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「コークスとは?製造方法から用途まで徹底解説」

目次
コークス(coke)とは:石炭を高温(約1,000〜1,300℃)で乾留(酸素遮断下で加熱)して揮発分を除去し、得られる多孔質の固体炭素材料です。固定炭素率85〜92%、高い機械的強度と熱安定性を有し、鉄鋼業の高炉還元材・熱源として不可欠な工業原料です(JIS M 8801「石炭類及びコークス類—サンプリング」準拠)。
コークスとは?その基本概念と種類

コークスとは、主に石炭を酸素の供給を遮断して高温で蒸し焼きにすることで得られる固体炭素素材の一つです。
高い耐久性と優れた燃焼特性を持つため、鉄鋼業をはじめとするさまざまな産業分野で利用されています。
主に、鉄鋼製造のために用いられる「冶金コークス」と、日常生活で使われる「加炭コークス」が存在します。
以下に、それぞれの特徴と用途について詳しく見てみましょう。
冶金コークス
冶金コークスは、特に鉄鋼製造に用いられるコークスです。
高炭素含有率と低灰分が求められ、鉄鉱石の還元剤や熔融剤として高炉で使用されます。
そのため、高温での安定性や反応性が重要な特性となります。
加炭コークス
加炭コークスは、主に家庭用や商業用の燃料として利用されます。
炊事や暖房用の燃料、さらには肥料としても使用されることがあります。
低硫黄含有率が求められ、燃焼時の排出物が少ない特性を持っています。
コークスの種類比較(JIS規格・業界標準値)
| 項目 | 冶金コークス | 鋳物コークス | ガスコークス | 石油コークス |
|---|---|---|---|---|
| 原料 | 強粘結炭ブレンド | 強粘結炭(高品位) | 一般炭・弱粘結炭 | 石油残渣(ボトム油) |
| 製造温度 | 1,000〜1,300℃ | 1,000〜1,200℃ | 900〜1,050℃ | 500〜1,400℃(ディレードコーキング) |
| 固定炭素(%) | 85〜92 | 88〜93 | 80〜88 | 90〜98 |
| 灰分(%) | 8〜13 | 6〜10 | 10〜16 | 0.1〜1.0 |
| 主用途 | 高炉製鉄(還元材・熱源・通気材) | キュポラ(鋳鉄溶解) | 都市ガス原料・家庭燃料 | 電極・アノード・カーバイド |
| 価格帯(参考) | 40,000〜70,000円/t | 50,000〜80,000円/t | 30,000〜50,000円/t | 20,000〜60,000円/t |
※価格は市況・品位により変動。2024〜2025年の国内取引実勢を参考値として記載。
調達・購買の視点:鉄鋼業の原料調達
コークス調達は原料炭価格(豪州産強粘結炭のスポット価格)に大きく左右されます。日本の鉄鋼メーカーは年間約3,000万トンのコークスを消費し、原料炭の約9割を輸入に依存しています。調達担当者は①長期契約とスポット購買のバランス、②原料炭ブレンド比率の最適化によるコスト削減、③サプライヤー分散(豪州・カナダ・モザンビーク等)によるリスクヘッジが重要課題です。JIS M 8716(コークスのドラム強度試験)やCSR(コークス熱間反応後強度)指標を受入検査基準に組み込み、品質とコストの両立を図ります。
コークスの製造方法
コークスの製造方法には、主に「乾式蒸し焼き法」や「湿式蒸し焼き法」があります。
これらの方法により、所望の品質と性質を持つコークスが得られます。
乾式蒸し焼き法
乾式蒸し焼き法は、コークスの製造において一般的な方法です。
石炭を約1000℃以上の高温で蒸し焼きにしますが、酸素を遮断することで燃焼を防ぎます。
この方法では、揮発成分が除去され、固体炭素のみが残ります。
具体的な工程としては、以下のステップがあります。
1. 石炭の選定と粉砕
2. 石炭のブレンドと成型
3. 炉への供給
4. 焼成プロセス
5. 冷却と仕上げ
コークス製造工程フロー(室式コークス炉・乾式法)
| 工程 | 名称 | 内容 | 主要パラメータ |
|---|---|---|---|
| 1 | 原料炭受入・配合 | 強粘結炭・弱粘結炭・非微粘結炭を目標品質に合わせて配合(ブレンド比率設計) | 配合比率、揮発分25〜32% |
| 2 | 粉砕・調湿 | 配合炭を3mm以下に粉砕、水分6〜8%に調整(CMC: Coal Moisture Control) | 粒度 ≤3mm 80%以上 |
| 3 | 装入 | 装炭車で炉団(室式コークス炉)の各炉室に石炭を装入。充填密度が品質に直結 | 装入密度 0.72〜0.80 t/m³ |
| 4 | 乾留(コーキング) | 酸素遮断下で1,000〜1,300℃に加熱。揮発分がコークス炉ガス(COG)として回収され、固体炭素が残留 | 炉温1,100〜1,300℃、15〜20時間 |
| 5 | 押出し・消火 | 赤熱コークスを押出機で炉外へ排出。CDQ(乾式消火設備)または散水で冷却 | CDQ回収蒸気: 約0.5t/tコークス |
| 6 | 篩分け・出荷 | 粒度別に篩分け。高炉用は25〜75mm、鋳物用は100mm以上。品質検査後出荷 | DI¹⁵⁰₁₅ ≥ 84.0 |
※DI: ドラム強度指数(JIS M 8712)。CDQ: Coke Dry Quenching。COG: Coke Oven Gas。
湿式蒸し焼き法
湿式蒸し焼き法は、水蒸気を利用して石炭を蒸し焼きにする方法です。
高温の蒸気を通すことで、石炭の揮発成分を除去し、固体炭素が生成されます。
