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投稿日:2026年10月2日

非破壊検査を発注で指定するとき——方法と合否の基準、資格、時期を分けて書く

この記事のポイント(結論先出し)

非破壊検査(NDT)を発注で指定するとき、いちばん多い抜けは、試験方法の規格を書けば合否も決まると思ってしまうことである。浸透探傷試験と磁粉探傷試験の JIS は、どちらも合否の判定基準を定めていないと明記している[3][4]。溶接部の超音波探傷でも、ISO は試験の技法(ISO 17640)と合格レベル(ISO 11666)を別の規格にしている[7][8]。発注側が書くのは、方法・試験方法の規格・感度などの条件・合否の基準・試験の時期・試験者の資格・報告書である。「きずなきこと」と書くと、合格になるはずのきずまで不合格になりうる。JIS の用語では、きずのうち合格基準を満たさないものだけが「欠陥」である[6]。

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溶接を含む部品で、非破壊試験の方法・範囲・合否基準・実施者をそろえて書くことは溶接を含む部品の発注で指定することの記事で、鋳物の内部欠陥の受入基準は鋳物の発注で決める材質と内部欠陥の受入基準の記事で扱った。この記事は、溶接・鋳物に限らず、鍛造品・機械加工品・熱処理品も含めて、試験方法の規格と合否の基準の分け方、方法の選び方の限界、試験の時期、資格の読み方、報告書に絞る。

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試験方法の規格は、合否を決めない

浸透探傷試験(PT)の JIS Z 2343-1 は、材料や製品の表面に開口しているきず(割れ、重なり、しわ、ポロシティ、融合不良など)を検出する試験方法と、浸透指示模様の分類方法を定める規格だが、合格基準のために用いることを意図したものではないと適用範囲に書いている[3]。磁粉探傷試験(MT)の JIS Z 2320-1 も、表面の処理、磁化の方法、検出媒体、結果の記録と解釈は含むが、判定基準については規定しないとし、個別製品についての追加の要求は製品規格によるとしている[4]。

溶接部の超音波探傷(UT)では、試験の技法と合格の基準が別の規格になっている。ISO 17640:2018 は、厚さ 8 mm 以上で超音波の減衰が小さい金属の溶融溶接継手の手動の超音波探傷の技法を定め、検出の確率が異なる四つの試験レベルを規定している[7]。一方、ISO 11666:2018 は、フェライト鋼の完全溶込み溶接継手について、合格レベル 2 と合格レベル 3 の二つを定め、それぞれ ISO 5817 の品質レベル B と C に対応するとしている[8]。品質レベル D に対応する合格レベルは、その品質レベルでは超音波探傷が一般に要求されないため含まれていない[8]。

つまり、「JIS Z 2343-1 による浸透探傷試験を行うこと」と書いても、どの大きさの指示模様を不合格にするかは決まっていない。合否は、製品規格、顧客の規格、または発注側の仕様書で別に決める必要がある。JIS の非破壊試験用語でも、試験結果を用いて要求水準を満たすかを決める基準を「判定基準」、合否のしきい値として事前に決めた一連の値を「合格レベル」として、試験の方法とは別の用語にしている[6]。

方法 試験方法の規格の例 見つけられるもの・適用の限界 合否の基準
浸透探傷(PT) JIS Z 2343-1:2017 表面に開口したきず。主に金属。多孔質すぎる材料には不向き[3] 規格の意図の外。別に決める[3]
磁粉探傷(MT) JIS Z 2320-1:2017 強磁性体の表面のきず、特に割れ。表面直下も検出できるが、深くなると感度が急に下がる[4] 規定しない[4]
超音波探傷(UT・溶接部) JIS Z 3060:2015、ISO 17640:2018 内部のきず。ISO 17640 は厚さ 8 mm 以上・減衰の小さい材料が前提で、試験レベルは四つ[7] ISO 11666 の合格レベル 2・3(ISO 5817 の B・C に対応)など[8]
放射線透過(RT・溶接部) JIS Z 3104:1995 内部のきず。透過写真の像質を A 級・B 級・P1 級・P2 級・F 級に分ける[5] 像質とは別に、きずの判定の基準を決める

