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PTFE(テフロン)部品の発注——充填材入りグレード・クリープ・切削寸法、食品と半導体での指定

この記事のポイント(結論先出し)
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、通称テフロン)は溶融粘度がきわめて高く、一般の熱可塑性樹脂の手順では加工できない[1]。板や丸棒は粉末を圧縮して焼き固めて作り、比重などの性質は分子量・焼成の温度と時間・成形圧力・冷却のしかたで変わる[2]。弱点はクリープ(荷重をかけ続けると変形が進む)と応力緩和、金属より大きい熱膨張で、室温付近に体積が変わる転移点もある[2]。これを補うのが充填材入りグレードだが、ガラス繊維入りは軟らかい相手金属を削ることがあり[3]、炭素繊維を増やすと剛性は上がるのに摩耗量が増えた試験もある[4]。だから充填材の種類と含有率、相手材、測る温度を発注で決める。食品や半導体の用途では、樹脂の区分が規制に載っていても、そのグレードの充填材・添加剤まで適合とは限らないので、用途ごとの適合を仕入先に確かめる。
目次
PTFE は「溶かして射出」できない樹脂
シール・パッキン・軸受・絶縁ブッシュ・ライニングのような部品で、材質欄に「PTFE」「テフロン」と書かれることが多い。テフロンは商品名に由来する通称で、規格の材料名は PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。
ふっ素ポリマーの分類と仕様の体系を決めた JIS K 6935-1(1996 年制定・ISO 12086-1 と一致)は、この規格のふっ素ポリマーはすべて正式には熱可塑性プラスチックに分類されるが、大多数の材料、特に PTFE の溶融粘度は極めて高く、一般の熱可塑性プラスチックの手順では処理できず特殊な加工技術が必要だ、と説明している[1]。同じ規格は、PTFE として分類されるためには変性コモノマーは 1 質量%が上限だとしている[1]。「変性 PTFE」と呼ばれるグレードも、この範囲であれば規格のうえでは PTFE の仲間に入る。
日本機械学会誌の解説(1960 年)は、PTFE の長所として広い温度範囲で使えること、電気的特性、ほとんどの薬品に不活性であること、吸水・吸湿がないこと、摩擦係数が小さいこと、非粘着性、不燃性などを挙げる一方で、欠点として、一般の合成樹脂に比べて加工性に乏しいこと、弾性に乏しいこと、応力緩和やクリープを起こしやすいこと、金属に比べて熱膨張が大きいこと、熱伝導率が悪いことを挙げている[2]。同じ解説は、PTFE の比重が分子量、焼成の温度と時間、圧縮成形の圧力、焼成後の冷却の方法などで左右され、成形条件によって結晶化度などが変わって物理特性が著しく変化すると書いている[2]。
発注側にとっての意味は、「PTFE の丸棒」と書いても、作り方の違う素材が届きうることである。樹脂の材料を種類で書くかグレードで書くかの一般論は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認で扱った。この記事は PTFE に固有の、充填材・クリープ・切削品の寸法・食品や半導体での指定に絞る。
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クリープと応力緩和は、シールの漏れに直結する
PTFE を締め付けて使う部品では、クリープと応力緩和がそのまま機能の低下になる。管フランジの締結体を解析した研究(2011 年)は、PTFE ガスケットの粘性の性質が内部流体の漏れにつながるため、それを改善する目的で充填材入り PTFE ガスケットが開発されてきたとし、圧縮試験で得た性質を使った有限要素解析で、実際の管フランジ締結体では充填材入りのほうが純 PTFE より優れた性能を示したと結論している[5]。
先の 1960 年の解説も、応力緩和を起こす材料を一定の締付けで使うと、時間とともに締付け力が下がる不都合が起き、充填材入りのものは一定時間で平衡に近づくことを図で示している[2]。ガスケットやパッキンの材質を「PTFE」とだけ書いて発注すると、純 PTFE か充填材入りかが仕入先の判断に移る。シール材の材質記号や外観の等級の決め方そのものはO リングとガスケットを発注するときで扱っている。
充填材入りグレードは、何を入れたかで別の材料になる
架橋 PTFE を紹介したゴム協会誌の解説(2003 年)は、PTFE は耐熱性・耐薬品性・非粘着性・自己潤滑性・絶縁性に極めて優れる一方、用途によっては耐摩耗性や耐クリープ性が十分でなく、フィラー(充填材)などの添加で改善を図って使われてきたと書いている[3]。JIS K 6935-1 も、充てん材・強化材の種類と形態を表すコードを決めていて、ガラス(G)、炭素(C)、黒鉛(C-G)、青銅(M2)、二硫化モリブデン(M4)などが並び、含有量は数字の質量含有率で表す[1]。
