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投稿日:2026年10月16日

超高分子量ポリエチレン(JIS K 6936)の選び方——成形法と半製品、摩耗の確かめ方

この記事のポイント(結論先出し)

超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW・UHMWPE)は、JIS K 6936-1 で「190 ℃・21.6 kg で測ったメルトマスフローレートが 0.1 g/10 min 未満のポリエチレン」と決められ、溶かしてもほとんど流れない[1]。そのため人工関節用の解説では、射出成形やスクリュー押出は現実的ではなく、半製品は圧縮成形やラム押出で作られると説明されている[3]。部品の多くは板や丸棒から削り出すので、発注では材料のグレードに加えて、板か棒か、どの成形法の半製品か、削るときの条件を確かめる。滑り・摩耗の性能は、カタログの数字が実部品の順位どおりにならないことが多いとされ[6]、使う相手材・荷重・速度で確かめるのが基本になる。接着や塗装は、表面処理なしでは効きにくい材料である[4]。

超高分子量ポリエチレンは「流れないポリエチレン」として決められている

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コンベヤのガイドやライナー、ホッパーの内張り、チェーンの摺動材、食品機械や包装機の滑り部品などで、超高分子量ポリエチレン(以下 UHMWPE)を指定することがある。図面には「超高分子量 PE」「UPE」「PE-UHMW」などと書かれ、呼び方が揃っていないことも多い。

JIS K 6936-1(2007 年 3 月 20 日改正・ISO 11542-1 と一致)は、超高分子量ポリエチレンの成形用・押出用材料の呼び方を定めた規格で、対象とする材料を「190 ℃、21.6 kg の測定において、メルトマスフローレート(MFR)が 0.1 g/10 min 未満のポリエチレン材料」としている[1]。MFR は溶かした樹脂が決まった時間に流れ出る量で、ふつうの射出成形用の樹脂よりずっと重い荷重をかけても、ほとんど流れないということになる。

日本接着学会誌の総説(2010 年)は、UHMWPE を分子量 100 万〜800 万程度で枝分かれ構造の少ない材料とし、スケートリンクの滑走面に使われるほどの耐摩耗性をもち、工作機器の部材や医療用材料として期待されるエンジニアリングプラスチックの一つだと紹介している[4]。

規格は、材料を還元粘度(粘度数)、伸長応力、ダブルノッチ付きシャルピー衝撃強さの水準で区分する。同時に、同じ呼び方の材料が必ずしも同じ性能を示すとは限らず、用途ごとに材料を決めるのに必要なデータは呼び方からは得られないとも断っている[1]。呼び方は材料の大まかな位置を示すもので、部品の性能を保証するものではない。樹脂のグレードを図面でどう固定するかは樹脂のグレード指定と代替品の承認で扱った。

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どう成形された半製品か——圧縮成形・ラム押出・射出成形

東京理科大学の研究者による成形加工誌の解説(2019 年)は、人工関節用の UHMWPE について、溶融温度以上に加熱しても低分子量のポリエチレンのようには流動しないため、射出成形・スクリュー押出・ブロー成形といった汎用の手法の適用は現実的ではなく、半製品としての成形には圧縮成形やラム押出成形が利用される、と説明している[3]。同じ解説は、次のような事情も書いている[3]。

圧縮成形は 1950 年ごろから使われ、1 回の圧縮サイクルで 1 m×2 m のシートが 2 枚得られるプレス機の例が紹介されている。UHMWPE は熱伝導性が比較的低いため、圧縮サイクルの時間は長いもので 24 時間程度かかり、シート全体を均一に加熱・冷却するにはゆっくり温度を変える必要がある。

ラム押出成形は 1970 年ごろから使われ、粉末を押出機の加熱部に送り、ラムの往復で圧力をかけ続けて丸棒を作る。径が大きいほど徐冷の時間が長くなるので、20〜80 mm の製品が一般的とされている。

