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投稿日:2026年10月2日

切削加工品の外観の仕上げ(バフ・ヘアライン・ブラスト)を仕入先と合わせる

この記事のポイント(結論先出し)

「バフ仕上げ」「ヘアライン」「ブラスト」は仕上げの種類の名前であって、研磨目の向き、目の細かさ、光沢、範囲、ほかの処理との順番までは決めない。図面では、JIS B 0031 の表面性状の図示記号に加工方法と筋目の方向を書き込める[1]。加工方法の名前は JIS B 0122 にバフ研摩(SPBF)やショットブラスチング(SBSH)などの記号がある[2]。ヘアラインは研磨ベルトの番手に幅があり[3]、光沢は JIS Z 8741 の測定方法で数値にできる[4]。一方、JIS Z 0310 のブラストの規格は塗装前の鋼材の素地調整のためのもので[5]、外観の梨地の指定にはそのまま使えない。仕上げの種類ごとに、数値で決めるものと見本で決めるものを分けて発注する。

仕上げの名前だけでは決まらないこと

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切削加工品の外観に関わる仕上げは、図面に「ヘアライン仕上げ」「バフ研磨のこと」「サンドブラスト」と一語で書かれることが多い。しかし、一語からは次のことが決まらない。

  • 向き:研磨目をどの方向に通すか。面をまたいで向きをそろえるか
  • 目の細かさ:研磨ベルトや研削材の番手、ブラストの研削材の種類
  • 光沢:どこまで光らせるか、あるいは光らせないか
  • 範囲:仕上げる面と仕上げない面の境目、マスキングする部分
  • 順番:めっき・陽極酸化・塗装などの前か後か

表面粗さ(Ra・Rz など)を数値で指定していても、それで外観がそろうとは限らない。粗さの指定と測り方は表面粗さの指定と測定条件の合わせ方で扱った。この記事では、粗さの数値とは別に、仕上げの「種類」をどう指定するかを扱う。キズや色むらの合否の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるにまとめてある。

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図面で仕上げを書き込む枠組み——JIS B 0031

JIS B 0031(製品の幾何特性仕様―表面性状の図示方法)は、表面性状の図示記号のまわりに、要求事項を書き込む位置を決めている。位置 c には加工方法(旋削・研削・めっきなど、対象面を得るための加工方法・表面処理・塗装・加工プロセスに必要な事項)を、位置 d には筋目とその方向を記号で、位置 e には削り代をミリメートル単位で書く[1]。同規格は、加工方法が輪郭曲線の細部の形にある程度影響するなどの理由から、多くの場合加工方法の指示が必要になるとしている[1]。なお JIS B 0031 は 2003 年版に 2022 年の追補 1 が加わった形で現行となっている[1]。

筋目の方向は記号で示せる。次の表は規格の表から 3 つだけ抜き出したもので、ほかに 2 方向に交差する X、同心円状の C、放射状の R、粒子状の P がある。全体は規格を参照してほしい[1]。

記号 筋目の方向 規格が挙げる例
= 記号を指示した図の投影面に平行 形削り面、旋削面、研削面
⊥ 記号を指示した図の投影面に直角 形削り面、旋削面、研削面
M 多方向に交差 正面フライス削り面、エンドミル削り面

ヘアラインのように「一方向に通す」仕上げは、= か ⊥ で向きを図に固定できる。規格は、これらの記号で表せない筋目模様が必要な場合には、図面に注記として指示するとしている[1]。たとえば「隣り合う 2 面の研磨目を、稜線をまたいで連続させる」といった外観上の要求は、記号では書けないので注記で書くことになる。

加工方法の名前をそろえる——JIS B 0122

JIS B 0122(加工方法記号)は、主として金属に一般に使う二次加工以降の加工方法を、図面や工程表に表示するための記号を定めている[2]。仕上げに関わるものには、次のような記号がある[2]。

  • 研摩(SP):バフ研摩 SPBF、ベルト研摩 SPBL、バレル研摩 SPBR、化学研摩 SPC、電解研摩 SPE、液体ホーニング SPLH、タンブリング SPT
  • ブラスチング(SB):グリットブラスチング SBG、ショットブラスチング SBSH、サンドブラスチング SBSN、ウォータブラスチング SBW

