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投稿日:2026年10月26日

カラー(スペーサー)部品の発注——幅の公差と端面の平行度、普通公差だけでは決まらない所

この記事のポイント(結論先出し)

軸に通して部品どうしの間隔を決めるカラー(スペーサー)には、JIS の製品規格が無い。図面に書いたことがすべてで、効くのは幅(長さ)の公差、両端面の平行度、端面と穴の直角度、内径と軸のはめあいの 4 つである。図面に「JIS B 0405-m」とだけ書くと、幅 20 mm なら ±0.2 mm になり[1]、平行度などの幾何公差はどこにも決まらない。普通幾何公差を使うなら JIS B 0419 を引用する必要があり、その場合でも平行度は寸法公差(±0.2 mm なら 0.4 mm)と同じ大きさになる[2]。間隔で精度を出すカラーは、幅と平行度を個別に書く。鋼管(STKM)から作るなら、電縫管の内面ビードの扱いも決める[4]。

カラーとスペーサーは図面だけで決まる部品

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この記事は、機械部品としてのカラー・スペーサー、つまり軸やボルトに通して部品と部品の間隔を決める筒形や輪形の部品を発注する立場で、図面と注文書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめる。自動車のホイールスペーサーの話ではない。

カラーやスペーサーという名称で寸法や許容差を決めた JIS の製品規格は無い。日本産業標準調査会の JIS 検索で規格名に「スペーサ」「カラー」を含む規格を引いても該当は無く、本文の語として引くと多くの規格に出てくるが、カラーやスペーサーそのものの寸法と許容差を決めた規格は見当たらない。カタログ品のカラーにはメーカーごとの寸法と許容差があるが、自社の図面で作らせる場合は、図面に書いた寸法・公差と、図面が引用した規格だけが約束になる。

カラーは形が単純なので、図面も簡略になりがちである。外径・内径・幅の 3 つの寸法だけを書き、公差は表題欄の普通公差に任せる図面が多い。この「単純だから普通公差で足りる」という判断が、組み上げたあとの不具合の元になる。

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普通公差だけで出すと、どこまで許されるか

JIS B 0405 の普通公差は、表題欄の中またはその付近に「JIS B 0405」と公差等級(例:JIS B 0405-m)を指示したときに適用される[1]。中級(m)の長さ寸法の許容差は、基準寸法 6 mm を超え 30 mm 以下で ±0.2 mm、30 mm を超え 120 mm 以下で ±0.3 mm である[1]。

JIS B 0405 が決めるのは長さ寸法と角度寸法の公差で、平行度や直角度のような幾何公差は決めていない。個々に指示が無い形体の幾何公差は、JIS B 0419(普通公差-第 2 部)が決めており、図面に「JIS B 0419-mK」のように指示したときに適用される[2]。JIS B 0405 しか書いていない図面では、カラーの端面の平行度は何も決まっていないことになる。

JIS B 0419 を引用した場合でも、カラーにとって大事な平行度は、寸法公差と平面度公差・真直度公差のいずれか大きいほうの値に等しくとると定められている[2]。幅 20 mm、±0.2 mm のカラーなら、平行度の普通公差は寸法公差の 0.4 mm になる。直角度の普通公差は、短い方の辺が 100 mm 以下なら等級 H で 0.2 mm、K で 0.4 mm、L で 0.6 mm である[2]。

外径 30・内径 20・幅 20 mm のカラー 「JIS B 0405-m」だけの図面 「JIS B 0419-mK」の図面
幅 20 mm ±0.2 mm ±0.2 mm
内径 20 mm ±0.2 mm ±0.2 mm
両端面の平行度 決まらない 0.4 mm(寸法公差と同じ)
端面と穴の直角度 決まらない 0.4 mm(等級 K)
端面の軸方向の円周振れ 決まらない 0.2 mm(等級 K)
(参考)内径を H7 で個別に指示 20 mm で 0〜+0.021 mm(基本サイズ公差 IT7 は 21 µm)