方法の選び方:その方法で「見えないもの」を知る

方法の選び方を誤ると、試験に合格していても目的のきずは見ていない、ということが起きる。表の限界から、次のことが言える。

磁粉探傷は強磁性体のための試験である[4]。オーステナイト系ステンレスやアルミ、銅合金の部品に「磁粉探傷」と書いても試験にならない。こうした材料の表面のきずを見るなら浸透探傷を選ぶ。浸透探傷は表面に開口したきずを見る方法なので[3]、内部の巣や、表面に出ていない割れは見えない。内部を見たいなら超音波か放射線の方法を選ぶ。超音波探傷は、ISO 17640 の技法なら厚さ 8 mm 以上が対象で[7]、薄い部品や複雑な形の部品には、そのまま当てはまらないことがある。

銅製品の管のように、渦電流探傷が使われる部品もある。その実務は銅製品で必要な非破壊検査技術の記事で扱っている。どの方法でも、方法を選んだ理由(見たいきずの種類と場所)を仕様書に一行書いておくと、仕入先から別の方法を提案されたときに判断しやすい(当方の提案)。

「きずなきこと」と「欠陥なきこと」は違う

JIS Z 2300(非破壊試験用語)は、「きず」を非破壊試験の結果から判断される不完全部または不連続部と定義し、きずには合格となるものと不合格となるものがあると注記している[6]。そして「欠陥」を、規格や仕様書などで規定された合格基準を満たさず不合格となるきずと定義している[6]。

図面や仕様書に「きずなきこと」と書くと、感度を上げれば見つかる小さな指示まで不合格にする、と読める。逆に「欠陥なきこと」と書くなら、何が欠陥かを決める合格基準がどこかに書かれていなければならない。仕様書では、どの基準(規格と合格レベル、または自社の基準)で判定するかを明記する。磁粉探傷の JIS は、試験結果に、磁粉模様を受渡当事者間で定めた合否判定基準に照らした判定結果を記載するとしている[4]。基準を当事者で定めることが前提になっている。

感度・技法の条件を決める

同じ方法でも、条件によって見つかるきずの大きさは変わる。溶接部の超音波探傷の JIS Z 3060 は、探傷の感度や一部の走査の方法を受渡当事者間の協議によって決めるとしている箇所がある[9]。放射線透過の JIS Z 3104 は、透過写真の像質を A 級・B 級・P1 級・P2 級・F 級に分け、溶接継手の形状ごとに適用を決めている[5]。像質の級を書かずに「放射線透過試験を行うこと」とだけ書くと、どの程度細かいきずまで写る写真で判定したのかが分からない。

ISO 17640 の四つの試験レベルは、それぞれ検出の確率が違う[7]。超音波探傷を指定するときは、試験方法の規格、試験レベル(または感度の条件)、合格の基準を一組で書く。浸透探傷なら、浸透液の種類(蛍光か染色か)と現像の方法、磁粉探傷なら磁化の方法と、試験後に脱磁が要るかどうかを書く。磁粉探傷の JIS は、検査仕様書などで脱磁を要求された場合には、試験後に残留磁気を許容される値以下にするとしている[4]。残留磁気は切りくずを引き寄せるので、摺動部品などでは脱磁の要否と許容値を仕様書に入れる。

試験の時期を決める

非破壊試験を工程のどの時点で行うかは、見つかるきずを左右する。規格の文から直接言えることは少ないが、表の限界から考えると、次の点を仕入先と決めておく必要がある(当方の提案)。

