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投稿日:2026年10月2日

ゴム部品の材質と硬さの指定——デュロメータのタイプ・測り方と配合変更の連絡

この記事のポイント(結論先出し)

ゴム部品の図面に「NBR 硬度 60」と書いても、決まるのは原料ゴムの種類と硬さの目安だけである。同じ原料ゴムでも配合剤によって特性は大きく変わる[6]。性能で指定するなら、自動車用加硫ゴムの分類(JIS K 6403)のように、耐熱・耐油・硬さ・引張強さを記号で書く方法がある[3]。ただしその分類は複数の原料ゴムにまたがる[3]ので、原料ゴムも併記する。硬さはデュロメータのタイプ・試験片の厚さ・読み取りの時間・測定点数まで決めないと数字がそろわない[1]。加硫ゴムの標準の読み取りは 3 秒、熱可塑性ゴムは 15 秒で[1]、デュロメータと IRHD の値を直接結び付けることは試験規格が勧めていない[1]。配合を変えるときに何を知らせてもらうかは、発注の時点で決めておく。

「NBR 硬度 60」で決まること、決まらないこと

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ゴム部品の図面の材質欄は、短く書かれていることが多い。「NBR Hs60」「EPDM 硬度 70±5」といった書き方である。NBR や EPDM は原料ゴムの略号で、原料ゴム及びラテックスの略号を定める JIS K 6397 に一覧がある。たとえば NBR はアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(ニトリルゴム)、EPDM はエチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体を指す[4]。

だが、ゴムの性質は原料ゴムだけでは決まらない。O リングのゴム材料の選定指針である JIS B 2410 は、表に示す材料は代表的なゴム材料であり、基となるゴム材料にいろいろな配合剤を混ぜることで、同等の性質をもちながらも引張強さ、破断までの伸び、反発弾性、圧縮永久ひずみ、低温と高温に対する耐性が大きく異なるものができる、と注に書いている[6]。同じ指針は、ゴム配合物を、原料ゴム・硬化剤・促進剤・充てん剤・補強剤などの全成分を均一に分散させた混合物と定義している[6]。

つまり「NBR 硬度 60」は、どの配合物で作ってもよいという指定に近い。仕入先が配合を変えても、原料ゴムと硬さが同じなら図面の上では違反にならない。性能で縛るか、配合そのものを固定するか、少なくとも変えるときに知らせてもらうか、のどれかを決めておく必要がある。

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性能で指定する書き方:JIS K 6403 の分類

自動車用の加硫ゴム材料には、品質に基づく分類の規格 JIS K 6403 がある(1971 年制定、2018 年改正)[3]。この規格は、ゴム材料を、加熱老化に対する抵抗を表す「耐熱度のタイプ」と、油中での膨潤に対する抵抗を表す「耐油度のクラス」で分け、次に硬さと引張強さで区分し、さらに必要な性能があれば項目を追加して表示する[3]。

記号の読み方

耐熱度のタイプは試験温度で A(70 ℃)から K(300 ℃)までの 10 段階に分かれ、それぞれの温度で 72 時間の促進老化試験を行ったときの引張強さの変化率・伸びの変化率・硬さの変化が決められている[3]。耐油度のクラスは、試験用潤滑油 No.3 油に浸せきしたときの体積変化率で、A(要求なし)から K(10 % 以下)までに分かれる[3]。

この 2 文字の後に 3 桁の数字を付ける。初めの 1 桁がタイプ A デュロメータ硬さで、5 は 50±5、6 は 60±5 を表す。次の 2 桁が引張強さの最小値で、10 は 10 MPa である[3]。規格の例「BC510」は、耐熱度 B(100 ℃)、耐油度 C、硬さ 50±5、引張強さ 10 MPa 以上の材料を表す[3]。さらに種別番号と追加記号で性能を足せる。規格の例「2BC510 A1-4 EO3-4」では、耐熱性(A)と潤滑油に対する耐油性(EO)の追加性能を、試験方法と試験温度の数字で指定している[3]。

追加記号には、耐熱性(A)、圧縮永久ひずみ(B)、耐オゾン性・耐候性(C)、耐水性(EA)、燃料油に対する耐油性(EF)、低温特性(F)、引裂強さ(G)、接着強さ(K)、汚染性(P)、反発弾性(R)などがある[3]。追加数字を書かない追加記号は、試験項目は適用できるが、試験方法・試験温度は受渡当事者間の協定による[3]。

