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生産管理システムとは——生産計画と生産統制の 2 つを回すもの

この記事のポイント(結論先出し)
生産管理は、量と納期を中心に見たとき生産計画と生産統制の 2 つに分かれる。前者は年度・月度・日程と段階を追って数字を確定させていく作業で、後者は計画と実際のずれを調整して計画へ戻す作業である。生産管理システムと呼ばれる製品は、この 2 つのどちらを、どの深さで担うかが製品ごとに違う。だから機能名だけを並べても製品の性格は見えない。自社の生産形態(受注生産か見込生産か、個別か断続か連続か)を先に決めてから、どちらの側を厚くしたいのかで絞るのが早い。
目次
「生産管理」という言葉が指している範囲
生産管理という語は、広く取るときと狭く取るときで指す範囲が変わる。この違いを押さえないまま製品の説明を読むと、同じ「生産管理システム」という名前でも中身が噛み合わない。
広く取ったときの生産管理
広義には、市場が要求する品質の製品を、要求される時期に、必要量を、経済的に生産することを目的として、生産に関する諸活動を総括的に計画・統制することを指す[1]。この立て方では、品質を計画することが品質管理、要求期日までに必要量を生産して出荷することが生産量管理(納期管理)、期待する利益が上がるように活動することが原価管理、という三本立てになる[1]。
狭く取ったときの生産管理
これに対し、量と納期を中心とした計画・管理を行うことを狭義の生産管理と呼び、その内容は生産計画と生産統制の 2 つに大別される[1]。市販の生産管理システムが扱っているのは、原則としてこの狭義の側である。品質記録や原価計算まで載る製品もあるが、中心にあるのは量と納期を動かす仕組みである。
JIS はどう分類しているか
用語の並べ方は日本産業規格で決まっている。JIS Z 8141:2022「生産管理用語」は、鉱工業における生産管理で用いる主な用語を規定した規格で、令和 4 年 3 月 22 日に改正され、JIS Z 8141:2001 を置き換えた[2]。原案を作成したのは日本経営工学会と日本規格協会である[2]。
この規格は用語を次のように分類している[2]。
| 大分類 | 小分類 |
|---|---|
| 基本 | 一般/生産管理基礎 |
| 生産システム | MRP システム/JIT システム/生産技術・情報システム/環境配慮型生産 |
| 生産計画 | 製品開発・製品設計/生産方式/スケジューリング/ライン編成 |
| 生産統制 | 生産統制/生産指示/生産統制の方法 |
| 作業管理 | 作業管理 ほか |
ここで目に留めておきたいのは、生産計画の下に製品開発・製品設計が置かれていることと、生産システムの下に MRP と JIT が並列で置かれていることである[2]。前者は、何を作るかを決める段階までが生産計画の一部として扱われているという意味であり、後者は、必要量を計算して押し出す考え方と、後工程の引き取りに合わせて作る考え方が、どちらも生産の仕組みとして規格に載っているという意味である。
生産計画——3 段階で数字が確定していく
生産計画は経営計画の一部として、量と納期に関する基本計画になる[1]。ひとまとまりの計画があるのではなく、期間の長さごとに次の 3 つがある[1]。
| 段階 | 何を決めるか | 数字の性格 | システムでの持ち方 |
|---|---|---|---|
| 期間(年度)生産計画 | その期間にどのような生産活動をすべきか[1] | 生産品種・数量は予測又は期待数値[1] | 表計算で足りることが多い。設備・人員の判断材料 |
| 月度生産計画 | いかなる製品を、いつまでに、どのくらい造るか[1] | ある程度確定した数値[1] | 材料の手配がここから走る。所要量計算の入口 |
| 日程計画 | どの仕事を、どの職場で、いつ開始しいつ完了するか[1] | 確定した数値として生産指示される[1] | 現場に渡る指示の元。実績と突き合わせる基準になる |
この 3 段は独立していない。設備計画・人員計画・購買計画は生産計画の要求に応じられるように立案されなければ、生産計画そのものに変更を生じさせ、利益計画まで狂わせることになる[1]。計画を作る作業の実体は、多くの場合「上位の計画で置いた前提が、下位で成り立たないと分かったときに、どちらを直すか決める」ことである。
