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投稿日:2026年10月17日

ねじの下穴径 JIS B 1004 の決め方——ひっかかり率と6H、止まり穴の深さ、転造タップ

この記事のポイント(結論先出し)

ねじの下穴径は JIS B 1004 が、一般用メートルねじを切削によるねじ立てで作る場合について、ひっかかり率 100%〜65% の 8 系列で定めている[1]。図面には下穴径ではなく、めねじの呼びと公差域クラス(M8-6H など)を書き、下穴径は加工する側が、めねじの内径の許容範囲に入る系列から選ぶのが基本である。M8 の 6H なら内径は 6.647〜6.912 mm で、ひっかかり率 80% の系列(6.92 mm)はもう範囲の外に出る[1]。下穴を広げてもねじプラグゲージでは見つからない。めねじの内径はプレーンプラグゲージで検査する[2]。転造(盛上げ)タップの下穴は JIS B 1004 の対象外である。止まり穴は、タップの食付き部のぶんだけ底に不完全なねじ山が残るので[3]、必要な完全ねじ部の長さと穴の深さを図面で決める。

「タップ M8」の指示で決まっていること、決まっていないこと

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機械加工部品の図面には、めねじが「M8」「M8 深さ 15」のように書かれ、下穴径は書かれていないことが多い。それで問題がないのは、下穴径を加工する側が規格に沿って決めるからである。ところが、タップの折損を減らしたい、加工を速くしたいといった理由で、下穴を規格の範囲より大きくする工場もある。発注側が何を基準に合否を見るかを決めていないと、ねじ山の浅いめねじがそのまま納入される。

この記事は、切削・旋削で作る工業部品のめねじについて、下穴径の考え方と、図面・発注書に書くこと、受け取るときに確かめることをまとめる。公差域クラス(6H など)の選び方とめっきの扱いはねじの公差域クラスの指定で、インサート(ヘリサートなど)を入れる取付穴はねじ穴とインサートの図面指示と受入で扱った。この記事は、普通のタップで立てるめねじの下穴に絞る。

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JIS B 1004 の下穴径は「ひっかかり率」で 8 系列

JIS B 1004(ねじ下穴径・2009 年改正)は、JIS B 0205-2 の一般用メートルねじを、切削によるねじ立てまたはこれに準じる加工で作る場合の下穴径を定めている[1]。下穴径の系列は、ひっかかり率によって 100・95・90・85・80・75・70・65 の 8 系列とし、並目と細目について呼び径ごとの値を表にしている[1]。

ひっかかり率は、ねじ用語の規格で、基準のひっかかりの高さに対する実体のひっかかりの高さの百分率と定義されている[9]。おねじとめねじが重なり合う山の高さが、理論上の何割あるかを表す数字である。下穴を大きくするほどめねじの山の頂が低くなり、ひっかかり率は下がる。JIS B 1004 は、下穴径を「呼び径から、基準のひっかかりの高さの 2 倍にひっかかり率を掛けた値を引く」形の式で計算している[1]。

どの系列を使ってよいかは、めねじの内径の公差で決まる

JIS B 1004 の表には、参考として公差域クラスごとのめねじ内径の許容限界寸法が並んでいる。めねじ内径の許容限界寸法は JIS B 0209-3 によるとされ、表の中で、線より左側の太字の値が 6H や 7H の内径の許容範囲に入ることを示している[1]。次の表は、並目の M6〜M12 について、代表的な 4 つの系列の下穴径と 6H の内径の範囲を抜き出したものである[1]。

ねじの呼び(ピッチ) 系列 100 mm 系列 90 mm 系列 80 mm 系列 65 mm 6H のめねじ内径(最小〜最大)mm
M6(1) 4.92 5.03 5.13 5.30 4.917〜5.153
M8(1.25) 6.65 6.78 6.92 7.12 6.647〜6.912
M10(1.5) 8.38 8.54 8.70 8.94 8.376〜8.676
M12(1.75) 10.1 10.3 10.5 10.8 10.106〜10.441

表から分かることは二つある。一つは、ひっかかり率 65% の系列は、どの呼び径でも 6H の内径の最大を超えていることである。もう一つは、6H に入る系列の範囲が呼び径によって違うことで、M6 では 80% の系列(5.13 mm)がまだ 6H の範囲に入るが、M8・M10 では 80% の系列が範囲の外に出る。M12 では 100% の系列(10.1 mm)が 6H の最小を下回る。「ひっかかり率 80% なら大丈夫」といった一律の決め方は、呼び径によっては 6H を外れる。

ここから、発注側の基本の書き方が出てくる。図面には「M8-6H」のようにめねじの呼びと公差域クラスを書き、下穴径は加工する側が、その公差域クラスの内径の範囲に入る系列から選ぶ。設計が強度上の理由でひっかかり率を指定したいなら、下穴径を寸法で書くのではなく、めねじの内径の範囲を書くほうが、合否を測れる形になる。

