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棚卸の仕訳を決算でどう入れるか——期首・期末棚卸高と製造業の3段の仕訳

この記事のポイント(結論先出し)
棚卸の結果を決算に入れる仕訳は、期首の在庫を費用の側へ戻し、期末に数えた在庫を資産の側へ移すという 2 本が骨格になる。売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高(製造業では当期製品製造原価)-期末棚卸高」で表示すると財務諸表等規則(有価証券報告書などに載せる財務諸表の様式を定める規則。非上場の会社の計算書類は会社計算規則による)が定めており[4]、法人税でも売上原価は損金になり、その計算の基礎になる期末の棚卸資産は選定した評価方法で評価した金額とされている[1]。製造業では材料・仕掛品・製品の 3 か所で同じことを行い、数えた数と帳簿の差(棚卸減耗)は別の科目に出してから振り替える。差を黙って材料費に混ぜると、翌期に原因を追えなくなる。
目次
棚卸の仕訳は「期首を戻し、期末を立てる」の 2 本
決算で棚卸の結果を帳簿に入れる仕訳は、在庫の動きを日々記録しているかどうかで形が変わる。ただし、どちらの方式でも行き着く数字は同じで、売上原価は「期首にあった在庫+その期に仕入れたもの-期末に残っているもの」になる。
財務諸表等規則は、損益計算書の売上原価を、商品または製品の期首棚卸高、当期商品仕入高または当期製品製造原価、それに対する控除科目としての期末棚卸高で掲記するよう定めている[4]。「棚卸高」は、この式に入る期首・期末の在庫の金額を指す言葉である。当期製品製造原価については、内訳を記載した明細書を損益計算書に添付することも同じ条で求めている(連結財務諸表でセグメント情報を注記している場合を除く)[4]。
法人税の側から見ても骨格は同じである。法人税法は、売上原価を損金の額に算入する金額として挙げたうえで[1]、その算定の基礎となる事業年度終了の時に有する棚卸資産の価額を、選定した評価の方法により評価した金額とし、選定しなかった場合は政令で定める方法によるとしている[1]。つまり期末の棚卸高が決まらなければ、売上原価も所得も決まらない。
期末にまとめて振り替える方式
日々の出庫を金額で記録していない会社は、期中の仕入を「仕入」に積み上げておき、決算で期首と期末の在庫を振り替える。商品を例にすると、仕訳は次の 2 本になる。
| 時点 | 借方 | 貸方 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 決算(1 本目) | 仕入 300 | 繰越商品 300 | 前期から繰り越した在庫を、当期の費用の側へ戻す |
| 決算(2 本目) | 繰越商品 400 | 仕入 400 | 期末に数えて金額を付けた在庫を、資産として翌期へ送る |
期中の仕入が 2,000 なら、決算後の「仕入」は 300+2,000-400=1,900 になり、これがその期の売上原価である。2 本目の 400 は、実地棚卸で数えた数量に、選定した評価方法で付けた単価を掛けた金額を使う。単価の付け方は評価方法を計算で比べる記事で扱っており、ここでは仕訳だけに絞る。
この方式では、期中に在庫がいくら減っていたかを帳簿は知らない。数えた結果がそのまま期末の在庫になるので、紛失や記録漏れがあっても売上原価に吸収され、差としては表に出てこない。差を見たいなら、次の方式が要る。
出庫のたびに記録する方式
入庫と出庫を受払いとして記録している会社は、帳簿の上に「あるはずの在庫」が常にある。決算で行うのは、数えた在庫と帳簿の在庫を突き合わせ、差を処理することである。差が無ければ追加の仕訳は要らない。差があれば、帳簿を実地に合わせる仕訳を入れる。
帳簿と実在庫の照合は、財務報告の内部統制でも日常のモニタリングの例に挙げられている[6](基準の中身は棚卸差異の調べ方で引いた)。受払いを記録していれば、この照合ができる。期末に一括で振り替える方式では、照合する相手がそもそも無い。
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製造業では 3 か所で同じことを行う
製造業の在庫は、材料、仕掛品、製品の 3 つに分かれる。法人税法施行規則は、青色申告法人に対し、事業年度終了の日において、製品(副産物・作業くずを含む)、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料、貯蔵中の消耗品などの棚卸を行い、その事績を明りょうに記録することを求めている[3]。仕訳も、この区分ごとに期首と期末を扱う。
