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モータの振動騒音の原因誘導モータ電磁力固有振動数解析振動騒音シミュレーション具体的騒音低減対策実例

誘導モータの電磁振動騒音は、スロット高調波・電磁力モードとステータ固有振動数の共振が主因であり、設計段階でのFEM解析と実機測定のフィードバックループが根本対策の核心となる。インバータ駆動時はキャリア高調波が新たな騒音源を追加するため、商用電源駆動とはまったく別の評価軸が必要だ。本記事では、電磁振動騒音の発生メカニズムから固有振動数解析の実務手順、スロット設計・スキュー・制振材といった具体的低減策まで、調達購買の視点を交えて体系的に解説する。
目次
誘導モータで振動騒音が起きる「三層構造」を理解する
モータの振動騒音を現場で扱い始めると、当初は「うるさい=モータ本体の問題」という単純な捉え方になりがちだ。しかし調達購買の現場で200社以上のサプライヤー視察を重ねてきた当社の経験では、問題の根はほぼ例外なく三つの層に分かれている。①電磁的な加振力、②機械的な伝達経路、③設置構造の共振—この三層が複合して初めて「騒音」として現れる。どれか一層だけをターゲットにした対策が効きにくいのはこのためだ。
誘導モータ特有の問題は、そもそも動作原理に電磁力の周期変動が内包されている点にある。ステータに交流電流を流すと回転磁界が生じ、ロータ導体に誘導電流が流れて回転力が発生する。この過程でステータ内壁に働く半径方向の電磁力は、スロットとロータバーの組み合わせから決まる空間・時間高調波を持ち、周期的な変動成分として構造体を加振し続ける。三相誘導電動機における電磁うなり振動騒音の発生機構をいち早く理論・実験の両面から検討した電気学会の論文[1]は、このメカニズムを定式化した先駆的な研究であり、現在でも設計教科書的に参照されている。
調達担当者がサプライヤーとの仕様協議で見落としやすいのは、「電磁力の空間次数」と「ステータの固有振動モード次数」の関係だ。両者が一致したとき共振が生じ、わずかな電磁力でも大きな放射音となる。この共振条件は図面だけでは判断できず、解析か実測のどちらかで事前に確認しなければならない。
電磁加振力の発生メカニズム:スロット高調波とパーミアンス変動
誘導モータの電磁振動騒音を語るうえで外せないのが「スロット高調波」だ。ステータスロットとロータスロットの存在によって、エアギャップのパーミアンス(磁気抵抗の逆数)が角度位置によって周期的に変化する。この変動が磁束密度に高調波を生み、電磁力の高調波成分となる。
かご形誘導電動機のスロット数組み合わせと斜めスロットが電磁振動に与える影響を理論・実験で詳しく調べた研究[2]によれば、ステータスロット数とロータスロット数の組み合わせ選択が電磁振動の大小を左右する主要因の一つとなる。適切な組み合わせを選べば支配的な励振力を下げられるが、誤った組み合わせを選ぶと特定の振動モードを強く励振してしまう。この知見はモータ発注仕様書への記載レベルで活用できる実践的な情報だ。
さらに、インバータ可変速システムの誘導電動機に関する技術解説[3]は、空隙高調波・パーミアンス変化・インバータ時間高調波という三つの騒音発生経路を体系的に整理している。商用電源で運転する場合と比較して、インバータ駆動では時間高調波成分が電流に重畳されるため騒音源が質的に増える。設備選定時にインバータ駆動前提かどうかを確認するだけで、要求仕様の難易度が大きく変わる。
調達現場で押さえるポイント
インバータ駆動前提のモータ調達では「商用電源時の騒音値+5〜15 dB」の余裕を見ておく必要がある[4]。一般社団法人日本電機工業会(JEMA)の指針でも、PWM方式インバータ駆動時の電動機騒音はJEM 1313に規定する商用電源時の値に対して+5 dB〜+15 dBとなることが示されており、納品後クレームになりやすいポイントだ。
固有振動数の解析:FEM・エネルギー法・実験モード解析の使い分け
「固有振動数がわかれば共振を避けられる」—この理屈は正しいが、実際の現場では「どうやって固有振動数を正確に求めるか」が難問になる。ここで選択肢は大きく三つある。
①エネルギー法(解析的計算):ステータコアを円環モデルに近似し、幾何学寸法と材料定数から固有振動数を手計算で推定する手法だ。計算が速く、設計初期のスクリーニングに向く。ただし巻線端や焼き嵌め、ハウジングとの接触条件を正確に反映するのは難しい。