この方法は、乾式蒸し焼き法よりもエネルギー効率が低いため、特定の用途に限られて使用されます。
コークスの用途
コークスはその特性から、多岐にわたる産業で利用されています。
代表的な用途について詳述します。
鉄鋼業での使用
鉄鋼業における主要な用途は、高炉における鉄鉱石の還元材としての使用です。
コークスは、高炉内で酸素を奪い、鉄鉱石から鉄を取り出す役割を果たします。
また、高い温度で長時間燃焼するため、熱源としても重要です。
化学工業での利用
化学工業では、コークスは様々な化合物の製造に利用されます。
特にカーボンブラックの製造や、化学合成の触媒などに使用されることが多いです。
電極材としての利用
高純度のコークスは、電気アーク炉の電極材料としても使用されます。
電気アーク炉では、コークスの電気抵抗を利用して高温を生成し、金属を溶融します。
これにより、高度な金属製品が作られます。
環境規制と脱炭素の影響
鉄鋼業のCO₂排出量は日本の産業部門全体の約40%を占め、コークスの燃焼・還元反応がその主因です。2050年カーボンニュートラル達成に向け、水素還元製鉄(COURSE50/Super COURSE50)やフェロコークス技術(鉄鉱石微粉とコークス微粉の複合成型)が実証段階に進んでいます。EU-CBAM(炭素国境調整メカニズム)の導入により、輸出鋼材の炭素コストが顕在化するため、コークス比(高炉1トンあたりのコークス使用量)の低減が経営課題となっています。現行の高炉コークス比は約300〜350kg/t-pig(銑鋡1トンあたり)ですが、水素還元との併用により200kg/t-pig以下を目指す開発が進行中です。
最新技術動向
コークス製造とその利用に関する最新の技術動向も見逃せません。
環境に配慮したコークス製造技術の開発や、再生可能エネルギーを使用したコークス製造など、持続可能な取り組みが進んでいます。
環境に配慮した製造技術
近年、コークス製造における環境負荷を低減するための技術が注目されています。
例えば、有機廃棄物を利用したバイオコークスや、製造プロセスの効率化を図る新技術が開発されています。
これにより、二酸化炭素排出量を削減し、持続可能な製造が実現されます。
再生可能エネルギーの利用
再生可能エネルギーを利用した製造法も探求されています。
太陽光発電や風力発電を活用してエネルギーコストを削減しながら、環境に優しいコークス製造を目指しています。
コークスの基礎知識まとめ
- 定義:石炭を1,000〜1,300℃で乾留して得られる固定炭素85〜92%の多孔質固体炭素材料
- 主要4種類:冶金コークス(高炉用)、鋳物コークス(キュポラ用)、ガスコークス(ガス原料)、石油コークス(電極・カーバイド)
- 製造工程:配合→粉砕・調湿→装入→乾留(15〜20h)→CDQ消火→篩分け
- 品質指標:ドラム強度DI15015(JIS M 8712)、CSR(熱間反応後強度)、灰分・硫黄分
- 市場規模:日本の粗鋼生産量約8,300万トン/年に対し、コークス消費量は約3,000万トン/年
- 脱炭素動向:水素還元製鉄(COURSE50)やフェロコークス技術により、コークス比低減が進行中
コークスの産業別用途と要求仕様
| 用途・設備 | 産業分野 | 使用コークス種 | 主要要求仕様 |
|---|---|---|---|
| 高炉(還元材・熱源・通気材) | 鉄鋼(銑鉄製造) | 冶金コークス | DI15015≥84、CSR≥60%、灰分≤12%、S≤0.65%、粒度25〜75mm |
| キュポラ(鋳鉄溶解) | 鋳造 | 鋳物コークス | 固定炭素≥90%、灰分≤8%、粒度100〜150mm、低硫黄≤0.5% |
| 電気アーク炉電極 | 製鋼・非鉄金属 | 石油コークス(ニードルコークス) | 固定炭素≥98%、灰分≤0.3%、CTE≤1.5×10⁻⁶/℃ |
| カーバイド製造(CaC₂) | 化学工業 | 石油コークス / 冶金コークス | 固定炭素≥88%、灰分≤10%、電気抵抗安定性 |
| 焼結炉(鉄鉱石焼結) | 鉄鋼(上工程) | 粉コークス(ブリーズ) | 粒度≤3mm、固定炭素≥83% |
| フェロアロイ製造 | 非鉄金属・特殊鋼 | 冶金コークス / 石油コークス | 低灰分、低P(リン)、電気比抵抗管理 |
| リチウムイオン電池負極材 | 電池・エネルギー | 石油コークス(か焼品) | 灰分≤0.1%、真密度≥2.1g/cm³、結晶性制御 |
※CTE: 熱膨張係数。DI: ドラム強度指数(JIS M 8712)。CSR: Coke Strength after Reaction(ISO 18894)。

コークスは、製造業において欠かせない重要な素材です。
その特性や用途は多岐にわたり、鉄鋼業をはじめ化学工業や電極材としても利用されています。
また、コークス製造には乾式蒸し焼き法や湿式蒸し焼き法があり、それぞれの方法により特性が異なります。
さらに、最新の技術動向として環境負荷の低減や再生可能エネルギーの利用が進められており、持続可能なコークス製造が期待されています。
これにより、製造業全体がより環境に優しく、効率的な運用が可能となるでしょう。
このように、コークスの製造方法から用途までを深く理解することで、製造現場での活用や技術の進化にも対応できるようになります。
特に、環境保護と持続可能性を重視する現代では、より新しい技術を取り入れたコークス製造が重要な課題となることは間違いありません。
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