材料は仕掛品へ、仕掛品は製品へ、製品は売上原価へと流れる。それぞれの段で「期首+入ってきたもの-期末=次へ流れたもの」が成り立つ。法人税法施行令は、自社で製造した棚卸資産の取得価額を、製造のために要した原材料費、労務費、経費の額に、消費・販売のために直接要した費用を加えた額としている[2]。仕掛品と製品の期末の金額は、この中身で組み立てることになる。
数値例で流れを追う
ある期の数字を、次のように置く。期首は材料 300、仕掛品 200、製品 500。当期に材料を 2,000 仕入れ、労務費 1,500、経費 1,000 がかかった。期末の帳簿上の材料は 400 だが、数えた結果は 380 で、差の 20 は通常の作業で生じる範囲(目減り)と判断したとする。期末の仕掛品は 250、製品は 600 と数えて金額を付けた。
| 段 | 期首 | 入ってきたもの | 期末(数えた額) | 次へ流れたもの |
|---|---|---|---|---|
| 材料 | 300 | 仕入 2,000 | 380(帳簿 400・差 20) | 材料費 1,900+減耗 20 |
| 仕掛品 | 200 | 材料費 1,900+減耗 20+労務費 1,500+経費 1,000=4,420 | 250 | 当期製品製造原価 4,370 |
| 製品 | 500 | 4,370 | 600 | 売上原価 4,270 |
製品の段は、財務諸表等規則の売上原価の形そのものである。期首製品棚卸高 500+当期製品製造原価 4,370-期末製品棚卸高 600=4,270[4]。材料と仕掛品の段は、製造原価明細書の側で同じ形をとる。
出庫のたびに記録している場合の仕訳
受払いを記録している会社なら、期中と期末の仕訳は次のようになる。ここでは材料の出庫をすべて仕掛品へ直接入れる単純な形で書く(補助材料などを製造間接費を経由させる会社は、その勘定を挟む)。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 材料の仕入 | 材料 2,000 | 買掛金 2,000 |
| 製造への出庫 | 仕掛品 1,900 | 材料 1,900 |
| 期末の差(実地 380・帳簿 400) | 棚卸減耗費 20 | 材料 20 |
| 減耗を製造原価へ | 仕掛品 20 | 棚卸減耗費 20 |
| 労務費・経費の振替 | 仕掛品 2,500 | 労務費 1,500/経費 1,000 |
| 完成 | 製品 4,370 | 仕掛品 4,370 |
| 販売に応じた払出し | 売上原価 4,270 | 製品 4,270 |
減耗をいったん「棚卸減耗費」に出してから仕掛品へ振り替えているのは、金額としては同じでも、帳簿の上で差があったことを残すためである。出庫の 1,900 に 20 を足して 1,920 と書いてしまうと、翌期に「材料費がなぜ増えたのか」を問われたとき、消費が増えたのか、数が合わなかったのかを区別できない。
期末にまとめて振り替えている場合の仕訳
受払いを金額で記録していない製造業では、決算で 3 つの段をまとめて振り替える。材料なら「材料費/材料(期首 300)」「材料/材料費(期末 380)」の 2 本、仕掛品と製品も同じ形で期首を戻して期末を立てる。こちらの方式では減耗の 20 は材料費の中に溶け込み、別の数字としては出てこない。差を把握したい場合は、少なくとも金額の大きい材料だけでも受払いを記録しておくと、期末に帳簿と実地の比較ができる。
差の処理と、評価を下げたときの仕訳
期末の仕訳で迷うのは、数の差と値下がりの 2 つである。どちらも「棚卸資産の額を減らす」点は同じだが、出す科目と、税務上の扱いが違う。
数の差(棚卸減耗)
数えた数が帳簿より少ない分は、棚卸減耗として処理する。通常の作業で生じる範囲のものは製造原価または売上原価に入れ、異常な量のものは営業外費用や特別損失に分けるのが一般的な扱いで、金額と原因で判断する。この区分の考え方は棚卸減耗損と棚卸評価損の違いに書いた。仕訳の上で守ることは 2 つで、差を別の科目で一度受けることと、毎期同じ基準で振り分けることである。