下穴を広げても、ねじゲージでは分からない

メートルねじ用限界ゲージの JIS B 0251 は、通り側と止り側のねじプラグゲージを工作物めねじのゲージ検査に用い、プレーン通り側とプレーン止り側のプラグゲージを工作物めねじの内径の検査に用いる、としている[2]。ねじプラグゲージが確かめるのは主に有効径(ねじ山の中ほどの径)で、内径が大きすぎるかどうかは、プレーンプラグゲージ(ねじのない円筒のゲージ)の止り側を当てないと分からない。

タップの折損を減らすために下穴を一段大きくしためねじは、ねじプラグゲージの通り側も止り側も合格することがある。その場合でも、内径が 6H の最大を超えていれば規格の外で、ひっかかり率は下がっている。かみ合う山の高さが減ると、ねじ山がせん断で壊れる荷重も下がる。めねじの強さが効く部位(相手が鋼の高強度ボルト、薄肉のアルミ部品、圧力を受ける部品など)では、受入の検査項目に内径のプレーンゲージを入れるか、内径を測った成績を求める。JIS B 0251 は、使用者が注文時に、工作物ねじの検査にどの手段を採用するかを製造業者に通知することを推奨している[2]。

タップの種類と下穴:転造タップは JIS B 1004 の外

ねじ加工工具用語の JIS B 0176-1 は、切れ刃がなく塑性加工によってめねじを成形するタップを盛上げタップ(転造タップ)と定義し、切りくずを進行方向に出すスパイラルポイントタップ(ポイントタップ)、シャンク側に出すスパイラルタップなどと区別している[4]。JIS B 1004 の下穴径は切削によるねじ立ての場合の規格なので[1]、盛上げタップでめねじを作るときの下穴は、この表ではなく工具の製造業者が示す値で決めることになる。切削の表の値をそのまま使うと、材料を押しのけてねじ山を作る加工の前提に合わない。

加工の方法は工場の選択に任せてよいことが多いが、切削から盛上げに変えると、下穴径もめねじの山のでき方も変わる。めねじの内径をどの値で合否にするかを、加工方法を変えるときに一緒に確かめる。工場が加工方法を変えるときは、事前に知らせてもらう取り決めにしておく。

タップの規格にも注意がある。メートルねじ用ハンドタップの JIS B 4430 は、タップの等級をクラス 1・2・3 とし、参考としてクラス 2 は 6H のめねじに対応すると示しているが、その対応は各等級のタップで立てためねじがその等級に必ず適合することを意味しない、と書いている[3]。「6H 用のタップで立てたから 6H」とはいえないので、合否はゲージで見る。

止まり穴:タップの食付き部の山数ぶん、底のねじは完全でない

行き止まりのねじ穴(止まり穴)では、タップの先端の食付き部がねじ山を完全な形に作れないので、穴の底の近くに不完全なねじ山が残る。JIS B 4430 は、食付き部の長さを一般に先タップ 6 山以上、中タップ 3.5〜5.5 山、上げタップ 2 山未満としている[3]。上げタップでも 1〜2 山、中タップなら数山ぶん、穴の底側は使えるねじにならない。

製図の規格 JIS B 0002-1 は、ねじ長さの寸法は一般に必要だが止まり穴の深さは通常は省略してよく、穴深さを指定しない場合はねじ長さの 1.25 倍程度に描くとし、深さを示す必要があるかどうかは主として部品そのものとねじ加工に使う工具による、としている[5]。下穴の深さが機能に効く部品(裏側までの肉が薄い、裏に別の穴がある、気密を保つ)では、次の二つを図面に書く。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。

1. 完全ねじ部として必要な長さの最小
ねじ長さを「完全ねじ部で何 mm 以上」と書けば、食付き部の山数を見込んだ下穴の深さは加工する側が決められる。

2. 下穴の深さの上限、または残す肉厚の下限
突き抜けや気密不良を防ぐ。

ねじ込む深さ(かみ合い長さ)は、弱いほうの材料で決める

下穴径とならんで、めねじの強さを決めるのはかみ合う長さである。NASA の締結部品設計マニュアル(1990 年)は、ボルトを別の(しばしば強度の低い)材料のめねじにねじ込む場合、ボルトの強さを全部使うのであれば、めねじの深さは弱いほうの材料で決めなければならないとし、引抜き荷重を「めねじの平均径(有効径)× 円周率 × 材料のせん断強さ × かみ合い長さ ÷ 3」で求める式を示している。3 で割るのは経験的な係数で、ねじ山が完全に合っていれば 2 で割る値になるところを、山の合い方のずれを見込んで 3 にしている、と説明している[6]。