分類だけでは原料ゴムが決まらない

この分類で注意したいのは、同じ記号に複数の原料ゴムが当てはまることである。規格の附属書 A(参考)は、分類と代表的な原料ゴムの事例を表にしており、たとえば AA には NR・SBR・IR・IIR・EPDM などが、CH には NBR・HNBR・CO・ECO が並ぶ[3]。性能だけを書いて発注すると、仕入先は条件を満たす範囲で原料ゴムを選べることになる。

実務としては、原料ゴムの略号と分類記号を併記するのがよい(当方の提案)。「NBR、JIS K 6403 の分類記号(BF に硬さと引張強さの 3 桁を付けたもの)を準用」のように書けば、原料ゴムと性能の両方が残る。この規格の適用範囲は自動車用の加硫ゴム材料なので[3]、自動車以外の部品で使うときは「この規格の分類記号を性能の表し方として準用する」ことを購買仕様書に書いておく。規格の基本性能の表には、規定以外の硬度を設定するときは受渡当事者間で協議するという注記もある[3]。

硬さの数字をそろえるために決めること

ゴムの硬さは、金属の硬さと違って、押し込んでいる間にも数字が動く。デュロメータ硬さの規格 JIS K 6253-3(2023 年改正)は、ゴムの硬さが、弾性率、粘弾性、試験片の厚さ、押針の形状、押し込む力、押込みの速さ、読み取るまでの時間の影響を複雑に受けると書いている[1]。図面の「硬度 60±5」だけでは、どの条件の 60 かが決まらない。

デュロメータのタイプ

デュロメータにはタイプ A、D、E、AM がある。規格は選び方を、タイプ D で 20 未満を示すならタイプ A、タイプ A で 20 未満ならタイプ E、タイプ A で 90 を超えるならタイプ D、厚さ 6.0 mm 未満の薄い試験片ならタイプ AM を用いる、と定めている[1]。タイプ AM は必ずスタンドを用いなければならない[1]。図面の硬さに「A」や「D」の記号が付いていなければ、どのタイプで測った値かを確かめる。

試験片の厚さと、測る位置

試験片の厚さは、タイプ A と D では 6.0 mm 以上、タイプ E では 10.0 mm 以上、タイプ AM では 1.5 mm 以上とされている。足りない場合は積み重ねてよいが 3 枚以内で、積み重ねた結果と積み重ねない結果は一般に一致しない[1]。押針の先端は、タイプ A と D では試験片の端から 12.0 mm 以上離れた位置で測る[1]。注記には、薄い試験片は台の硬さの影響を受けて高い値を示すことがあり、曲面や荒れた表面では正しい硬さが得られない、とある[1]。

購買の立場で読み取れるのは、厚さ 3 mm のパッキンや断面が丸いシール部品に、手持ちの硬さ計を当てた数字は、規格の条件で測った値とは比べられないということである。仕入先の成績書が「製品で測った値」なのか「同じ配合で作った試験片の値」なのかを確かめる。

読み取りの時間と測定点数

規格は、加圧板を試験片に接触させた後、規定時間後に読み取るとし、標準の測定時間を加硫ゴムでは 3 秒、熱可塑性ゴムでは 15 秒としている[1]。熱可塑性ゴムに 15 秒を導入した理由について、押し続けたときの値が加硫ゴムより長い時間にわたって下がり続けるから、と注記がある[1]。協定で別の時間を使ってもよいが、その場合は試験報告書に書く[1]。測定点数は、既知の材料で 3 点、未知の材料で 5 点で、互いに離れた位置で測って中央値をとる[1]。

精度については、手持ちのデュロメータより、力を調整できるグリップを備えた手持ち、スタンドを使ったもの、タイマを備えスタンドを使ったものの順に良くなる、という一般的な傾向が注記に示されている[1]。受入で硬さを確かめるなら、仕入先と同じタイプ・同じ測定時間・同じ持ち方で測らないと、差が出たときに原因が分からない。

