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投稿日:2025年6月5日

Rの基礎とShinyを用いたGUIアプリ開発法

はじめに——製造業現場におけるデータ活用の壁とR言語の可能性

製造業の現場では、日々膨大なデータが生成されています。
品質管理、生産管理、調達購買、設備保全など、あらゆる部門でデータの重要性は年々高まっています。

一方で、昔ながらの「紙と鉛筆」「エクセル頼み」のアナログ文化や、「システムは現場の敵」とする根強い認識が障壁となり、十分にデータを活用できていない現状も見受けられます。

こうした課題を乗り越え、製造現場にイノベーションをもたらす武器として注目されているのが「R言語」と「Shiny」です。
本記事では、Rの基礎とShinyによるGUIアプリ開発のポイントを、実践目線かつ業界事情にも触れながら徹底解説します。

R言語の基礎——なぜ製造業でRが必要とされるのか

R言語とは何か

R言語は、統計解析やデータ可視化に特化したプログラミング言語です。
オープンソースであり、拡張パッケージが豊富なため、品質データ分析やプロセス改善、予知保全のためのデータモデリングなど、製造現場の多様なニーズに応えられます。

製造業で求められるデータ解析力

たとえば、設備の稼働ログから何らかの”異常検知”をしたい、サプライヤーの調達先比較のために「バイヤー視点」でデータ解析したい、QC工程図を可視化して現場改善に反映したいといった要求は、今やどのメーカーにも共通して見受けられます。

これまでエクセルの関数やピボットテーブルで何とか対応してきた現場でも、「もう少し深い分析をしたい」「自動化して属人性を無くしたい」という課題が高まっています。

なぜRなのか?Pythonとの違い

製造業の現場では、RとPythonがデータ活用でよく議論になります。

Pythonは汎用性やAI開発での強みがありますが、Rは「統計に強い」「可視化が抜群」「データの前処理が得意」といった特色があり、繰返し生産や工程分析といったシーンではより力を発揮しやすい場合が多いです。
加えて、ShinyというGUI開発ツールもR専用で提供されていることが大きなポイントです。

Rの基礎を現場目線で解説

インストールと基本構造

Rのセットアップは比較的簡単で、「R」と「RStudio(統合開発環境)」をダウンロードすればすぐに始められます。

Rの基本的な使用方法は以下の通りです。

– データの読み込み(csv, Excel, SQL等)
– データの前処理(欠損値処理、集計、フィルター等)
– グラフ・チャート化(可視化パッケージ利用)
– 統計解析・回帰分析
– 結果のアウトプット(レポート化やアプリ化)

現場での典型パターンとしては、「工場の稼働履歴をcsvで出力→Rで読み込み→傾向を可視化→現場会議での報告用グラフ作成」といった流れです。

典型的な分析事例:工程改善・調達先評価

たとえば、打痕NG率や歩留まり推移の分析、設備ごとの稼働率比較、さらには調達先ごとの納期遵守率や不良率の把握といった用途にRは活用できます。

さらに、バイヤー視点で「コストだけでなく、納期信頼性データ」「品質トラブルの波及分析」を行い、より精度の高いサプライヤー評価も実現できます。

Shinyとは何か——なぜGUI化が現場改革につながるのか

Shinyとは

ShinyはRで作成した分析ロジックを、誰でも使いやすい「Webブラウザ上のGUIアプリ」として公開できるパッケージです。
専門知識がない現場メンバーでも、ボタン操作や項目入力のみで高度なデータ分析が可能になります。

昭和的現場への効能——”使いやすさ”が変革のカギ

昭和の価値観が色濃く残る工場現場では、いわゆる「エクセルいじり」こそが現場力の証とされ、新しい分析ツールへの抵抗感が根強くあります。

だからこそ、「Rによる裏側のロジックは専門人材に任せ、現場作業者や検査員、調達担当者にはShinyのGUIだけを使ってもらう」ことが、現場のDX推進でとても重要です。

たとえば、ボタン一つで「最新の不良率をグラフ化」「過去との比較」「部品別ランキング」などを実現し、現場会議/朝礼/トップ報告の場で即座に使える資料として活用できます。

Shinyアプリ開発の流れ——現場実務に生かすポイント

1. 要件定義と業務フローの棚卸し

Shinyアプリ開発でまず大切なのは「どんなデータを、誰が、どのタイミングで、何のために使うのか」の明確化です。
現場ヒアリングや、既存業務フローの洗い出しからスタートしましょう。