  1. 熱処理で割れが出る材料なら、最後の熱処理の後に試験する。硬化層の指定は有効硬化層深さの指定の記事で扱う
  2. 浸透探傷・磁粉探傷は、めっきや塗装の前に行う。表面に開口したきずを見る方法なので、皮膜で口がふさがると見えなくなる
  3. 機械加工で表面を削る部品は、加工後にも試験するか決める。素材の段階の試験だけでは、加工で表面に出てきたきずは見ていない
  4. 素材の段階で試験済みの材料を使う場合は、その証明(材料の試験成績)と、部品として改めて試験する範囲を分けて書く。材料の指定は機械構造用鋼を材料指定するときの記事で扱う

資格は「レベル」と「作業許可」を分けて読む

非破壊試験の技術者の資格は、日本では JIS Z 2305 で定められている。現行版は 2024 年の改正で、ISO 9712:2021 に対応する[1]。ISO 9712 は、音響放射、渦電流、漏れ、磁気、浸透、放射線透過、ひずみゲージ、赤外線(熱画像)、超音波、目視の各試験方法の技術者の資格と認証の要求事項を定めている[2]。

資格のレベルによって、任せてよい作業が違う。JIS Z 2305 では、レベル 1 は指示書に従い、レベル 2 またはレベル 3 の技術者の監督の下で試験を行う者で、試験の方法・技法の選択と結果の解釈には責任を負わない[1]。レベル 2 は、技法の選択、規格や仕様書を作業の指示書に書き下すこと、規格・仕様書に従った結果の解釈と評価、報告を行える[1]。レベル 3 は、方法の選択と技法の確立、判定基準が存在しない場合にはその確立を補佐する知識をもつとされている[1]。

レベル JIS Z 2305 が示す主な役割 発注側の使い方(当方の提案)
1 指示書に従い、上位者の監督下で装置の調整・試験・記録・報告。結果の解釈には責任を負わない 試験の作業者として可。判定者には置かない
2 技法の選択、指示書の作成、規格・仕様書に従った結果の解釈と評価、報告 合否の判定と報告書の署名を求める最低のレベル
3 方法の選択と技法の確立、手順書の作成と妥当性の実証、判定基準がない場合の確立の補佐 新しい部品の試験手順を作るときや、基準を決めるときの相談先

もう一つ大事なのは、資格の認証は作業の許可そのものではないことである。JIS Z 2305 は、認証は技術者の一般的な力量を証明するもので、雇用主に特有の装置・手順・材料・製品の知識が別に要る場合があるため、認証は作業実施許可を意味しないとし、作業実施許可は雇用主の責任の下にあるとしている[1]。認証の有効期間は最大 5 年で、有効であるためには視力の要求を毎年確かめなければならない[1]。仕入先に求める書類は、資格証明書の写し(方法・レベル・有効期限)と、その会社が出した作業許可の記録の二つになる。

海外の仕入先では、資格の制度が違うことがある。ISO 9712 は、この規格の要求が第三者による適合性評価の制度にあたり、第二者・第一者による評価には直接は適用されないが、関連する部分を参照することはできるとしている[2]。仕入先の社内の認定による資格なのか、第三者の認証機関による資格なのかを確かめ、どちらを認めるかを仕様書に書く。

報告書に何を求めるか

報告書の中身も規格に手がかりがある。磁粉探傷の JIS は、試験結果として磁粉模様の有無・位置・分類と合否の判定結果を、その他として試験を担当した技術者の氏名、資格、署名、試験年月日、試験場所を記載するとしている[4]。溶接部の超音波探傷の JIS Z 3060 は、報告の記載事項に「合否及びその基準」を含めている[9]。発注側としては、どの方法でも少なくとも、試験方法の規格と版、条件(感度・像質・浸透液の種類など)、合否の基準、試験範囲と結果、試験者の資格、判定者の署名を求める(当方の提案)。

発注書・仕様書に書くこと

以上をまとめると、非破壊試験を発注で指定するときに書く項目は次のとおりである(当方の提案)。

  1. 方法(PT・MT・UT・RT など)と、選んだ理由(見たいきずの種類と場所)
  2. 試験方法の規格と版
  3. 条件(UT の試験レベルや感度、RT の像質の級、PT の浸透液の種類、MT の脱磁の要否)
  4. 合否の基準(規格と合格レベル、または自社の基準)
  5. 試験の範囲(部位、全数か抜取りか)
  6. 試験の時期(熱処理・加工・表面処理との前後)
  7. 試験者と判定者の資格(方法とレベル、作業許可)
  8. 報告書の項目と保管

