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投稿日:2026年10月1日

食品に触れる部品の調達——ポジティブリスト適合の確かめ方

この記事のポイント(結論先出し)

食品に触れる部品・容器・包材のうち、合成樹脂を使うものにはポジティブリスト制度がかかる。リストに規格が定められた物質だけを使える仕組みで、経過措置は 2025 年 5 月 31 日に満了した[2]。従来の溶出試験などの規格も引き続き守る必要がある[4]。調達する側が確かめるのは、仕入先が食品衛生法第 53 条に基づいて出す「リストに適合している」旨の説明と、その説明が自社の使い方(触れる食品・温度)に合っているかである。説明の方法は法令で一つに決まっておらず、仕様書・品質保証書・業界団体の確認証明書なども使えるとされる[5]。発注の時点で用途の条件と説明の提出を仕様に書いておく。

規制の骨格——何が変わり、何が残ったか

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食品衛生法でいう「器具」は、飲食器・割ぽう具のほか、食品や添加物の採取・製造・加工・調理・貯蔵・運搬・陳列・授受・摂取に使われ、食品や添加物に直接触れる機械・器具その他の物をいう。「容器包装」は、食品や添加物を入れ、または包んでいる物で、授受のときにそのまま引き渡すものをいう[5]。つまり、食品工場の機械の部品も、食品を詰める袋や容器も、この規制の対象になりうる。

2018 年に公布された改正法で、食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質だけを使えるポジティブリスト制度が導入され、2020 年 6 月 1 日に施行された[1]。消費者庁の案内は、経過措置が 2025 年 5 月 31 日に満了したこと、制度の対象となる材質は 2025 年 6 月 1 日時点で合成樹脂であることを示している[2]。リストの本体は、食品、添加物等の規格基準(昭和 34 年厚生省告示第 370 号)の別表第 1 で、第 1 表が基材、第 2 表が添加剤である。基材を構成するモノマーなどは別の通知で示されている[2]。

項目 改正前の仕組み ポジティブリスト制度(合成樹脂)
物質の扱い 原則使用を認め、制限する物質を定める 原則使用を禁止し、使用を認める物質を定める
規格の中身 一般規格(着色料の溶出、鉛・スズ等の含有量など)、材質別規格(材質試験・溶出試験・蒸発残留物試験など) 左に加えて、物質ごとに使用対象食品・使用温度・使用制限量などを定める
製造する事業者 — 製造管理の基準に従う(一般衛生管理はすべての製造事業者)
事業者間の情報 — 販売の相手方に適合している旨を説明する(原材料の事業者は求めに応じて説明する努力義務)

表は厚生労働省の説明資料による[4]。購買にとって大事なのは、ポジティブリストは従来の規格を置き換えたのではなく、上乗せしたことである。説明資料は、改正前の規制にポジティブリスト制度を上乗せし、改正前の規制は引き続き遵守が必要だと明記している[4]。リストへの適合を確かめても、溶出試験などの従来の規格への適合は別に確かめる。

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自社の部品は対象か——合成樹脂の範囲と対象外

制度の対象になる合成樹脂は、高分子化合物のうち、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーを含み、熱硬化性エラストマー(ゴム)は含まない[3]。ゴム製のパッキンや金属部品はリストの対象外になるが、対象外の物質も、事業者が食品衛生法に基づく従前の管理を守り、自らの責任で安全性を確保する必要があるとされている[3]。

同じ部品の中でも、食品に触れない部分は対象外になりうる。通常の使用の範囲で食品に接触するおそれがないことを前提に、接触のおそれがない部分はリストの対象外とされ、例として箸の持ち手、食品製造用機械の外装、食品が直接触れないように使われるトレイなどが挙げられている[3]。多層フィルムの端面がごく一部露出している場合は、意図して食品に触れさせるものではないとして、食品接触面とみなさない扱いも示されている[3]。

食品に触れない中間層(インキ・接着剤など)に使う物質は、人の健康を損なうおそれのない量を超えて食品に移行しないよう管理されている場合、リストに規格がない物質でも使える、という例外がある[5]。この「おそれのない量」は食品中濃度 0.01mg/kg(食品擬似溶媒中濃度 0.01mg/L)とされている[3]。ただし、食品に接触する部分に使う物質には、この例外は使えない[5]。

