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投稿日:2026年8月28日 | 更新日:2026年8月31日

OEM と ODM は何が違うか——委託形態で変わる責任範囲

この記事のポイント(結論先出し)

OEM・ODM・受託製造・EMS は業界で使われてきた呼び名であって、法律の用語ではない。法律が線を引いているのは呼び方ではなく、発注側が仕様や内容を指定したかどうかである。指定して作らせた時点でその取引は取適法(中小受託取引適正化法)の製造委託になり、発注内容の明示義務と禁止行為が発注側にかかる。さらに完成品に自社の名称やブランドを製造業者として表示すれば、製造していなくても製造物責任法上の製造業者等として扱われ得る。呼び方を決める前に、この二つの線をどちら側で越えているかを確認したい。

四つの呼び名は、それぞれ何を指しているか

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調達の現場で使われる委託形態の呼び名は、どれも商慣習として広まったものである。法令に定義があるわけではないため、同じ言葉を使っていても発注側と受注側で中身の理解が違っていることがある。まずは一般的に何を指して使われているかを整理する。

OEMは、発注側が仕様と設計を持ち、その内容どおりに他社の工場で作らせて、自社のブランドで販売する形を指すことが多い。図面・材料・工程条件まで発注側が示すため、設計上の判断は発注側に残る。

ODMは、発注側が求める性能や価格帯といった大枠だけを示し、詳細な設計は受注側が持つ技術で行う形を指す。完成した製品には発注側のブランドが付くが、設計そのものは受注側の資産である。

受託製造は、他社の依頼を受けて製造を引き受けることそのものを指す広い言い方で、OEM も ODM も含まれる。医薬品や化粧品では受託製造という呼び方の方が定着している。

EMSは電子機器の分野で使われる言い方で、基板実装や組立に加えて、部品調達・在庫・出荷までを一括で引き受ける事業形態を指す。担う範囲が広いだけで、個々の取引は OEM や ODM のどちらかに当てはまる。

つまりこの四つは、対立する分類ではなく、重なりを持った呼び名である。契約や見積の場面でこの言葉だけを頼りに条件を決めると、設計責任と品質責任の所在が曖昧なまま進む。

法律が引く線は「仕様を指定したかどうか」

取適法は「製造委託」を定義している。公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、製造委託における「委託」とは、事業者が他の事業者に対し、給付に係る仕様・内容等を指定して物品等の製造(加工を含む)を依頼することであり、つまり物品等の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランドなどを指定して製造を依頼することだと説明している[1]

この定義の効き方が実務では大きい。同じ「買う」という行為でも、扱いが次のように分かれる。

カタログに載っている規格品・標準品をそのまま購入することは、原則として「委託」に該当しない[1]。ところが、規格品・標準品であってもその一部でも自社向けの加工等をさせる場合には該当する[1]。市販品を買っているつもりでも、刻印を入れる、寸法を詰める、指定色で塗るといった一手間を加えさせた時点で、その取引は製造委託になる。

もう一つ見落とされやすいのが、発注側に工場が要らないという点である。テキストは、製造設備を持たない事業者であっても、物品等について仕様・内容等を指定して他の事業者に製造を依頼する場合には「委託」に該当するとし、商社や製造問屋と呼ばれる卸売業者、大規模小売業者、フランチャイザー等が自社のプライベートブランド商品の製造を依頼することも該当するとしている[1]。自社ブランドで売る以上、製造機能がなくても発注側の義務は生じる。

なお、この判断において契約の形式は問われない。テキストは「委託」の内容を満たす限り、請負であるか売買であるかといった契約上の形態は問わないとしている[1]。売買契約書を交わしたから製造委託ではない、という整理は通らない。

製造委託は四つの類型に分かれる

テキストは、製造委託に当たる場面を四つの類型として示している[1]

類型 1は、自社が販売する物品、その半製品・部品・附属品・原材料、またはそれらの製造に専ら用いる型や治具の製造を委託する場合である。例として、自動車メーカーが部品の製造を委託すること、大規模小売業者が自社のプライベートブランド商品の製造を食品加工業者に委託することが挙げられている。

類型 2は、自社が請け負っている製造の目的物について、その部品等の製造を委託する場合である。精密機器メーカーが、請け負った精密機器の部品の製造を部品メーカーに委託する例が示されている。