②FEM(有限要素法)解析:モータ電磁振動音を高精度に計算するための解析手法を検討した日本機械学会の論文[5]は、電磁力計算から放射音算出まで連携させる手法を詳しく論じており、現代のCAEシミュレーションの基本的枠組みに直結している。FEM解析の精度は境界条件の設定に大きく左右され、特に圧入・焼き嵌め・ねじ締結による接触剛性の変化を無視すると、実機の固有振動数と数十Hz以上ずれることがある。
③実験モード解析:実機または試作品を対象に、インパルスハンマや加振機で励振して振動応答を測定し、固有振動数と振動モード形状を同定する手法だ。解析モデルの検証(Validation)に不可欠であり、FEMと実験の両輪で精度を高めるのが定石となっている。
当社では金属加工・樹脂成形・化学・電気電子・組立完成品の5ジャンル横断で調達支援をしてきた経験から言えば、FEM解析単独では実機とのズレが残りやすく、製品の量産前に実験モード解析によるモデル更新を一度挟む体制を持つサプライヤーは明らかに納品後クレーム率が低い。
なお、EPSモータ(電動パワーステアリング用モータ)の電磁振動共振特性を解析した論文[6]では、8極12スロットと10極12スロットという二種類の構成でステータの固有振動モード次数と電磁力加振次数の関係を詳細に検討している。この研究が示すのは「極数とスロット数の組み合わせ次第で支配的な振動モードが変わる」という事実であり、発注仕様でこの組み合わせを指定できるかどうかが技術調達の差別化になる。
振動・騒音シミュレーション:電磁場→構造→音響の三段連成解析
現在の最先端的なモータ振動騒音シミュレーションは「連成解析」と呼ばれる手順を踏む。①電磁界解析でステータティースに働く電磁力(時間・空間高調波成分ごと)を算出→②その電磁力を境界条件として構造解析に渡し、各周波数における振動変位を求める→③振動変位から放射音圧(騒音)を音響解析で求める—という三段構成だ。
EV用モータの振動発生メカニズム解明および低減検討例を示した研究[7]では、磁場解析と振動騒音解析を組み合わせることで、実機試験だけでは特定困難な振動の発生源を設計段階で特定できることを示している。特にEVでは内燃機関の暗騒音がなくなるため、モータ由来の高周波振動音が乗員に直接届きやすく、この種の解析が設計競争力の核になっている。
連成解析を高精度に実施するには、ステータコア材料の異方性(積層鋼板の積層方向と面内方向で剛性が大きく異なる)、巻線の質量付加効果、ハウジングとコアのはめあい面圧による剛性変化を正確にモデル化しなければならない。ステータコアの軸方向モード形状に着目したモータ電磁振動音低減手法を提案した論文[8]は、軸方向の固有モードと電磁力高調波の関係に踏み込んだ研究であり、3D解析が必須になる場面を明確に示している。二次元モデルだけでは軸方向モードを正しく捕捉できず、対策が空振りになるケースがある。
調達現場で押さえるポイント
シミュレーション結果の信頼性をサプライヤーに確認する際は「実機との検証(Validation)レポートがあるか」を必ず聞くこと。「解析では問題なし」という回答だけでは不十分で、実機測定との誤差が何 Hz・何 dB 以内か数値で確認できるサプライヤーを選ぶのが安全な調達判断だ。
インバータ駆動時の特殊問題:キャリア高調波と周波数ジャンプ
可変速制御のためにインバータを組み合わせると、騒音問題の構造が一変する。PWM方式では出力電圧が矩形波となるため、電流にキャリア周波数を中心とした高調波成分が含まれる。キャリア周波数が低いほど高調波振幅は大きくなる傾向があり[9]、モータ内部の電磁力変動を増幅する。
対応策として広く用いられるのは次の三つだ。
- キャリア周波数の引き上げ:2 kHzから10 kHz程度に上げると高調波騒音の音域が人間の可聴域上限に近づき、耳障り感が大幅に低下する。ただしスイッチングロス増大によるインバータ発熱も増えるため、許容負荷範囲内での設定が前提となる。
- 交流リアクトル挿入:インバータとモータ間に交流リアクトルを挿入することで電流高調波を減衰させ、モータ側の電磁力変動を抑制できる。
- 周波数ジャンプ機能:特定の運転周波数で共振が生じる場合、インバータの周波数ジャンプ機能によりその周波数帯を回避して運転する。設備据え付け後に発覚した共振問題への応急処置として有効だ。
