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投稿日:2026年10月16日

ピンゲージと限界ゲージ(JIS B 7420)——ゲージ公差・摩耗・校正と受入検査での使い方

この記事のポイント(結論先出し)

穴と軸の寸法を「通る・止まる」で見る限界ゲージは、JIS B 7420(限界プレーンゲージ)が、IT6〜IT16・500 mm 以下で包絡の条件を満たす穴と軸を対象に、ゲージの公差、摩耗を見込む寸法、材料と硬さ、使い方を定めている[1]。ゲージ自体にも公差と摩耗があるので、ゲージで合格した部品が規格の限界内にあるとみなせるのは、そのゲージが規格を満たしている間だけである。仕入先と自社でゲージの判定が食い違ったときは、合格と判定した側のゲージが規格を満たしていれば合格として扱う[1]。発注書には、ゲージの呼び方(種類・呼び寸法・公差域・通り側か止り側か)と、受入でどちらのゲージを使うか、校正の証明として何を出すかを書く。

ピンゲージと限界ゲージは、同じ「ゲージ」でも役割が違う

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現場で「ピンゲージで穴を見る」と言うとき、二つの使い方が混ざっている。一つは、決まった直径をもつピンを何本も並べ、どのピンが入るかで穴の大きさを読み取る使い方。もう一つは、穴の公差の下限(最小許容寸法)に合わせたピンと上限(最大許容寸法)に合わせたピンを組にして、下限のピンが通り、上限のピンが入らないことで合否だけを決める使い方である。後者は、JIS B 7420 が定める限界ゲージの考え方そのものである。

JIS B 7420 は、穴または軸の最大実体寸法を基準にした測定面と、最小実体寸法を基準にした測定面をもつゲージを限界プレーンゲージと定義する[1]。最大実体寸法を基準にした側が通り側、最小実体寸法を基準にした側が止り側で、穴の場合の最大実体寸法は最小許容寸法、軸の場合は最大許容寸法に等しい[1]。穴用には全形プラグゲージ・部分プラグゲージ・棒ゲージなどが、軸用にはリングゲージ・挟みゲージがあり、挟みゲージの寸法を確かめるための基準円盤も同じ規格に入っている[1]。

ピンを組にして限界ゲージとして使うなら、規格の考え方——ゲージにも公差がある、通り側は摩耗する、合否が割れたときの扱いを決めておく——をそのまま当てはめるとよい。ピン 1 本ずつの寸法の公差と等級は、購入するゲージの仕様書と校正の証明書で確かめる。この記事は、プレーン(ねじのない)穴と軸の限界ゲージを扱う。ねじの限界ゲージの使い方はねじの公差域クラス(6H/6g)の指定で書いた。

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JIS B 7420 の適用範囲——IT6〜IT16、500 mm 以下、包絡の条件

JIS B 7420 の適用範囲は、JIS B 0401 に規定する公差等級 IT6〜IT16 を適用する 500 mm 以下の、包絡の条件を満たす穴及び軸の寸法検査に用いる限界ゲージと基準円盤である[1]。規格は 1997 年改正で、2021 年 10 月 20 日に確認されている[1]。引用している JIS B 0401 は、現在は JIS B 0401-1:2016 などに改正されているので、IT の数値表は現行版で確かめる。

見落としやすいのは「包絡の条件を満たす」の部分である。通り側の全形プラグゲージは、穴の全長にわたって通る最大の円筒で穴を確かめる道具なので、図面が穴に包絡の条件を求めていることが前提になる。図面が 2 点間サイズ(指定条件なし)のままなら、ゲージで合格した穴が 2 点間の測定で外れることも、その逆も起きる。この関係ははめあい(H7/g6)を仕入先に伝えるときで詳しく書いた。ゲージで受入をする部品は、図面の指示とゲージの前提が合っているかを先に確かめる。

