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投稿日:2026年6月21日

インドのエネルギー分野における製品・システム調達と現地製造方法

【結論】インドのエネルギー分野で製品・システムを安定供給するには、「Make in India」「Atmanirbhar Bharat」に代表される現地調達義務と PLI(生産連動型奨励策)の双方を軸に据えた現地化戦略が不可欠です。2030年までに非化石電源 500GW を目指す政府目標が調達・製造の急増需要を生み出しており、日印クリーンエネルギー・パートナーシップ(CEP)が両国企業の参入機会をさらに広げています。現地サプライヤーの育成・管理、資機材調達規制の把握、段階的ローカル化の実行——この三点を現場で丁寧に積み上げた企業だけが、インド市場で持続的な競争優位を確立できます。

インドのエネルギー市場:500GW 目標が生む調達需要の実態

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インドのエネルギー市場を語る際に外せないのが、政府が掲げる 2030 年の再生可能エネルギー目標です。[1]
インド政府は 2030 年までに合計 500GW 分の再エネ容量導入を目指し、2023 年度から 2027 年度の 5 年間にかけて年間 50GW ずつ容量を増加させる方針を打ち出しています。
この数字は単なる数値目標ではなく、太陽光パネル・逆変換装置・蓄電池・送配電機材・SCADA システムなど、エネルギー分野の製品・システム調達量を毎年飛躍的に押し上げる構造的ドライバーです。

インド中央電力庁は 2022 年 9 月発表の国家電力計画草案において 2030 年の設備容量計画を発表し、非化石電源 500GW(太陽光 333GW、風力 134GW、バイオマス 15GW、小水力 5GW に加えて水力 83GW)という目標を示しています。
太陽光に圧倒的なウェイトが置かれているという点が、製品調達の方向性を決定的に規定しています。[3]

さらに水素分野でも動きが加速しています。[6]
インド政府は 2021 年に「国家水素ミッション」を発表し、2023 年 1 月に閣議決定。2030 年までにグリーン水素を少なくとも年間 5MMT 生産する能力の構築を目指し、水素等推進のための各種政策を推進しています。
再エネコストの低さがグリーン水素製造コストの競争力を生み出しており、
太陽光については 2020 年 12 月に 1.99 ルピー(約 3.2 円)/kWh という最安値を記録し、風力についても 3 ルピー(約 4.8 円)/kWh を記録しており、競争力が高い電源として受け止められています。
この再エネコストの優位性は、電解槽・水素バリア膜・圧縮機など水素関連機器の調達市場を急速に立ち上がらせています。

調達現場で押さえるポイント

当社がインドエネルギー関連案件を累計 200 社超のサプライヤー視察を通じて確認してきた感覚では、「再エネ 500GW 目標=製品調達量の継続的な拡大」という単純な読み方が現場では横行しがちです。しかし実際には発電設備・蓄電池・送配電機材・計測制御システムごとに市場成熟度が大きく異なる。バリューチェーンのどのレイヤーに参入するかを早期に絞り込まないと、広く浅い体制のまま機会損失を招きます。

「Make in India」と PLI の二層構造:現地調達義務の最新地図

インドで事業を展開する上で避けて通れないのが、現地調達義務(ローカルコンテント要求)と PLI スキームの組み合わせです。[2]
2014 年に発足したモディ政権は「Make in India」等の様々なイニシアティブを打ち出し、経済改革・製造業振興による雇用の創出・投資促進のためのビジネス環境整備を進めています。

PLI(生産連動型奨励策)は、この Make in India 政策の中核的な制度的ツールです。[10]
インドは慢性的な貿易赤字に悩んでおり、国内製造業振興の目玉政策として 2020 年度から「生産連動型奨励策(PLI)」を導入している。これは全 14 分野にまたがるインセンティブスキームであり、分野ごとの適格基準を満たせば、新規投資を行った製造業企業に対し、売上高の増加額などに応じて補助金が支給される。

エネルギー分野における PLI の適用状況を具体的に見ると、太陽光モジュールへの強力な国産化圧力が浮かび上がります。[6]
太陽光モジュールの輸入抑制・国産化を図るため、PLI スキームの実施やセルとモジュールに基本関税賦課が行われ、2024 年度から政府事業に対する国産モジュールの使用義務化(ALMM)が始まっており、2026 年度からはセルについても ALMM 導入を検討し、国産化を推進しています。

