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FCD 450-10(JIS G 5502)の発注——伸び・黒鉛球状化率と2024年追補、FC250 からの置き換え

この記事のポイント(結論先出し)
「FCD450」は、現行の JIS G 5502:2022(2024 年に追補 1)では FCD 450-10 と書く種類で、末尾の数字は破断伸び 10% を表す[1]。規格の値(引張強さ 450 MPa 以上・伸び 10% 以上)が決まっているのは対象肉厚 30 mm 以下の鋳造試験片で、30 mm を超えると受渡当事者間の協定になる[1]。どの試験片の値かは記号の末尾(/S・/U・/C)で区別する[1]。黒鉛球状化率は 80% 以上だが、80% 未満でも引張特性が規定を満たせば合否は協定による[1]。2024 年の追補で、0.2% 耐力と硬さは注文者の指定があるときに適用、内部の健全性と外観は協定がなければ製造業者の判断、と改められた[1]。発注書では、試験片の種類、対象肉厚、耐力・硬さ・成績書の要否を埋める。
目次
FCD450 は、いまの JIS では FCD 450-10
ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)は、溶湯に黒鉛球状化処理をして黒鉛を球に近い形にした鋳鉄で、片状黒鉛のねずみ鋳鉄より強さと伸びが出る。JIS G 5502 は、球状にした黒鉛が存在する鋳鉄品を球状黒鉛鋳鉄品と定義し、注記で「球状黒鉛鋳鉄は、ダクタイル鋳鉄ともいう」としている[1]。2022 年に改正され、2024 年 3 月 21 日には追補 1 が出ている[1]。
図面や見積の会話で「FCD450」と呼ばれる材料は、現行の規格の表 1 では「FCD 450-10」である[1]。2024 年の追補は、表 2 と表 3 の種類の記号は、対象肉厚 30 mm 以下で鋳造した鋳造供試材から加工した試験片による引張強さと破断伸びの組合せで表記している、と書き直した[1]。「450」が引張強さ、「10」が伸びである。同じ規格には FCD 400-15・FCD 400-18・FCD 500-7 など、引張強さの近い記号が並ぶ[1]。強さだけで呼ぶと、伸びの違う種類と取り違えるので、発注書では伸びまで書く。
表 1 の注記によれば、記号の末尾にさらに付記をする[1]。
1. /S
別鋳込み試験片の場合。
2. /U
共込め試験片又は本体付き試験片の場合。
3. /C
切出し試験片(鋳鉄品本体から切り出した試験片)の場合。
「FCD 450-10/S」と「FCD 450-10/C」では、同じ数字でも値の意味が違う。どれで確かめるかを決めないまま発注すると、規格上は供試材の種類を製造業者が選んでよいことになっている。8.1.1 は、供試材の種類は受渡当事者間の協定によるとしたうえで、協定がない場合は製造業者が選択してもよい、と書いている[1]。
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FCD 450-10 の値と、対象肉厚
FCD 450-10 の規定値と参考値を、FC250 と並べると次のとおりである。
| 項目 | FCD 450-10/S・/U(表 2・規定) | FCD 450-10/C(附属書 D・参考) | FC250(JIS G 5501 表 2) |
|---|---|---|---|
| 引張強さ(肉厚 30 mm 以下) | 450 MPa 以上 | 440 MPa 以上 | 250 N/mm² 以上(別鋳込み供試材・肉厚によらない) |
| 0.2% 耐力(肉厚 30 mm 以下) | 280 MPa 以上(SGI は注文者の指定がある場合に適用) | 300 MPa 以上 | 規定なし |
| 破断伸び(肉厚 30 mm 以下) | 10% 以上 | 8% 以上 | 規定なし |