同じ「ブラスト」でも、角のある粒を当てるグリット、球状の粒を当てるショット、砂、水で、得られる面は違う。「ブラスト仕上げ」と書くより、どのブラストかを記号か言葉で特定するほうが、見積の前提がそろう。ただし JIS B 0122 の最新の改正は 1978 年で[2]、記号が示すのは加工方法の名前までである。研削材の番手や光沢といった出来上がりの条件は、別に書く必要がある。

ヘアラインは、向きと番手で決める

ステンレス協会はステンレス鋼板の主な表面仕上げを整理しており、HL(ヘアライン)を、長く連続した研磨目を持った仕上げで、通常 P150〜P240 番の砥粒研磨ベルトで長い研磨目を付けたものとしている。同じ表は、No.4 を P150〜P180 番のベルトによる光沢のある細かい目の仕上げ、多軸の水平研磨による無方向性のヘアライン(バイブレーション)を別の仕上げとして挙げている[3]。

この表は鋼板の仕上げの区分だが、切削加工品に後からヘアラインを付けるときにも考え方は使える。番手には幅があるので、「HL」とだけ書くと研磨目の細かさが仕入先の標準に任される。また、鋼板の HL は板の長手方向に目が通っているが、切削加工品では、どの面に、どの向きに目を通すかを部品ごとに決めなければならない。ステンレスの鋼種と鋼板の仕上げの指定はステンレスの発注で指定することで扱った。

バフ仕上げは、光沢を数値にできる

同じステンレス協会の表では、#400 を P400 番のバフで研磨した鏡面に近い光沢で若干のすじがあるもの、No.7 を P600 番の回転バフによる研磨目のある準鏡面、No.8 を最終研磨を鏡面用バフで行った研磨目のない鏡に近い仕上げとしている[3]。「バフ仕上げ」の一語では、この幅のどこを狙うかは決まらない。

光沢の程度は、JIS Z 8741(鏡面光沢度―測定方法)で数値にできる。この規格は鉱工業製品の巨視的に見て平滑な表面の鏡面光沢度の測定方法を定め、入射角 85 度・75 度・60 度・45 度・20 度の 5 つの方法を規定している。60 度で測った光沢度が 10 以下の表面には 85 度の方法、70 を超える表面には 20 度の方法を適用するとし、結果は「Gs(60°)=42%」のように測定方法の種類と測定装置を付記して記録する[4]。

光沢度で合意するなら、測定の角度、測る位置と向き、使う装置を決めておかないと、仕入先と発注側で数値が合わない。研磨目のある面では、測る向きで数値が変わることも考えられるので、初回の試作で測り方を一緒に決める。規格の適用範囲は巨視的に平滑な表面なので[4]、ブラストのような粗い面に使えるかは適用範囲に照らして確かめる。

ブラストは、目的と研削材を決める

「ブラストの規格」としてよく名前が挙がる JIS Z 0310(素地調整用ブラスト処理方法通則)は、防錆・防食を目的として鋼材に塗料などを被覆する前に、素地を調整するために行うブラスト処理について定めた規格である[5]。同規格は、除せい度を Sa 1〜3 の 4 段階で示し、その評価は JIS Z 0313 によるとしている。表面粗さも「除せい度が Sa 2 以上に仕上げられたブラスト処理表面の粗さ」として定義している[5]。また、研削材の粒度分布・形状・硬度・密度・衝撃挙動が、除せい度、処理の速さ、処理面の状態に影響するとしている[5]。

つまり、「Sa 2½」のような指定は塗装前の鋼材のさび・黒皮の除去の程度を表すもので、アルミの筐体の均一な梨地のような外観の指定ではない。外観を目的とするブラストでは、研削材の種類と番手、処理する範囲とマスキング、仕上がりの見本を決める。研削材の性状が処理面の状態に影響するという同規格の考え方[5]は、外観のブラストでも、研削材を勝手に変えないよう取り決める理由になる。ステンレス協会の表でも、つや消しロールでの圧延またはショットブラストで細かい凹凸を付けるダル仕上げが挙げられている[3]。塗装の前処理としてのブラストの扱いは塗装の仕様の決め方と合わせて決める。

ほかの処理との順番を決める

外観の仕上げの多くは、その後にめっき・陽極酸化・塗装・不動態化などの処理が続く。処理の膜は下地の凹凸や研磨目を拾うので、仕上げの見本は「処理後の状態」で取り交わすほうが確実である。ステンレスの研磨面では、研磨で表面の耐食性が落ちることがあり、研磨の後の処理が問題になる。こちらはステンレスの不動態化処理の指定で扱う。めっきとの組み合わせはめっきの発注で指定することで、化成処理は三価クロメート・化成処理の指定で扱う。