蓄電池については、
太陽光発電施設について、容量の 10% にあたる蓄電池の設置を義務化する
という方針が示されており、BESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)の需要を政策的に底上げする構造になっています。これは調達量の予測精度を上げる上で非常に重要なシグナルです。

調達現場で押さえるポイント

製造業の調達購買 10 年以上の経験から言えば、PLI は「補助金をもらいやすい分野か」だけで判断するのは危険です。ALMM 義務化のような「政府事業案件に対する国産品使用強制」の方が、日系メーカーの調達計画に直撃します。政府事業向けに日本製モジュールや機材を供給していたサプライヤーは、インド国内製造体制の有無で一気に入札資格を失うケースがあります。現地生産体制への移行タイミングを「補助金受給」ではなく「義務化スケジュール」を起点に設計することをお勧めします。

日印クリーンエネルギー・パートナーシップ(CEP)が開く調達機会

日本企業がインドのエネルギー調達・製造市場に参入する際、政府間の制度的な後ろ盾として機能するのが「日印クリーンエネルギー・パートナーシップ(CEP)」です。[4]
本パートナーシップは、エネルギー安全保障の確保、カーボンニュートラルと経済成長の実現に向け、あらゆるエネルギー源・技術を活用した多様かつ現実的なエネルギートランジションを通じ、日印間のエネルギー協力を推進することを目的としています。

パートナーシップの下での協力分野には、電気自動車(EV)・蓄電池を含むエネルギー貯蔵システム・電気自動車充電インフラ(EVCI)、建物や産業における省エネルギー・エネルギー効率の高い家電製品、太陽光パネルを含む太陽エネルギーの開発などが含まれます。
これらは単なる外交上の建前ではなく、官民ワークショップ・研究開発・人材育成を含む具体的な活動スキームとして機能しています。

グリーン水素分野では、インドが日本を輸出先として明確に位置づけています。[6]
グリーン水素輸出の加速に向けて、グジャラート州・タミルナド州・オリッサ州にある 3 つの主要港をグリーンポートに選定し、水素ハブとして支援。2030 年までに 3 港でグリーン水素バンカリング及び燃料補給施設を設置し、2035 年までに主要 12 港に拡張。グリーン水素の輸出先として日本・韓国・シンガポール・欧州が想定されています。

CEP を活用した調達・製造機会を戦略的に捉えるには、分野別のワーキンググループへの参画と、インド側カウンターパートとの関係構築が実務レベルで問われます。政策文書の存在を知っているだけでは何も動きません。現場に入り込んで仕様交渉・技術提案・価格形成のテーブルに座れるかどうか——そこが勝負です。

現地調達の壁と突破口:JETRO が明かす日系製造業の実態

インドでの現地調達拡大を進める日系企業が直面している実態は、政策論と現場論の落差として現れています。[11]
現地調達を拡大する方針を持つ企業にその理由を聞いたところ、約 8 割が「原材料・部材費のコスト上昇」を挙げた。政府の「メーク・イン・インディア」などに追随した結果とは言えなさそうで、国産化促進政策の影響は実際のところ、相対的には限定的であることがわかった。

この現実は重要な示唆を含んでいます。現地調達を増やす本質的な動機が「政策対応」ではなく「コスト合理性」にある以上、現地サプライヤーの品質・納期・コストを同時に改善しなければ、現地化率の向上は砂上の楼閣になります。

インド現地サプライヤーの質に関しては、
Tier2・3 サプライヤーの品質・管理体制の未成熟、インフラ不足、意思決定スピードや優先順位の違い、権限委譲不足といった文化・組織上のギャップなどが、日本企業のインド進出の大きな障壁となっています。ERP や PLM 未導入、溶接・コーティング不良、安全規格未遵守が多く、現地調達の採用遅延リスクがある。
という指摘が産業全般に当てはまります。

一方で、現地サプライヤーが成長していることも事実で、スピードの問題だと現場では言われます。金属加工・樹脂成形・電気電子・組立完成品の 5 ジャンル横断で当社が確認してきた感覚では、インドの Tier2 サプライヤーは「素地はある、しかし品質マネジメントシステムが定着していない」という状態が典型です。ISO 9001 取得済みでも、実際の工程管理は属人的であるケースが珍しくありません。

