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ラップ加工(ラッピング)の発注——平面度・平行度の書き方とオプチカルフラットの等級、番手の限界

この記事のポイント(結論先出し)
ラップ加工(ラッピング)を発注するときは、「ラップ仕上げ」「#3000 ラップ」のような工程の言葉ではなく、平面度・平行度・表面粗さの値と、それをどう測るかを図面に書く。JIS B 0122 では、機械で行うラッピング(GL)と手仕上げのラップ仕上げ(FL)は別の記号である[1]。平面度は「平行二平面で挟んだときの最小の間隔」で定義され[2]、光波干渉で測る場合に使うオプチカルフラット自体も等級で平面度の許容値が決まっている(1 級 0.05 μm)[3]。砥粒の番手を書いても仕上がりは決まらない。粒度の JIS は研削といし用で、遊離砥粒に使う研磨材には適用できないと規格自身が書いている[4]。
この記事は、工業部品の平面・外径を高い精度で仕上げるラップ加工(ラッピング)を発注する側の目線で書く。包装の「ラップ」や部材の重ね(ラップ)とは関係がない。検索で同じ語が出てくるので、見積依頼の文面では「ラッピング(研磨加工)」のように書いておくと取り違えを避けられる。
目次
ラッピングとラップ仕上げは、JIS では別の記号
JIS B 0122(加工方法記号)は、研削の欄にラッピング(記号 GL、Lapping)を置き、別に手仕上げの欄にラップ仕上げ(記号 FL)を置いている[1]。同じ研削の欄にはホーニング(GH)や超仕上げ(GSP)も並ぶ[1]。機械で行うのか、人の手で行うのかで記号が分かれている、ということだ。
発注側にとって大事なのは記号そのものより、この区別が工程の安定性に関わることである。手仕上げを含む工程は、作業者によって仕上がりの差が出やすい。量産で手仕上げが入るなら、限度見本や測定の頻度を決めておく必要がある。仕入先の工程表に GL と FL のどちらが書かれているか(あるいは両方か)を見て、量産で同じ品質を出す仕組みを聞いておく。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。
なお、内径を砥石で仕上げるホーニングとは目的が異なる。内径の真円度・円筒度や油を保つ面を作る加工はホーニングの発注で扱った。
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図面に書くのは「平面度・平行度・粗さ」の値
ラップ加工を頼む理由は、たいてい平らさと面の滑らかさである。だから図面には、加工方法の名前より先に、平面度、(両面を仕上げるなら)平行度、表面粗さの値を書く。
平面度の定義を押さえる
JIS B 0621(幾何偏差の定義及び表示)は、平面度を「平面形体を幾何学的平行二平面で挟んだとき、平行二平面の間隔が最小となる場合の、二平面の間隔」で表すとしている[2]。つまり平面度は、面のいちばん高い所と低い所の差を、面の傾きを最も有利にとったときに測った値である。測定機が面を何点でなぞるか、端からどれだけ離れた範囲を評価するかで値は変わりうる。評価範囲(たとえば外周から何 mm を除くか)を図面か仕様書に書いておくと、仕入先との食い違いが減る。幾何公差の測り方を合わせる手順は幾何公差の測り方を仕入先と合わせるにまとめた。
両面を仕上げるなら平行度と厚さを分けて書く
板状の部品の両面をラップするときは、平面度に加えて平行度が要る。JIS B 0621 は平行度を、データム直線またはデータム平面に対して平行な幾何学的直線・平面からの、平行であるべき直線形体・平面形体の狂いの大きさとしている[2]。平行度にはデータム(基準にする面)が要るので、どちらの面をデータムにするかを図面で決める。厚さの寸法公差と平行度は別の要求で、厚さが公差に入っていても、両面が傾いていれば平行度は外れる。両面同時にラップする工程か、片面ずつ仕上げる工程かで、平行度の出し方も変わるので、工程表で確かめておく。
表面粗さは測定条件まで書く
ラップ面は粗さが非常に小さいので、測定条件の違いがそのまま値の違いになる。特に、短い波長の側をどこで区切るか(λs)や、触針の先端半径の選び方で結果が大きく変わることは表面粗さの指定と測定条件で扱った。粗さの値だけでなく、パラメータ(Ra・Rz など)、カットオフ値、測る方向を書いておく。