状態調節

試験は、加硫または成型後少なくとも 16 時間経過してから行い、試験片は標準の試験温度で 1 時間以上状態調節する[1]。標準の試験温度は(23±2)℃で、取決めによって(27±2)℃としてもよい[5]。ゴムの物理試験の通則 JIS K 6250 は、製品の試験を行う場合、製品は製造してから 3 か月以内、または入手してから 2 か月以内とする、とも定めている[5]。倉庫に長く置いた予備品を測って「仕様から外れた」と言っても、規格の試験としては条件を外れていることがある。

デュロメータのタイプ 使う場面(規格の選び方) 試験片の厚さ 端からの距離
タイプ A 一般的な中硬さのゴム。タイプ D で 20 未満のとき 6.0 mm 以上 12.0 mm 以上
タイプ D タイプ A で 90 を超えるとき 6.0 mm 以上 12.0 mm 以上
タイプ E タイプ A で 20 未満のとき 10.0 mm 以上 15.0 mm 以上
タイプ AM 厚さ 6.0 mm 未満の薄い試験片。スタンド必須 1.5 mm 以上 4.5 mm 以上

出典: JIS K 6253-3 の箇条 5・6.6・7.2[1]。

IRHD と取り違えない

ゴムの硬さには、デュロメータ硬さのほかに国際ゴム硬さ(IRHD)がある。硬さの通則 JIS K 6253-1 は、IRHD を、下端が球面のプランジャを規定の力で押し付けたときの押込み深さを換算表で換算した硬さとし、デュロメータ硬さとは試験の種類を分けている[2]。IRHD の試験で規定を満たさない形状・寸法の試験片を使ったときの値は「見掛け硬さ」と呼び、曲面試験片の IRHD は常に見掛け硬さとして扱われる[2]。

デュロメータ硬さの規格は、個別のゴムや配合物で相関が成り立つといわれている場合でも、デュロメータの値と IRHD の値とを直接関連付けることは推奨しない、と書いている[1]。海外の仕入先から IRHD で書かれた材料表が来たときに、図面のタイプ A の値と同じものとして読まない。どちらで管理するかを決め、図面か仕様書に書き分ける。

製品から試験片を取るとき

成形品から試験片を切り出して試験することもある。JIS K 6250 は、製品から試験片を採取・作製する場合に試料が規定の厚さにないときは、打ち抜く前に厚さを調整するとし、切出し(回転刃スライサや研削用スカイバ)と研磨の方法を定めている[5]。研削と石を使う場合、最初の研削は 0.2 mm を超えてはならず、発熱を避けるために研磨量を少しずつ減らしていくのがよい、とされている[5]。

切り出し・研磨の条件で値が動くので、製品から取った試験片で受入試験をするなら、採り方を仕入先と合わせておく。成形品は表層と内部で状態が違うこともあり、製品からの値と、同じ配合で別に作った試験片の値は、同じ表の値と比べるのか別の判定値を置くのかを先に決める。

配合を変えるときに何を知らせてもらうか

ゴムは、原料ゴムが同じでも、充てん剤・可塑剤・加硫系のわずかな変更で、硬さは仕様内に収まったまま圧縮永久ひずみや低温特性が変わることがある。JIS B 2410 の注が書くように、配合で特性は大きく変わる[6]。だから、硬さだけを受入で見ていると、配合の変更は見えない。

規格は、配合の変更を何から何まで知らせよとは定めていない。ここからは発注側の提案である。購買仕様書や品質取決めに、事前に通知と承認を求める変更として、次のような項目を書いておく。

1. 原料ゴムの種類、またはそのグレード・製造業者
同じ略号でも、たとえばニトリルゴムのアクリロニトリル量が違えば耐油性と低温特性が変わる。

2. 充てん剤・可塑剤・加硫剤・加硫促進剤の種類と量
配合表そのものを出させる必要はないが、変えたときに知らせることを約束させる。

3. 練りを行う工場・加硫の条件
配合が同じでも、練りの工場や加硫の温度・時間が変わると物性が動く。

4. 金型・成形方法
寸法とばりの出方に関わる。外観の基準との関係も出る。

5. 確認の方法
変更の前後で、分類記号の基本性能と追加性能を同じ試験方法で測ったデータを出してもらう。K 6403 の基本性能は、規格の試験方法による標準試験片で得た値とされている[3]ので、比べるなら試験片の作り方もそろえる。

