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高飽和磁束密度超低損失軟磁性材料NANOMET技術とパワーエレクトロニクスへの応用

Fe-Si-B-P-Cu系ナノ結晶合金「NANOMET®」は、飽和磁束密度1.8T以上と超低コア損失を同時に実現した軟磁性材料であり、電磁鋼板の限界を突き破る性能を持つ。NEDOが政策的に後押しするEV・産業用モーター向けコア材料として実機評価も進み、スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)では電磁鋼板比で効率10%改善が実証されている。調達購買の現場では、材料コスト・加工制約・供給安定性という3軸の評価が導入判断の分かれ目になる。
目次
NANOMETとは何か――Fe-Si-B-P-Cu系ナノ結晶合金の正体
軟磁性材料の開発史において、1980年代後半のFINEMET®(Fe-Nb-Si-B-Cu系)登場は一つの転換点だった。FINEMETはナノ結晶化制御により低コア損失を実現したが、Feの比率が73.5 at%程度にとどまるため飽和磁束密度(Bs)の上限が制約された。この課題を正面から突き破ったのがNANOMET(ナノメット)である。[1]
NANOMETの構成元素は鉄(Fe)、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、リン(P)、銅(Cu)という一般的な材料であり、安価に製造できる上、材料費高騰リスクを極めて低く抑えられる点が特徴だ。
Nbなど希少元素を必要とする従来型ナノ結晶合金と根本的に異なるのは、この組成設計思想にある。調達の観点から言えば「希少金属依存の削減」という副次的な価値も大きい。
東北大学金属材料研究所(牧野彰宏教授グループ)が主導した研究開発の成果として、
Fe₈₅Si₂B₈P₄Cu₁ナノ結晶合金は1.80T以上という高いBsとB800を示し、従来報告されたいかなる軟磁性アモルファス・ナノ結晶合金よりも高く、現行の最高グレード方向性珪素鋼板に匹敵する水準
に達している。高Fe含有率(約85 at%)によるBs向上とP添加によるナノ結晶化促進を組み合わせた組成設計が、この性能を可能にした。[2]
NANOMETと名付けられた同材料は、2015年に東北大学からスピンアウトして設立された東北マグネットインスティテュート(TMI、宮城県名取市)が独占的に販売している。
薄帯・粉砕粉・アトマイズ粉の3形態でラインナップされており、用途に応じた形状選択が可能な点も実務上のメリットだ。
調達現場で押さえるポイント
当社では累計200社以上の磁性部品サプライヤー視察を経験してきたが、軟磁性材料の調達において「なぜその材料でなければならないか」を数値で説明できるバイヤーは意外と少ない。NANOMETの場合、Bs・コア損失・保磁力の3指標を従来材と数値で比較した資料を先に用意しておくと、上流の設計部門を動かしやすい。
主要軟磁性材料との性能対比――数値で見るNANOMETのポジショニング
「低損失か高磁束密度か」というトレードオフは、軟磁性材料の設計者が長年向き合ってきた課題だ。NANOMETはこのトレードオフを材料設計の段階で解消することを狙った点で特異な存在である。以下の比較表は、各材料の代表的なスペック値をまとめたものだ。数値はあくまで標準的な条件での比較であり、実製品設計ではサプライヤーデータシートの確認が必須だが、材料選定の第一義的な指針として使える。
| 材料 | 飽和磁束密度 Bs(T) | コア損失 W (50Hz・1.5T条件) |
保磁力 Hc(A/m) | 電気抵抗率 | 高周波適性 | 希少元素依存 | 主な用途 | 加工性 | コスト水準 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NANOMET®(Fe-Si-B-P-Cu) | 1.80T以上 | 約0.27 W/kg | 4~8 A/m | 高(電磁鋼板比) | ◎ | なし | EV・産業モータ、リアクトル | 薄帯・粉末 | 中〜やや高 |
| FINEMET®(Fe-Nb-Si-B-Cu) | 1.23 T | 低 | 0.5~1 A/m | 高 | ◎ | Nb | ノイズフィルタ、EMC対策 | 薄帯 | 中〜高 |
