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ローレット加工 JIS B 0951 の指定——平目・アヤ目とモジュール、外径とブランク径の決め方

この記事のポイント(結論先出し)
ローレット加工を図面で指定するときは、JIS B 0951 の種類(平目かアヤ目か)とモジュール(m 0.2・0.3・0.5)を「アヤ目 m 0.3」の形で書き、目を付ける範囲を寸法で示す[1]。JIS B 0951 が定める種類はこの 2 種類、モジュールはこの 3 つだけで、それ以外は規格の外になる[1]。JIS B 0122 はローレット切り(RLK)を、削る加工ではなく転造(塑性加工)の一つに分類している[2]。転造では目が素材を押しのけて作られるので、仕上がりの外径は素材の径と同じとは限らない。外径に公差が要る部品では、目の山の径を公差で書き、素材の径(ブランク径)の決め方を仕入先と合わせる。樹脂への圧入や抜け止めに使うローレットは JIS の形状規格の対象外なので、抜け・回り止めの性能で要求する。
この記事は、つまみやノブの滑り止め、樹脂への圧入部などに付けるローレット(ローレット目)を、工業部品として発注する側の目線で書く。工具の使い方ではなく、図面と注文書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかを扱う。
目次
JIS B 0951 の種類は平目とアヤ目の 2 つ
JIS B 0951(ローレット目)は、一般に用いるローレット目について規定する規格で、種類を平目とアヤ目の 2 種類としている[1]。平目は軸に沿った筋が並ぶ目、アヤ目は 2 方向の筋が交差する目である。
目の大きさはモジュール m で表す。規格の表に並ぶモジュールは 0.2・0.3・0.5 の 3 つで、それぞれに目のピッチ t、溝底の丸み r、目の高さ h が決まっている[1]。
| モジュール m | ピッチ t(mm) | r(mm) | h(mm) | m/cos30°(アヤ目のブランク径の計算用) |
|---|---|---|---|---|
| 0.2 | 0.628 | 0.06 | 0.132 | 0.230 |
| 0.3 | 0.942 | 0.09 | 0.198 | 0.346 |
| 0.5 | 1.571 | 0.16 | 0.326 | 0.577 |
表の値は JIS B 0951 の表と参考による[1]。ピッチ t は、モジュールに円周率をかけた値になっている(0.5×π=1.571)。規格の溝の形状は、加工物の直径が無限大になったと仮定したときの、溝に直角な断面で規定されている[1]。
図面の書き方:呼び方と範囲
JIS B 0951 は、ローレット目の呼び方を種類とモジュールによるとし、例として「平目 m 0.5」「アヤ目 m 0.3」を挙げている[1]。図面にはこの呼び方を、規格番号と一緒に注記で書く。
形の描き方は JIS B 0001(機械製図)にある。ローレット加工した部分は、外形の一部分にその模様を描いて表示してもよい、とされている[3]。模様は目の種類を目で分かるようにするためのもので、目の大きさや範囲を決めるものではない。目を付ける範囲(端からどこまでか、面取りを含むか)は寸法で書く。表面性状の図示記号を使うなら、JIS B 0031 が定める加工方法の位置に加工方法を書ける[4]。
JIS の表にないモジュールや目
JIS B 0951 のモジュールは 0.2・0.3・0.5 の 3 つで、表にない値(たとえば 0.4 や 1.0)は規格の外である。手持ちの工具の都合でそうした値を提案されることもあるが、その場合は「JIS B 0951」と書いた図面と食い違うので、図面を改訂するか、特別な目として注記に寸法を書く。海外の工具や図面では、目をピッチ(mm)や、1 インチ当たりの山数で呼ぶことがある。モジュールとピッチは t=π×m の関係にあるので、換算すればどの JIS の目に近いかは分かるが、同じ目になるとは限らない。見積の段階で、どの呼びで加工するかを確かめる。
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ローレットは「転造」:外径が変わることを前提にする
JIS B 0122(加工方法記号)は、ローレット切り(記号 RLK、Knurling)を、ねじ転造や歯車転造、バニシ仕上げと同じ転造の欄に置いている[2]。転造は塑性加工の一つ、つまり材料を削り取るのではなく押しのけて形を作る加工である[2]。
押しのけた材料は山になって盛り上がるので、目を付けた後の外径は、目を付ける前の素材の径と同じとは限らない。仕上がりの外径に公差が要る部品(相手の穴に圧入する、ケースの穴を通す、など)では、図面に「ローレット後の外径」を公差で書き、素材の径をいくつにするかは仕入先と決める。素材の径の決め方は加工の条件と材料で変わるので、規格に一律の値があるわけではない。