類型 3は、業として行う物品の修理に必要な部品や原材料の製造を委託する場合である。修理を請け負っている場合だけでなく、自社で使う物品を自ら業として修理している事業者も含まれる。

類型 4は、自社で使用または消費する物品を自社で製造している場合に、その物品や部品等の製造を委託する場合である。自社工場で使う治具や、製品運送用の梱包材を社内で作っている事業者が、その製造を外に出す例が挙げられている。

類型 1 に金型が明記されている点は、金型を発注する立場では押さえておきたい。目的物の外形をかたどった物品で、その性質上ほかの製品には使えないものは「専らこれらの製造に用いる型」に当たる[1]。金型代の支払条件や保管の取り決めも、この枠の中で扱われる。費用負担と保管責任の分け方は有償支給材と金型代のルールで扱っている。

ODM は法律上どう扱われるか

詳細設計を受注側が行う ODM では、発注の時点で仕様も金額も固まっていないことがある。この状態をどう扱うかについて、テキストは明確な扱いを示している。

発注内容の明示は原則として発注のたびに直ちに行う必要があるが、内容を定められないことに正当な理由がある事項については、いったん明示せずに発注できる。その正当な理由に当たる例として、製造委託において、発注側が基本性能等の概要仕様のみを示して委託を行い、受注側が持つ技術により詳細設計を行って具体的な仕様を決定していくため、委託した時点では給付の内容または代金の額が定まっていない場合が挙げられている[1]。ODM の進め方そのものが、例外として想定されている。

ただし、そのまま放置してよいわけではない。未定にした事項については、定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日を当初の明示で示す必要がある[1]。予定期日は具体的な日付が分かるように示す必要があり、たとえば「○年○月○日」や「発注後○日」といった書き方になる[1]。そして内容が確定した後は、直ちに補充の明示を行わなければならない[1]。明示すべき項目の詳細は発注書とは|取適法の「4条明示」12項目と、テンプレートの選び方で扱っている。

逆に言えば、ODM だからといって「仕様は追って」で済ませ続けることはできない。詳細設計が固まったのに発注書が概要仕様のままなら、後から品質を争ったときに何を基準に判定するのかが決まらない。

自社ブランドを付けた側が負う責任

製造していないから製品事故の責任も負わない、とはならない。製造物責任法は「製造業者等」を三つに分けて定義しており、その二番目に自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者が挙げられている[2]。三番目には、製造・加工・輸入・販売に係る形態その他の事情からみて、実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者も含まれる[2]

同法第 3 条は、製造業者等は、その氏名等の表示をした製造物であって引き渡したものの欠陥により他人の生命・身体・財産を侵害したときは損害を賠償する責めに任ずると定めている[2]。自社を製造業者として示す表示をすれば、実際に作っていなくても賠償責任の名宛人になり得るということである。

一方で、部品や原材料を供給した側には免責の余地がある。同法第 4 条第 2 号は、その製造物が他の製造物の部品または原材料として使用された場合において、欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ欠陥が生じたことにつき過失がないことを証明したときは、賠償の責めに任じないとしている[2]

この二つを並べると、責任の重心が見えてくる。図面と工程条件まで発注側が指定する OEM では、設計に起因する欠陥の責任は発注側に寄る。設計を受注側が行う ODM では、受注側が設計者としての立場を持つ一方、ブランド表示をした発注側は表示者としての責任を免れない。委託形態の選択は、事故が起きたときにどちらが説明責任を負うかの選択でもある。

ブランドを付けさせる以上、商標の扱いを決めておく

OEM では、受注側の工場が発注側のロゴを製品や包装に印刷することになる。商標法は、標章について「使用」とは何かを列挙しており、その第一に商品又は商品の包装に標章を付する行為を挙げている[3]。ラベルを貼る作業そのものが、法律上の商標の使用に当たる。

そのため、商標権者である発注側が、受注側にその使用を認める根拠を用意しておく必要がある。商標法第 31 条は、商標権者はその商標権について他人に通常使用権を許諾することができ、通常使用権者は設定行為で定めた範囲内において登録商標の使用をする権利を有すると定めている[3]。契約に許諾の範囲(対象商品、期間、数量、下請けへの再委託の可否)を書いておかないと、余剰品の横流しや契約終了後の在庫処分をどう止めるのかという段になって根拠がない。

