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棚卸表の作り方|製造業で外せない項目とテンプレートの考え方

この記事のポイント(結論先出し)
棚卸表に決まった様式はない。ただし決算の根拠資料になるため、後から見て「いつ・誰が・何を・いくつ・いくらで」数えたか分かる形でなければ使えない。項目を増やしすぎると現場が埋められず、少なすぎると差異の原因を追えない。製造業では区分・単位・ロケーション・所有区分の 4 つを外さない。
目次
棚卸表とは何か
棚卸表は、実地棚卸で数えた結果を品目ごとに記録した一覧である(数える手順そのものは棚卸とは|製造業のやり方と手順で扱っている)。期末の棚卸資産の金額を決める根拠になり、決算書の数字の裏付けとして残す。
法令で「この様式で作れ」と決められているわけではない。ただし棚卸資産の評価は、選定して届け出た方法で行う必要があり[1][5]、その計算の元になるのが棚卸表である。数量と単価の両方が分かる形でなければ、評価まで進めない。
実務では「数えるための用紙(カウントシート)」と「集計した表(棚卸表)」を分けて考えると整理しやすい。前者は現場が書き込むもので、後者は経理が金額を出すものである。
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棚卸表に載せる項目
最低限これがあれば決算に使える、という項目を先に挙げる。
| 項目 | なぜ要るか | 必須 |
|---|---|---|
| 棚卸日 | いつ時点の在庫か | ◎ |
| 品番・品名 | 何を数えたか特定する | ◎ |
| 区分 | 原材料・仕掛品・製品などの別[1] | ◎ |
| 単位 | 本・箱・kg の取り違えが差異の主因 | ◎ |
| 実地数量 | 数えた結果 | ◎ |
| 単価 | 評価方法に基づく原価[1] | ◎ |
| 金額 | 数量 × 単価 | ◎ |
| ロケーション | 数え漏れ・二重カウントを防ぐ | ○ |
| 所有区分 | 自社品か預り品か[2] | ○ |
| 帳簿数量・差異 | 減耗損の計算に使う | ○ |
| 数えた人・確認者 | 後から追える | ○ |
| 備考(状態) | 不良・長期滞留の印 | △ |
◎は無いと決算に使えない項目、○は差異の原因を追うために必要な項目、△はあると助かる項目である。
製造業で外してはいけない 4 項目
区分
棚卸資産は、商品または製品、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料などに区分される[1]。この区分ごとに集計できないと、決算書の内訳が作れない。表の列に「区分」を持たせ、集計時に区分ごとの小計が出る形にする。
単位
同じ材料でも、購買は kg、現場は本、在庫は箱で数えていることがある。棚卸表の単位欄が空欄だと、数字だけが残って意味が分からなくなる。品目マスタの単位を表に印字しておき、現場が単位を選ばなくて済む形にするのが確実である。
ロケーション
置き場を記録しておくと、差異が出たときに「どこを数え漏らしたか」を追える。同じ品番が複数の場所にある場合、ロケーションごとに行を分ける。合計だけを書くと、翌年どこを見ればよいか分からなくなる。
所有区分
手元にあるが自社のものではない在庫(客先からの預り品、無償支給された材料)は、棚卸資産に含めない。逆に手元に無いが自社のもの(外注先への預け在庫、未着品)は含める。この判断を表の上で区別できるようにしておく。
有償支給の場合は、発注時に品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日・決済方法を明示する義務がある[2]。この記録があれば、支給した数量と外注先の在庫を突き合わせられる。
カウントシートと棚卸表を分ける
現場が使う用紙と、経理が使う表は役割が違う。同じ様式で兼ねようとすると、どちらにとっても使いにくくなる。
カウントシート(現場が書く)
載せるのは、ロケーション・品番・品名・単位・数量・数えた人だけでよい。単価と金額は載せない。金額が見えていると、数え方がそれに引きずられることがある。品番と品名は事前に印字し、現場は数量だけを書く形が最も速い。
