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塩ビ板(硬質PVC)JIS K 6745 の発注——押出板・プレス板、厚さ許容差 T1・T2 と難燃の指定

この記事のポイント(結論先出し)
工業用の塩ビ板(硬質ポリ塩化ビニル板)は JIS K 6745 で、成形方法(押出板 E・プレス板 P)、厚さの許容差(一般用途 T1・特定用途 T2)、要求性能(グループ 1〜5)の三つを組み合わせて種類が決まる[1]。「塩ビ板 3 mm」とだけ書くと、この三つが仕入先任せになる。耐薬品性の試験がかかるのはグループ 1 だけ、全光線透過率がかかるのはグループ 2 だけで、燃えにくさ(燃焼性)は JIS では要求項目から外されている[1]。塩ビは酸素指数が約 45 の自己消火性の樹脂と説明されるが[4]、難燃の等級が必要なら試験方法と等級を別に指定する。性能試験の頻度は規格上「年 1 回以上」なので[1]、ロットごとの成績が欲しいなら注文時に求めておく。
目次
「塩ビ板」と書くだけでは、押出板かプレス板かも決まらない
この記事は、設備のカバー、薬液槽、ダクト、治具、表示板などに使う工業用の塩ビ板を発注するときの話である。日用品や DIY 用の板の選び方には触れない。
JIS K 6745(プラスチック-硬質ポリ塩化ビニル板、2023 年 11 月 20 日改正)は、硬質ポリ塩化ビニル製の押出板とプレス板について規定し、厚さ 1.0 mm 以上の板に適用する。二軸延伸した硬質ポリ塩化ビニル板とエンボス板には適用しない[1]。規格は 2019 年の ISO 11833-1 を基に、技術的内容を変えて作られている[1]。
板の材料は、JIS K 6740-1 の適用範囲にある無可塑ポリ塩化ビニルのコンパウンドを用いる。安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、充填剤、難燃剤、着色剤などを加えてよいが、組成の分からないコンパウンドと添加物は用いてはならないとされている[1]。材料の側の規格である JIS K 6740-1 は、無可塑ポリ塩化ビニル(PVC-U)をビカット軟化温度、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ、引張弾性率の水準で区分する呼び方を決めているが、同じ呼び方の材料が同じ性能を示すとは限らない、とも書いている[2]。板として何が保証されるかは、板の規格である JIS K 6745 で読む。
板の種類は、次の三つの区分の組み合わせである[1]。
1. 成形方法
押出板(E)とプレス板(P)。
2. 厚さの許容差
一般用途向け(T1)と特定用途向け(T2)。
3. 要求性能
グループ 1:汎用グレード、グループ 2:汎用透明グレード、グループ 3:高剛性グレード、グループ 4:高衝撃グレード、グループ 5:耐熱グレード。
製品の表示も、この順に「PVC-U-E-T1-1」のような書式で書くと決められている[1]。発注書の材質欄は、この書式をそのまま写すのがいちばん取り違えが少ない。
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グループで決まる性能——耐薬品性はグループ 1、透明はグループ 2 だけ
JIS K 6745 の表 6 は、押出板とプレス板それぞれについて、グループごとに引張降伏応力、引張破壊時呼びひずみ、引張弾性率、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ、ビカット軟化温度、加熱寸法変化率、積層性、全光線透過率、耐薬品性の要求値を決めている[1]。判断によく使う 2 項目だけを抜き出すと次のようになる(全項目は規格の表 6 を見る)。
| グループ | シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)押出板/プレス板 | ビカット軟化温度 押出板/プレス板 | そのグループだけにかかる項目 |
|---|---|---|---|
| 1 汎用 | 2 以上/2 以上 kJ/m² | 70 以上/75 以上 ℃ | 耐薬品性(附属書 JA) |