委託形態ごとの違いを一覧にする

ここまでの内容を、発注側の立場から並べると次のようになる。取適法の適用は資本金または従業員数の区分によっても決まるため、あくまで「仕様を指定しているか」という条件だけを取り出した比較である[1]

項目 規格品の購入 OEM ODM
仕様を決める主体 売り手(カタログ) 発注側 受注側(大枠は発注側)
図面・詳細設計の保有 売り手 発注側 受注側
取適法の製造委託に当たるか 原則として当たらない(一部でも自社向け加工をさせれば当たる) 当たる 当たる
発注時に仕様が未定でよいか 該当しない 原則すべて明示 未定事項として扱える(理由と予定期日の明示が必要)
自社ブランド表示時の PL 上の立場 表示すれば製造業者等 製造業者等 製造業者等
設計起因の欠陥の重心 売り手 発注側に寄る 受注側に寄る
商標の使用許諾 不要 必要 必要

委託先の管理責任は外に出せない

製造を外部に出しても、品質を保証する責任まで外に出せるわけではない。品質マネジメントシステムの要求事項を定める JIS Q 9001:2015 は、箇条 8 の中に「外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理」という節(8.4)を置いている[4]。外注か内製かにかかわらず、顧客に引き渡す製品の要求事項への適合を確実にする仕組みは、発注側の品質マネジメントシステムの一部として求められる。

この考え方は、供給者を選ぶ段階から効いてくる。証明書を発行できるかどうかといった具体的な確認項目はミルシートType 3.1を出せない仕入先を発注前に見抜くで扱っている。委託先を選ぶ段階では、書類の様式より、その書類を出せる体制があるかを見たい。品質と供給継続性をどう並べて見るかは新規仕入先をどう審査するかにまとめている。

呼び方を決める前に確認したい五点

1. 仕様を出すのはどちらか。図面・材料・工程条件のうち、発注側が指定するものを列挙する。一つでも指定すれば製造委託になる。図面に載らない条件の書き方は購買仕様書の書き方で扱っている。

2. 詳細設計の所有者は誰か。受注側が設計する場合、その設計を他社に流用されないための取り決めが要る。逆に発注側が設計する場合、その図面の管理と返却の条件を書いておく。

3. 発注時点で未定にする項目はどれか。未定にするなら、理由と、内容を定める予定期日をその場で決めて明示する。

4. 完成品に誰の名前が載るか。自社名や自社ブランドを表示するなら、製造物責任法上の立場を引き受けることになる。

5. 商標の使用範囲をどこまで許すか。対象商品、期間、数量、再委託の可否、契約終了後の在庫の扱いを決める。

取適法の適用範囲は 2026 年に広がった

2026 年 1 月 1 日から、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)になった。改正では、資本金の大小関係がない取引でも価格転嫁を進める必要があるという課題認識のもと、従業員の大小関係がある委託事業者と、発荷主と運送事業者の取引が適用対象に追加されている[5]。資本金だけで対象外と判断していた取引が、従業員数の基準で対象になっている可能性がある。

委託形態を見直すときは、あわせて自社と相手の資本金・従業員数の区分も確認しておきたい。呼び方が OEM でも ODM でも、区分に当てはまれば同じ義務がかかる。

まとめ

OEM・ODM・受託製造・EMS の違いは、突き詰めれば「誰が仕様と設計を持つか」と「誰の名前で売るか」の二つに集約される。取適法は前者で線を引き、製造物責任法は後者で線を引く。呼び名をどう使うかは自由だが、この二本の線をどちら側で越えているかは、契約書の表題では変わらない。

新しい委託先と話を始めるときは、まず仕様の出し方と設計の所在を紙に書き出し、そのうえで発注書に何を明示するかを決める。順序を逆にすると、あとから条件を足すたびに交渉が振り出しに戻る。見積の取り方については相見積とは|取適法で変わった取り方の注意点もあわせて確認したい。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 製造物責任法(平成六年法律第八十五号)(e-Gov 法令検索・デジタル庁)
  3. 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)(e-Gov 法令検索・デジタル庁)
  4. JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム―要求事項(日本規格協会/2015 年 11 月 20 日改正・2020 年確認。追補 JIS Q 9001:2015/AMENDMENT 1:2025 あり)
  5. 取適法・振興法(公正取引委員会)

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