棚卸表(経理が作る)
カウントシートの数量を集計し、単価を掛けて金額を出す。帳簿数量と突き合わせ、差異のある品目を抽出する。区分ごとの小計と総合計を出して決算に渡す。
棚卸表の作り方——手順
1. 数える前に範囲を決める
自社倉庫だけか、外注先の預け分・出荷済み未受領分・未着品まで含めるか。含めるものと含めないものを先に紙に書く。数え終わってから議論すると、やり直しになる。
2. 基準時点を決める
何時時点の在庫を数えるか。作業中に入出庫が発生するなら、締めの時刻を決めて記録を止める。止められないなら、その間の伝票を別に分けておき、後から加減する。
3. カウントシートを印刷する
ロケーション順に並べる。品番順ではなく置き場順にすると、現場が歩く順に数えられる。数量欄は空欄にしておき、帳簿数量は印字しない。帳簿数量が見えていると、それに合わせて書いてしまうためである。
4. 二人一組で数える
数える人と記録する人を分ける。数え終わった棚には印を付け、二重カウントと数え漏れを防ぐ。開封済みの箱は現物を数え、箱数で代用しない。
5. 集計して差異を出す
数量を入力し、単価を掛ける。帳簿と突き合わせ、差異のある品目を金額の大きい順に並べる。すべての差異を追う必要はないが、上位は必ず原因を確認する。
6. 差異の原因を記録する
記録漏れ・単位の取り違え・破損・目減りなど、分かった範囲で理由を残す。翌期に同じ差が出たとき、これがあるかどうかで対応が変わる。処理の区分については棚卸減耗損と棚卸評価損の違いで扱っている。
保存とその形式
棚卸表は決算の根拠資料なので、帳簿書類として保存する。紙で作ったものを紙のまま保存するのは当然として、最初から電子で作ったものを紙に印刷して保存する必要はない。
また、取引先とメールや Web でやり取りした注文書・請求書などの電子取引データは、電子のまま保存することとされている[3]。検索は取引年月日・取引金額・取引先の 3 項目で行えることが求められる[3]。棚卸表そのものは電子取引データではないが、単価の根拠になる仕入の記録は該当することがある。
電子取引データの保存については電子帳簿保存法にシステム無しで対応するで整理している。
エクセルで作るときの注意
単価を手入力しない
評価方法に基づいた単価を、品目マスタから参照する形にする。手入力すると、去年の単価がそのまま残ることがある。
行の挿入で数式を壊さない
集計行を上に置くと、行を足したときに範囲から外れる。合計は列全体を参照する形にするか、テーブル機能を使う。
ファイル名に日付を入れる
「棚卸表.xlsx」だけだと、どの期のものか分からなくなる。年月日を入れ、確定後は編集できない形で残す。
差異の列を必ず作る
実地数量だけを記録して帳簿を上書きすると、差がいくらあったか残らない。帳簿数量・実地数量・差異の 3 列を並べる。ここを省くと、毎期同じ差が出ていることに気づけない。
棚卸のスケジュール
当日だけを段取りしても、たいてい終わらない。前後を含めて日程を組む。
2 週間前——範囲と担当を決める
数える範囲、基準時点、誰がどこを数えるかを決めて共有する。外注先への預け在庫がある場合、報告してもらう期日をこの時点で伝える。相手にも準備の時間が要る。
1 週間前——現物を整える
仮置きを解消し、不良品を分け、開封済みの箱をまとめる。ここをやるかどうかで当日の時間が倍近く変わる。同じ品番が散らばっていれば 1 か所に集める。
前日——伝票を締める
入出庫の記録を基準時点まで入力し切る。未入力の伝票が残っていると、差異なのか未入力なのか区別できない。入荷したが検収していないものは、置き場を分けておく。
当日——数える
入出庫を止める。止められない場合は、当日発生した分の伝票を別に分け、後で加減する。数え終わった区画から順にカウントシートを回収する。
翌日以降——集計と差異の確認
入力して差異を出す。金額の大きい順に原因を確認し、必要なら再カウントする。再カウントは差異が出た品目だけでよい。全部を数え直すと、いつまでも確定しない。
立会いを受けるとき
会計監査や税務調査で棚卸の状況を見られることがある。見られるのは数字そのものより、手順が決まっていて、そのとおりに行われたかである。