ゲージの長さと、通り側・止り側の見分け方

規格は、全形プラグゲージ・部分プラグゲージ・リングゲージの通り側のゲージ部の長さを、検査する穴・軸の長さ、またははめ合い長さと同じにするとしている[1]。止り側は通り側より短くするか、ゲージ部の面積を小さくする。ただし、穴・軸の形状偏差がはめあいに影響しないことが保証されるときはこの限りでない[1]。通り側と止り側は、ゲージ部の長さか形状で区別できるようにし、止り側には赤マークか止り側表示溝を付けてもよい[1]。短いピンを通り側に使うと、穴の曲がりやテーパを見逃す。深い穴をピンで受け入れるなら、ピンの長さを発注書に書く。

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ゲージにも公差がある——ゲージ公差・摩耗しろ・摩耗限界

限界ゲージの寸法は、穴や軸の許容寸法そのものではない。JIS B 7420 は、ゲージの公差と幾何公差を、適用する穴・軸の公差等級に応じて表 4 で決めている。たとえば全形・部分プラグゲージのゲージ公差は、穴が IT7 なら IT3、IT8〜IT10 なら IT3、IT11・IT12 なら IT5 である[1]。

さらに通り側は使ううちに摩耗するので、規格は通り側の寸法を、摩耗を見込んで穴・軸の公差の内側へずらす。ずらす量のうち公差の内側の部分を「穴公差内摩耗しろ」(記号 z)、摩耗しても限界ゲージとして使ってよい限界の寸法を「摩耗限界寸法」と呼ぶ[1]。呼び寸法 10 mm を超え 18 mm 以下の穴を例に、付表の値を並べると次のとおりである。

穴の公差等級 穴の公差 T(µm) プラグゲージの公差 H(µm) 穴公差内摩耗しろ z(µm) 穴の MML と通り側の摩耗限界寸法との差 y(µm)
IT6 11 2 2 1.5
IT7 18 3 2.5 2
IT8 27 3 4 4

JIS B 7420-1997 の付表 2〜付表 4 の、呼び寸法 10 mm を超え 18 mm 以下の行から、穴用プラグゲージの値だけを抜き出したもの[1]。ほかの寸法区分・等級、棒ゲージ・リングゲージ・挟みゲージの値は規格の付表を見る。ゲージの寸法を求める式は表 5 にある。

IT7 の穴(公差 18 µm)では、プラグゲージの公差が 3 µm、摩耗しろが 2.5 µm ある。穴の公差のうちかなりの部分が、ゲージ側の公差と摩耗の見込みに使われている。だから、ゲージで「通った・止まった」は、ゲージの寸法がいまどこにあるかと切り離して読めない。ピンを買って自社で組にするなら、ピンの実寸(校正の値)と、どこまで摩耗したら替えるかを、自分で決めておく必要がある。

材料・硬さ・表面粗さ・標準温度

JIS B 7420 は、ゲージ部の材料を、合金工具鋼 SKS3(JIS G 4404)またはこれと機械的性質が同等以上のものとし、挟みゲージは炭素工具鋼 SK4(JIS G 4401)または同等以上としている[1]。ゲージ面の硬さは 700 HV 以上(60 HRC 以上)で、寸法の安定化処理を行う[1]。ゲージ面の表面粗さはゲージ公差の 10 % を超えないものとし、最大で 0.2 µmRa である[1]。各寸法の数値は 20 ℃ におけるものとする[1]。受入の作業場の温度が 20 ℃ から大きく外れるなら、ゲージと部品を同じ温度になじませてから当てる。

発注書と受入でゲージをどう指定するか

JIS B 7420 の限界ゲージの呼び方は、規格番号または規格名称、限界ゲージの種類、呼び寸法、公差域の位置・等級を表す数値、通り側・止り側の別の順である。例として「JIS B 7420 全形プラグゲージ 20H7 通り側」「限界プレーンゲージ リングゲージ 30h7 止り側」が挙げられている[1]。ゲージには、呼び寸法、公差域の位置と等級を表す数値、必要に応じて「通」「止」の文字、挟みゲージなら必要に応じて作動荷重、製造年月か製造番号、製造業者名を表示する[1]。ゲージを買うときは、この並びで書けば品物が一つに決まる。