もうひとつ、計画を立てるときに押さえたい点がある。需要の変動に効率よく対応できるよう、あらかじめ変動を吸収できる範囲の物・能力・時間を計画に持たせておくと、後段の統制が容易になる[1]。余裕を持たせるのは怠慢ではなく、統制の負担を前倒しで減らす設計だという整理である。
生産統制——ずれを見つけて計画へ戻す
生産統制とは、生産計画と生産実施の間にあって両者の調整をはかることをいう[1]。計画を生産実施部門に伝達して作業手配を行い、計画と実績の差異を調整し、結果を計画へフィードバックする[1]。これが適切に行われないと工程は混乱し、計画の達成も難しくなる[1]。
方法として主要なものは 3 つある[1]。
進度管理
指示された日程計画を維持するために、作業の進行状況を把握し、遅れや進み過ぎを調整する[1]。「進み過ぎ」も調整の対象に入っているところが実務的で、先行して作れば良いという話ではない。先に作れば仕掛品が増え、置き場と資金が塞がる。
余力管理
機械設備と作業者の生産能力と、与えられた仕事量を常に把握し、手待ちが生じないように、また仕事量が過剰にならないように、日程を維持しながら能力と負荷のバランスを調整する[1]。負荷が能力を超えている状態を早く見つけられれば、外注に出す、順番を入れ替える、納期を交渉する、という手が打てる。見つかるのが遅いほど選べる手は減る。
現物管理(現品管理)
資材・仕掛品・製品などの物について、作業・運搬・保管の間に「あるべき数量」と「実際の数量」の差が生じることが多く、これが進度管理に支障をきたす[1]。そのため、何が・どこに・何個あるかを的確に把握し、差異があればその原因を調べて処置する[1]。在庫の数が合わないことが、単なる棚卸の問題ではなく進度が読めなくなる原因として位置づけられている点は覚えておきたい。数量差の扱いは棚卸減耗損と評価損の違いでも扱っている。
市販の生産管理システムに入っている機能
製品ごとの差はあるが、複数のパッケージの機能を最大公約数的にまとめると、生産計画・調達管理・資材管理・在庫管理・注文管理・生産実績・進捗管理・物流管理・原価管理・設備管理・技術管理・人事管理といった機能群になる[3]。どのパッケージにも生産計画を中心とした人・物・金の管理業務は入っている[3]。
ただし、機能名が同じでも「どこまで対応しているか」は表現されない[3]。たとえば進捗管理という機能について、1 日の終わりに作業者が「70 パーセント済みました」と出来高を入力して終わる仕様の製品がある[3]。事務処理としてはこれで足りるが、その日に 100 パーセント終わっていなければならなかった場合、後工程は遅れを知らないまま翌朝を迎える[3]。少なくとも警告を出すところまで作られていないと、進捗を入力する意味が薄い[3]。機能一覧では、この差は見えない。
中核にあるのは所要量の計算
生産管理において生産管理システムは中心的役割を負っており、そこでの MRP(Material Requirement Planning)の考え方は、効率的生産を目指した場合に普遍的妥当性を持つ、という整理がある[4]。MRP と異なる考え方に基づく仕組みも現実には存在するが、それらは特別な環境条件における簡易型か、方式選択の誤りの結果と考えられる、とも述べられている[4]。
実務の言葉に直すと、中核は「作る物の構成表(部品表)と、いつ何個必要かの計画があれば、必要な材料と部品の数量と手配時期が計算できる」という一点である。この計算が回らない製品は、名前が生産管理システムでも、実態は実績を記録する道具に近い。
ERP や MES との関係
大手企業では、組織が大きく適用範囲も広いため、部門を越えた全体最適化として ERP のような基幹情報システムを導入している例が多く、生産は人事・経理財務・調達・営業・物流などと同列のアプリケーションとして用意される[3]。この構成では、生産管理のデータは最終的に会計や支払に絡むデータとして共有されるため、生産現場のスタッフの管理意識から見ると粒度が足りない[3]。
そこで、ERP からの生産指示情報を受け取り、それを現場で実行するために、現場固有の情報・機器の稼働データ・能力・作業員の技能データ・機器のメンテナンス計画・原材料の調達状況といったデータを加えて生産活動を計画し、実行を記録する仕組みが生まれた。これが MES(Manufacturing Execution System)と呼ばれるもので、業種ごとに市販されている[3]。半導体業界向けや医薬品業界向けのものが知られている[3]。