調達の段階では、部品のどの部分が食品に触れるのかを図面か仕様書で特定しておく。ここが曖昧だと、仕入先は「全部が対象」として過大な説明を用意するか、「触れない部分」として何も出してこないかのどちらかになる。

仕入先が負う「説明」の義務

改正法は、ポジティブリストの対象材質を使った器具・容器包装を販売する者、販売のために製造・輸入する者に、販売の相手方に対して、その製品がリストの規格に適合した原材料だけを使っていること、またはリストに規格がない物質を移行しないよう加工していること(前述の例外)のどちらかに当たる旨を説明するよう義務付けた。原材料を販売・製造・輸入する者には、器具・容器包装の製造者から適合の確認を求められた場合に、必要な説明をするよう努める義務を課した[5]。この条文は施行時に第 50 条の 4 として置かれ、その後の段階的な施行で第 53 条になっている[3][5]。製造管理の規定(同じく第 52 条)は、施設の一般的な衛生管理と、適正に製造を管理するための取組の二つについて基準を定めるものである[5]。

購買の立場から見ると、説明の義務の流れは次のようになる。

誰が 誰に 何を 義務の強さ
樹脂・添加剤などの原材料の事業者 容器・部品を製造する事業者 原材料がリストの規格に適合している旨(求められたとき) 努力義務
容器・部品を製造・輸入・販売する事業者 販売の相手方(食品事業者や販売業者) 製品がリストに適合している旨、または例外の加工がされている旨 義務

表は厚生労働省の説明資料による[4][5]。原材料の段階が努力義務であることは、調達の実務で効いてくる。容器のメーカーが樹脂メーカーから十分な情報を得られないと、容器の段階の説明も弱くなる。厚生労働省の資料も、複数の業者から原材料を買っている場合に上流から企業秘密を含む情報が開示されず、最終製品の添加剤の使用量が使用制限の範囲内か確認できない、という課題を業界との意見交換で出た論点として挙げている[4]。

説明の方法は決まっていない

説明の方法について、厚生労働省は、リストへの適合を確認するのに必要な内容が担保されることを前提に方法は特定しないとしつつ、情報の記録・保存などで事後に確認する手段を確保する必要があるとしている。手段として、契約締結時の仕様書、入荷時の品質保証書、業界団体の確認証明書などの活用も可能だと考えている、と説明資料に書いている[5]。同じ資料の省令の骨子案は、説明の事項として、製品や原料がリストに適合する旨を確認できる情報と、その情報の対象物を確認できる情報の二つを挙げ、説明の情報に変更があれば速やかに更新して関係事業者に提供するよう努めることとしていた[5]。

購買としては、方法が自由だからこそ、受け取る形を自社で決めておく。品番ごとに、対象物の特定・適合の根拠・使用条件・発行日の四つがそろった書面か電子データを求め、改訂があったら差し替えを受ける取り決めにする。

製造を委託している場合の立場

容器や部品の製造を外部に委託している会社は、自社が「製造事業者」なのか「販売事業者」なのかを確かめておく必要がある。厚生労働省の 2019 年の資料は、考え方の案として、製品の企画・設計だけを行い、製造工程のすべてを他の事業者に委託する事業者は「容器包装製造事業者」ではなく「容器包装販売事業者」であり、製造事業者は委託先だという整理を示している[5]。これは当時の案として示されたもので、自社の位置づけは最新の通知や所管の窓口で確かめてほしい。

販売事業者であっても、販売の相手方に適合の説明をする義務は残る[5]。委託先から受け取った説明が、自社が顧客に出す説明の根拠になる。委託先との取り決めでは、説明の提出と、材料・配合・製造場所を変えるときの事前の連絡を必ず入れておく。製造委託の形態による責任の違いは OEM と ODM は何が違うか で扱った。

経過措置の「同様のもの」をどう扱うか

経過措置は満了したが、その時期に作られたものの扱いは残っている。消費者庁の Q&A は、施行日(2020 年 6 月 1 日)より前に製造・輸入・販売・営業上使用されたものは、経過措置の後も導入前の規制のままで販売や使用ができるとしている。また、経過措置の期間中に、施行日前のものと「同様のもの」(施行日前に使われていた合成樹脂の原材料の物質を、その使われていた範囲内で使って製造・輸入したもの)として扱われたものは、期間の満了後もリストに適合したものとして販売や使用ができる。一方、2025 年 6 月 1 日以降に製造・輸入するものは、別表第 1 に収載された物質を使う必要がある[3]。