| 2 汎用透明 | 1 以上/1 以上 kJ/m² | 60 以上/65 以上 ℃ | 全光線透過率 |
| 3 高剛性 | 2 以上/2 以上 kJ/m² | 70 以上/78 以上 ℃ | —(引張弾性率の要求が高い) |
| 4 高衝撃 | 5 以上/10 以上 kJ/m² | 70 以上/70 以上 ℃ | — |
| 5 耐熱 | 2 以上/2 以上 kJ/m² | 85 以上/90 以上 ℃ | — |
出典は JIS K 6745 の表 6[1]。シャルピー衝撃強さは厚さ 4.0 mm 以上の板に、ビカット軟化温度は厚さ 1.5 mm 以上の板に適用し、それより薄い板の扱いは受渡当事者間の協定による、とされている[1]。薄い板で衝撃や耐熱を当てにする部品なら、何で確かめるかを注文時に決めておく必要がある。
表から分かるのは、グループの選び方で中身がかなり変わることである。耐熱グレード(グループ 5)は押出板でビカット軟化温度 85 ℃以上、汎用透明(グループ 2)は 60 ℃以上と、同じ「塩ビ板」でも 25 ℃の差がある。衝撃は、プレス板のグループ 4 が 10 kJ/m² 以上と、ほかのグループの数倍の値を要求されている。
耐薬品性の試験は、グループ 1 だけにかかる
耐薬品性の要求は、押出板とプレス板のグループ 1 にだけ適用される[1]。附属書 JA(規定)の試験は、蒸留水、質量分率 30 % 硫酸、35 % 塩酸、40 % 硝酸、10 % 塩化ナトリウム溶液、40 % 水酸化ナトリウム溶液に、試験片を 60 ℃で 5 時間浸し、単位表面積当たりの質量変化が許容差に入るかを見る。許容差は、たとえば 30 % 硫酸で ±0.12 mg/cm²、40 % 水酸化ナトリウム溶液で ±0.10 mg/cm² である[1]。附属書 JC の対比表は、国内ではグループ 1 の製品のほとんどで耐薬品性が要求されるので、ISO にはないこの試験を JIS で規定した、と説明している[1]。
ここで押さえておきたいのは、この試験が無負荷で、決められた 6 種類の液に 5 時間浸す試験だということである。薬液槽やダクトのように、決まった液に何年も、しかも応力がかかった状態で触れる用途の判断には足りない。福井大学の古賀・河口の報告(材料 26 巻、1977 年)は、硬質ポリ塩化ビニル板を硫酸に浸すと、表面付近で硫酸の拡散とそれに伴う脱塩酸反応が起きること、拡散が引張・圧縮の応力に依存すること、濃硫酸中のクリープ破断ではぜい性的に壊れることが知られていることを報告している[5]。薬液槽に使う板は、グループ 1 を指定したうえで、実際の液・濃度・温度・応力のかかり方を仕入先に伝え、その条件での実績や試験の結果で判断する。
透明板は、厚さごとの全光線透過率で受ける
グループ 2(汎用透明)には全光線透過率の要求があり、厚さ 1.0〜2.0 mm で 82 % 以上、2.0 mm を超え 6.0 mm 以下で 78 % 以上、6.0 mm を超え 10 mm 以下で 75 % 以上と決められている。10 mm を超える板には適用しない[1]。のぞき窓や安全カバーに透明な塩ビ板を使うなら、この区分を前提に厚さを選ぶ。透明板の材料を比べるなら、アクリル板(PMMA)JIS K 6718 の発注やポリカーボネート部品の発注も読むとよい。
厚さの許容差は T1 と T2 で決め方が違う
厚さの許容差は、一般用途向け(T1)が厚さに対する百分率、特定用途向け(T2)が厚さの式で決められている[1]。
T1(一般用途)
厚さ 1.0 mm 以上 5.0 mm 以下で、押出板 ±13 %、プレス板 ±15 %。5.0 mm を超え 20 mm 以下で ±10 %、20 mm を超えると ±7 %。
T2(特定用途)
押出板 ±(0.1+0.03×厚さ)mm、プレス板 ±(0.1+0.05×厚さ)mm。
厚さ 3 mm の押出板で計算すると、T1 は ±0.39 mm、T2 は ±0.19 mm で、T2 は T1 の半分ほどになる。厚さを部品の寸法にそのまま使う(溝にはめる、積み重ねて高さを決める)なら T2 を指定し、板を切って貼るだけの用途なら T1 で足りる、というのが区分の読み方である。厚さは端から 10 mm 以上 50 mm 以内などの決められた位置で測る[1]。