植込みボルトの JIS B 1173 は、植込み側のねじ部長さを 1 種 1.25d、2 種 1.5d、3 種 2d に等しいかこれに近い値とし、1 種と 2 種は鋼(鋳鋼品・鍛鋼品を含む)または鋳鉄に、3 種は軽合金に植え込むものを対象としている[7]。相手が軽合金なら、鋼や鋳鉄向けの 1 種(1.25d)の 1.6 倍(2d)のかみ合い長さを見込むという目安として読める。ナットの規格 JIS B 1052-2 も、ボルトとナットのどこで壊れるかは、硬さや高さ・ピッチ・公差域クラスに加えて、有効なかみ合い長さで決まるとしている[8]。アルミや樹脂の部品に鋼のボルトをねじ込む部位では、かみ合い長さと下穴径の両方を設計が決め、購買はその値が図面に書かれているかを確かめる。植込みボルトの指定は植込みボルトの指定で扱った。

発注書・図面に書くこと

決まった様式はないが、書いておきたい内容を例にまとめる。

「めねじ M8-6H、完全ねじ部 12 mm 以上、下穴深さ 18 mm 以下(図面による)。下穴径は JIS B 1004 によるものとし、6H のめねじ内径の範囲を外れる下穴径は使用しない。盛上げタップへの加工方法の変更は事前に通知のこと。受入ではねじプラグゲージ(通り側・止り側)とプレーンプラグゲージ(内径)で検査する。」

細目ねじの下穴は、JIS B 1004 の細目の表による[1]。並目と細目では同じ呼び径でも下穴径がまったく違うので、ピッチの書き落としに注意する。細目ねじの指定は同じ束のメートル細目ねじの指定で扱う。

受け入れるときに確かめること

1. ねじプラグゲージ
通り側が完全ねじ部の必要な長さまで入るか、止り側が入らないか。

2. 内径(プレーンプラグゲージ)
止り側が入らないか。下穴を広げためねじはここで見つかる[2]。

3. 深さ
完全ねじ部の長さと、下穴の深さの上限。止まり穴の底に切りくずが残っていると通り側ゲージが奥まで入らないので、清掃の取り決めも一緒にしておく。

4. 変更の通知
下穴径・タップの種類・加工方法の変更が、取り決めどおり事前に知らされているか。

よくある質問

図面に下穴径を書いたほうが確実ですか

下穴径を寸法で書くと、加工する側はその値を守ることになるが、合否を見るのはめねじそのもの(有効径と内径)である。めねじの呼びと公差域クラスを書けば、下穴径は JIS B 1004 の系列から内径の範囲に入るものを選べる[1]。ひっかかり率を指定したい特別な事情があるときだけ、内径の範囲を書く。

タップが折れるので下穴を大きくしたいと言われました

6H の内径の範囲の中で一段大きい系列に変えるのなら、規格の範囲内である。範囲を超える場合は、ひっかかり率が下がり、ねじプラグゲージでは見つからないまま強さが落ちる[2]。範囲を超えるなら設計の承認を取り、7H など公差域クラスの変更として扱う。公差域クラスを変えると内径だけでなく有効径の公差も変わるので、ねじプラグゲージも 7H 用に替え、相手のおねじとのはめあいを設計に確かめる。

タッピンねじの下穴も、この表で決めてよいですか

使えない。JIS B 1004 は一般用メートルねじを切削でねじ立てする場合の規格で[1]、タッピンねじのねじ部は別の系列である。同じ束のタッピンねじの指定で扱う。

まとめ

ねじの下穴径は、JIS B 1004 が切削でねじ立てする場合について、ひっかかり率 100%〜65% の 8 系列で定めている。図面にはめねじの呼びと公差域クラスを書き、下穴径は内径の許容範囲に入る系列から選ぶ。6H に入る系列は呼び径によって違い、M8・M10 では 80% の系列がもう範囲の外になる。下穴を広げためねじはねじプラグゲージでは見つからないので、内径はプレーンプラグゲージで見る。盛上げタップの下穴は JIS B 1004 の対象外で、工具の製造業者の値による。止まり穴は食付き部の山数ぶん底のねじが不完全なので、完全ねじ部の長さと下穴深さの上限を図面に書き、強度の低い材料にねじ込むときは、かみ合い長さを弱いほうの材料で決める。

同じ束では、メートル細目ねじの指定、全ねじ・半ねじとねじ長さ、タッピンねじの指定、座金組込みねじ(セムス)の発注も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS B 1004:2009 ねじ下穴径(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2009 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 0251:2008 メートルねじ用限界ゲージ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2008 年 3 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS B 4430:1998 メートルねじ用ハンドタップ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1998 年 8 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  4. JIS B 0176-1:2002 ねじ加工工具用語-第1部:タップ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2002 年 7 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
  5. JIS B 0002-1 製図-ねじ及びねじ部品-第1部:通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1998 年 1 月 20 日制定・2023 年 6 月 20 日確認)
  6. Fastener Design Manual(NASA Reference Publication 1228)(Richard T. Barrett/NASA/1990 年 3 月)
  7. JIS B 1173:2010 植込みボルト(追補 1:2015 を含む)(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 12 月 21 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  8. JIS B 1052-2:2025 締結用部品-炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2025 年 1 月 20 日改正)
  9. JIS B 0101:2013 ねじ用語(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 4 月 22 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)

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