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投稿日:2026年10月2日

図面の一般注記に何を書くか——普通公差・JIS B 0024・測定温度と、書かないほうがよい言葉

この記事のポイント(結論先出し)

図面の一般注記は、個々に指示していない寸法・形体・表面に何を当てるかを決める場所である。製図の JIS は、普通公差・幾何の普通公差・寸法公差と幾何公差の関係・当てはめ方法を、規格番号と等級の形で表題欄の中又はその付近に指示するよう定めている[1][4][5]。注記に書いていないことは、決まっていないのではなく、仕入先の読み方で決まってしまう。とくに「JIS B 0024」と書く注記は、規格の改正で意味が変わった経緯があり、包絡の条件を使うつもりなら記号で示す[3]。普通公差を外れた部品は、特に明示しない限り、機能が損なわれなければ自動的に不採用にしてはならないと規格は書いている[4]。注記は発注の時点の書面として扱い、後から読み方を厳しくして不合格の理由にしない[8]。

一般注記は「書いていない部分」を決める

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部品図では、はめあいや位置決めに効く寸法にだけ個別に公差を書き、それ以外は表題欄の近くにまとめた注記に任せることが多い。機械製図の JIS B 0001 も、寸法の許容限界の指示がない場合には個々に規定する普通公差を適用し、その場合は適用する規格番号と等級記号又は数値を表題欄の中又はその付近に一括指示すると定めている[2]。

製図総則(JIS Z 8310)は、図面が満たすべき要件として、製作図なら対象物の大きさ・形状・姿勢・位置・質量の情報を含み、必要に応じて材料・加工方法・表面性状・表面処理方法・検証方法・図面履歴・引用規格・図面管理などの情報を含むこと、そしてあいまいな解釈が生じないように表現・解釈の一義性をもつことを挙げている[1]。一般注記は、この要件のうち個々の形体に書き込めない部分を受け持つ。

購買の立場で見ると、一般注記は見積と受入検査の前提そのものである。仕入先は注記を読んで加工の精度を決め、単価を出す。受入の担当者は同じ注記を読んで合否を決める。両者が違う読み方をすれば、見積の前提と受入の判定がずれる。

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一般注記に並べる項目

次の表は、製図の JIS が表題欄の中又はその付近、あるいは注記で指示する方法を定めている項目を並べたものである。全部を毎回書く必要はないが、書かない項目は「その部品には当てはまらない」と言えるものに限る。

項目 規格の定め 注記の書き方の例
長さ・角度の普通公差 「JIS B 0405」と公差等級を表題欄の中又はその付近に指示する[4] JIS B 0405-m
幾何の普通公差 JIS B 0405 とともに適用する場合は「JIS B 0419」、JIS B 0405 の等級、この規格の等級を指示する。すべての単一のサイズ形体に包絡の条件を適用する場合は記号「E」を追加する[5] JIS B 0419-mK (包絡の条件を使うなら JIS B 0419-mK-E)
加工方法ごとの普通寸法公差 鋳造・鍛造など工程ごとに普通寸法公差を定めた JIS がある場合は、その規格番号と等級記号を指示する[1] 鋳放し部:JIS B 0403 CT 12
寸法公差と幾何公差の関係 寸法公差を幾何公差・表面性状など属性情報と独立して適用することを要求する場合は、表題欄の中又はその付近に JIS B 0024 を指示する[1] 公差表示方式 JIS B 0024(意図を下の節で確認)
当てはめ方法 測定点を最小二乗法・最小領域法などで処理する当てはめ方法を要求する場合は、表題欄の中又はその付近に JIS B 0672-1 を指示する[1] 当てはめ方法:JIS B 0672-1
検証時の温度 寸法検証時の環境温度は、必要に応じて JIS B 0680 に規定する 20 ℃とし、室温で検証する場合は必要に応じて温度補正を行う[1] 測定の標準温度は JIS B 0680 による
大部分の面に共通の表面性状 部品の大部分に同じ表面性状が要求される場合は、その要求事項を表題欄の傍ら・主投影図の傍らなどに置き、部分的に異なる面があることを括弧で示す[6] 表面性状の図示記号と、括弧付きの基本図示記号
エッジの状態 形体のエッジを規制することを要求する場合は JIS B 0051 による[1] 記号で一括指示(「バリなきこと」と書かない)
表面処理 電気めっきは JIS H 0404 による。塗装・塗覆装・塗布・蒸着などは図面上又は文書によって必要事項を指示する[1] めっきの記号、又は塗装仕様書の番号と版