エネルギー機器別・調達難易度と現地化ステージ比較表

製品・機器カテゴリ 現地調達難易度 現地製造成熟度 主な規制・義務 日系参入のポイント
太陽光モジュール(結晶Si) ★★★★☆(高) ★★★★☆(高) ALMM義務化(2024年〜)、BCD賦課、政府案件は国産品強制 現地合弁・技術供与でPLI補助金を活用
太陽光セル ★★★☆☆(中) ★★★☆☆(中) ALMM義務化(2026年度〜検討中) 先行投資で市場ポジション確立が急務
BESS(蓄電池システム) ★★★★☆(高) ★★☆☆☆(低〜中) 太陽光設備の10%容量相当の蓄電池設置義務化 セル供給は中国依存度高く、国産化余地大
電解槽(グリーン水素用) ★★★★★(非常に高) ★☆☆☆☆(初期段階) 水電解装置PLI検討中、グリーン水素ミッション対象 技術差別化で先行者利益狙い可
風力タービン(陸上) ★★★☆☆(中) ★★★★☆(高) BIS認証・技術標準準拠が必要 地場大手との協業か技術ライセンスが主流
パワーコンディショナー(PCS/PV Inverter) ★★★☆☆(中) ★★★☆☆(中) IEC準拠・BIS認証、政府案件で国産優先傾向 高効率品は品質差で価格プレミアムを獲得可
変圧器・開閉装置 ★★☆☆☆(低〜中) ★★★★☆(高) BIS/IS規格遵守、公共事業は国産品優先 現地生産ラインへの日本技術注入でコスト削減
SCADA・EMS(監視制御) ★★★★☆(高) ★★☆☆☆(低〜中) サイバーセキュリティ要件強化傾向 高付加価値領域。ソフトウェアローカライゼーションが肝
送配電ケーブル・電線 ★★☆☆☆(低) ★★★★★(高) IS規格必須・BIS強制認証対象 現地調達で十分。品質監査強化が必要
計測・センサー機器 ★★★★☆(高) ★★☆☆☆(低〜中) Legal Metrology Act準拠・BIS登録 精度・信頼性で日本品が優位。ブランド認知が課題
構造架台・鉄骨部材 ★☆☆☆☆(非常に低) ★★★★★(高) BIS IS 規格・防錆処理要件 完全現地調達が合理的。品質検査コスト算入で設計すべき

※難易度・成熟度は当社調達現場での実態調査と各種公式資料(NEDO、JETRO)を総合した評価。★多=難易度高・成熟度高

現地製造(ローカル化)を段階的に成功させる実務フレームワーク

当社が累計 200 社以上のサプライヤー視察と現地調達支援で蓄積してきた経験から、インドエネルギー分野における現地製造移行には「三段階フレームワーク」が有効です。

第一段階:コア技術は日本から、汎用部材は現地で

まず、品質・信頼性が製品価値の核心を担う制御モジュール・特殊樹脂部品・高精度センサーは日本または信頼できる第三国から供給し、板金部品・電装ハーネス・架台・配線材は現地調達に切り替えます。この段階では現地調達比率 30〜40%程度が現実的なターゲットになります。政府案件への入札要件がこの水準を要求するケースが多いため、目標ラインとしても機能します。

第二段階:技術伝承型の製造プロセス移管

特定の品質管理工程・組立工程を段階的に現地工場へ移管します。移管の鍵は「マニュアルを渡すだけ」ではなく、日本本社の技術者が現地に入り込む「技術伝承型 OJT」です。インド現地作業者のポテンシャルは高い。問題は「何を、どの水準まで求めるか」を現地管理職と合意する場面が圧倒的に少ないことです。QC 基準の言語化と視覚化——NG 見本・限度見本の設置と更新——がこの段階の核心タスクです。

第三段階:サプライチェーンのエコシステム化

部材メーカー・表面処理業者・物流業者・検査機関まで現地ネットワーク化し、「産業エコシステム」として管理します。中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは「一社依存が生むリスク」ですが、インドでは逆に「複数発注先のバラツキ管理」が課題として浮上します。サプライヤー格付けシステム(品質・コスト・納期・対応力の四軸評価)を現地語で運用できる体制を早期に構築することが、第三段階移行の合否を分けます。

調達実務で直面するインド固有のリスクと対処法

JETRO の在インド日系製造業調査によると、
製造業企業からの回答では「税制・税務手続きの煩雑さ」が 57.5% と最も多く、「行政手続きの煩雑さ(許認可等)」が 52.1% と続いた。日系企業からは「税制が未熟で、当局の解釈も不透明」「税務訴訟が多く、対応のために大変な労力を割く必要がある」などの声が上がった。
[11]