表の値は規格の表から当記事で拾ったもので[1][2][3]、等級 K の円周振れは 0.2 mm、H は 0.1 mm、L は 0.5 mm である[2]。また、どちらの規格も、普通公差を超えた工作物でも機能が損なわれない場合は自動的に不採用にしてはならないとしている[1][2]。普通公差は「この範囲なら必ず合格」でも「外れたら必ず不合格」でもない点も、受入で揉める元になる。

精度を出すカラーで個別に書く 4 つのこと

1. 幅の公差
カラーの役目は間隔を決めることなので、幅は機能そのものである。軸受の間隔や歯車の位置を決めるカラーで ±0.2 mm が許されるかを、組立の要求から決めて個別に書く。複数のカラーや部品を軸方向に並べる場合は、幅の誤差が積み上がる。考え方は公差の積み上げの記事で扱っている。

2. 両端面の平行度
両端面が平行でないと、締め付けたときに隣の部品が傾く。データムにする端面を決め、反対の端面に平行度を数値で書く。普通幾何公差の平行度は寸法公差と同じ大きさで[2]、間隔の精度を求めるカラーには大きすぎることが多い。

3. 端面と穴の直角度(または端面の振れ)
穴に対して端面が傾いていると、軸に通したときに端面が回転方向に振れる。穴をデータムにして端面に直角度か軸方向の円周振れを書く。普通幾何公差の直角度は、等級 H でも 0.2 mm である[2]。

4. 内径と軸のはめあい
軸に滑らせて入れるのか、締まりばめで固定するのかで内径の公差は変わる。公差クラスで書くなら、例えば内径 20 mm の H7 は 0〜+0.021 mm になる(18 mm を超え 30 mm 以下の IT7 が 21 µm)[3]。公差クラスが何を決め、何を決めないかははめあいの記事を見てほしい。

図面への書き方の例

普通公差と個別の指示を組み合わせると、カラーの図面は次のような書き方になる。表題欄の付近に「JIS B 0419-mK」と書けば、長さ寸法は JIS B 0405 の中級、指示の無い形体の幾何公差は JIS B 0419 の等級 K になる[2]。そのうえで、機能に効く所だけを個別に指示する。

「幅 20 ±0.02(端面 A をデータム) 反対端面の平行度 0.01(データム A) 内径 φ20 H7 端面 A の直角度 0.01(内径の軸線をデータム) 表題欄付近:JIS B 0419-mK」

数値は例で、実際の値は組立の要求から決める。個別に指示した公差は普通公差の適用範囲外になり[1]、そのまま合否の基準として使える。逆に、普通公差に任せた寸法は、機能が損なわれない限り自動的に不採用にしてはならない[1][2]。どこを個別に書くかは、どこで合否をはっきりさせたいかの判断でもある。

すべての単一のサイズ形体に包絡の条件を当てはめたい場合は、普通公差の表示に記号 E を加えて「JIS B 0419-mK-E」と書く[2]。内径のように軸と組み合わせる形体で、寸法の範囲の中に形状の誤差も収めたい場合の書き方である。ただし規格は、寸法公差より大きい真直度公差を個々に指示した形体、例えば素形材には包絡の条件は適用できないとしている[2]。

鋼管から作るなら、材料の許容差と内面ビードを確かめる

カラーは、丸棒から削るか、鋼管を切って作ることが多い。機械構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3445、STKM)は、機械器具・自動車・自転車・家具などの機械部品に使う炭素鋼鋼管の規格である[4]。

STKM の外径の許容差は 1 号・2 号・3 号の区分があり、外径 25 mm 未満なら 1 号 ±0.5 mm、2 号 ±0.25 mm、3 号 ±0.12 mm である[4]。熱間仕上げ継目無鋼管は 1 号を適用し、その他の管でどの区分を適用するかは受渡当事者間の協定による[4]。外径や内径を削らずに管のまま使うカラーなら、区分の指定で精度が大きく変わる。