JIS B 0031(表面性状の図示方法)は、パラメータの値は輪郭曲線の細部形状に強く影響されるので、多くの場合は加工方法を指示することが必要だとしている[5]。図面の表面性状記号の加工方法の位置にラッピングと書くのは、値を補う情報として意味がある。ただし、それだけで要求を伝えたことにはならない。同じ規格の筋目の記号(=、⊥、X、M、C、R、P)の例には、ラップ面は挙がっていない[5]。筋目の向きが機能に効く部品なら、記号で表せない筋目模様は注記で指示する、という規格の備考に沿って注記に書く[5]。
平面度をどう測るか:オプチカルフラットの等級
小さく、光をよく反射する平面の平面度は、光の干渉じまで測ることがある。そのときに使う基準のガラスがオプチカルフラットで、JIS B 7430 は「平らな測定面をもつ透明なガラスで作られ、光波干渉による平面度測定に用いる」ものと定めている[3]。
見落としやすいのは、基準のガラス自体にも等級があることだ。JIS B 7430 はフラットを性能で 1 級・2 級・3 級に分け、測定面の平面度の許容値を次のように定めている(0 級は参考で、規格の一部ではない)[3]。
| オプチカルフラットの等級(JIS B 7430) | フラット自体の平面度の許容値 | 扱い |
|---|---|---|
| 0 級 | 0.025 μm | 参考(規格の一部ではない) |
| 1 級 | 0.05 μm | 規格の等級 |
| 2 級 | 0.1 μm | 規格の等級 |
| 3 級 | 0.2 μm | 規格の等級 |
同じ規格は、フラットの平面度の求め方として、干渉じまの中心間隔 a と曲がり量 b、光の波長 λ から、平面度 F を (b/a)×(λ/2) で求める式を示している[3]。干渉じま 1 本分が波長の半分の高さに当たる、という考え方である。部品の平面度を同じ原理で測るなら、図面の平面度の公差に対して、使うフラットの等級の許容値が十分に小さいかを確かめる。たとえば部品の平面度が 0.3 μm のとき、3 級(0.2 μm)のフラットでは基準の誤差が公差の大半を占めてしまう。どの等級のフラットで、どの光源(波長)で測ったかを成績書に書いてもらう。
フラットの呼び(外径)は 45・60・80・100・130 mm の 5 種類で[3]、干渉じまを見る方法なので、測る面がフラットより大きい場合や、光を反射しにくい面の場合は別の方法になる。平面度測定機や三次元測定機で測るなら、測定点の数と配置を決めておく。三次元測定の報告に何を求めるかは三次元測定(CMM)の測定データを仕入先に求めるときを参照してほしい。
砥粒の番手を書いても仕上がりは決まらない
見積依頼に「#2000 でラップ」「#8000 仕上げ」のように砥粒の番手を書くことがある。番手は加工の手段を表す言葉で、仕上がりの要求ではない。しかも番手の JIS には適用の限定がある。
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JIS R 6001-2(研削といし用研削材の粒度-第 2 部:微粉)は、人造研削材のうち粒度が F230〜F2000 と #240〜#8000 の微粉について規定する規格だが、注記で「研磨布紙並びに遊離と粒に使用する研削材及び研磨材には適用できない」としている[4]。ラッピングは定盤の上で砥粒を転がして削る加工なので、使う砥粒は遊離砥粒にあたることが多い。番手の数字が JIS の粒度分布を保証している、とは限らないということだ。
発注側としては、番手を指定するより、平面度・粗さの値で要求し、工程(砥粒の種類と番手、段数)は仕入先に提案させるほうが、要求と責任の所在がはっきりする。工程を固定したい事情があるなら、工程の変更を事前承認にする、と書けばよい。
砥粒と加工液の残りの扱いを決める
ラッピングでは砥粒と加工液を使う。仕上げた面やすき間に砥粒が残ると、組み付けた後に摺動部へ入り込むことがある。洗浄の方法と、どこまできれいにするか(残留物の許容)は、規格が決めているものではなく受け渡しの取り決めになる。清浄度を数値で決める方法は部品の清浄度の指定で扱った。精密な面の外観(キズ・くもり)の基準は、限度見本と見る条件を決めておく。外観仕上げの種類の合わせ方は切削加工品の外観の仕上げを仕入先と合わせるも参考になる。
受け取るときに確かめること
1. 加工方法
工程表のラッピングが機械(GL)か手仕上げ(FL)か[1]。量産で手仕上げが入るなら、品質をそろえる方法を聞いているか。