| Fe基アモルファス(Metglas系) | 1.56 T | 低〜中 | 2~4 A/m | 高 | ○ | なし | 変圧器、UPS | 薄帯(脆性あり) | 中 |
| 無方向性電磁鋼板(汎用品) | 1.7〜1.9 T | 2〜5 W/kg | 100〜400 A/m | 低 | △ | なし | 汎用モータ、変圧器 | プレス(量産性高) | 低 |
| 方向性電磁鋼板(高グレード) | 1.8〜2.0 T | 低〜中 | 5〜30 A/m | 低 | × | なし | 大型変圧器、電力トランス | プレス(方向性制約) | 中 |
| Mnフェライト | 0.3〜0.5 T | 極低 | 10〜100 A/m | 非常に高 | ◎(MHz域) | なし | スイッチング電源、RF | 焼結(脆性) | 低〜中 |
| NANOMET®圧粉コア(2025年最新) | 1.54 T(充填率89%) | 146 kW/m³(100kHz-100mT) | 31 A/m | 高 | ◎ | なし | 次世代パワエレ向け圧粉コア | ホットプレス | 高(量産コスト課題あり) |
| Co基アモルファス | 0.55〜0.8 T | 極低 | 0.2~1 A/m | 高 | ○ | Co(高コスト) | 磁気センサー、精密計測 | 薄帯 | 非常に高 |
| NANOPERM(Fe-Zr-B系) | 1.5〜1.6 T | 低 | 1〜5 A/m | 高 | ○ | Zr(希少) | 高周波リアクトル | 薄帯 | 中〜高 |
| パーマロイ(Ni-Fe系) | 0.7〜1.0 T | 極低 | 0.5〜2 A/m | 中 | ○ | Ni(中程度) | 精密変換器、磁気シールド | 圧延・加工可能 | 高 |
※各数値は代表的な標準条件での参考値。実際の製品設計にはサプライヤーの最新データシートを参照のこと。
この表から読み取れる最大のポイントは、NANOMETが「高Bs+低コア損失+希少元素不使用」という3条件を同時に満たす唯一の材料群であるという点だ。Co基アモルファスはコア損失では匹敵するが飽和磁束密度が大きく劣り、電磁鋼板はBsは高いが高周波での損失が桁違いに大きい。
実機評価が証明したモーター応用の実力
材料の特性値がカタログ上だけのものか、実際のシステムに乗っても同等の性能を発揮するかは、全く別の話だ。NANOMETの場合、複数の実機評価がすでに学術論文として公開されており、調達バイヤーが「技術的な根拠の薄い新材料」として扱う余地はない。
Fe-Si-B-P-Cu系ナノ結晶合金であるNANOMET®に着目し、12/8極のSRモータにNANOMET積層コアを適用したところ、トルク特性は電磁鋼板製モータとほぼ同等を維持しながら、鉄損が大幅に低減し、無方向性電磁鋼板製の従来機比で効率が10%改善した
と日本磁気学会論文特集号(2021年)で報告されている。[3]
無方向性ケイ素鋼は安価で磁束密度が高い一方、高速用途での高周波領域での鉄損が課題であり、これに対してNANOMET®はほぼ同等の磁束密度を持ちながら低鉄損であることから、次世代モーターコア材料として期待されている。
その後の研究展開として、PMモータ(インセット型)への積層コア適用評価も行われ、高速回転域での優位性が追試されている。[4]
パナソニックによる家電用圧縮機への実装評価も重要な知見を与えている。
試作モータと電磁鋼板製モータとの比較では、鉄損が約60%低下し、モーター効率で3.1%の改善が確認された。
家電分野での鉄損削減率60%という数字は、設計の自由度が広がることを意味する――放熱設計を简略化できるか、もしくは同じ放熱構造でより高出力密度を実現するか、どちらかの選択が設計者に与えられる。
調達現場で押さえるポイント
製造業の調達購買10年以上の経験から言うと、新材料を採用する際に最初に問われるのは「実機での再現性があるか」という点だ。学術論文レベルで複数の大学・企業が同一材料を異なるモータ構成で評価し、いずれも鉄損削減を確認しているNANOMETは、この要件をほぼクリアしている。次のハードルは量産コストの安定化と長期信頼性データの蓄積になる。
2025年最新技術――圧粉コアによる新展開
NANOMETの応用形態は薄帯積層コアだけにとどまらない。2025年には全く異なるプロセスによる圧粉コアの開発成果が報告され、その性能数値は業界の注目を集めた。
粉末組成と粉末製造プロセスの開発により、高飽和磁束密度1.74Tと低保磁力31A/mを両立する軟磁性ナノ結晶NANOMET™粉末の開発に成功した。
