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投稿日:2025年6月4日

晶析技術の基礎と最適な結晶品質向上のコツおよびトラブル対策

はじめに ~アナログとデジタルが交錯する現場での晶析技術~

製造業、とりわけ化学品や医薬品、食品分野などで重要な工程となる「晶析(しょうせき)」。
この工程は単に結晶を生成するだけのプロセスではなく、最終製品の品質や歩留まり、さらには生産効率をも左右する“肝”とも言えます。
時代は令和に入ったとはいえ、まだまだ昭和時代から続くアナログな手法が現場の核心に根付いているのも事実です。

本記事では、20年以上の製造業での現場経験と、経営目線も交えつつ、晶析技術の基礎、結晶品質を向上させるコツ、そして現場でよく起きがちなトラブルとその具体的な対策について、バイヤーやサプライヤー目線、現場担当者目線で掘り下げていきます。

晶析技術の基礎知識 ~本質を理解する~

晶析とは何か?

晶析とは、溶液、溶融体、気体などの中から特定の固体成分が結晶として析出する操作のことを指します。
この工程を通じて、原料混合物から目的物質を高純度で回収したり、望ましい物理特性(粒度・形状)を持つ製品として仕上げることができます。

晶析工程の分類

晶析の主な工程は以下の通りです。

1.過飽和度の生成
2.核生成(クリスタルの“種”となる部分が発生)
3.結晶成長
4.結晶の回収・洗浄・乾燥

このうち「過飽和度の管理」と「核生成・結晶成長の制御」が品質に大きく影響します。

代表的な晶析方法

– 冷却晶析:温度を下げることで溶解度差を利用し、過飽和を作る
– 蒸発晶析:溶媒を蒸発させて濃縮し、析出を促す
– 反応晶析:化学反応で目的物質を析出
– 添加晶析:他の成分(溶剤・沈殿剤)の添加による析出

製造現場では、これらの方法を単独または組み合わせて活用します。

昭和から続く現場文化の影響

設備の自動化こそ進んできましたが、「なんとなくこの温度帯が良い」「あの時はこうだった」というベテラン職人の勘や経験則は、今も多くの現場で根強く残っています。
ときにそれが品質変動や再現性低下の要因となるケースも少なくありません。

最適な結晶品質を実現するコツ

1.過飽和度の緻密なコントロール

結晶品質を安定させるための最大のポイントが、この「過飽和度コントロール」です。
過飽和度が高すぎると大量の核が発生(多核生成)し、微細な結晶や不均一な粒度になりがちです。
反対に低すぎると結晶成長が進まず、歩留まりが低下したり品質ロット差が生じやすくなります。

温度や濃度、添加速度のモニタリングをIoTや制御機器でリアルタイムにキープすることで、安定品質と再現性向上が可能になります。
まだアナログ式で作業している場合には、目視チェック項目の明確化と帳票類の標準化(マニュアル化)も推奨します。

2.撹拌条件の適正化

結晶析出の現場で見落としがちなのが「撹拌条件」です。
撹拌が不足していると局所過飽和が発生しやすく、粗大結晶や凝集体が生じやすくなります。
逆に過剰な撹拌では結晶同士が破損し、ブロードな粒度分布や粉体化の原因になります。

性能の安定した撹拌装置への更新や、インペラ(羽根車)形状の見直しは地味ですが劇的な改善を生むことも少なくありません。

3.種晶(シード)の活用

一部化学品メーカーや医薬品業界では、「種晶(シード)」の適切な投入で核生成と成長の安定化を図っています。
この手法は、とくに平均粒径を一定に保ちたい場合や高純度な結晶生成に効果的です。

種晶の投入量、投入タイミング、サイズ分布の設計は、実機テストやラボスケール実験を通じて各現場で最適化を検討しましょう。

4.最新トレンド:連続晶析へのシフト

近年は従来のバッチ式から、連続フィード型・連続抜き出し型といった連続晶析プロセスへの転換も進みつつあります。
これにより、歩留まり向上、品質再現性の向上、オペレーション負荷の低減が見込めます。
自動化・計装技術との親和性が高く、今後の成長分野、とも言えるでしょう。

よくあるトラブルとその対策~現場で培った経験から~

トラブル1:粒度分布のばらつき

ばらつきの主因は、過飽和度変動、撹拌条件の乱れ、種晶投入条件の不安定化などが挙げられます。
ルーチン業務の“作業の標準化”だけでなく、定期的な設備キャリブレーション、撹拌翼の磨耗チェックを心がけてください。
またバッチ記録の徹底や、ヒヤリ・ハット事例の蓄積・共有も有効です。

トラブル2:析出した結晶が濾過できない/スラリー性状の変化

原因として、凝集体化・異物混入・pH変動・温度ムラが考えられます。
対策として、結晶成長時のpHや温度の厳格な管理、撹拌設備の検証、撹拌子や部材交換時のチェックリスト化などを挙げます。

また、単純な人為ミス(投入順序の誤りなど)も原因となるので、作業前のWチェックもごく当たり前ですが重要です。

トラブル3:目的外成分の共晶析出

想定外の晶析物(共晶)が析出してしまう場合は、原料ロット差や不純物混入、プロセス流量の制御不良などが主な要因です。
原料メーカーへのリスク情報共有や、SCMパートナーとの定期的な品質レビューなど、調達・バイヤー視点の活動もプロセス安定には欠かせません。

バイヤー、サプライヤーの立場から見る晶析技術の重要ポイント

バイヤーが見るべきポイント

– 供給元(サプライヤー)の安定生産能力・技術力
– ロット間品質変動の小ささ(CA・QC体制の充実度)
– 製造現場の「見える化」(トレーサビリティ対応)
– プロセス改善・トラブル対策への積極性
– 環境安全(EHS)管理、CSR指向

品質トラブルは、価格交渉やB2Bの信頼基盤にも直結します。
現場力の高さと全体最適志向のバランスが求められます。

サプライヤー側が理解しておくべきこと

– バイヤーが「どのような品質特性」を重視しているか、ニーズを丁寧にヒアリングする
– 変更管理(Change Control)やスペック外品対応への明確なプロセスを持つ
– 安定納入だけでなく、歩留まり・コスト低減など共創(コ・クリエーション)視点での提案力を磨く

サプライヤーは「目的品質」と「コスト(利便性)」の最適解を、絶えず模索し続ける姿勢が長期的なパートナーシップにつながります。

昭和から令和へ~アナログ現場を強くするために

現場主義の良さを残しつつも、属人的な管理や勘・暗黙知に頼り切らないために、以下のような取り組みが次代の製造業を強くしていきます。

– IoT・AIの活用による工程最適化と品質予兆検知
– 技術伝承のための標準化(SOP整備)と教育の強化
– 部門間壁を低くする情報共有と属人化リスクの回避
– データ分析によるプロセス改善提案(ラテラルシンキングの実践)

時には「古き良き現場ルール」も振り返りつつ、先端技術を掛け合わせた“新時代の現場力”を共につくっていきましょう。

まとめ~持続的なものづくり現場へのヒント~

晶析技術は単なる化学・物理操作にとどまりません。
品質基準や納期、バリューチェーン全体に波及する現場の要であり、だからこそバイヤー、サプライヤー、現場担当者それぞれが正しくその本質を理解し、技術的・組織的に進化していくことが極めて重要です。

昭和から続く技術資産を大切にしつつ、デジタルや自動化への積極的なチャレンジを織り交ぜ、現場の力と知恵で、持続的な価値創造を追求していきましょう。

今こそ、アナログ業界の壁を乗り越え、新たな一歩を現場発で踏み出していきませんか。

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