長さ・幅の許容差は呼び寸法に対する百分率で、附属書 JC は、ISO の許容差では 1 枚の板を小さく切るときの切りしろを吸収できないので、旧規格と同じ許容差に変えた、と説明している[1]。長さと幅の寸法そのものは受渡当事者間の協定による[1]。
もう一つ注意したいのが、測る温度である。規格は板の長さ・幅の測定を 23 ℃基準とし、ほかの温度で測った値は板の線膨張係数 7×10⁻⁵/℃ を使って 23 ℃に換算すると決めている[1]。この係数で計算すると、長さ 2,000 mm の板を 33 ℃の倉庫で測れば約 1.4 mm 長く出る。夏場の受入で「長い」「短い」と揉めたら、測った温度を記録してから判断する。
燃えにくさは、JIS K 6745 の要求に入っていない
塩ビは燃えにくい材料として知られている。塩ビ工業・環境協会の一色実の解説(化学と教育 57 巻、2009 年)は、ポリ塩化ビニルは塩素を 56.7 % 含むので、酸素指数が約 45 の自己消火性の樹脂で、着火温度も高い、と説明している[4]。
ただし、JIS K 6745 は燃焼性を要求項目にしていない。附属書 JC によると、対応する ISO 規格の燃焼性(6.6.1)と生理学的特性(6.6.3)は、国内の事情に合わせて JIS では削除された[1]。JIS K 6745 に適合した板だというだけでは、燃えにくさについて何も保証されていない。
酸素指数の試験方法である JIS K 7201-2 は、窒素と酸素の混合ガス中で、垂直の小さな試験片が燃焼を続ける最小の酸素体積分率を測る方法である。その試験報告書には、結果がその試験条件での試験片の燃焼挙動だけに関係し、形状や燃焼条件の違う場合に材料の火災危険性を推測するために用いてはならない、という旨の文章を書くことになっている[3]。「塩ビは酸素指数 45 だから大丈夫」は、部品の燃えにくさの根拠にならない。
電気機器の筐体や設備の部材で難燃の等級が必要なら、等級と試験方法(たとえば UL 94 のどの区分を、どの厚さで)を発注書に書き、仕入先の認定や試験の記録で確かめる。等級と肉厚の関係はUL94 V-0 対応の樹脂選定と肉厚設計で扱っている。
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熱に弱いことを前提に、使う温度を伝える
硬質の塩ビは、熱に強い材料ではない。前述の一色の解説の物性表では、硬質ポリ塩化ビニルの熱変形温度(ASTM D648)を 70 ℃としている[4]。JIS K 6745 のビカット軟化温度の要求も、耐熱グレード以外は 60〜78 ℃の範囲である[1]。
規格の加熱寸法変化率の試験は、板を 140 ℃のオーブンに厚さに応じた時間入れ、標線の長さの変化を見るもので、厚さ 1.0〜2.0 mm の押出板では ±10 % まで認められている[1]。曲げ加工や溶接のために板を加熱すると、成形のときの方向で寸法が変わることがある、と読める。加熱して曲げる部品は、曲げたあとの寸法で受けることを仕入先と合わせておく。
温水が流れる配管まわり、日の当たる屋外の盤、熱源のそばのカバーに使うなら、使う温度と時間を伝え、グループ 5 を指定するか、別の材料を検討する。塩ビの配合(重合度・可塑剤・安定剤)で製品の性質は大きく変わる、と一色の解説も書いている[4]。
発注書に書くこと(塩ビ板)
以下は規格の要求ではなく、発注側の実務としての提案である。
1. 規格と種類
JIS K 6745、PVC-U-E(または P)-T1(または T2)-グループ番号。
2. 寸法
幅×長さ×厚さ(mm)と枚数。切断品なら切断寸法と、その許容差(規格の板の許容差とは別に決める)。
3. 色
色番号か色見本。透明板ならグループ 2 であること。
4. 使い方の条件
触れる薬液と濃度、温度、屋外かどうか、荷重がかかるかどうか。
5. 難燃の要求
必要なら等級・試験方法・厚さ。JIS K 6745 に適合しているだけでは決まらないため。
6. 成績書
どの試験の成績を、ロットごとか定期かで出すか。
7. 包装