ただし、充填材を入れれば何でも良くなるわけではない。同じ 2003 年の解説は、リングオンディスク法の摩耗試験で、ガラス繊維充填 PTFE が試験開始後わずか 0.5 時間で、相手材のアルミニウムの表面を摺動リングの幅で削ってしまったと報告している[3]。炭素繊維を充填した PTFE 複合材を調べた研究(2017 年)では、炭素繊維の量を増やすと縦弾性係数は上がったが、摩耗量も増え、剛性は上がるが摩耗特性は悪くなるという結果だった[4]。1960 年の解説は、充填材を混ぜると線膨張に方向性(異方性)が現れることも示している[2]。
| 材料 | JIS K 6935-1 の充てん材コード | 文献で確かめたこと | 発注で確かめること |
|---|---|---|---|
| 純 PTFE | (充てん材なし) | 応力緩和・クリープを起こしやすく、熱膨張が大きい[2] | 締め付けて使うなら、締付け力の低下を見込んだ設計か |
| ガラス繊維入り | G(ガラス)+形態 F(繊維)[1] | 試験で相手材のアルミニウムを 0.5 時間で削った[3] | 相手材の材質と硬さ。軟らかい金属なら別の材料も比べる |
| 炭素繊維入り | C(炭素)+形態 F(繊維)[1] | 量を増やすと縦弾性係数は上がり、摩耗量も増えた[4] | 含有率。剛性と摩耗のどちらを優先するか |
| 青銅・黒鉛・二硫化モリブデンなど | M2・C-G・M4 など[1] | (この記事で読んだ一次資料では性質を確かめていない) | 使うグレードのデータを、相手材と条件をそろえて出させる |
表の「文献で確かめたこと」は、それぞれの試験条件での結果で、一般の値ではない。読み取るべきなのは、充填材の種類と量で、摩耗・相手材への攻撃性・剛性の釣り合いが変わることである。発注書に「充填材入り PTFE」とだけ書かず、充填材の種類と含有率、又はメーカーとグレードを書き、相手材の材質・硬さ・表面粗さと、乾燥か潤滑ありかを仕入先に伝えて選ばせる。
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切削品の寸法は、測る温度まで決める
PTFE の部品の多くは、圧縮成形した板や丸棒から削って作る。寸法の合否で揉めやすいのは、熱による伸び縮みである。1960 年の解説は、PTFE の熱膨張は機械材料として使う合成樹脂の欠点の一つで、金属と比べて大きいとし、さらに室温付近に転移点があって体積が変わり、この転移点が機械的性質の境界の役割も果たすと説明している[2]。工場の夏と冬、空調のある部屋とない部屋で、同じ部品の寸法が違って測れることがありうる。
試験の雰囲気を決めた JIS K 7100 によれば、何も決めていなければ 23℃・相対湿度 50%で試験し、湿度が特性に効かないなら湿度は調節せず、その環境を「温度 23」と呼ぶ[6]。PTFE はほとんど吸水しないとされるので[2]、寸法の判定では湿度より温度が効く。購買仕様書には、寸法を何℃で測った値で判定するか、測る前にその温度に何時間置くかを書く(規格の要求ではなく、発注側の実務の提案である)。
応力緩和とクリープは、切削品の寸法にも出る。加工時に強くつかむと、外したあとに形が戻りきらないことがあり、締め付けて組み込むと時間とともに寸法が変わる。精度が要る部品は、加工後の寸法だけでなく、組み込んで使う状態での寸法の考え方を図面に反映させる。
食品・半導体の用途で指定すること
食品に触れる部品
日本では、食品用器具・容器包装に合成樹脂を使う場合、ポジティブリストに規格が定められた物質だけが使える。消費者庁の制度のページは、2025 年 6 月 1 日時点の対象の材質を合成樹脂とし、ポジティブリストは食品、添加物等の規格基準の別表第 1 で、第 1 表が基材、第 2 表が添加剤であり、広い意味ではモノマーリストも含むと説明している[7]。別表第 1 の第 1 表(基材)には「フッ素置換エチレン類を主なモノマーとする重合体」という区分がある[9]。
米国では、連邦規則集 21 CFR §177.1550 が食品接触用のペルフルオロカーボン樹脂を定め、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの単独重合・共重合などで作られた樹脂を対象とし、樹脂は同条の抽出物の制限に適合しなければならず、加えてよい任意成分も条件付きで決めている[8]。
どちらの制度でも、基材の区分に載っていることは、そのグレードの充填材や添加剤まで適合していることを意味しない。日本では添加剤は第 2 表、米国では任意成分の規定で別に見ることになる[7][8]。充填材入りグレードを食品機械に使うなら、そのグレードが用途に適合していることを示す情報を、仕入先と材料メーカーから出してもらう。確かめ方の手順は食品に触れる部品の調達で扱っている。
半導体などの高純度の用途
