投稿日:2024年8月8日

HACCP(危害分析重要管理点)の実践で製造プロセスの安全性を確保する

HACCP(危害分析重要管理点)とは

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)は、食品の安全性を確保するためのシステムです。
このシステムは、食品の製造過程における危害を分析し、これを防止・除去・減少させる管理方法です。
世界中で広く採用されており、ISO 22000などの食品安全管理システムの基盤となっています。

HACCPの基本原則

HACCPは7つの基本原則に基づいています。
これらの原則を順に実行することで、食品の安全性を高めることができます。

1. 危害分析(Hazard Analysis)

最初のステップでは、食品の製造プロセスにおけるすべての危害を特定します。
これには、生物学的、化学的、物理的な危険が含まれます。
危害は原材料から最終製品までの全過程でリストアップされ、その影響の度合いと発生の可能性が評価されます。

2. 重要管理点の特定(Determining Critical Control Points)

次に、特定された危害を制御するための重要管理点(CCP)を設定します。
CCPは、危害を防止、副作用的、または除去できるポイントであり、製造過程の中で特に重要な場所です。

3. 許容限界の設定(Establishing Critical Limits)

各CCPに対して、許容される限界値を定めます。
これらの限界を設定することで、製品が安全であることを保証できます。
例えば、加熱温度や時間、冷蔵温度などが含まれます。

4. 監視手順の設定(Establishing Monitoring Procedures)

次に、各CCPが許容限界を超えていないことを確認するための監視手順を定めます。
監視には、温度計測や検査などの具体的な方法が用いられます。

5. 是正措置の設定(Establishing Corrective Actions)

もしCCPが許容限界を超えた場合に取るべき是正措置が必要です。
是正措置は、問題の原因を取り除き、再発を防止するための行動計画を示します。

6. 検証手順の設定(Establishing Verification Procedures)

HACCPシステムが正しく機能しているかどうかを検証する手順も必要です。
検証には、記録の定期的な確認や外部監査などが含まれます。

7. 記録保持と文書化(Establishing Record-Keeping and Documentation Procedures)

最後に、HACCPの実施および管理に関するすべての記録を保持し、必要な文書化を行います。
これにより、後の監査や検証の際に役立てることができます。

HACCPの導入ステップ

HACCPの導入は複数のステップを踏んで行われます。
具体的な導入方法について以下に詳しく説明します。

1. HACCPチームの結成

最初のステップとして、HACCP対応のための専任チームを結成します。
このチームは、経験豊富な食品製造の専門家や品質管理のエキスパートから構成されます。

2. 製品の概略説明と使用目的の特定

次に、製品の概略説明を行い、その使用目的を特定します。
これには、製品の原材料、製造過程、運送条件、および消費者がどのように製品を使用するかを明示します。

3. 流れ図の作成と確認

製造プロセスを示す流れ図を作成し、その正確性を確認します。
流れ図には、原材料の受入から最終製品の出荷までのすべてのプロセスが含まれます。

4. 危害分析の実施

作成した流れ図に基づいて、各プロセスステップで発生しうる危害を洗い出します。
危害をリスト化し、それに対する制御方法を検討します。

5. 重要管理点(CCP)の決定

危害分析に基づいて、各プロセスステップでの重要管理点(CCP)を特定します。
CCPは、製品の安全性を確保するためのキーポイントであり、適切に管理する必要があります。

6. 許容限界の設定と監視手順の決定

各CCPに対する許容限界を設定し、それを超えないための監視手順を決定します。
具体的な監視方法や頻度を明示します。

7. 是正措置、検証手順、記録方法の決定

各CCPが許容限界を超えた場合の是正措置、HACCPシステムの有効性を確かめるための検証手順、及び必要な記録方法を決定します。

HACCP導入の利点と注意点

HACCPを導入することで、企業はさまざまな利点を享受できます。
しかし、導入に際しては注意が必要な点もあります。

利点

HACCPの導入により、食品の安全性が確保される点が最も大きな利点です。
また、消費者からの信頼が向上し、製品のブランド価値が高まります。
さらに、法規制に適合しやすくなり、輸出市場へのアクセスも容易になります。

注意点

HACCPの導入には時間とコストがかかることが多いです。
また、従業員の教育や訓練も必要であり、全社員がHACCPの重要性を理解するための取り組みが求められます。
それに加えて、定期的な監査や見直しが欠かせません。

工場の現場でのHACCP実践

工場の現場でHACCPを実践するためには、具体的な取り組みが必要です。

1. 教育と訓練

まず、すべての従業員に対してHACCPの基本概念とその重要性を教育します。
特に現場の作業員には、具体的な手順や注意点を細かく説明し、訓練を行うことが不可欠です。

2. 継続的な監視と改善

HACCPの管理は一度だけの取り組みではありません。
定期的な監視と、それに基づく改善活動を継続的に行う必要があります。
現場でのフィードバックを積極的に取り入れ、システムの運用を改善していきます。

3. 記録と報告

すべての管理プロセスや検査結果を詳細に記録し、それを報告する体制を整えます。
記録はトレーサビリティの確保や、後の監査の際に重要な情報源となります。

4. 外部の専門家の活用

時には外部の専門家を招き入れ、独自の視点からシステム全体を評価してもらうことも有効です。
これにより、自社では気づけなかった問題点や改善点を発見することができます。

最新の技術動向とHACCP

技術の進展に伴い、HACCPの実践にも新たな技術が取り入れられています。

1. IoTとHACCP

IoT(Internet of Things)技術を活用することで、リアルタイムのデータ収集と監視が可能となっています。
センサーやモニタリングデバイスを活用し、温度や湿度などの環境データをリモートで管理できます。
これにより、異常が発生した場合の即時対応が可能となります。

2. AIとビッグデータ解析

AI(人工知能)やビッグデータ解析を用いることで、過去のデータをもとにした予測分析や異常検知ができます。
これにより、潜在的なリスクを事前に察知し、対応策を講じることが可能です。

3. ブロックチェーン技術

食品のトレーサビリティを強化するために、ブロックチェーン技術も取り入れられています。
ブロックチェーンは取引情報の透明性と不正防止に寄与し、製品が安全に製造・流通されることを保証します。

まとめ

HACCP(危害分析重要管理点)システムは、食品の製造プロセスにおける安全性を確保するための強力なツールです。
その7つの基本原則を踏まえた導入と管理により、企業は食品の安全性を高め、消費者からの信頼を得ることができます。
最新の技術を活用することで、さらに効率的で確実なHACCP管理が可能となります。
工場の現場での実践には、従業員の教育、継続的な監視、適切な記録と報告が欠かせません。
HACCPを適切に運用することで、企業の競争力を高め、食品業界の発展に貢献できるでしょう。

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