表面保護のマスキングの要否と、段ボール・クラフト紙・パレットのどれでこん包するか(規格はこん包を受渡当事者間の協定としている)[1]。
受入で確かめること
規格は、こん包ごとに製品名称「硬質ポリ塩化ビニル板」と規格番号「JIS K 6745」、種類、呼び寸法(幅×長さ×厚さ)、入り数、製造業者名、製造年月またはロット番号を表示すると決めている[1]。受入では、まずこの表示の種類が注文と一致しているかを見る。
見落とされやすいのが試験の頻度である。外観と寸法はロットごとに 1 枚以上を測るが、引張・衝撃・耐熱などの性能試験の頻度は年 1 回以上とされている[1]。仕入先が出す性能の値は、そのロットを測った値とは限らない。薬液槽の部材のように性能が効く用途で、ロットごとの値が要るなら、注文時にその旨を求め、費用と納期に含めて見積もってもらう。
外観は、使用上有害なきず、割れ、斑点、ボイド、気泡、異物、色むらがないこととされ、約 60 cm 離れて目視で見る[1]。色むらは板の中だけでなく板と板の間も対象で、ISO では協議事項だったものを JIS では「あってはならない」とした[1]。複数ロットを並べて使う外装では、ロット間の色の違いも受入の対象にできる。
よくある質問
「耐薬品グレード」と書けば、薬液槽に使えますか
JIS K 6745 で耐薬品性の要求がかかるのはグループ 1 で、試験は決められた 6 種類の液に 60 ℃で 5 時間浸して質量変化を見るものである[1]。実際の液・濃度・温度・応力の条件は別に伝えて確かめる。硫酸中では応力によって拡散が変わることも報告されている[5]。
塩ビ板は燃えないと聞きました。難燃の指定は要りませんか
塩ビは酸素指数が約 45 の自己消火性の樹脂と説明されるが[4]、JIS K 6745 は燃焼性を要求項目から外している[1]。等級が必要な部品では、等級と試験方法を指定する。
T1 と T2 で価格は変わりますか
許容差が狭い T2 は、作り方や検査の手間が変わりうるので、見積もりで確かめる。厚さを寸法として使わない部品なら、T1 で足りることが多い。
まとめ
工業用の塩ビ板は JIS K 6745 で、押出板とプレス板、T1 と T2、グループ 1〜5 の組み合わせで種類が決まる。発注書には「PVC-U-E-T1-1」の書式で種類を書く。耐薬品性の試験はグループ 1、透明の要求はグループ 2 にだけかかり、燃焼性は要求項目に入っていない。性能試験は年 1 回以上が規定なので、ロットごとの値が要るなら注文時に求める。測定は 23 ℃基準なので、受入で寸法を測るときは温度を記録する。
同じ束では、容器・フィルムに使う樹脂をポリエチレン HDPE・LDPE の選び方で、基板や絶縁板に使う積層板をガラエポ(FR-4)の発注で扱う。樹脂をメーカーとグレードで固定する一般的な手順は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認にまとめた。
出典・参考資料
- JIS K 6745:2023 プラスチック-硬質ポリ塩化ビニル板(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 11 月 20 日改正)
- JIS K 6740-1:1999 プラスチック-無可塑ポリ塩化ビニル(PVC-U)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及びその仕様表記(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- JIS K 7201-2 プラスチック-酸素指数による燃焼性の試験方法-第2部:室温における試験(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 12 月 20 日改正)
- 一色実「ポリ塩化ビニルの特性と用途」化学と教育 57 巻 8 号(日本化学会/2009 年)
- 古賀満男・河口英樹「硬質塩化ビニル板に対する硫酸の拡散と脱塩酸」材料 26 巻 281 号(日本材料学会/1977 年)
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