この指摘は調達実務の観点から見ると「現地調達先への発注・支払に関わる GST(物品・サービス税)の申告ミスが後から追徴課税を招く」というリスクとして具体化します。インドの GST 制度は州をまたぐ取引で異なるルールが適用されることがあり、調達先の仕入税額控除の適格性まで確認しなければ自社の税務リスクになり得ます。

また、インド現地サプライヤーには「品質・コスト・納期の三要素が三角形として均等に保たれない」構造的課題があります。一般に「価格は安いが納期が不安定」「納期はマシだが品質バラツキが大きい」というトレードオフが顕在化しやすい。エネルギー機器は安全性・信頼性が人命に直結する製品も含まれるため、単価だけで発注先を選ぶ調達文化を持ち込むと深刻な品質問題を招きます。

調達現場で押さえるポイント

インドの電力・再エネ案件では「モンスーン期の資材調達遅延」が毎年繰り返されます。6〜9 月の降雨による道路状況悪化・港湾混雑・工場の浸水リスクは、現地でプロジェクトを回した経験がなければ想定外の出来事として計画を壊します。重要機材の調達スケジュールはモンスーン期を避けてリードタイム設計するか、雨期前に工場出荷・保管施設入荷を完了させる在庫バッファを組み込むことが不可欠です。「インドは暑い国だから納期は早い」という感覚は完全に裏切られます。

日本企業が勝てる「共創型サプライチェーン」の設計思想

インド市場で長期的に存在感を発揮する日本企業に共通するのは、「サプライヤーを管理する側」ではなく「サプライヤーとともに成長する側」というスタンスです。これは抽象的な理念ではなく、具体的な行動として現れます。

たとえば、定期的な技術勉強会・品質改善ワークショップ・工程合理化提案——いわゆる「カイゼン活動」をサプライヤーと共同で推進しているメーカーほど、現地調達比率の引き上げに成功しています。これは日本が長年かけて構築してきた「系列型サプライヤー育成」の発想に近いですが、インドでは対価としての情報共有・技術共有の姿勢が強く求められます。知識をクローズドにするパートナーは信頼されません。

また、
インドには在インド日系企業が約 1,434 社・5,205 拠点あり、そのうち約 300 拠点は自動車関連に特化しており、日系中堅・中小企業が競争の激しい自動車バリューチェーンに参入できる可能性を示しています。
エネルギー分野でも同様の日系企業コミュニティが形成されつつあり、日系企業同士の「調達インテリジェンス共有」が現地化推進の隠れたレバレッジになっています。

PLI・CEP・ALMM:制度を使い倒す調達戦略の実践ステップ

ここでは、インドのエネルギー分野における調達・現地製造を進める際の実践ステップを整理します。

ステップ 1:対象製品カテゴリの規制マッピング

まず、自社製品が ALMM・BIS 強制認証・PLI 補助金対象のどれに該当するかを確認します。
2024 年 4 月から政府が行うプロジェクトで設置する太陽光電池モジュールには、承認された国内製造事業者から調達することを義務化されており、モジュールを構成するセルに関しても 2026 年 4 月に義務化することが予定されています。
[8]このようなスケジュール感を持った制度変化を見落とすと、入札機会を丸ごと失います。

ステップ 2:現地パートナー(JV 候補・委託先工場)のスクリーニング

現地パートナーのスクリーニングでは、財務健全性・製造能力・品質マネジメント体制の三軸評価が基本です。インドの Tier2・3 サプライヤーは ERP 未導入が多く、生産実績データを自社でトレースできない場合があります。工場視察の際に「生産日報・不良率記録・是正処置記録の実物」を見せてもらうことを必ず要求してください。

ステップ 3:段階的ローカル化と政府インセンティブの組み合わせ

PLI スキームでは、分野ごとの適格基準を満たせば、新規投資を行った製造業企業に対し、売上高の増加額などに応じて補助金が支給されます。
補助金の支給は投資後の「売上増加額」に連動するため、現地製造開始後の販売計画と補助金申請スケジュールを連動させる財務計画が必要です。

ステップ 4:日印 CEP フレームワークを活用した官民連携

大型プロジェクトへのアクセスでは、二国間政府フレームワーク(CEP、インド太平洋地域エネルギーインフラ支援)の活用が有効です。資源エネルギー庁・JETRO・NEDO のニューデリー事務所が現地での情報収集・商談セッティングの窓口として機能しており、これらを活用しない手はありません。特に NEDO ニューデリー事務所は現地エネルギー企業との接点を持っており、日系企業のビジネスマッチング機能を実質的に担っています。