使い方は規格に書いてある

規格の箇条 11 は、ゲージの使い方を定めている。通り側プラグゲージは、穴の直径が最大実体寸法より大きいかを見るもので、無理なく穴の全長にわたって通り抜けなければならない。止り側プラグゲージは、穴の直径が最小実体寸法より小さいかを見るもので、穴に入ってはならない[1]。挟みゲージは、少なくとも直角 2 方向、軸方向には長さに応じて少なくとも 3 か所以上で検査する[1]。そして、この規格の限界ゲージによる検査に合格した穴・軸は、JIS B 0401 の上下の寸法許容差の限界内にあるものとする[1]。

仕入先が出荷検査でゲージを当て、自社が受入で別のゲージを当てると、限界の近くで作られた部品では判定が割れることがある。JIS B 7420 の箇条 13 は、生産者側と使用者側の限界ゲージの違いで判定が一致しない場合、合格の判定をした方の限界ゲージが規格の規定(許容できる摩耗を考慮する)を満足しているなら、その穴または軸は寸法検査に合格したものとして扱うとしている[1]。つまり、自社のゲージで止まったからといって不合格とは言えず、仕入先のゲージが規格を満たしているかが問われる。この扱いを前提に、発注書には次のどれで受け入れるかを書いておく。

1. 仕入先のゲージで判定する
仕入先のゲージの校正の記録を求め、規格を満たしていることを確かめる。

2. 自社のゲージで判定する
自社のゲージの呼び方と校正の状態を仕入先に伝え、同じゲージ(または同じ呼びのゲージ)を仕入先にも持ってもらう。

3. ゲージではなく測定値で判定する
三次元測定などで寸法を測るなら、測り方と測定の不確かさの扱いを決める。測定データの求め方は三次元測定(CMM)の測定データを仕入先に求めるときに書いた。

校正——証明書で何を確かめるか

ゲージの寸法が国家計量標準にさかのぼれる(トレーサブルである)ことを示す仕組みの一つが、計量法に基づく JCSS である。製品評価技術基盤機構(NITE)の説明によると、JCSS は校正事業者登録制度と計量標準供給制度の二本柱からなり、登録事業者は JCSS 標章の入った校正証明書を発行でき、その証明書によって日本の国家計量標準へのトレーサビリティが確保され、かつ校正事業者に技術能力があることが一目で分かる[4]。登録は区分ごとで、長さもその一つである[4]。NITE は、校正事業者登録制度を、校正事業者を対象とした任意の制度と説明している[4]。どのゲージに JCSS の証明書を求めるかは、顧客の要求事項や認証の審査で求められる範囲を確かめて、自社で分けておく。

「値の表」か「等級の保証」か

ゲージの証明書には、測った値を書いたものと、等級に入っていることだけを示すものがある。ブロックゲージの JIS B 7506 がその違いを明確に書いている。K 級と 0 級のブロックゲージには寸法検査表を、1 級と 2 級のブロックゲージにはその等級を保証する等級検査表を付け、寸法検査表には中央寸法(または呼び寸法からの差)を、等級検査表には等級だけを表示する[2]。K 級は常に寸法検査表の値を補正して使う[2]。限界ゲージやピンゲージを買うときも、届く書類がどちらなのかを確かめ、自社で摩耗を追うなら実測値の書かれた書類を求める。

測定の不確かさは、検証する側に不利に働く

JIS B 7506 は、見積もった校正の不確かさを寸法許容差に含め、その許容限界値の内側で考慮するとし、JIS B 0641-1 を参照している[2]。JIS B 0641-1 は、仕様への適合・不適合を検証するときは測定の不確かさを考慮する必要があり、測定値が仕様の上限・下限の付近にあると、測定値が仕様内でも真の値が仕様外である可能性があるので、供給者と顧客は起こりうる問題を解決する方法を事前に合意する必要があるとしている[3]。そして、合意がない場合の基準の背景として「測定の不確かさは、常に、適合又は不適合を検証するために測定を行う当事者に対して不利に作用する」という原則を置き、供給者は適合を、顧客は不適合を、それぞれの不確かさを用いて検証するとしている[3]。限界の近くの部品で揉めないためには、ゲージの判定の取り決め(前の節の 1〜3)と合わせて、この扱いを発注時に決めておく。