| 肉厚 30 mm 超え 200 mm 以下 | 受渡当事者間の協定による | 製造業者が提供する | (参考表で別に示す) |
| 硬さ | 注文者の指定がある場合に試験し、結果は協定。参考の硬さ範囲 140〜210 HBW(附属書 E) | 注文者の要求がある場合に 241 HB 以下 | |
FCD の値は JIS G 5502 の表 2、附属書 D の表 D.1、附属書 E の表 E.1 と追補 1 による[1]。FC250 は JIS G 5501 の表 2 による[2]。
表で一番大事なのは、肉厚 30 mm を超える行である。FCD 400-15 や FCD 500-7 には肉厚 30〜60 mm、60〜200 mm の値があるのに、FCD 450-10 は 30 mm を超えると「受渡当事者間の協定による」となっている[1]。厚肉の部品で FCD 450-10 を指定するなら、その肉厚での値を協定しないと、規格だけでは合否が決まらない。
対象肉厚の決め方も、追補で 1 文足された。対象肉厚は受渡当事者間の協定によるが、協定がない場合は製造業者の判断による[1]。どの肉厚を「代表」として供試材の寸法(表 5 の A 号〜D 号)を決めるかを、仕入先任せにしないなら、図面か仕様書で示しておく。
規格は表 2 の注記で、鋳造試験片の引張特性値は対象肉厚に対応した鋳鉄品の値を表しているが、鋳鉄品は部分ごとに肉厚が変化するため、鋳鉄品全体の特性を表しているわけではない、と書いている[1]。附属書 D も、注文者が鋳鉄品の指定する箇所で引張特性を要求する場合は、その特性は受渡当事者間の協定による、としている[1]。
2024 年の追補で変わったこと
2022 年版を前提にした仕様書を使っているなら、追補 1 で変わった点を確かめておきたい[1]。
1. 0.2% 耐力
SSSGI(固溶強化フェライト基地の種類)では必須だが、FCD 450-10 を含む SGI では注文者の指定がある場合に適用する、とされた。耐力を設計に使うなら、指定しておく。
2. 硬さ
SGI は、注文者からの指定がある場合に試験を行い、その結果は協定による、に置き換えられた。硬さはブリネル硬さが望ましいが、協定で他の硬さ試験を選んでもよい。
3. 内部の健全性と外観
どちらも合否判定基準は協定によるとしたうえで、協定がない場合は製造業者の判断による、と書き足された。内部の健全性試験も、協定がない場合は製造業者の判断となった。
4. 試験単位と再試験
試験単位は製造業者の判断による(協定で変更してもよい)、とされた。引張試験の再試験は、鋳鉄品、供試材、予備の試験片のいずれかを用いて行ってよい、と書き直されている。
まとめれば、2024 年版は「注文者が言わなければ、製造業者の判断」という範囲が広がっている。耐力・硬さ・内部欠陥・外観の合否を自社の基準で見たいなら、発注時に書いておく必要がある。内部欠陥の受入基準の決め方は鋳物の材質と内部欠陥の受入基準で扱った。
黒鉛球状化率——80% と、その例外
球状黒鉛鋳鉄の性質は、黒鉛がどれだけ球になっているかで決まる。規格は 7.6.1 で、附属書 JA(画像解析による JIS 法)、附属書 JB(超音波の伝搬速度による音速法)、または附属書 F(ISO 法)で求めた鋳鉄品の黒鉛球状化率は 80% 以上とする、と定めている[1]。ただし、80% 未満の場合の合否判定は、引張特性が規定を満足していれば受渡当事者間の協定による[1]。片状の黒鉛(図 F.1 のタイプ I)は、鋳鉄品の表層部を除いて存在してはならない[1]。
試験結果には、附属書 JA なら「JIS 法」、附属書 F なら「ISO 法」、附属書 JB なら「音速法」と付記しなければならない[1]。音速法は協定によって使う方法で、その結果が規定に合わない場合は試験を無効にして JIS 法か ISO 法で再試験してよい、とされている[1]。成績書の球状化率の欄に、どの方法かが書かれているかを見る。