これは人工関節用の材料についての解説で、工業用の部品にそのまま当てはまるとは限らない。実際、JIS K 6936-1 の呼び方には、用途・加工方法を表す記号として「E 押出用」「M 射出成形用」「Q 圧縮成形用」「S 焼結成形用」が並んでいる[1]。加工法ごとに材料が分かれているということで、射出成形で作る部品なら射出成形向けの材料、板から削る部品なら圧縮成形の板、というように、どの成形法の半製品から作るかで材料も費用も変わる。仕入先に見積を頼むときは、部品の形と数量から、どの成形法で作るのかを先に聞いておく。

作り方 解説・規格にある事実 発注で確かめること
圧縮成形の板から削る 1 m×2 m のシートを 2 枚ずつ。サイクルは長いもので 24 時間程度[3] 板厚と取り代、板の大きさに対する部品の取り方、納期
ラム押出の丸棒から削る 径 20〜80 mm の製品が一般的(人工関節用)[3] 必要な径の棒が流通しているか、取り代
射出成形で直接作る JIS の呼び方に「M 射出成形用」がある[1] 射出成形向けの材料で、要る性質(摩耗・衝撃)が出るか
規格の試験片 圧縮成形で作る。成形温度 210 ℃、平均冷却速度 15 ℃/min など[2] データシートの値は、自分の部品の作り方と同じ条件の値か

データシートの値は、圧縮成形した試験片の値

JIS K 6936-2 は、性質を求める試験片を圧縮成形で作ると決め、成形温度 210 ℃、平均冷却速度 15 ℃/min、全圧 10 MPa などの条件を表で定めている。性質の測定に必要な試験片は、圧縮成形したシートから切削するか打ち抜いて作る[2]。規格の区分に使うダブルノッチ付きシャルピー衝撃強さも、このシートから切り出した試験片で測る[2]。

つまり、規格どおりのデータシートの値は、決まった条件で作った板の値である。射出成形で作った部品や、別の条件で作った板から削った部品の性質が、同じになるとは限らない。成形条件で性質が変わる点は、ほかの樹脂でも同じで、グレード指定の記事で、ペレットの物性が同じでも成形品が同じとは限らない例を紹介した。性質が部品の機能を左右するなら、実際の作り方で作った部品で確かめる。

JIS K 6936-1 は、還元粘度などの値が区分の境界にある材料について、どの区分に入れるかは製造業者が決め、その後の試験値が区分から外れても製造許容範囲内なら呼び方を変える必要はない、としている[1]。呼び方が同じまま、値が区分の境目を行き来することがありうるということで、境界に近い性質が効く部品では、呼び方ではなく必要な値そのものを取り決める。

滑り・摩耗は、カタログの数字だけで選ばない

UHMWPE を選ぶ理由のほとんどは、滑りやすさと摩耗しにくさにある。ただし、プラスチックの滑り部品について、表面技術誌の解説(1996 年)は、プラスチックは金属の代わりに比較的軽負荷の条件で使われる摺動材料として広く使われている一方、有機材料なので耐熱性や機械的強度は他の材料より劣り、期待される摩擦摩耗特性や限界 PV 値(面圧と滑り速度の積の上限)が得られない場合がある、と書いている。その対策として、ガラス繊維や炭素繊維などの充てん材、二硫化モリブデン・グラファイト・PTFE などの固体潤滑剤との複合化が使われている[5]。

カタログの摩耗データの読み方については、ポリアセタールの限界 PV 値を調べた論文(2008 年)が参考になる。著者らは、樹脂メーカーのカタログには決められた試験片・試験条件で測った摩耗データが紹介されているが、実際の部品で同じ組み合わせで使っても、形や条件の違いから、摩耗量だけでなく材料の優劣の順位さえカタログどおりにならない場合が多いと述べ、これは樹脂に限ったことではないとしている。限界 PV 値も、多くの場合は一つの滑り形態でしか測られていない、と指摘している[6]。ポリアセタールについての論文だが、指摘は UHMWPE を選ぶときにもそのまま当てはまる。