校正の間隔を決める

校正の間隔を決める拠り所として JIS Z 9090(測定-校正方式通則)があり、附属書は、製品の許容差と不合格損失、点検のコスト、修正のコストなどから最適な点検の間隔と修正限界を求める手順を示している[6]。ただし、日本品質管理学会誌「品質」に掲載された論文は、この附属書が点検と修正を行う場合の校正方式を扱っており、ピンゲージのようなゲージ類は対象外であると指摘し、ゲージに当てはめる別の方法を提案している[5]。修正(調整)できないゲージの校正間隔は、使用頻度と、校正のたびの実測値の推移(どれだけ摩耗したか)を記録して決めるのが現実的である。摩耗の推移を見るには、前の節のとおり実測値の書かれた証明書が要る。

属性の判定(合格・不合格)をするゲージを含めた測定の能力の確かめ方は、測定システム解析(MSA)を仕入先に求めるときで扱っている。

よくある質問

図面が「φ10H7」で、仕入先はピンゲージで見ていると言う

どのピンを通り側・止り側にしているか(寸法)、ピンの長さ、校正の状態を聞く。ピンが穴の全長より短ければ、穴の曲がりは見ていない。通り側のピンの寸法が摩耗しろを見込んでいなければ、摩耗が進むと公差の外の穴を通してしまう[1]。必要なら、JIS B 7420 の呼び方でゲージを指定し直す。

自社のゲージでは止まったのに、仕入先は合格だと言う

JIS B 7420 の箇条 13 では、合格と判定した側のゲージが規格を満たしていれば合格として扱う[1]。仕入先のゲージの校正の記録を見せてもらい、規格を満たしているかを確かめる。満たしていれば、自社のゲージのほうを疑う。今後に向けて、どちらのゲージで受け入れるかを発注書に書く。

ゲージの校正証明書は JCSS でなければならないか

NITE の説明では、校正事業者登録制度は校正事業者を対象とした任意の制度である[4]。JCSS の証明書が要るかどうかは、顧客の要求事項や認証の審査で決まることが多いので、まずそれを確かめる。要らないゲージは、JCSS の証明書をもつ社内の基準器との比較で管理する、という分け方もある。

ゲージはどこまで摩耗したら替えるか

JIS B 7420 の限界ゲージなら、付表の摩耗限界寸法が目安になる[1]。規格外のピンを組にして使っているなら、ゲージの公差と摩耗の見込みを自社で決め、校正のたびの実測値と比べて替える。

まとめ

穴と軸を通る・止まるで見る限界ゲージは、JIS B 7420 が IT6〜IT16・500 mm 以下・包絡の条件を満たす穴と軸を対象に、ゲージ公差・摩耗しろ・摩耗限界、材料と硬さ、使い方、判定が割れたときの扱いを定めている[1]。ゲージにも公差と摩耗があるので、ゲージの合格は、ゲージが規格を満たしている間だけ意味を持つ。発注書には、ゲージの呼び方と、仕入先・自社・測定値のどれで受け入れるかを書き、校正の証明として実測値の表か等級の保証かを決めておく[2]。測定の不確かさは検証する側に不利に働くので、限界付近の扱いは事前に合意する[3]。校正の間隔は、ゲージ類では実測値の推移で決める[5]。

図面の寸法の測り方まで仕入先とそろえる話は、はめあいの記事のほか、材料の値を設計と発注でそろえるヤング率などの材料定数の使い方、伝動部品のローラチェーン(JIS B 1801)の指定、成績表を注文時に求める例としてのワイヤロープ(JIS G 3525)の指定でも書いている。

出典・参考資料

  1. JIS B 7420:1997 限界プレーンゲージ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1997 年 3 月 20 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 7506:2004 ブロックゲージ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2004 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS B 0641-1:2020 製品の幾何特性仕様(GPS)-製品及び測定装置の測定による検査-第1部:仕様に対する合否判定基準(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2020 年 4 月 20 日改正)
  4. JCSSの概要(独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター(IAJapan))
  5. 佐々木市郎・高文靜・王喜鳳「『JIS Z 9090』が適用できない場合の校正周期最適化-ピンゲージの場合-」品質 46 巻 4 号 421 頁(日本品質管理学会/2016 年)
  6. JIS Z 9090:1991 測定-校正方式通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1991 年 8 月 1 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)

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