整理すると、ERP は会社全体の数字を揃える層、MES は現場の実行を支える層、その中間で量と納期を決めているのが狭義の生産管理である。製品を見るときは「この製品はどの層に立っているか」を先に判断すると、機能の過不足を読み違えにくい。
同じ仕組みでは扱えない——生産形態による違い
製造業といっても範囲は広く、業種によって管理の仕方が異なる。受注生産方式の企業と見込生産方式の企業では管理の進め方が違い、加工組立型と装置産業型では情報の流れや管理の要点が異なるため、ひとつのパッケージがすべてに対応できるわけではない[3]。
生産の形態は、見る角度によって呼び方が変わる[1]。
| 分類の軸 | 区分 | 中身 |
|---|---|---|
| 受注形態 | 受注生産 | 受注があってはじめて仕様が決定し生産される。仕様は個別的で他の顧客とは全く異なる[1] |
| 受注形態 | 見込生産 | 注文が来る前に在庫を持ち、要求にすぐ対応する[1] |
| 繰返し性 | 個別生産 | いくつかの工程を用意しておき、受注の仕様・数量に応じて生産する[1] |
| 繰返し性 | 連続生産 | 特定の品種のために専用の工程を設計・設置し、繰返し生産する[1] |
| 繰返し性 | 断続生産 | 連続生産できるほどの経済性がない場合に、同一仕様で一定ロットを生産する[1] |
| 製造方法 | 装置工業/組立工業 | 前者は少数の材料が完成まで並行して運ばれる。後者は数種の部品を組み合わせ、各部品が独自の工程を経る[1] |
実際の生産活動ではこれらが複合しており、明確に区分できるものは多くない[1]。同じ会社の中でも、試作品や金型は個別受注生産、量産品は連続受注生産という具合に混在する[1]。製品選定でつまずく企業の多くは、社内に複数の形態があることを整理しないまま、代表的な 1 つだけを前提に検討している。
隣にある仕組みとの境目
生産管理システムの守備範囲は、隣接する仕組みとの境目で曖昧になる。境目の引き方は自由だが、法令が絡む部分だけは動かせない。受発注・購買・原価との重なりをまとめて見たいときは受発注・購買・生産・原価の 4 領域の守備範囲で整理している。
外注に出す部分は発注の話になる
工程の一部を社外に出せば、それは製造委託の発注である。2026 年 1 月 1 日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)のもとでは、委託した側が発注のあと直ちに、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法といった事項を、書面か電磁的な方法で相手に示す必要がある[5]。明示すべき事項は 12 種類ある[5]。生産管理システムの側に発注機能があるなら、この項目を持てるかどうかが実務上の分かれ目になる。項目の中身は発注書に明示しなければならない 12 項目で扱っている。
やりとりしたデータは保存の話になる
見積書・注文書・請求書・契約書・送り状・領収書にあたるものを電子でやりとりしたなら、その電子データそのものを保存する義務が生じる[6]。義務は受け取った側だけにかかるのではなく、送った側にもかかる[6]。生産管理システムから発注書を発行してメールで送るなら、送った側にも保存義務が生じる。運用の詳細は受発注システムの選び方で扱っている。
在庫の管理はどちらの側でも起きる
現物管理は生産統制の一部だが、購買在庫や製品在庫は在庫管理の側でも扱われる。両方に持たせると数が合わなくなるため、どちらを正とするかを最初に決める。考え方は在庫管理システムの選び方にまとめてある。
導入されている割合は、思っているより低い
クラウドサービスの利用状況を見ると、全体の利用企業の割合は 80.4 パーセント、製造業では 80.6 パーセントに達している[7]。ただし内訳を見ると、利用しているサービスは「ファイル保管・データ共有」が 70.8 パーセント、「社内情報共有・ポータル」が 57.5 パーセント、「電子メール」が 56.7 パーセントと続き、「生産管理、物流管理、店舗管理」は 12.9 パーセントにとどまる[7]。「購買」は 13.5 パーセント、「受注販売」は 15.7 パーセントである[7]。
この調査の対象は常用雇用者 100 人以上の企業である[7]。つまり、ある程度の規模がある企業に限っても、生産管理の領域はファイル共有の 5 分の 1 以下しか載っていない。導入していないことが遅れているという話ではなく、載せるべき範囲を決める難しさがそのまま数字に出ていると読むほうが実態に近い。