さらに、
NANOMET™粉末の適用と金属充填率を89%まで高めることで、SENDUST™圧粉コアの2倍となる1.54Tの飽和磁束密度を実現した。
加えて、
ナノ結晶の微細組織制御・粉末の微細化・金属充填率の向上により、100kHz-100mTの励磁条件下でのコア損失を852kW/m³から146kW/m³へと約83%削減した。
[5]
急冷アトマイズ+ホットプレスという製造プロセスにより、薄帯積層では対応が難しかった複雑な三次元形状への展開も視野に入る。これはモーター設計の自由度を根本から変える可能性を持つ。ただし現時点ではプロセスコストが高く、量産安定性と経済合理性の両立が次の課題となっている。金属・電気電子の5ジャンル横断で見ると、こうした「性能先行・コスト後追い」のフェーズは新素材が市場に定着する前に必ず通る関門であり、調達側がこの段階でサプライヤーとの接点を作っておくことが、将来の優先供給確保につながる。
パワーエレクトロニクスへの波及――EV・再エネ・産業機器の3正面
NANOMETの応用先をパワーエレクトロニクス全体で俯瞰すると、大きく3つの領域で需要が形成されつつあることがわかる。
EV・xEV向けのコア材料
日本における総消費電力の過半はモーターが占めており、自動車の電動化(HEV・EV・FCV)に伴い今後モーター需要の拡大が予想されるため、中長期的なエネルギー需給戦略においてモーターの省エネ化は最重要課題の一つとなっている。
[6]
EV駆動用モーターは、起動時から高速回転域まで幅広い回転数領域をカバーする。この要件は高周波における低鉄損という性能と直結する。電磁鋼板は低回転域では問題ないが、kHz超の高周波では渦電流損が急増する。NANOMETの高電気抵抗率はこの弱点を根本から解消し、高速回転域での効率向上に直接寄与する。
また、EV向けDC-DCコンバータ(400V/800V変換)でも磁心材料の高周波対応が不可欠だ。従来のフェライトコアはBsが低いため大型化が避けられないが、NANOMETの高Bs特性はコアの小型化と発熱抑制を同時にもたらす。設計者の視点からは、インバータ全体の体積・重量削減につながる点が特に評価される。
産業用高効率モーターへの展開
国内の総電力消費量の中でモーターは約6割を占めており、仮にモーター効率を1%改善すると50万キロワットクラスの発電所1基分の省エネルギーに相当する。
この事実はNANOMETの産業的意義の大きさを端的に示している。
産業用モーターへの展開では、IEクラスの効率規制強化が追い風だ。IE4・IE5クラスの超高効率モーターを実現するためには、コア材料の性能向上が不可欠であり、NANOMETはこの要件を材料側から満たすことができる。当社がモーターメーカーのサプライヤー調査で得た肌感覚として、コア損失の削減余地が大きい高速・高周波モーターほどNANOMETへの関心が高い傾向がある。
再生可能エネルギー系統連系インバータ
太陽光・風力発電の系統連系インバータや蓄電池用DC-ACコンバータは、数十kHzの高周波スイッチングを常時行う。リアクトルやトランスのコア損失はそのまま発熱・冷却負荷・効率低下につながるため、低損失材料への需要は強い。アモルファス合金が従来の選択肢だったが、Bs不足による大型化という課題があった。NANOMETはBsとコア損失の両面で電磁鋼板とアモルファスの中間以上の性能を持つため、リアクトル・トランスの小型化と発熱低減を同時に狙える設計が可能になる。
調達購買の視点――バイヤーが問うべき5つの評価軸
NANOMETを調達検討の俎上に載せたとき、単価や規格適合だけを見ていては本来の判断ができない。製造業の調達購買10年以上の現場経験から、以下の5軸で評価することを推奨する。
① 材料特性と用途の適合性
飽和磁束密度・コア損失・保磁力・電気抵抗率が自社の設計要件(動作周波数、磁束密度範囲、温度環境)と合致するかを定量的に確認する。「低損失」という言葉だけでなく、周波数×磁束密度条件での実測データを求めることが前提だ。
② 供給安定性とサプライヤー体制
現時点でのNANOMET供給は東北マグネットインスティテュート(TMI)を中心とした体制だ。薄帯・粉末の生産キャパシティ、海外展開の計画、ライセンス供与先の有無を確認し、単一ソースリスクの評価を行う。中国・東南アジアのサプライヤー網でも類似組成合金の研究開発が進んでおり、将来的なマルチソース体制の可能性を調査しておく価値がある。