– 業務担当者ヒアリング
– ペインポイント(手間・属人性・見落としポイント)の特定
– 既存ファイル・エクセル・紙帳票の確認

データドリブンな改善につなげるため、業務の「どこ」を「どう」効率化するかを整理することが重要です。

2. データ準備(インプットの統一)

Shinyアプリが入力するデータの「形式」を統一しましょう。
csvやExcelの列名・並び・フォーマットなどを現場で共通化することで、誰が扱っても齟齬が減り、運用しやすくなります。

昭和的な現場では、「人によって列幅が違う」「データの記入漏れがある」など日常茶飯事。
これを統一させられるだけでもアプリ化による大きな成果となります。

3. Rスクリプトでの分析ロジック作成

Rで既存の業務プロセスを置き換えるイメージで、データ集計やグラフ作成のスクリプトを書いていきます。
ここで重要なのは、現場実態に根ざした設計思想——「多少ラフでも再利用可能」「メンテナンスが容易」「ユーザー追加も柔軟」の3点です。

4. UI設計とShinyアプリ化

ShinyのUIはとてもシンプルで、例えば
– ファイルを選択する
– ドロップダウンで工程選択
– ボタンで出力グラフ切替
– テーブル表示や画像出力

といった直感的操作を組み込めます。

業界の現場では、「なるべくメニュー数を減らす」「説明書が要らない画面構成」が肝要です。

5. テスト・現場展開・フィードバックループ

ある程度作り込んだら、まずは小規模な現場で試験運用します。
運用で発覚する「使い勝手の違和感」や「データ不整合」を素早く吸い上げ、即時改修することで、現場浸透率が格段に向上します。

フィードバックサイクルを何度も回し、徐々に業務フロー全体へ展開しましょう。

具体事例——Shinyを活用した工程改善アプリ開発プロジェクト

実際に筆者の経験から、Shinyを使った工程能力分析アプリの導入事例をご紹介します。

ある工場で「日々の生産データから工程ごとの能力変動を瞬時に可視化したい」という要望がありました。
これまでは手作業でエクセル集計、グラフコピペ、パワポ化、月一の会議でしか状況共有できませんでした。

R×Shinyアプリ化の成果は次の通りです。

– csvファイルをドラッグ&ドロップするだけで、リアルタイムにグラフ表示
– 工程ごとの歩留まりランキングを自動算出
– 設備ごとの日カレンダー表示で生産状況が一目で分かる
– レポート作成もPDFワンクリックで出力

導入効果として、生産管理者と品質担当者の「報告資料作成工数」が約90%削減され、現場改善施策立案のための「データに基づく意思決定」が格段に高速化されました。

サプライヤー/バイヤーの視点でShiny利活用を考える

調達購買のプロセス可視化

部品調達においては、納期遅延・品質不良などを定量的に評価することが重要です。
Shinyアプリでサプライヤーごとの「納期遵守率」「不具合再発回数」等をリアルタイムで可視化し、バイヤーが客観的なデータに基づいてサプライヤー管理を実践する事例も増えています。

サプライヤー側の視点

サプライヤー側にとっても、バイヤーが何を重視し、どんなデータを求めているのかをShinyの画面構成やアウトプットから逆算して読み取ることが可能です。
「どこまでの範囲まで自社でデータを整備し、どのようなアピールポイントが信用につながるか」を考えるヒントにもなります。

昭和からの脱却——製造業でRとShinyを使いこなすための3つのヒント

1. “小さく始めて大きく育てる”発想

最初から全ての業務を網羅するのではなく、まずは1業務1部門、月次レポート自動化など、”小さな成功体験”を積み重ねましょう。

2. “エクセル互換”の工夫で現場抵抗感を下げる

出力結果や入力フォーマットを可能な限りエクセル互換(csv化やエクセル出力)にし、現場に「これなら使える!」と納得してもらうことが重要です。

3. “現場巻き込み”のプロジェクト設計

開発段階から現場メンバーを巻き込み、アプリを一緒に作る意識が浸透すると定着率は飛躍的に高まります。

まとめ——製造業現場が自ら“データで語る”時代へ

RとShinyは「データドリブンな現場文化への架け橋」です。
昭和的な属人文化やアナログ業務フローに悩む現場でも、「まずはやってみる」精神で取り組めば、必ず少しずつ効果が現れます。

工場のスタッフ一人ひとりが「自分たちでデータを活用できる」ようになれば、製造業の未来はきっと明るいものになるでしょう。

本記事が、製造業に勤める皆さま、これからバイヤーを志す皆さま、サプライヤーの皆さまにとって、現場主導の新しいデータ活用への一歩となれば幸いです。

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