では、どこまでを載せるところから始めるのか。品目数と工程数を数えて範囲を切る手順は、中小の製造業が生産管理システムで最初に入れる範囲で扱っている。
よくある質問
生産管理システムと生産管理ソフトは違うものか
言葉の使い分けは定まっていない。市販のパッケージを指して生産管理ソフトと呼ぶことが多いが、機能の範囲が違うわけではない。判断に使うなら、名前ではなく「所要量の計算をするか」「日程計画を持つか」「実績を計画と突き合わせるか」の 3 点を見るほうが確実である。
生産計画と生産スケジューラは同じものか
同じではない。JIS の分類では、生産計画の下にスケジューリングが小分類として置かれている[2]。つまりスケジューリングは生産計画の一部であり、日程計画を作る部分に相当する。スケジューラと呼ばれる製品は、この部分に特化して、設備や人の制約を入れた順序付けを行う。生産管理システムの代わりにはならないが、日程計画だけが弱いときの補完としては噛み合う。
なぜ実績の入力が現場で嫌われるのか
入力した結果が現場に返ってこないからである。前述のとおり、出来高を入力しても遅れの警告が出ない仕様であれば、入力は事務処理としてしか機能しない[3]。実績を集計して工程ごと・加工種類ごとの生産時間を出す機能がなく、別の手段でデータを整理しないと集計も評価もできない、という事例も報告されている[3]。入力を定着させたいなら、その入力が誰の判断を変えるのかを先に決める。
紙の運用は前提として残るのか
中小企業では社員が少なく、情報技術の専門家を多く抱える余裕がないため、生産現場に情報端末が配布されていることも少なく、生産指示や報告は紙に印字したものへ手書きで記入する状態にある、という指摘がある[3]。紙をなくすことが目的になると導入は止まりやすい。まずは紙のまま流し、確定した数字だけをシステムに戻す形からでも、計画と実績の突き合わせは始められる。
クラウドのものと、自社に置くものはどちらがよいか
この記事で見た機能の話とは別の軸なので、機能を決めてから考えれば足りる。判断に効くのは、データの置き場所、作り替えの自由度、止まったときの復旧、費用の出方、委託先の管理である。それぞれの確認点は生産管理システムはクラウドか、自社で持つかで扱っている。
MRP と JIT はどちらを選ぶものか
JIS の分類では、MRP システムと JIT システムはどちらも「生産システム」の小分類として並んでいる[2]。排他的な選択肢というより、必要量を先に計算して手配する側と、後工程の要求に合わせて作る側という向きの違いである。量産品と個別品が混在する会社では、品目群ごとに向きを変えて運用することになる。
まとめ
生産管理システムは、量と納期に関する生産計画と生産統制を回すための道具である[1]。計画の側は年度・月度・日程と段階を追って数字が確定していき、統制の側は進度・余力・現物という 3 つの方法で計画とのずれを調整する[1]。
製品を見るときは、機能一覧ではなく次の順で確かめるとよい。第一に、自社の生産形態(受注生産か見込生産か、個別か連続か断続か、装置型か組立型か)を書き出す[1]。第二に、所要量の計算が回るかを見る[4]。第三に、進捗の入力が誰かの判断につながる作りかを見る[3]。第四に、外注の発注をそこで出すなら、法令が求める明示事項を項目として持てるかを見る[5]。
この 4 つで候補は大きく絞れる。逆に、機能名の多さから入ると、どの製品も似た言葉が並んでいるため差が出ない。
出典・参考資料
- トヨタ生産方式における生産管理の基礎(熊澤光正/四日市大学論集 第 30 巻第 2 号・2018 年)
- JIS Z 8141:2022 生産管理用語(無料プレビュー)(日本規格協会/令和 4 年 3 月 22 日改正)
- 中小製造業おける生産管理パッケージ(藤川裕晃・前田真輝/第 14 回横幹連合コンファレンス・2023 年 12 月)
- 生産管理システムの位置づけ(高橋恒明/日本生産管理学会「生産管理」第 20 巻第 1 号・2013 年)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
- 令和 6 年 通信利用動向調査報告書(企業編)(総務省 情報流通行政局)
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