インドのエネルギー調達・現地製造で「失敗する組織」の共通パターン

10 年以上のインド調達支援の経験から、現地化に行き詰まる組織には共通したパターンがあります。

パターン①:本社決裁フローが現地スピードに追いつかない
インドのビジネス商習慣では、入札参加判断・サプライヤー決定・価格合意が数日内に求められる場面があります。「本社に持ち帰って検討します」というスタンスを繰り返すと、現地側から信頼を失い次のチャンスが来なくなります。現地チームへの権限委譲と意思決定のファストレーン設計が不可欠です。

パターン②:品質基準を日本のそれで押し込む
日本基準を丸ごと持ち込むことで、潜在的に優秀なサプライヤーが「達成不可能」と判断して離脱するケースがあります。品質基準は「最終製品が求める性能保証に必要な最低限」を設計起点にし、そこから逆算して中間工程の基準を設定することが現地化推進の合理的アプローチです。

パターン③:調達リスクを価格だけで管理しようとする
インドサプライヤーとの取引で最大のリスクは「品質と納期の同時崩壊」です。これは単価の安さに引っ張られた複数発注先管理の失敗から生まれます。最安値発注から脱して「適正価格で信頼を買う」調達思想に切り替えることが、現地密着型製造の基盤を作ります。

グリーン水素・洋上風力:次の波に乗るための先行調達準備

現時点で「確実に動いている」調達需要(太陽光・陸上風力・送配電)への対応を固めながら、同時に次の波に向けた先行調達準備を進めることが戦略的な企業行動です。

グリーン水素分野では、
インドにおけるグリーン水素製造コストについて、現地シンクタンク TERI の分析では「2030 年 $2/kg、2050 年 $1/kg」と試算されており、現在のグリーン水素は $4〜6/kg です。
この価格ギャップを埋める電解槽の効率改善・コスト低減技術を持つ日本企業にとって、インドは現時点で最も大きな実証フィールドとなりえます。

洋上風力については、
タミルナド州やグジャラート州が面する EEZ 内の海底エリア(25 〜 500km²)での洋上風力開発
が動き出しており、基礎工事・海底ケーブル・沖合変電設備など、インド国内にまだ製造基盤が乏しい機器群の調達需要が本格化する前に現地製造体制の検討に着手することが重要です。市場が成熟してからではなく「成熟する前に現地に入る」という調達戦略が、インドでは特に効果を発揮します。

まとめ:インドのエネルギー調達・現地製造で持続優位を築くために

インドのエネルギー分野における製品・システム調達と現地製造は、単なる「コスト削減の手段」ではありません。2030 年 500GW という政策目標が生む需要の爆発・PLI と ALMM による国産化圧力・日印 CEP が開く二国間協力の枠組み——これらが重なり合うことで、インドは今後 10 年で最も大きな調達機会を提供する市場のひとつになります。

その機会を実際に取りに行けるかどうかは、現地での「人・プロセス・システム」への投資を惜しまない意思と、現場で泥臭く積み上げる実行力にかかっています。政策文書を読むことと、現場でサプライヤーと膝を突き合わせて品質改善を進めることは、同じ重みを持つ作業です。調達・製造の現場から積み上げる実践知こそが、インド市場での持続的な競争優位の源泉です。


出典

  1. インドの再生可能エネルギー分野の事業機会(JETRO 特集レポート 2023年)
  2. 通商白書2024年版 第5節 インド(経済産業省)
  3. インドの水素事業環境概要(経済産業省 水素・燃料電池戦略協議会 2023年4月)
  4. 日印クリーンエネルギー・パートナーシップ(CEP)合意文書(資源エネルギー庁 2022年3月)
  5. インドのエネルギー関連政策及び企業動向(2025年10月)(NEDOニューデリー事務所)
  6. インドのエネルギー関連政策及び企業動向(2024年12月)(NEDOニューデリー事務所)
  7. インド主要産業別投資環境調査 ‐PLI主要分野‐(2025年3月)(JETRO)
  8. ASEANとインドのカーボンニュートラルへの動き(NEDO TSC調査分析レポート)
  9. 在インド日系製造業のいま(JETRO 2025年)
  10. 「日印クリーン・エネルギー・パートナーシップ(CEP)」の発表について(資源エネルギー庁)

※ 出典リンクは 2026 年 6 月 20 日時点でリンク到達性を確認しています。

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