製造業の調達購買10年以上の経験から言えば、インバータ付きモータセットの調達では「インバータ単体」「モータ単体」をそれぞれ別サプライヤーから調達するケースで後から共振問題が浮上しやすい。システム全体の振動騒音特性を保証できるのは、インバータとモータをセットで評価したサプライヤーだけだ。
具体的騒音低減対策:設計・製造・据付の三フェーズ別チェックリスト
振動騒音の低減対策は、問題が顕在化したフェーズによって打ち手の難易度と費用がまったく異なる。設計段階で手を打てるなら数万〜数十万円のシミュレーション費用で済むが、量産後・据え付け後では百万円単位の追加コストが発生することも珍しくない。以下の三フェーズ別に主な対策を整理する。
▶ 設計フェーズ
- スロット数の最適化:ステータスロット数とロータスロット数の組み合わせを選ぶ際、電磁力の支配的な空間次数とステータの固有振動モード次数が一致しない組み合わせを選定する。
- 斜めスロット(スキュー)の採用:ロータバーを軸方向に対して斜めに配置するスキューは、スロット高調波由来のトルクリップルと電磁力の脈動を低減する効果がある。ただし平均トルクと効率の低下を伴うため、目標とする周波数成分と必要な性能トレードオフを明確にしてから適用する必要がある。
- エアギャップの均一化:ロータ偏心は電磁力の不均一分布を生み、特定方向の一方向力(UMP)を発生させる。静的偏心のあるモータにおける電磁振動・騒音の実験的検討[10]は、ロータ偏心が電磁力高調波とステータ固有振動数との共振を引き起こすメカニズムを実証しており、組立精度管理の重要性を裏付ける。
- ステータ固有振動数の調整:コアバック厚さやフレーム剛性を変えて固有振動数を運転周波数から意図的に離調する。ただし質量・サイズへの影響が大きいため、設計初期段階からの検討が前提だ。
- SRモータにおける円環モード加振力の制御:スイッチトリラクタンスモータを対象とした研究[11]では、円環零次モード加振力を電流制御で低減することで実機レベルの振動・騒音改善を実証している。制御ベースのアプローチは機械設計変更を伴わないため、量産後の後追い対策としても活用できる視点だ。
▶ 製造・組立フェーズ
- 芯出し精度の徹底:軸受の同軸度・直角度のばらつきが偏心振動を引き起こす主因となる。組立工程での測定基準値と記録管理の有無をサプライヤー監査項目に加えることを推奨する。
- 焼き嵌め・圧入条件の管理:ステータコアとフレームの接触剛性は、はめあい面圧によって変化し、固有振動数にも影響する。焼き嵌め温度と圧入荷重の管理記録を納品書類に含めるよう要求するのが実務的だ。
- 軸受の予圧・潤滑管理:転動体の微小欠陥やグリース量・予圧のわずかな違いが騒音の大きさだけでなく音質まで変える。軸受の状態を受入検査で確認する仕組みが欠かせない。
▶ 据付・保守フェーズ
- 設置台・防振ゴムの選定:モータフットへの制振ゴム追加は設置後でも実施しやすい対策だ。ゴムの静剛性がモータ重量と運転周波数に対して適切な防振効果を発揮する周波数帯に設計されているかを確認する。
- 定点振動・騒音測定の継続:劣化診断として同一測定点での振動加速度・騒音レベルの経時変化を記録することで、異常の早期発見と保全コスト削減につながる。
- 騒音ばく露管理との連動:厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン(令和5年改訂)」[12]では、等価騒音レベル85 dB(A)以上の作業場での騒音低減化措置が事業者に求められており、機械設備等製造業者も設計・製造段階からの低騒音化に努めることが明記されている。調達仕様書に「運転時騒音 XX dB(A)以下」を明示することは、法令対応の観点からも合理的だ。
調達現場で押さえるポイント
当社が複数の製造業クライアントで確認してきた典型的な失敗パターンは「騒音仕様を定性表現(例:過大な騒音がないこと)でしか記載しない」ケースだ。サプライヤーがこの表現を満足する基準を自社基準で解釈するため、納品後に「思ったより大きい」とバイヤーが感じてもクレームにできない。dB値・測定距離・測定条件(無負荷/定格負荷)を仕様書に明記することで初めて契約上の根拠ができる。
誘導モータ振動騒音の発生要因と対策:数値比較マトリクス