普通公差の等級の選び方と、等級を書いていない図面を受けたときの扱いは普通公差(JIS B 0405)の等級指定に、エッジの記号の使い方は図面のエッジ・バリ・面取り指示に、表面粗さの測定条件は表面粗さの指定と測定条件にまとめた。ここでは、それらを注記として並べるときに抜けやすい点を扱う。

「JIS B 0024」と書くときに確かめること

一般注記でいちばん意味が取りにくいのが、「JIS B 0024」や「公差表示方式 JIS B 0024」という一行である。この規格は製品の幾何特性仕様の基本原則を定めるもので、その中の独立の原則は、一つの形体又は形体間の関係に関する仕様は、規格で規定するか特別な指示(最大実体公差方式や包絡の条件の記号など)がある場合を除き、他の仕様とは独立して満足しなければならないとしている[3]。

ややこしいのは、この行の意味が規格の改正で変わってきたことである。JIS B 0024:2019 は ISO 8015:2011 に対応する規格だが、その末尾の、JIS と対応国際規格との技術的差異を示す表には、従来の日本国内では ISO 8015:2011 のすべての箇条の適用を意図した図面は描かれておらず、表題欄の近くに「JIS B 0024」や「ISO 8015」と指示しても、その内容は ISO 8015:1985 が前提になっていると書かれている。1985 年版と 2011 年版には大きな内容の差があるため、JIS は規格の特定の箇条だけを適用除外する場合はその旨を表題欄の中又は近くに指示するという一文を追加している[3]。

機械製図の JIS B 0001:2019 は、大きさ(長さに関わるサイズ)は、包絡の条件の適用を指示した場合などを除き、二点測定によって行うものとして指示し、その場合サイズ公差は形状を規制しないとしている[2]。つまり現行の規格の読み方では、直径の公差だけを書いた軸は、二点で測って公差に入っていれば、曲がりや真円からの崩れは直径の公差では縛られない。古い図面を描いた設計者が、直径の公差で形まで縛れると考えていた場合、その意図は記号で示し直さないと伝わらない。

発注側としては、古い図面に「JIS B 0024」と書かれていたら、設計部門に次の二つを確かめる。一つは、形を縛りたいサイズ形体に包絡の条件を使うつもりかどうか。使うなら、個々の形体に包絡の条件の記号を付けるか、幾何の普通公差の注記に「E」を付ける[5]。もう一つは、適用を除外したい箇条があるかどうか。あるなら、規格が求めるとおり表題欄の近くにその旨を書く[3]。

規格の年を書くか

JIS B 0024 は、標準の仕様を定義する規格は、常に図面を準備しているときに利用できる最新版を利用し、以前の版の参照が必要な場合はそのことを明確に記述しなければならないとしている[3]。年を書かない注記は「図面を描いた時点の最新版」を指すことになるが、何年も使い回した図面では、その時点がいつだったかが読み手には分からない。

規格の側でも改正は続いている。表面性状の図示方法(JIS B 0031)は 2003 年の本体に 2022 年の追補が加わっている[6]。寸法公差の規格群も 2016 年に改正され、図学会の論文は、技術的内容は旧規格と同じでも、文章が難解なうえ多くの用語が変更され、特に教育界で混乱が起きていると指摘している[7]。古い図面に書かれた用語と、仕入先の若い技術者が学んだ用語が違うことは、珍しくなくなっている。

実務上の落としどころは、普段は年を書かずに最新版で読む運用とし、改訂のたびに注記を見直すことである。特定の版で読まなければ寸法の意味が変わるおそれがある項目だけ、年を書く。図面の改訂と注記の見直しの手順は図面の版を発注書で指定し、改訂を合わせるで扱う。

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普通公差を外れた部品の扱いも注記で決まる

JIS B 0405 は「採否」として、特に明示した場合を除いて、普通公差を超えた工作物でも、工作物の機能が損なわれない場合には自動的に不採用としてはならないと定めている[4]。幾何の普通公差の JIS B 0419 にも同じ趣旨の定めがある[5]。普通公差の寸法は機能に効かない寸法として扱われる前提なので、外れたこと自体ではなく機能を損なうかで判断する、という考え方である。

普通公差の寸法でも、外れたら一律に不合格にする運用を取りたいなら、そのことを一般注記か購買仕様書に明示する。明示しないまま受入で不合格を出すと、規格の読み方そのものが争点になる。逆に、組み立てに効く寸法を普通公差に任せていたことが後から分かった場合は、その寸法に個別の公差を書くのが筋である。