発注側が仕入先に伝えるべきなのは、次の条件である。相手材(鋼・ステンレス・同じ樹脂など)とその表面の粗さ、面圧(荷重と接触面積)、滑り速度と動き方(一方向か往復か)、温度、潤滑の有無、粉や砂などの異物が入るかどうか。これがそろわないと、仕入先もどのグレードを勧めればよいか判断できない。充てん材入りのグレードを提案されたら、上の解説にあるように、充てん材が相手材や摩耗にどう効くかを含めて確かめる[5]。

滑り部品の相手が軸受なら、軸受そのものの指定は軸受を型番で買うときの指定で扱った。

削って作る部品の注意——熱をかけすぎない

板や棒から削り出す部品が多い材料なので、切削の条件も品質に効く。人工関節用の UHMWPE についての前述の解説は、UHMWPE は過剰な加熱によってダメージを受けるため、供給効率(送り)、切断力、軸の回転速度が注意深く観測され、切削速度や切断深さはメーカーごとに異なり、それぞれ最適化されている、と書いている[3]。工業用の部品で同じ管理が要るとは限らないが、熱がたまりやすい材料であることは変わらない。寸法が効く部品なら、削る条件を仕入先任せにせず、寸法を測る温度とあわせて確かめておく。成形品・切削品の寸法の測り方の考え方は樹脂成形品の寸法公差の指定で扱った。

接着・塗装・印刷は、表面処理が前提

前述の日本接着学会誌の総説は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンは炭化水素の高分子で極性がないために濡れにくく、接着性や塗装性に乏しいために用途が限定されている、と書いている。接着困難な材料を接着できるようにするには、それに合った接着剤を開発するか、プライマー付きの接着剤などで前処理をする方法がとられるが、接着部分の耐久性は必ずしも十分とはいえない、としている[4]。

UHMWPE の部品を相手部品に貼る、ライナーを接着で固定する、文字を印刷する、といった工程がある場合は、表面処理の方法と、接着・印刷の強さをどう確かめるかを発注前に決める。ボルトで留める・はめ込むなど、接着に頼らない固定にできるなら、その方が評価の手間は小さい。接着剤の選び方は接着剤・シーラントの指定で扱った。

用途での指定——帯電防止・医療用

JIS K 6936-1 の呼び方には、重要な性質や添加剤を示す記号として「Y 導電処方」「Z 帯電防止処方」「L 耐光又は耐候処方」「H 熱老化安定処方」「C 着色品」「N 自然色」などがある[1]。粉体を運ぶライナーで静電気が問題になる、屋外で使う、といった条件があるなら、その性質を持つ材料であることを発注書に書く。記号だけでは値が決まらないので、表面抵抗などの値が要るなら、値と測り方を取り決める。

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医療機器の体内に入る部品に使う場合は、ASTM F648(2021 年)が、外科用インプラントに使う UHMWPE の粉末と、それから作った成形品の材料特性を定めている。この規格は、意図的に架橋した材料や、酸化防止剤などの添加剤を混ぜた材料には適用しないとし、包装・滅菌した最終の製品にも適用しない、としている[7]。工業用の材料をそのまま転用できるものではなく、規格に合った材料と、その証明の流れを最初に確かめる必要がある。

発注書に書くこと(超高分子量ポリエチレン)

1. 材料
「超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW)」と書き、メーカーとグレードで固定するか、要る性質の値と試験方法で指定する。JIS K 6936-1 の呼び方を使う場合も、呼び方だけでは性能が決まらないことに注意する[1]。