図面・発注書に書くこと(実務の提案)

次の項目は規格が求めるものではない。外観の仕上げを外注するとき、見積と受入の前提をそろえるために発注側で決めておきたいことの提案である。

1. 仕上げの種類を特定する

JIS B 0122 の記号か、それに相当する言葉で、どの加工方法かを書く。ブラストならグリット・ショットなどの別まで書く。

2. 向きを図に書く

研磨目のある仕上げは、JIS B 0031 の筋目の記号で面ごとに向きを示す。記号で書けない要求は注記にする。

3. 目の細かさを決める

研磨ベルトやバフ、研削材の番手を指定するか、範囲を書く。仕入先の標準に任せるなら、その標準を書面で出してもらう。

4. 数値で決められるものは数値にする

光沢度は測定方法と装置まで、粗さは測定条件まで決める。

5. 見本で決めるものを決める

目の均一さや色合いのように数値にしにくいものは、限度見本で合意する。見本は処理後の状態で、承認した日付と版を残す。

6. 範囲と順番を書く

仕上げる面、仕上げない面、マスキングする部分を図示し、ほかの処理との順番を書く。

受入で確かめること

  • 指定した面に、指定した向きで研磨目が通っているか
  • 目の細かさ・梨地の粗さが限度見本の範囲に入っているか
  • 光沢度を決めた場合、決めた角度・位置で測った値が範囲に入っているか
  • 仕上げない面やマスキング部分に、研磨やブラストがかかっていないか
  • ロットの間で、見え方が限度見本からずれていないか

受入の基準は、量産が始まってから付け足さない。取適法の対象取引では、委託内容が明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりして、給付が委託内容と違うことが明らかでない場合は、そのことを理由に受領を拒めないとされている[6]。外観の仕上げは、まさに基準があいまいになりやすい項目なので、発注の時点で文書と見本にしておく。

よくある質問

図面に「ヘアライン仕上げ」とだけあります。何を足せばよいですか

研磨目の向き(筋目の記号)と番手の範囲、そして限度見本を足す。HL はベルトの番手に幅がある[3]ので、番手を決めないと細かさは仕入先の標準になる。

「鏡面仕上げ」は粗さで指定すべきですか、光沢で指定すべきですか

用途で決める。摺動やシールのように機能に効くなら粗さを測定条件まで決めて指定し、見た目が目的なら光沢度や見本で決める。両方が要る部品もある。光沢度は測定方法の種類と装置を付記して記録する[4]。

仕入先から、ブラストの研削材を変えたいと言われました

研削材の性状は処理面の状態に影響する[5]ので、外観が品質に入る部品では変更として扱う。変更後の試作品を限度見本と並べて確かめてから承認する。

ブラストの指定に「Sa 2½」と書いてよいですか

塗装の前に鋼材のさびや黒皮を取る目的なら、JIS Z 0310 の除せい度で指定できる[5]。外観の梨地の指定には向かないので、研削材と見本で決める。

まとめ

バフ・ヘアライン・ブラストといった仕上げの名前は、向き・目の細かさ・光沢・範囲・順番までは決めない。図面では JIS B 0031 の図示記号に加工方法と筋目の方向を書き込め、加工方法の名前は JIS B 0122 の記号でそろえられる。ヘアラインは番手に幅があり、バフは光沢を JIS Z 8741 で数値にできる。JIS Z 0310 のブラストは塗装前の素地調整の規格なので、外観の梨地には研削材と見本で決める。数値で決めるものと見本で決めるものを分け、範囲とほかの処理との順番まで書いて発注する。

出典・参考資料

  1. JIS B 0031:2003(追補1:2022) 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状の図示方法(日本産業標準調査会 JIS 検索)
  2. JIS B 0122 加工方法記号(日本産業標準調査会 JIS 検索/1978 年改正)
  3. ステンレスの主な表面仕上げ(一般社団法人ステンレス協会)
  4. JIS Z 8741:1997 鏡面光沢度-測定方法(日本産業標準調査会 JIS 検索)
  5. JIS Z 0310:2016 素地調整用ブラスト処理方法通則(日本産業標準調査会 JIS 検索)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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