知らされないまま変わる「サイレントチェンジ」がどう不具合につながるかはサイレントチェンジを見抜けず品質不良が発生する典型事例、海外の委託先での変更通知の見落としは海外 OEM での部材変更通知を見逃すリスクで扱っている。

発注書・仕様書の書き方の例

項目 足りない書き方 そろう書き方(提案)
材料 NBR NBR(JIS K 6397 の略号)、JIS K 6403 の分類記号を準用して性能を指定
硬さ 硬度 60±5 タイプ A デュロメータ硬さ A60±5、JIS K 6253-3、測定時間 3 秒、試験片は同一配合で作った厚さ 6 mm 以上のもの
使用条件 耐油性あること 接する油の名称、温度範囲、低温側の使用温度
変更管理 記載なし 原料ゴム・配合・練り工場・加硫条件・金型の変更は事前通知と承認
成績書 記載なし ロットごとの硬さ(試験条件つき)、基本性能の試験は頻度を決めて提出

受入の基準は発注時に書く

公正取引委員会のテキストは、取適法がかかる取引について、検査基準があいまいで委託内容との違いがはっきりしないときや、発注した後で検査基準を恣意的に引き上げ、それまで合格だったものを不合格にするときは、委託内容と違うことを理由とした受領拒否を認めていない[7]。ゴム部品で起きやすいのは、硬さの測り方を決めずに発注し、受入で別の硬さ計・別の読み取り時間で測って「外れている」とする形である。測り方は合否の基準の一部として、発注の時点で書いておく。線引きは受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで扱っている。

よくある質問

図面の「Hs」はデュロメータ硬さと同じですか

古い図面の記号は、どの試験方法の値かを書いていないことがある。現行の規格の書き方では、デュロメータのタイプを付けて示す(タイプ A なら A60 のように)。図面の記号がどの試験方法を指すかを設計部門に確かめ、発注書では試験規格とタイプを書く。

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硬さだけ受入で確かめれば十分ですか

硬さは配合の変更で動かないことがある。耐熱・耐油・圧縮永久ひずみなど、使い方に効く性能は、分類記号のような形で指定し、頻度を決めて試験データを出してもらう[3][6]。日常の受入は硬さと外観、定期的に性能、という分け方が現実的である(当方の提案)。

O リングの硬さも同じ考え方でよいですか

O リングには専用の規格があり、材料の硬さは O リングと同一条件で作った試験片で測るとされている。詳しくはO リングとガスケットの発注で決めることで扱う。測定機器の種類の一般的な説明はゴム製品の硬度管理とその測定技術にあるが、測定点の数、値のまとめ方(中央値)、読み取りの時間は、この記事で引いた JIS K 6253-3 の規定で決める。

海外の仕入先にはどう伝えればよいですか

原料ゴムの略号は国際規格(ISO 1629)を基にした JIS K 6397 の記号なので[4]、そのまま通じることが多い。硬さはデュロメータのタイプと読み取り時間を数字で書き、IRHD と混同しないよう明記する[1]。図面の注記の訳し方は中国の工場に図面を出すときで扱う。

まとめ

ゴム部品の材質は、原料ゴムの略号だけでは配合が決まらない[4][6]。性能で指定するなら JIS K 6403 の分類記号のように耐熱・耐油・硬さ・引張強さを書き[3]、原料ゴムも併記する。硬さはデュロメータのタイプ、試験片の厚さ、読み取りの時間(加硫ゴムは標準 3 秒)、測定点数、状態調節まで決めて数字をそろえ[1][5]、IRHD とは結び付けない[1][2]。配合を変えるときに何を知らせてもらうかを購買仕様書に書き、受入の基準は発注の時点で明示する[7]。

出典・参考資料

  1. JIS K 6253-3:2023 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第 3 部:デュロメータ硬さ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 2 月 20 日改正)
  2. JIS K 6253-1:2012 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第 1 部:通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 3 月 21 日制定・2021 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS K 6403:2018 自動車用加硫ゴム材料の分類(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 4 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  4. JIS K 6397:2005 原料ゴム及びラテックスの略号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2005 年 12 月 20 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  5. JIS K 6250:2019 ゴム-物理試験方法通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 6 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  6. JIS B 2410:2005 O リング-ゴム材料の選定指針(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2005 年 3 月 20 日制定・2024 年 10 月 21 日確認)
  7. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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