規格は附属書 F で、黒鉛球状化率は化学成分、残留マグネシウム量、接種方法などだけでなく測定する断面の冷却速度にも依存し、引張特性の値を満足する具体的な球状化率を決めることは困難だ、と書いている[1]。疲労条件下で使う鋳鉄品では、より高い球状化率が要求され、そのような規定値は鋳造方法と種類の記号ごとに個別の試験で評価することが望ましい、ともしている[1]。繰返し荷重のかかる部品で 80% 以上を超える要求をするなら、規格の外の要求として値と測り方を協定する。
音速で材質を見る考え方は、現場の検査の工夫から来ている。山田らは、肉厚を変えたダクタイル鋳鉄の実体試験片で音速と引張強さに良い相関があったことを示し、本来求められる特性が引張強さなら黒鉛形状などとの関係を把握しておく必要がある、と述べている[3]。
厚い部分と薄い部分で起きること
FCD を厚肉の部品に使うと、黒鉛の形が崩れやすい。厚肉球状黒鉛鋳鉄を研究した津村の学位論文は、球状化処理後に鋳込みまでの時間が長いと黒鉛の球状化が不完全になるフェーディング現象や、冷却速度が遅くなると黒鉛形状が球形から崩れて延性や靭性が低下する現象を挙げている[4]。著しい場合にはチャンキー黒鉛と呼ばれる微細な黒鉛が発生し、従来の片状黒鉛鋳鉄と同程度かそれ以下の延性しか得られず、伸びは通常の 1/2 以下にまで下がる、と先行研究を引いて説明している[4]。FCD 450-10 の規定値が 30 mm を超えると協定になっているのは、この難しさと無関係ではない。厚肉部があるなら、その部位の組織と伸びをどう確かめるかを試作で決める。
逆に薄い部分では、チル(硬い炭化物の組織)が問題になる。堀川らは、鋳鉄は薄肉化により脆いセメンタイトのチル組織が生じやすくなるため、希土類金属の添加などでチル組織を抑えて肉厚 2 mm 程度までの薄肉球状黒鉛鋳鉄を作る技術が開発されていると書いている[5]。同じ研究は、肉厚 2 mm の試験片で、鋳肌を残した試験片の引張強さは機械加工した試験片より小さかったと報告している[5]。鋳肌のまま使う薄肉部品では、機械加工した試験片の値をそのまま当てはめない。
FC250 から FCD 450-10 へ置き換えるとき
FC250 で強さや伸びが足りずに FCD へ替える場合、置き換えるときに確かめたいのは次の点である。
1. 確かめる値が変わる
FC250 は別鋳込み供試材の引張強さだけが合否の値で、伸びの規定はない[2]。FCD 450-10 は引張強さと伸びの組合せで、黒鉛球状化率の要求も加わる[1]。成績書の項目が増えるので、受入で何を見るかを決め直す。
2. 肉厚の範囲
FC250 は参考表で肉厚 300 mm 未満まで値を示している[2]が、FCD 450-10 の規定値は肉厚 30 mm 以下までである[1]。厚肉部品では値の協定が要る。
3. 硬さの範囲
附属書 E は FCD 450-10 の参考の硬さ範囲を 140〜210 HBW とし、SGI の引張強さは黒鉛球状化率が同一であれば硬さ(HBW)の約 3 倍になる、と説明している[1]。加工条件や受入の硬さ測定を FC250 の値のまま流用しない。
4. 物理的性質
附属書 G は、FCD 450-10 の縦弾性係数の代表値を 169 GPa、密度を 7.1 kg/dm³ と示している(参考値)[1]。剛性や質量の計算を見直すなら、規格の代表値を使うか、仕入先の実測値を求めるかを決める。材料定数の扱いはヤング率などの材料定数を設計・発注で使うときも参考になる。
ねずみ鋳鉄の側の論点はFC250(JIS G 5501)の発注で扱った。ダイカスト化を検討するなら、ADC12(JIS H 5302)の発注に置き換えの確認項目をまとめた。
海外で作るときの記号
附属書 I(参考)は、FCD 450-10 に対応する記号として、ISO1083/JS/450-10、EN-GJS-450-10、ASTM A536 の 65-45-12、GB/T 1348 の QT450-10、SAE J434 の D450 を並べている[1]。これは記号の対比で、試験片の採り方や値が同じことを保証するものではない。海外の鋳造所で外国規格の材料で作るなら、同等とみなす判断と承認の手順を踏む。手順は同等材の指定と承認で整理した。