以下に振動騒音の主要発生要因ごとに、発生メカニズム・典型周波数帯・有効な対策・対策難易度・コスト感を整理した。実際の調達・設計判断の際の参照表として活用されたい。
| 発生要因 | 発生メカニズム | 典型周波数帯 | 主要対策 | 設計変更 難易度 |
据付後対策 コスト感 |
|---|---|---|---|---|---|
| スロット高調波起因の電磁力 | ステータ・ロータスロット数の組み合わせにより生じるパーミアンス変動 | 数百〜数kHz | スロット数最適化・スキュー | 高 | 大 |
| ステータ固有振動数との共振 | 電磁力の加振次数とステータの固有振動モード次数が一致 | 数百〜2kHz付近 | コアバック厚変更・フレーム剛性調整 | 高 | 大 |
| ロータ偏心による一方向電磁力 | エアギャップ不均一→不均一磁束→偏心方向への吸引力 | 回転周波数の低次倍数 | 組立精度向上・芯出し徹底 | 中 | 中 |
| インバータキャリア高調波 | PWM矩形波がキャリア周波数の整数倍の電流高調波を発生 | 数kHz帯(キャリア周波数依存) | キャリア周波数UP・リアクトル挿入 | 低 | 小〜中 |
| 設置構造の共振 | 設置台・ベース・配管など周辺構造の固有振動数とモータ励振周波数が一致 | 数十〜数百Hz | 防振ゴム・ベース補強・周波数ジャンプ | 低〜中 | 小〜中 |
| 軸受・ベアリング起因 | 転動体欠陥・不適切予圧・潤滑不足による転動振動 | 軸受の形式・回転数依存(数百Hz〜数kHz) | 軸受型式・予圧・潤滑管理 | 低 | 小 |
| 磁歪振動 | 鉄心材料の磁気的歪みによるステータコアの変形振動 | 電源周波数の2倍(100/120Hz)を中心に展開 | 低磁歪鋼板の採用・磁束密度の最適化 | 高 | 大 |
| トルクリップル起因の振動 | 電磁力の接線方向成分の脈動がシャフトを通じて機械系を加振 | スロット次数の倍数(回転数依存) | スキュー・電流制御最適化・極弧角調整 | 中〜高 | 中〜大 |
| 回転アンバランス | ロータ質量の非対称分布による遠心力 | 回転周波数と一致(1次成分が主) | 動バランス修正・公差管理強化 | 低 | 小 |
| 連成解析モデリング誤差起因の予測外共振 | FEMモデルの境界条件簡略化や材料異方性無視による固有振動数ずれ | 実機依存(数十〜数百Hzのずれが生じる) | 実験モード解析によるモデル更新(Validation) | 中 | 中 |
| ステッピングモータのトルク変動振動 | ステップ駆動時の保持トルク変動による衝撃的加振 | ステップ周波数の整数倍 | マイクロステップ制御・機械共振回避設計 | 低〜中 | 小 |
バイヤー・サプライヤー間の「振動騒音仕様合意」が調達トラブルを防ぐ
振動騒音問題は、調達購買の現場では「技術課題」ではなく「契約課題」として顕在化することが多い。設計段階での合意が不十分なまま発注され、納品後に「要求と違う」という話になる典型的なパターンがある。
当社が製造業クライアントの調達支援で繰り返し目にしてきたのは、以下のような連鎖だ。①バイヤーが仕様書に「過大な騒音・振動がないこと」とのみ記載→②サプライヤーが自社基準で「問題なし」と判断して納品→③バイヤー側現場担当者が「明らかにうるさい」と指摘→④どちらの基準が正しいかで時間と費用を消耗する。
この連鎖を断ち切るには、仕様書に以下の項目を数値で明示することが有効だ。
- 運転条件(定格回転数・負荷率・インバータ有無・キャリア周波数)
- 騒音測定条件(測定距離・背景騒音・JIS B 0905準拠など)
- 許容騒音レベル(dB(A)値、周波数帯ごとの上限があれば明記)
- 振動加速度の上限値または振動速度の許容値(測定方向を含む)
- 測定・検査レポートの納品形式
さらに、厚生労働省の騒音障害防止ガイドライン[12]では機械設備等製造業者に対し「設計・製造段階からの低騒音化」と「騒音レベルに関する情報の公表」を求めている。この観点からも、サプライヤーが騒音値を文書で開示できることは最低限の基準であり、「聞いたことがない」では済まない時代になっている。
