、図面で言い切るなら POM-H か POM-K かを書き、グレードまで書く。

ホモポリマーとコポリマーは、どちらを選べばよいですか

短期の強度や剛性を優先するならホモポリマー、熱や酸にさらされる環境や、長い時間荷重を受け続ける部品ならコポリマーを軸に検討する、というのが文献の一般的な整理である[3][4]。ただし荷重の高い領域では剛性を上げた材料のほうが寿命が長くなるとも説明されているので[2]、部品にかかる応力の範囲で、使うグレードのクリープや疲労のデータを比べて決める。

受入で、ホモポリマーかコポリマーかを確かめる方法はありますか

先の事例では、赤外分光では差が見えず、熱分析(DTA)で融解や分解の挙動の差として区別できた[5]。毎ロット測る必要はないが、不具合が出たときや、仕入先の変更を疑うときに使える方法として知っておくとよい。比較のため、承認した時点の現品を保管しておく。

まとめ

POM にはホモポリマーとコポリマーがあり、JIS K 7364-1 の呼び方では POM-H と POM-K で書き分ける。一般にホモポリマーは融点と短期強度で、コポリマーは熱安定性・耐酸性・長期強度で優れるとされるが、荷重の大きさでどちらが長く持つかは変わるので、部品の応力範囲のデータで選ぶ。POM は強化しなくても剛性が保たれ、摺動と疲労に強い一方、クリープには弱点がある。「POM」や商品名だけの図面では、ホモポリマーからコポリマーへの変更を止められず、受入でも一般的な分析では見分けにくい。図面と購買仕様書には H か K か、メーカーとグレード、変える前に承認を取ることを書き、疑いが出たら熱分析で確かめる。

同じ束では、吸水で寸法が動く樹脂をMC ナイロンと PA66 の選び方で、摺動材としても使われるふっ素樹脂をPTFE 部品の発注で、熱硬化性樹脂の積層板と成形材料をフェノール樹脂の工業部品の発注で扱う。

出典・参考資料

  1. JIS K 7364-1:2004 プラスチック-ポリオキシメチレン(POM)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2004 年 3 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. 中道朗「講座『成形材料』(11) ポリアセタール(POM)」成形加工 14 巻 2 号(プラスチック成形加工学会/2002 年)
  3. 加田雅博「ポリアセタールが樹脂歯車市場を独占している技術的背景」日本機械学会 2019 年度年次大会 講演論文集(日本機械学会/2019 年 9 月)
  4. 田島義久・大沼宏「ポリアセタールのクリープ破壊特性」高分子論文集 61 巻 11 号(高分子学会/2004 年 11 月)
  5. 太田充「TG/DTA と FTIR による樹脂部品の測定(サイレントチェンジへの対策)」熱測定 45 巻 3 号(日本熱測定学会/2018 年)
  6. 21 CFR 177.2470 Polyoxymethylene copolymer(米国食品医薬品局(FDA)/Code of Federal Regulations 2025 年 4 月 1 日版)
  7. 21 CFR 177.2480 Polyoxymethylene homopolymer(米国食品医薬品局(FDA)/Code of Federal Regulations 2025 年 4 月 1 日版)

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