発注書に書くこと
1. 規格と種類の記号
「JIS G 5502 FCD 450-10/S」のように、規格番号と、伸びと試験片の付記まで書く[1]。
2. 対象肉厚
どの肉厚を代表とするか。30 mm を超えるなら、その肉厚での引張特性を協定する[1]。
3. 0.2% 耐力と硬さ
要るなら指定する。指定がなければ SGI では適用されない[1]。
4. 黒鉛球状化率
80% 以上の規定に加えて、測定方法(JIS 法・ISO 法・音速法)と、疲労部品ならより高い値を協定するか[1]。
5. 内部の健全性と外観
合否判定基準を書く。書かなければ製造業者の判断になる[1]。
6. 試験成績書
規格は、注文者の要求がある場合に、種類の記号・製造番号・製造業者名と試験結果・試験方法を記載した成績書を提出するとしている[1]。求める、と書く。
よくある質問
図面に「FCD450」とだけ書いてあります。どう扱えばよいですか
現行の JIS G 5502 の記号は伸びまで含めた「FCD 450-10」である[1]。図面の記号を設計に確かめ、試験片の種類(/S・/U・/C)と対象肉厚を加えた形で発注書に書く。
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成績書の球状化率が 78% でした。不合格ですか
規格は 80% 以上としつつ、80% 未満でも引張特性が規定を満足していれば合否は協定による、としている[1]。発注時に 80% 未満を認めない条件を書いていなければ、扱いを仕入先と協議することになる。次の発注からは、球状化率の合否を書いておく。
製品から切り出した試験片の値が 450 MPa に届きません
切出し試験片(/C)の引張特性は協定によるもので、附属書 D の参考値は肉厚 30 mm 以下で 440 MPa 以上、伸び 8% 以上である[1]。/S や /U の規定値と比べて不合格とはできない。切出し試験片で受け入れるなら、位置と値を発注前に協定する。
まとめ
FCD450 と呼ばれる材料は、現行の JIS では FCD 450-10 で、引張強さ 450 MPa 以上・伸び 10% 以上の規定値は対象肉厚 30 mm 以下の鋳造試験片の値である。どの試験片の値かは /S・/U・/C の付記で区別し、30 mm を超える肉厚では値を協定する。黒鉛球状化率は 80% 以上だが、引張特性を満たせば 80% 未満の合否は協定になる。2024 年の追補で、耐力と硬さは指定したときだけ適用され、内部の健全性と外観は協定がなければ製造業者の判断になった。発注書で、記号・試験片・対象肉厚・耐力・硬さ・球状化率の測り方・欠陥の合否・成績書を埋めておく。
出典・参考資料
- JIS G 5502:2022 球状黒鉛鋳鉄品(追補 1:2024)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 3 月 21 日改正。本体と追補 1 を閲覧)
- JIS G 5501:1995 ねずみ鋳鉄品(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 7 月 1 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
- 鋳鉄品の破壊試験から非破壊試験へ(山田聡・中山英明/鋳造工学 全国講演大会講演概要集 第 155 回/2009 年)
- 厚肉球状黒鉛鋳鉄の黒鉛形状制御と製造技術に関する研究(津村治/室蘭工業大学 学位論文・学術機関リポジトリ)
- 鋳肌を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄の引張および疲労強度特性評価(堀川紀孝ほか/鋳造工学 87 巻 6 号/2015 年)
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