仕入先が「経過措置品です」と言ってきたら、いつ製造されたものか、施行日前のものと「同様のもの」である根拠は何かを書面で確かめる。新たに製造する品目について経過措置を理由にするのは、原則として筋が通らない。例外もある。Q&A は、食品等の製造所などで施行日前から使われている機械などと同様のもので、経過措置の期間中から営業上使用しているものに、2025 年 6 月 1 日以降に修理や消耗品の交換をしても、引き続き同様のものと考えられるなら、交換に使う部品も含めて経過措置の対象と考えて差し支えないとしている[3]。設備の交換部品を調達するときは、どの機械の、どの部品の交換かを書面に残しておく。

発注書・仕様書に書いておくこと

ポジティブリストの規格は、物質ごとに使用対象食品・使用温度・使用制限量などを定めている[4]。同じ樹脂でも、どの食品に何度で使うかで適合の判断が変わりうる。だから、仕入先が正しい説明を出すには、発注側が用途の条件を伝えなければならない。

  • 食品に触れる部分の特定(図面上の範囲、層構成)
  • 触れる食品の種類(油脂を含むか、酸性か、乾燥した食品かなど)
  • 使用温度と接触時間(加熱・冷凍・長期保存の有無)
  • 求める説明の形(品番ごとの適合の説明、根拠、発行日)と提出の時期
  • 従来の規格(一般規格・材質別規格)への適合を示す試験成績の要否
  • 材料・配合・製造場所・原材料の仕入先を変えるときの事前の連絡

これらは図面には出てこないことが多いので、購買仕様書に書く。図面と購買仕様書の分担は 購買仕様書の書き方 にまとめている。受入の条件として扱うなら、発注の時点で明示しておくことが前提になる。

受け取った説明のどこを確かめるか

確かめる点 よくある不足
対象物の特定 樹脂の銘柄名だけで、自社の品番・版とのひも付けがない
使用条件 説明の前提の食品・温度が、自社の使い方と違う
対象外部分の扱い ゴムや金属の部分について何も書かれていない(従前の規格への適合は別に要る)
従来の規格 リストへの適合だけで、溶出試験などの結果がない
経過措置の主張 製造時期と「同様のもの」の根拠がない
更新 発行日が古く、配合の変更が反映されていない

説明書は受け取って綴じるだけでは事後の確認に使えない。品番・版・発行日と一緒に保存し、配合や仕入先の変更の連絡を受けたら差し替える。厚生労働省も、記録・保存などで事後に確認する手段を確保する必要があるとしている[5]。

ほかの化学物質の調査との関係

食品に触れる部品でも、輸出先によっては EU の REACH 規則など別の規制の調査が来る。食品衛生法の説明と含有化学物質の調査は目的も様式も違うので、片方で他方を代えられない。含有化学物質の調査の出し方と回答の確かめ方は REACH などの含有化学物質の調査を仕入先に依頼するとき に、電気・電子機器の部品であれば RoHS への適合を仕入先からどう確かめるか にまとめた。

まとめ

食品に触れる合成樹脂の部品・容器・包材には、ポジティブリスト制度と従来の規格の両方がかかる。経過措置は満了しており、新たに製造・輸入するものはリストに収載された物質を使う必要がある(施行前から使っている製造設備の修理・消耗品の交換部品は、経過措置の対象と扱える例外がある)。調達する側は、食品に触れる部分と使い方(食品・温度・時間)を仕様書に書き、仕入先から品番ごとの適合の説明を受け取って、使用条件の一致・対象外部分の扱い・従来規格の試験成績・更新を確かめる。製造を委託している場合も、販売の相手方への説明の義務は残るので、委託先からの説明の提出と変更の事前連絡を取り決めに入れておく。

出典・参考資料

  1. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)(厚生労働省)
  2. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)(消費者庁)
  3. 「器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A」の一部改正について(消費者庁食品衛生基準審査課 事務連絡/令和 8 年 6 月 5 日)
  4. 改正食品衛生法における器具・容器包装の新たな制度~食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について~(厚生労働省 改正食品衛生法の施行に関する説明会資料/令和 4 年 3 月)
  5. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度導入について(厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課/令和元年 8 月)

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