中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは、「騒音測定自体は実施しているが測定条件が標準化されておらず、再現性が低い」ケースだ。同一機種でロットごとに5 dB以上の騒音値ばらつきが出るケースも珍しくない。調達時のサプライヤー評価にこの再現性を含める視点が求められる。
現場で機能するSRモータ・ステッピングモータの低騒音設計実例
誘導モータ以外のモータタイプでも、同様の電磁振動騒音メカニズムが働いており、対策実例から誘導モータへの示唆を得ることができる。
スイッチトリラクタンスモータ(SRM)に関する実機実証研究[11]は、ステータの円環変形を一定に保つよう電流制御することで振動・騒音を低減する手法を採用している。設計変更ではなく「制御で騒音を下げる」というアプローチは、設備改造コストを最小化したい製造現場にとって着目すべきアプローチだ。既設設備のサーボ制御ソフトウェアの更新だけで対応できるケースもある。
ステッピングモータについては、精密工学会誌に掲載された技術論文[13]がトルク変動に起因する振動発生原因と低振動化技術を体系的に解説している。マイクロステップ駆動や機械系の固有振動数を考慮した駆動周波数選択が現実的な低減策として挙げられており、制御パラメータ調整で一定の効果を得られることが示されている。
これらの事例に共通するのは「加振力の低減」「伝達経路の変更」「固有振動数の回避」という三つの戦略の組み合わせで解決に至っているという点だ。どれか一つだけに頼ると残留騒音が問題になることが多く、複数の対策を優先順位付けして組み合わせる判断が現場では求められる。
調達購買担当者が今日から実行できること:五つのアクション
技術的な理解を深めても、実際の調達行動に落とし込まなければ意味がない。以下に、バイヤーが明日から実行できる具体的なアクションを五つ挙げる。
- 既存発注仕様書の「騒音条件」欄を確認する:現行の仕様書に騒音・振動の数値条件が書かれているかをまず確認する。「過大な騒音がないこと」という記述しかなければ要改訂だ。
- サプライヤーに測定レポートの提出を求める:次回の発注時から「騒音・振動測定レポート」を納品書類の一部として要求する。最初は抵抗されることもあるが、継続することでサプライヤーの管理水準が上がる。
- インバータ有無を仕様書に明記する:インバータ駆動前提の場合は必ずその旨と、キャリア周波数・負荷率条件を記載する。後からの「インバータ付けたら騒音が増えた」というトラブルを防ぐ最低限の措置だ。
- 設置・据付条件を確認する:既存設備の固有振動数と新規モータの励振周波数が重なるリスクがないか、サプライヤーに確認を求める。実測データがある場合は提示してもらう。
- 騒音クレームの過去履歴を整理する:過去に騒音・振動でクレームや手直しが発生したモータ・設備の情報を整理し、発生要因(電磁か機械か設置か)を分類しておく。次回の仕様書改善と サプライヤー評価の基準データになる。
出典
- 誘導電動機の電磁うなり振動騒音の発生原因(電気学会論文誌B)
- かご形誘導電動機の負荷時電磁振動に及ぼすスロット数組合せと斜めスロットの影響
- 誘導電動機のインバータ可変速システムの基礎と留意点(その1)― 電磁騒音の解説 ―
- 一般用低圧三相かご形誘導電動機をインバータ駆動する場合の適用指針(日本電機工業会、2024年度版)
- モータ電磁振動音の解析手法の検討(日本機械学会 環境工学部門講演会)
- EPSモータの電磁振動による共振特性(電気学会論文誌D)
- 解析を用いたEV用モータの振動発生メカニズム解明及び低減検討例(自動車技術会論文集)
- ステータコアの軸方向モード形状に着目したモータ電磁振動音低減手法の検討(自動車技術会論文集)
- 自動車駆動用IPMSMの運転特性に及ぼすPWMインバータのキャリア高調波の影響(電気学会産業応用部門大会)
- 静的偏心のあるユニバーサルモータの電磁振動・騒音の実験的検討(日本機械学会論文集C編)
- 円環零次モード加振力低減によるスイッチトリラクタンスモータの低振動・低騒音化の検討(自動車技術会論文集)
- 騒音障害防止のためのガイドライン見直し方針(厚生労働省 令和4年)
- アクチュエータ技術の最新動向 ステッピングモーターの振動低減技術(精密工学会誌)
※ 出典リンクは2026年06月20日時点でリンク到達性を確認しています。
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