2. 平面度・平行度
図面の値で、決めた評価範囲で測っているか。オプチカルフラットで測ったなら、フラットの等級と光源が記録にあるか[3]。
3. 表面粗さ
パラメータ、カットオフ値、λs、測った方向が取り決めどおりか。
4. 清浄度と外観
砥粒や加工液の残りが、取り決めた基準に入っているか。キズ・くもりは限度見本の範囲か。
注文書の書き方の例
決まった様式は無い。発注側として書いておきたい内容を一例にまとめる。
「A 面:ラッピング(JIS B 0122 の GL)。平面度 0.5 μm 以下(外周 2 mm を除く範囲で評価)、表面粗さは図面による(測定条件は図面注記による)。平面度を光波干渉で測る場合は JIS B 7430 の 1 級以上のオプチカルフラットを用い、等級と光源を成績書に記載すること。砥粒・加工液は洗浄で除去し、清浄度は別紙による。工程(砥粒の種類・番手を含む)の変更は事前承認を要する。」
よくある質問
ラッピングで鏡面にしてほしいとだけ書いてよいですか
「鏡面」は人によって受け取り方が違う。合否を判定できるよう、表面粗さの値と測定条件、外観の基準(限度見本と見る条件)を書く。JIS B 0031 も、パラメータの値だけでは表面機能に対してあいまいさが残るとしており[5]、加工方法と値の両方を書くのが確実である。
オプチカルフラットの等級は、部品の平面度とどう関係しますか
フラット自体の平面度の許容値は 1 級で 0.05 μm、3 級で 0.2 μm である[3]。この値は測定の基準の誤差になるので、部品の平面度の公差に対して十分小さい等級を使う。等級を成績書に書いてもらえば、受入側でも確かめられる。
番手を指定しないと仕入先が粗い砥粒で済ませませんか
仕上がりの値(平面度・粗さ)を図面で決めていれば、粗い砥粒で値を満たせないものは不合格になる。番手の JIS は遊離砥粒に適用できないので[4]、番手で品質を担保するのは難しい。値で要求し、工程の変更を事前承認にしておく。
まとめ
ラップ加工の発注では、工程の言葉より平面度・平行度・表面粗さの値と測り方を書く。JIS B 0122 では機械のラッピング(GL)と手仕上げのラップ仕上げ(FL)が別の記号なので、工程表でどちらかを確かめる。平面度は平行二平面の最小間隔で定義され、光波干渉で測るならオプチカルフラットの等級(1 級 0.05 μm など)が測定の基準の誤差になる。砥粒の番手の JIS は遊離砥粒に適用できないので、番手ではなく仕上がりの値で要求する。砥粒と加工液の残りの扱いも取り決めておく。
同じ束では、内径を仕上げるホーニング、穴の中のキー溝やスプラインを作るブローチ加工、ローレット加工、応力除去焼なましの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 0122:1978 加工方法記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1978 年 2 月 1 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1984 年 2 月 1 日改正・2024 年 6 月 20 日確認)
- JIS B 7430:1977 オプチカルフラット(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1977 年 2 月 1 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS R 6001-2:2017 研削といし用研削材の粒度-第 2 部:微粉(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2017 年 1 月 20 日制定・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 0031:2003 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状の図示方法(追補 1:2022)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)
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