見落としやすいのが、電気抵抗溶接鋼管(電縫管)の内面の溶接ビードである。規格は、内面溶接ビードを除去しない場合の溶接部の厚さの上限を定めており、母材の厚さが 2.38 mm 以下なら母材厚さの 2 倍まで許される[4]。内面に盛り上がりが残った管をそのまま切ってカラーにすると、軸が通らないことがある。管のまま内径を使うなら、内面ビードを除去した管か継目無鋼管を指定するか、内径を削る前提にする。

また、管の両端は管軸に対して「実用的に直角」であればよいとされており[4]、端面の直角度は材料の段階では数値で保証されていない。切断したままの端面をカラーの基準面にするなら、端面の加工を図面で指示する。

平座金で代用してよいか

間隔を少し調整したいときに、平座金を重ねて代用する例がある。JIS B 1256(平座金)は、一般用のボルト・小ねじ・ナットに使う鋼製とステンレス鋼製の丸形平座金を規定する規格で[5]、ボルトの座面に入れることを前提にした部品である。間隔の精度や端面の平行度を目的に作られたものではないので、間隔で機能が決まる所に平座金を重ねて使うのは避け、カラーとして図面を起こすか、厚さの許容差を決めたシムで調整する。平座金そのものの選び方は平座金・ばね座金の記事で扱っている。

受け取るときに確かめること

幅はマイクロメータか、定盤の上でダイヤルゲージを使って複数箇所を測る。複数箇所の幅の差は、両端面の平行度の目安になる。平行度や直角度を図面に書いたなら、その測り方(どの面をデータムにするか、何箇所を測るか)を仕入先と合わせておく。内径は公差クラスで指示したなら、限界ゲージで見るのか、測定値を出してもらうのかも決める。

鋼管から作ったカラーなら、内面にビードが残っていないか、軸に実際に通るかを確かめる。切断や面取りのばりが端面に残っていると、幅も平行度も実際より悪く出るので、ばりの扱いも図面か注文書で決めておく。材料の証明が要る場合は、注文時に鋼管の検査文書を求めておく。

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よくある質問

図面に「カラー t20」とだけあり、公差が書いていません

表題欄の普通公差があればその等級が当てはまり、中級なら ±0.2 mm になる[1]。普通公差の指示も無ければ、幅の許容差は決まっていない。発注前に設計へ確かめるのが確実である。

カラーの材料は何を書けばよいですか

丸棒から削るなら棒鋼の材料記号、鋼管から作るなら STKM の種類と外径・厚さの許容差の区分を書く。鋼種の選び方は機械構造用鋼の記事、ステンレスならステンレスの記事を見てほしい。

カタログ品のカラーを使えば、図面はいりませんか

カタログ品は、メーカーが決めた寸法と許容差で作られている。JIS の製品規格が無いので、同じ外径・内径・幅でもメーカーが違えば許容差や端面の仕上げが同じとは限らない。型番で買う場合は、幅の許容差と平行度がカタログに書かれているかを確かめ、書かれていなければ問い合わせて記録に残す。別のメーカーの品に替えるときも、同じ項目を比べてから切り替える。

まとめ

カラー・スペーサーには JIS の製品規格が無く、図面がすべてを決める。JIS B 0405 の普通公差だけでは幅は ±0.2 mm(20 mm・中級)になり、平行度や直角度は決まらない。JIS B 0419 を引用しても、平行度は寸法公差と同じ大きさになる。間隔で精度を出すカラーは、幅の公差、両端面の平行度、端面と穴の直角度、内径のはめあいを個別に書く。鋼管から作るなら外径・厚さの許容差の区分と内面ビードの扱いを決め、平座金を重ねて代用しない。

同じ束では、皿ばね、割りピン、シム・シムリング、リニアブッシュの指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS B 0405:1991 普通公差-第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  2. JIS B 0419:1991 普通公差-第2部:個々に公差の指示がない形体に対する幾何公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  3. JIS B 0401-2:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  4. JIS G 3445:2025 機械構造用炭素鋼鋼管(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  5. JIS B 1256:2008 平座金(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)

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