試験を足したり、合否の線を厳しくしたりする判断は、発注を出す前に済ませておく。非破壊試験は費用と日数がかかり、合格レベルを一段上げるだけで不合格になる部品が変わる。量産の途中で変えれば、すでに作った部品の扱いで揉める。変更が要るときは、どの発注から新しい条件にするか、追加の費用と日程をどうするかを先に決める。その線引きは受領拒否・返品・やり直しの記事に書いた。溶接記号の読み方と、仕入先との食い違いの防ぎ方は溶接記号を発注側として読むの記事で扱う。

よくある質問

Q. 仕様書に「JIS Z 2343-1 により浸透探傷試験を行い、指示模様なきこと」と書いています。問題はありますか。
「指示模様なきこと」は、検出できたものは大小を問わずすべて不合格、という意味になる。JIS Z 2343-1 は合格基準のための規格ではないので[3]、部品の機能から許せる大きさを決め、それを超える指示模様を不合格とする書き方にするほうが、仕入先と揉めにくい。

Q. レベル 2 の資格者がいれば、どの試験も任せられますか。
資格は方法ごとに取るので、浸透探傷のレベル 2 は超音波探傷の判定はできない。さらに、認証は作業実施許可を意味しない[1]。方法・レベル・有効期限と、その会社での作業許可を確かめる。

Q. 材料メーカーの試験成績に「超音波探傷 合格」とあります。部品で改めて試験は要りますか。
材料の段階の試験は、材料として決められた基準で行われている。部品の機能に効く場所、加工で表面に出てくる場所、熱処理で割れが出る場所を見たいなら、部品の段階での試験を別に決める。どこまでを材料の証明に任せるかを仕様書で分けて書く。

Q. 外観検査(目視)も非破壊試験に入りますか。
ISO 9712 は資格の対象の方法に目視試験を含めている。ただし、道具を使わずに肉眼で直接見る目視と、他の方法の試験中に行う目視は対象から除いている[2]。目視で判定する項目も、基準と判定者を決めておく。外観の合否基準の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるの記事で扱っている。

まとめ

非破壊試験の試験方法の規格は、合否の基準を決めない[3][4]。溶接部の超音波探傷でも、技法と合格レベルは別の規格である[7][8]。発注側は、方法と選んだ理由、試験方法の規格、条件、合否の基準、範囲、時期、資格、報告書を一組で書く。「きず」と「欠陥」の違いを踏まえて基準を書き[6]、資格はレベルと作業許可を分けて確かめる[1]。

出典・参考資料

  1. JIS Z 2305:2024 非破壊試験技術者の資格及び認証(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2024 年 9 月改正)
  2. ISO 9712:2021 Non-destructive testing — Qualification and certification of NDT personnel(国際標準化機構(ISO)/2021 年 12 月発行)
  3. JIS Z 2343-1:2017 非破壊試験-浸透探傷試験-第 1 部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2017 年 3 月改正)
  4. JIS Z 2320-1:2017 非破壊試験-磁粉探傷試験-第 1 部:一般通則(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
  5. JIS Z 3104:1995 鋼溶接継手の放射線透過試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
  6. JIS Z 2300:2020 非破壊試験用語(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2020 年 11 月改正)
  7. ISO 17640:2018 Non-destructive testing of welds — Ultrasonic testing — Techniques, testing levels, and assessment(国際標準化機構(ISO)/2018 年 10 月発行)
  8. ISO 11666:2018 Non-destructive testing of welds — Ultrasonic testing — Acceptance levels(国際標準化機構(ISO)/2018 年 2 月発行)
  9. JIS Z 3060:2015 鋼溶接部の超音波探傷試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2015 年 8 月改正)

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