2. 半製品の作り方
圧縮成形の板から削るのか、ラム押出の棒から削るのか、射出成形で作るのか。

3. 使う条件
相手材と表面粗さ、面圧、滑り速度と動き方、温度、潤滑の有無、異物。

4. 付加する性質
帯電防止・導電、耐候、着色の有無と、要るなら値と測り方。

5. 寸法と測る条件
寸法公差と、測る温度。削る部品なら取り代と、削る条件で気をつけること。

6. 接着・印刷の有無
ある場合は表面処理の方法と、強さの確かめ方。

7. 成績書の提出
材料のメーカー・グレード・ロットが分かる記録と、取り決めた値(帯電防止の値など)の成績書を納入時に出すこと。

受入で確かめること

材料については、注文したメーカーとグレードの材料が使われたことを、ロットの記録や成績書で確かめる。区分の境界に近い性質を条件にしている場合は、呼び方だけでなく値を見る。部品については、寸法を取り決めた温度で測る。滑り面に使う部品は、表面に削り傷や、熱で溶けたような跡がないかを見る。初回の納入では、実際に使う相手材・荷重で動かしたときの摩耗や引っかかりを確かめ、その結果を承認の記録に残す。

よくある質問

カタログの摩擦係数がいちばん低いグレードを選べばよいですか

それだけで決めない方がよい。カタログの値は決められた試験片・条件で測ったもので、実際の部品では形や条件の違いから、材料の優劣の順位さえカタログどおりにならない場合が多いと指摘されている[6]。候補を 2〜3 に絞ったら、使う相手材・荷重・速度で比べる。

射出成形で安く作れないかと聞かれました

JIS の呼び方には射出成形用の記号があり、射出成形向けの材料は存在する[1]。ただし、人工関節用の解説では、溶かしても流れにくいために汎用の射出成形は現実的ではないとされている[3]。射出成形向けの材料で、部品に要る摩耗や衝撃の性質が出るかを、削り出した部品と比べて確かめてから切り替える。

ライナーを接着で貼りたいのですが

ポリオレフィンは極性がなく、表面処理をしないと接着しにくい材料である[4]。表面処理と接着剤の組合せを決め、はがれの試験で確かめる。ボルト留めなど接着に頼らない固定にできないかも検討する。

まとめ

超高分子量ポリエチレンは、JIS K 6936-1 で MFR が 0.1 g/10 min 未満と決められた、溶かしても流れにくいポリエチレンで、人工関節用の解説では半製品を圧縮成形やラム押出で作るとされている。部品の多くは板や棒から削り出すので、どの成形法の半製品から作るかを発注の前に確かめる。データシートの値は圧縮成形した試験片の値で、呼び方が同じでも性能が同じとは限らない。滑り・摩耗は、カタログの順位が実部品で再現されないことが多いので、相手材・荷重・速度を伝えて実際の条件で確かめる。接着・塗装には表面処理が要り、帯電防止や医療用では、それに合った材料と証明を最初に決める。

同じ束では、高温で使う樹脂をPEEK 部品の発注とPPS 樹脂の選び方で、透明な板をアクリル板の規格と発注で扱う。滑り部品に使うほかの樹脂はPOM の選び方とPTFE 部品の発注で扱う。

出典・参考資料

  1. JIS K 6936-1:2007 プラスチック-超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2007 年 3 月 20 日改正)
  2. JIS K 6936-2:2007 プラスチック-超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW)成形用及び押出用材料-第2部:試験片の作り方及び性質の求め方(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2007 年 3 月 20 日改正)
  3. 家高佑輔・橋詰峰雄「医療機器用高分子材料の成形加工技術」成形加工 31 巻 11 号(プラスチック成形加工学会/2019 年)
  4. 金澤等「超高分子量ポリエチレン,ポリプロピレン,シリコン樹脂,フッ素樹脂などの接着性の改良」日本接着学会誌 46 巻 4 号(日本接着学会/2010 年)
  5. 広中清一郎「プラスチックの表面改質とトライボロジー特性」表面技術 47 巻 2 号(表面技術協会/1996 年)
  6. 加田雅博・石川優「ポリアセタール樹脂の限界 PV 値に与える摺動形態の影響」成形加工 20 巻 7 号(プラスチック成形加工学会/2008 年)
  7. ASTM F648-21 Standard Specification for Ultra-High-Molecular-Weight Polyethylene Powder and Fabricated Form for Surgical Implants(ASTM International/2021 年)

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