財務諸表等規則は、商品または製品について販売、生産または仕入以外の理由による増減高がある場合には、売上原価の各項目のほかに、その内容を示す科目で別に掲記するよう求めている[4]。見本として社外へ出した製品や、社内で使った製品を「他勘定振替高」のように別の行で示すのは、この規定に沿った書き方である。売上原価の中に混ぜると、売上と原価の対応が崩れる。
なお、数えた数が帳簿より多いこともある。この場合も帳簿を実地に合わせるが、原因が入庫の記録漏れなら、仕入の計上漏れの可能性がある。差を「増えたので益」として片づける前に、伝票の側を確かめる。差の調べ方は、同じ時期に書いた棚卸差異が出たときの調べ方にまとめる。
値下がり(評価を切り下げる場合)
数は合っていても、陳腐化や相場の下落で価値が下がった在庫は、帳簿価額を切り下げる処理になる。財務諸表等規則は、通常の販売の目的で所有する棚卸資産について収益性の低下により帳簿価額を切り下げた場合、その切下額を売上原価その他の項目の内訳として、内容を示す科目で区分掲記するよう定めている[4]。ただし、期末棚卸高を切下げ後の金額で計上し、その旨と切下額を注記する書き方も認めており、切下額に重要性が乏しい場合は区分掲記や注記を省略できる[4]。
仕訳の形は「棚卸評価損/製品(または材料)」になる。ここで注意したいのは、会計で切り下げた額がそのまま法人税の損金になるとは限らないことである。低価法を選定しているか、災害や著しい陳腐化などの特別の事実に当たるかで扱いが分かれる。判定の中身は前出の減耗損と評価損の記事に譲り、決算の作業としては「会計の仕訳」と「申告書での加算・減算」を分けて記録しておく、とだけ書いておく。
仕訳に入れる金額を、何から作るか
2 本目の仕訳(期末を立てる仕訳)に入れる金額は、棚卸表から作る。法人税法施行規則は、棚卸について棚卸表を作成し、棚卸資産の種類、品質および型の異なるごとに数量、単価および金額を記載すること、その単価は選定した評価の方法により計算した価額とすることを定めている[3]。仕訳の金額は、この棚卸表の合計と一致していなければならない。
取得価額に何を含めたか
期末の単価の基礎になる取得価額には、購入の代価のほか、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などの購入のために要した費用が入る[2]。ただし法人税基本通達は、買入事務・検収・整理・選別・手入れの費用、販売所等へ移管する運賃・荷造費、長期保管の費用については、その合計が購入の代価のおおむね 3% 以内なら取得価額に算入しないことができるとしている[7]。製造した棚卸資産についても、製造後の検査・検定・整理・選別・手入れ、販売所等への移管、長期保管の費用は、製造原価のおおむね 3% 以内なら算入しないことができる[8]。どちらを採るかで期末の金額が変わるので、毎期同じ扱いにしておく。
製造した棚卸資産の原価が、原材料費・労務費・経費を足した額と異なっていても、その原価が適正な原価計算に基づいて算定されていれば、その原価の額を取得価額とみなす規定がある[2]。原価計算をしている会社は、原価計算の結果をそのまま仕掛品・製品の単価に使える。逆に言えば、原価計算をしていない会社の仕掛品の単価は、別の根拠を用意しておく必要がある。
手元にない在庫を入れたか
外注先へ預けている材料は自社の棚卸資産であり、期末の金額に入れる。預け在庫の数量の確かめ方は棚卸のやり方と手順で扱っている。仕訳の作業として気をつけるのは、預け在庫を「材料」と別の補助科目で持つか、少なくとも棚卸表で区別しておくことである。外注先から報告された数量と自社の払出記録が合わないとき、どちらで差が出たかを後から追えるようにするためである。
期末をまたいで入荷した品を在庫に入れたか、仕入に計上したかも、仕訳の前に揃える。在庫だけ入れて仕入を立てていないと、期末の棚卸高だけが膨らみ、売上原価が小さく出る。計上の日付の決め方は仕入はいつ計上するかにある。
決算の仕訳の前に揃える 5 つ
仕訳そのものは数行で終わる。時間がかかるのは、仕訳に入れる数字を揃える作業である。決算の前に次の 5 つを確認しておくと、仕訳を入れ直す回数が減る。
1. 棚卸表の合計と、仕訳の金額が一致しているか
区分(材料・仕掛品・製品・貯蔵品)ごとの合計で照合する。総額だけ合っていて区分が違うと、製造原価明細書と損益計算書の数字が食い違う。
2. 差を別の科目で受けたか
帳簿と実地の差を、出庫や材料費に足し込んでいないか。差の金額が上位の品目については、原因を棚卸表の備考か別紙に残す。
3. 期首の仕訳が前期末と一致しているか