JIS K 6935-1 は、用途や性質を表すコードの中に「N1 食品接触に適す」「N2 高純度」を設けている[1]。さらに、汚染物に関する仕様は売手と購買者の間で協定を結ぶのもよい、としている[1]。規格は「高純度」の中身(何をどこまで含まないか)を決めておらず、協定してもよいとしているだけである。発注側としては、規格の呼び方で「高純度」と書くだけで済ませず、中身を書面で決めておく。半導体の装置部品や薬液に触れる部品では、許す不純物の種類と量、その測り方、洗浄と包装の条件を、購買仕様書に書く。
発注書・図面に書くこと
- 純 PTFE か、充填材入りか。充填材入りなら種類と含有率、又は材料メーカーとグレード
- 摺動部品なら、相手材の材質・硬さ・表面粗さと、乾燥か潤滑ありか
- 締め付けて使う部品なら、締付けの条件と、締付け力の低下を見込んでいるか
- 素材の作り方(圧縮成形の板・丸棒など)と、素材を変える前に承認を取ること
- 寸法を判定する温度と、測る前にその温度に置く時間
- 食品・医療・半導体など用途に条件があるなら、その適合を示す書類
- 高純度の用途なら、許す不純物とその測り方、洗浄と包装の条件
よくある質問
「テフロン」と書いてあれば、純 PTFE のことですか
そうとは限らない。テフロンは商品名に由来する通称で、ふっ素樹脂全般の意味で使われることもある。ふっ素ポリマーには PTFE のほかに PFA・FEP・ETFE などがあり、JIS K 6935-1 の対象にもそれらが含まれる[1]。図面には PTFE か別のふっ素樹脂かを書き、PTFE なら純か充填材入りかまで書く。
ガラス繊維入りが摩耗に強いなら、どの摺動部品にも使えますか
相手材による。先の試験では、ガラス繊維充填 PTFE が相手材のアルミニウムを短時間で削った[3]。軟らかい金属が相手なら、相手を傷めにくい材料も比べてから選ぶ。
受入で寸法が外れていたら、どう扱いますか
まず測った温度を確かめる。判定する温度を発注時に決めていたなら、その温度にそろえて測り直す。決めていなかったなら、仕入先と測定の条件を突き合わせ、次の発注から購買仕様書に書く。
まとめ
PTFE は溶融粘度がきわめて高く特殊な加工が要る樹脂で、成形条件で比重などの性質が変わる。弱点はクリープ・応力緩和と大きな熱膨張で、室温付近に体積が変わる転移点もある。充填材入りグレードはこれを補うが、充填材の種類と量で摩耗・相手材への攻撃性・剛性の釣り合いが変わり、ガラス繊維入りが軟らかい相手金属を削った試験もある。発注では、純か充填材入りか、充填材の種類と含有率、相手材の条件、寸法を判定する温度を書く。食品や半導体の用途では、基材の区分が規制に載っていても充填材や添加剤まで適合とは限らないので、グレードごとの適合と、高純度の中身を書面で決める。
同じ束では、同じく摺動部品に使われるPOM(ポリアセタール)の選び方、吸水で寸法が動くMC ナイロンと PA66 の選び方、耐熱・絶縁の部品に使われるフェノール樹脂の工業部品の発注を扱う。
出典・参考資料
- JIS K 6935-1:1996 プラスチック-ふっ素ポリマーのディスパージョン,成形用材料及び押出用材料-第1部:分類の体系と仕様作成のための基準(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1996 年 10 月 20 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- 保田敏郎「テフロン(高分子工業材料特集)」日本機械学会誌 63 巻 497 号(日本機械学会/1960 年 6 月)
- 山本康彰・瀬戸川晃・西甫「架橋 PTFE およびその応用製品」日本ゴム協会誌 76 巻 5 号(日本ゴム協会/2003 年)
- 多田直哉ほか「炭素繊維を充填した PTFE 複合材の引張りおよび摩耗特性」日本機械学会 M&M2017 材料力学カンファレンス 講演論文集(日本機械学会/2017 年 10 月)
- 尾崎拓也・高木知弘・佐藤広嗣「充填材入り PTFE ガスケットを用いた管フランジ締結体の性能評価」材料 60 巻 6 号(日本材料学会/2011 年 6 月)
- JIS K 7100:1999 プラスチック-状態調節及び試験のための標準雰囲気(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1999 年 7 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)(消費者庁)
- 21 CFR 177.1550 Perfluorocarbon resins(米国食品医薬品局(FDA)/Code of Federal Regulations 2025 年 4 月 1 日版)
- 食品、添加物等の規格基準 別表第1 第1表(基材)(消費者庁 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度のページに掲載)
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