注記に書かないほうがよいもの

製図総則は、図面に書く文章を口語体で簡潔にし、なるべく箇条書きにし、専門用語は JIS に規定した用語を用いるのがよいとしている[1]。機械製図も、図面の注記は簡潔明瞭に書くとしている[2]。この原則から外れやすい書き方を挙げておく。

一つ目は、程度を表す言葉である。「適宜」「良好なこと」「目立たないこと」「なるべく」は、読む人によって基準が変わり、受入で合否を決められない。二つ目は、社内標準の番号だけを書いた注記である。「当社規格 QS-123 による」と書いても、仕入先がその文書を持っていなければ意味をなさない。参照するなら、その文書の版を渡し、渡したことを発注書に書く。三つ目は、検査の方法や頻度、包装や表示の細かい指示である。図面の注記は部品の形と性質を決める場所で、検査や出荷の条件は購買仕様書に書くほうが管理しやすい。分担の考え方は購買仕様書の書き方で扱っている。

注記は発注の時点の約束になる

一般注記は、発注の時点で仕入先に示した検査の基準の一部である。取適法のテキストは、受領拒否が認められない例を二つ示している。一つは、何を作るかや検査の基準がはっきりしていなかったせいで、納品物が注文と違うのかどうかが明らかでない場合。もう一つは、発注した後で基準を恣意的に厳しくし、それまでなら合格だったものを不合格にする場合である[8]。取適法の対象となる取引では、注記の読み方を後から厳しくして不合格の理由にすることは、この問題に当たりうる。注記に疑問が出たら、見積の段階で書面で答え、その答えを発注書か図面に残す。

よくある質問

板金部品や樹脂成形品にも JIS B 0405 と書いてよいですか

JIS B 0405 は、金属の除去加工又は板金成形によって製作した部品の寸法に適用するとし、他の加工方法の普通公差が別の規格に規定されている場合は、図面又は関連文書にそれらを引用するとしている[4]。板金は対象に入るが、板厚や曲げの扱いは別に決める必要がある。樹脂成形品は対象の加工方法に入っていない。ただし規格は備考で、これらの公差を金属以外の材料に適用してもよいとしている[4]。樹脂成形品に JIS B 0405 を当てるなら、成形品の寸法の出方に合うかを確かめてから書く。それぞれの決め方はプレス・板金品の公差の指定と樹脂成形品の寸法公差にまとめた。

注記を英語や中国語でも書く必要がありますか

海外の工場に出す図面では、規格番号と記号はそのまま通じやすいが、文章の注記は訳さないと伝わらない。訳すときは、日本語と訳文のどちらを正本とするかを発注書で決める。注意点は中国の工場に図面を出すときで扱った。

3D データにも一般注記は要りますか

要る。3D データで形が決まっていても、普通公差や表面性状、測定温度のような部品全体にかかる要求は、どこかに書かなければ伝わらない。3D データと図面をどう組み合わせるかは3D データで発注するときで扱う。

まとめ

一般注記は、個々に指示していない寸法・形体・表面に何を当てるかを決める場所で、書いていないことは仕入先の読み方で決まってしまう。普通公差は JIS B 0405 と等級、幾何の普通公差は JIS B 0419 と等級、包絡の条件を使うなら記号「E」、加工方法ごとの普通公差・当てはめ方法・検証時の温度・共通の表面性状・エッジ・表面処理は、それぞれの規格の書き方で示す。「JIS B 0024」の一行は規格の改正で意味が変わった経緯があるので、包絡の条件や適用除外の意図を記号と文で示し直す。普通公差を外れたものを一律に不合格にしたいなら、そのことを明示する。注記は発注の時点の約束として扱い、後から厳しく読まない。

出典・参考資料

  1. JIS Z 8310:2010 製図総則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 2 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  2. JIS B 0001:2019 機械製図(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 5 月 20 日改正)
  3. JIS B 0024:2019 製品の幾何特性仕様(GPS)-基本原則-GPS 指示に関わる概念,原則及び規則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 2 月 20 日改正)
  4. JIS B 0405:1991 普通公差-第 1 部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 6 月 20 日確認)
  5. JIS B 0419:1991 普通公差-第 2 部:個々に公差の指示がない形体に対する幾何公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 6 月 20 日確認)
  6. JIS B 0031:2003 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状の図示方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/追補 2022 年 3 月 22 日)
  7. 平野重雄ほか「サイズ公差がもたらす個別規格への影響に関する一考察」図学研究 第 56 巻 1 号(日本図学会/2022 年 3 月)
  8. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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