期末にまとめて振り替える方式では、1 本目の仕訳(期首を戻す)の金額が前期末の貸借対照表の棚卸資産と一致していなければならない。前期の決算後に修正を入れた場合は、ここでずれる。
4. 評価の切下げを、数の差と分けたか
同じ品目で数の差と値下がりが同時に起きているときは、先に数の差を処理し、残った数量に対して切下げを計算する。順番を逆にすると、どちらの金額も説明できなくなる。
5. 税務上の扱いを別に記録したか
会計で切り下げた額と、法人税で損金にできる額が違う場合は、その差を申告書の側で調整する。仕訳を税務に合わせて書き換えるのではなく、差の一覧を作っておく。
よくある質問
月次で棚卸をしていない月は、どう仕訳するか
受払いを記録していれば、帳簿の在庫を使って月次の売上原価を出せる。記録していない場合は、月末の在庫を見積るか、期末の実地棚卸まで期首の在庫のまま置いておくことになる。どちらにしても、期末には実地棚卸の結果で確定させる。月次の見積りと期末の実地の差が大きい品目は、記録の運用を見直す候補になる。
棚卸を期末日以外の日に行った場合、仕訳の金額はどうするか
棚卸を行った日の数量に、その日から期末日までの入出庫を加減して期末の数量を出し、それに単価を掛ける。監査でもこの間の増減の記録が確かめられる[5](監査の基準の扱いは棚卸差異の調べ方にまとめた)。加減に使った伝票の範囲を残しておくことが前提になる。早く終わらせる工夫は実地棚卸を早く終わらせるにはで扱う。
消耗品も期末の在庫に入れて仕訳するのか
原則は、消費した期の費用にする。法人税基本通達は、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料などで、毎期おおむね一定数量を取得し経常的に消費するものについて、継続して取得した期の損金にしている場合はこれを認めるとしている[9]。ただし、その費用が製品の製造のための費用の性質を持つ場合は製造原価に算入する、と注で念を押している[9]。工場で使う消耗品を取得時に費用にしている会社は、それが販売費ではなく製造経費に入っているかを確かめる。
評価方法を変えた期の仕訳はどうなるか
期首の在庫は前期末に付けた金額のまま戻し、期末の在庫を新しい方法で評価して立てる。評価方法の変更には税務署長の承認が要るので、承認を受けていない方法で期末を立てていないかを先に確かめる。変更の手続きは棚卸資産の評価方法の選び方にある。
製品を社内で使ったら、どの科目に出すか
製品を設備として使った、見本として配ったなど、販売以外の理由で減ったものは、売上原価に混ぜずに別の行で示す[4]。仕訳は「見本品費(または該当する資産の科目)/製品」のように、使い道を示す科目に振り替える。何もしないと、売れていない製品の原価が売上原価に入り、粗利が実際より低く見える。
まとめ
棚卸の仕訳は、期首を費用の側へ戻し、期末に数えた在庫を資産として立てる 2 本が骨格で、売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高(当期製品製造原価)-期末棚卸高」で出る。製造業では材料・仕掛品・製品の 3 か所で同じ形をとる。受払いを記録していれば帳簿と実地の差が見え、差は棚卸減耗として別の科目で受けてから製造原価や売上原価に振り替える。値下がりによる切下げは数の差と分け、会計の仕訳と法人税の扱いの違いは別に記録する。仕訳に入れる金額は棚卸表から作るので、仕訳の前に棚卸表の区分と合計、預け在庫、期末をまたぐ入荷を揃えておく。
出典・参考資料
- 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 法人税法施行規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 監査基準報告書 501「特定項目の監査証拠」(日本公認会計士協会 監査・保証基準委員会/2024 年 9 月 26 日最終改正)
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(金融庁 企業会計審議会/令和 5 年 4 月 7 日改訂)
- 法人税基本通達 第5章第1節第1款 購入した棚卸資産(5-1-1〜5-1-2)(国税庁)
- 法人税基本通達 第5章第1節第2款 製造等に係る棚卸資産(5-1-3〜5-1-7)(国税庁)
- 法人税基本通達 第2章第2節第2款 販売費及び一般管理費等(2-2-15 消耗品費等)(国税庁)
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