③ 加工・積層の内製化可能性
NANOMET薄帯はアモルファス合金と同様に脆性があり、電磁鋼板と同じプレスプロセスでの打ち抜きが難しい。接着積層・レーザーカット・ワイヤーカットなどの代替プロセスが必要になることが多く、既存の加工ラインへの投資負担を現実的に試算することが重要だ。
④ トータルコスト評価(TCO)
材料費だけを見ると電磁鋼板よりコストが高い。しかし、コア損失低減による放熱システムの簡略化、モジュール小型化による筐体コスト削減、冷却電力の削減を加えたTCOで評価すると、ペイバック期間が大幅に短縮されるケースがある。特に高速・高周波領域では電磁鋼板では設計が成立しない場面もあり、代替不可という状況でのコスト比較は意味を持たない。
⑤ 規格・認証への対応状況
モーターや電力変換機器の認証(UL、CE、JIS等)においてコア材料の変更は再評価を必要とする場合がある。サプライヤーが認証取得に向けた技術サポートをどこまで提供できるかを事前に確認する。
調達現場で押さえるポイント
累計200社以上のサプライヤー視察を通じて気づいてきたことがある。新材料の導入に成功した企業の多くは、バイヤー単独ではなく設計・品質・生産技術の横断チームで初期評価を行っている。NANOMETのような材料は「買い方」より「使い方」のノウハウ蓄積が先に来る。パイロット的なトライアル購入から始め、そのデータを社内で共有する仕組みを持つかどうかが、採用成功の分岐点になる。
NEDO政策とサプライチェーンへの影響
NANOMETが一大学発素材にとどまらず、産業化のフェーズに入った背景には明確な政策的後押しがある。
NEDOの「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」プロジェクトでは、供給リスクの高い重希土類元素(主にジスプロシウム)を使用しない革新的高性能磁石の開発と、モーターを駆動するためのエネルギー損失を少なくする高性能軟磁性材料の開発を実施し、高効率で小型化が可能なモーターを実現させることを目指している。
[7]
同プロジェクトの研究体制には高Bs Fe基ナノ結晶軟磁性材料の開発が含まれており、産総研・大手自動車メーカー・モーターメーカーを巻き込んだ19機関以上の連携体制が組まれた。
政府主導のプロジェクトが基礎研究段階から実用化フェーズをつなぐ役割を果たしたことで、NANOMETの産業化スピードは民間単独の場合より明らかに加速した。
調達購買の観点からは、NEDOプロジェクトの終了後に技術が民間に移転・事業化されるプロセスで、どのようなサプライヤーが技術ライセンスを取得し量産に参入するかを追跡することが重要だ。政策的プロジェクトの終了直後は、技術移転先企業の株価・経営体制・特許出願動向が新規サプライヤー候補の見分け方として有効な情報源になる。
加工・量産における現場の実態と乗り越え方
「性能が良い材料だとわかっている。でも採用できない」――調達現場でこういう声が出るとき、その理由のほとんどは加工性・量産性・コストの壁だ。NANOMETについてもこの壁は存在する。正面から見ていく。
薄帯の脆性と積層工程
NANOMET薄帯はナノ結晶化処理後に脆性が増す。電磁鋼板のような量産プレス打ち抜きには対応が難しく、レーザーカットや水ジェット加工が現実的な選択肢になる。加工コストと加工リードタイムが増す反面、寸法精度とバリの少なさではむしろ有利に働く場面もある。アモルファス合金薄帯の量産積層で先行したネクストコアテクノロジーズ等の事例では、ステーターコアへの量産適用の目途が立ちつつあり、NANOMET薄帯積層への展開もこの知見の延長線上にある。
幅広薄帯の製造課題と突破口
初期のNANOMET薄帯は幅40mm以下が限界だったが、C添加による非晶質形成能の向上で
幅120mmの薄帯製造が可能になり
、大型コアへの応用が開けてきた。
このナノ結晶薄帯はBs約1.83T、コア損失約0.27W/kg(1.5T・50Hz)という特性を示している。
幅広薄帯の安定製造は量産コスト低減の鍵であり、今後の更なる改善が続くとみられる。
圧粉コアによる形状自由度の確保
薄帯積層の制約を根本から回避するアプローチが圧粉コア化だ。粉末を成形するため三次元的な複雑形状が可能になり、インダクタ・リアクトルの一体成形設計に応用できる。前述の2025年成果がまさにこの方向性であり、ホットプレスプロセスの量産化が普及への分水嶺になる。