実施要領(範囲・基準時点・担当・数え方)を文書にしておき、当日のカウントシートと集計結果を一式で保管する。差異があった品目については、原因と処理の判断を記録に残す。数えた人と確認者の名前が入っていることも見られる。
特に、所有権の判断(預り品・預け在庫・未着品)をどう扱ったかは説明を求められやすい。範囲を決めた紙が残っていれば説明できる。
棚卸表から見えること
棚卸表は決算のために作るものだが、集計の仕方を変えると発注の見直しに使える。
金額の上位品目
金額を大きい順に並べる。上位 2 割で全体の 8 割を占めることが多い。管理の手間はここに集中させる。
動いていない品目
前期の棚卸表と品番で突き合わせ、数量が変わっていないものを抽出する。年単位で動いていない在庫は、発注量の前提が実態と合っていない可能性がある。
差異が毎期出る品目
複数期の棚卸表を並べ、同じ品番で差が出続けているものを見る。これは在庫の問題ではなく、記録の運用の問題である。在庫の仕組みを見直す判断材料になる。詳しくは在庫管理システムの選び方で扱っている。
よくある質問
棚卸表に決まった様式はあるか
法令で定められた様式はない。ただし棚卸資産の評価は届け出た方法で行う必要があるため[1]、数量と単価の両方が分かり、区分ごとに集計できる形であることが実質的な条件になる。
単価は何を使うか
自社が届け出ている評価方法で計算した原価を使う。先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法などがあり、届出をしていない場合は、最終仕入原価法による原価法が法定の評価方法になる[1]。評価方法を変更するには承認の申請が必要である[4]。
全品目を一度に数えられない
品目を区切って年間を通じて数える循環棚卸という方法がある。動きの速い品目は頻度を上げ、遅い品目は年 1 回にする。ただし期末時点の数量を確定させる必要がある点は変わらない。
外注先に預けている材料はどう扱うか
所有権が自社にあれば棚卸資産に含める。外注先から数量の報告を受け、支給時の記録と突き合わせる。有償支給の場合は発注時に決済期日と決済方法を明示することとされているため[2]、その記録が突き合わせの根拠になる。発注書の記載事項は発注書に明示しなければならない 12 項目で整理している。
数えた数と帳簿が合わないとき、どちらを直すか
帳簿を実地に合わせる。実地で数えた数が現実だからである。ただし合わせて終わりにすると翌期も同じ差が出るので、差異の記録を残したうえで帳簿を修正する。差異が大きい品目については、再カウントしてから確定させる。
紙とエクセルのどちらで作るべきか
カウントシートは紙が確実である。現場で端末を持ち歩けるならその限りではないが、手が汚れる・置く場所がないといった条件では紙が速い。集計する棚卸表はエクセル以上のものにする。手計算では検算ができない。
不良品も棚卸表に載せるか
載せる。ただし良品と区別できるよう、備考欄に状態を書くか行を分ける。処分が決まっているなら、廃棄した時点で在庫から外し、廃棄の記録を残す。良品と同じ棚に置いたままにすると、翌期も数えられて残り続ける。
まとめ
棚卸表に決まった様式はないが、決算の根拠になる以上、後から追える形でなければ意味がない。区分・単位・ロケーション・所有区分——製造業ではこの 4 つを外すと、数字は出ても原因が追えなくなる。
現場が書くカウントシートと、経理が作る棚卸表は分ける。カウントシートに帳簿数量と金額を載せないことが、正確に数えるための条件になる。
そして帳簿数量・実地数量・差異の 3 列を必ず残す。差を消して帳簿を合わせるだけでは、翌期も同じことが起きる。
出典・参考資料
- 法人税法施行令 第10条(棚卸資産の範囲)・第28条(評価の方法)・第31条(法定評価方法)(e-Gov 法令検索)
- 中小受託取引適正化法 テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 電子帳簿保存法上の電子データの保存要件(国税庁)
- C1-29 棚卸資産の評価方法等の変更の承認の申請(国税庁)
- C1-25 棚卸資産の評価方法の届出(国税庁)
差異の原因は、発注と入出庫の記録からたどれる
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