グローバル競争地図と日本の調達戦略上の位置づけ
Fe基ナノ結晶軟磁性合金の研究開発は日本だけでなく、中国・欧州・米国でも活発だ。特に中国では大学・研究機関レベルでのFe-Si-B-P-Cu系合金研究が急増しており、特許出願数は過去5年で大きく伸びている。調達戦略上、これは二重の意味がある。
一方では、中国製造ルートからの廉価なNANOMET類似材料が市場に出てくる可能性が高まり、価格交渉上の比較材料が増える。他方で、性能品質のばらつきや特性保証体制の成熟度に差がある段階では、品質上のリスクを取れないセグメント(EV駆動系、医療機器等)では日本・欧州製を選ぶ論拠が維持される。
中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは、「合金組成の模倣は早くできるが、薄帯製造プロセスの安定性と品質トレーサビリティの整備に数年かかる」というパターンだ。調達部門としては、このラグを活用して国内外の有力サプライヤーとの早期関係構築に動くことが競争優位につながる。
今後の技術ロードマップと調達購買担当者が備えるべきこと
NANOMETを取り巻く技術は現在も進化の最中にある。
株式会社トーキンと東北大学多元物質科学研究所の岡本聡教授らとの共同研究により、次世代パワーエレクトロニクスを支える革新的な軟磁性ナノ結晶圧粉コアの開発に成功した
という2025年5月の報告は、材料研究の最前線が産業化に向けた具体的なプロセス開発に移行していることを示している。薄膜スパッタリングによるNANOMET薄膜のナノ結晶化も研究段階にあり(J-STAGE・ELEX誌掲載、2025年)、MEMSや磁気センサーへの微細化応用も視野に入ってきた。[8]
調達購買担当者が今から準備すべきこととして、3点を整理する。
第一に、材料仕様の翻訳力。Bs・コア損失・保磁力といった磁気特性値を自社の設計要件(電流・周波数・熱設計)に翻訳して社内の設計者と共通言語を持てるようにしておくことが、スピーディな採用判断の基盤になる。
第二に、サプライヤー情報ネットワークの早期構築。TMIや認定加工業者との技術情報交換窓口を設けておき、仕様変更・ロット拡大・認証取得状況などを継続的にモニタリングする。
第三に、TCO評価フレームの整備。材料費・加工費・冷却設備費・長期品質コストを統合したTCOシートをあらかじめ用意し、社内の財務・設計部門を巻き込んだ意思決定プロセスを設計する。新材料の採用は「バイヤーの独断」では進まない。横断チームで動けるかが決定打になる。
出典
- 超低磁心損失・高鉄濃度軟磁性合金「NANOMET®」の最新研究開発動向 — まてりあ 2016年55巻3号(J-STAGE)
- Thermodynamic Assessment of Fe-B-P-Cu Nanocrystalline Soft Magnetic Alloys — Materials Transactions 2014年(J-STAGE)
- NANOMET®積層コアを適用した高速SRモータの実機評価 — 日本磁気学会論文特集号 2021年(J-STAGE)
- NANOMET®積層コアを適用したインセット型PMモータの実機評価 — 日本磁気学会論文特集号 2022年(J-STAGE)
- 超低損失と高飽和磁束密度を両立した軟磁性ナノ結晶圧粉コアの開発に成功 — 株式会社トーキン(2025年)
- 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発 — NEDO
- 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発 中間評価分科会 資料6-1 — NEDO
- NANOMET® thin film sputtering and nanocrystallization — ELEX(J-STAGE)2025年
- 軟磁性材料の開発動向と展望 — まてりあ 2017年56巻3号(J-STAGE)
- Research on Stator Core with Crushed pieces of Nanocrystalline Soft Magnetic Alloy — 電気学会論文誌A 2021年(J-STAGE)
※ 出典リンクは2026年6月20日時点でリンク到達性を確認しています。
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