ブランク径を整数倍にする理由
JIS B 0951 は参考として、加工物のブランク(素材)の直径を求める式を示している。平目は D=n×m、アヤ目は D=n×m/cos30°(n は整数)とするのがよい、という形である[1]。
この式の意味は、円周の長さ(π×D)が目のピッチ(π×m)のちょうど整数倍になるように素材の径を選ぶ、ということだ。整数倍にならないと、1 周したところで目の位置が合わず、目が二重になったりつぶれたりしやすい。たとえば平目 m 0.5 で、素材の径を 10 mm にすれば n=20 で整数になる。式は「参考」で「よい」という書き方なので、規格の要求ではない[1]。それでも、図面の外径の基準寸法をこの式から外れた値にすると、仕入先は目をきれいに付けるために素材の径を調整することになる。外径の公差と素材の径の関係を、図面を出す前に設計と確かめておくと手戻りが少ない。
なお、ローレットの目は、押し付けて作る方法のほかに、工具で削って作る方法で加工されることもある。削って作る場合は材料を押しのけないので、外径の出方が転造とは違う。仕入先がどちらの方法で加工するかを見積の段階で確かめ、外径の公差はどちらの方法でも目を付けた後の径で判定する。
用途ごとに要求の書き方が違う
つまみ・ノブの滑り止め
手で回す部品の滑り止めなら、目の種類とモジュール、範囲で足りることが多い。外観を問う部品なら、目のつぶれやかえり(ばり)の許容を限度見本で決める。めっきや塗装をかける部品では、目の谷に処理が入りにくい、かえりが残ると処理の後で目立つ、といったことが起こりうるので、ローレットと表面処理の順番と、かえり取りの有無を工程で確かめる。外観の仕上げの合わせ方は切削加工品の外観の仕上げを仕入先と合わせるで扱った。
樹脂への圧入・インサート
樹脂部品に金属の部品を圧入したり、成形のときに埋め込んだりする部分にローレットを付けることがある。ねじインサートの分類では、ねじ以外(ローレット、セレーション、溝、しまりばめ)で固定する型があり、抜けと回転に抵抗する作りとして扱われている。インサートの図面指示と受入はねじ穴とインサートの図面指示と受入にまとめた。
ここで注意したいのは、JIS B 0951 は一般に用いるローレット目の形状と寸法を定める規格で[1]、圧入したときの抜けにくさや回りにくさは規定していないことだ。圧入用のローレットで本当に要るのは性能なので、抜け荷重・回転トルクの要求値と、その試験の方法(何個を、どの温度で、どう測るか)を仕様に書く。目の呼び方だけを書いて性能は書かない、という指定では、目が規格どおりでも抜ける部品が合格してしまう。
工程の順番と形の制約を確かめる
転造は工具を素材に押し付けて目を作る加工なので[2]、押し付ける力に部品が耐えられるかが問題になる。肉の薄い管や、細くて長い軸に目を付けると、曲がりやつぶれが出ることがある。こうした形の部品は、量産の前に試作で目の状態と寸法を確かめる。段の付いた軸の、段のすぐ近くまで目を付けたい場合も、工具が入るかどうかで範囲が変わるので、目を付ける範囲の端の扱いを仕入先と相談しておく。
熱処理との順番も確かめる。焼入れなどで硬くした後に目を付けるのか、目を付けてから熱処理するのかで、目の状態と寸法の出方が変わる。熱処理で寸法が動くことと、熱処理の指定の書き方は熱処理を図面で指定するで扱った。工程表にローレットと熱処理・表面処理の順番が書かれているかを見て、変更は事前承認にしておく。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。
見積依頼に書いておくこと
見積の段階で仕入先が知りたいのは、材料(記号と状態)、ローレットを付ける部分の外径と長さ、目の種類とモジュール、目を付けた後の外径の公差、目を付けた後の工程(熱処理・表面処理・圧入)、数量である。目の呼び方が JIS B 0951 の範囲かどうかで、仕入先が手持ちの工具で受けられるかが決まるので、呼び方は最初の見積依頼から書いておく[1]。
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受け取るときに確かめること
1. 種類とモジュール
平目かアヤ目か。モジュールは図面どおりか。平目なら、円周方向に並ぶ目を一定の長さで数えるとピッチから確かめられる(m 0.3 ならピッチ 0.942 mm)[1]。アヤ目は目が斜めに走るので、軸方向に数えた間隔はピッチと一致しない。数える向きを取り決めるか、目の寸法の確かめ方を仕入先と決めておく。
2. 範囲
目を付けた範囲が図面の寸法に入っているか。端の処理(面取り)は取り決めどおりか。
3. 外径
ローレット後の外径に公差を書いたなら、その値で測っているか。どの測定具で、目の山を測っているか。
4. 目の状態
目が二重になっていないか、つぶれ・かえりが限度見本の範囲か。
5. 性能(圧入用)
抜け荷重・回転トルクを求めたなら、試験の結果が記録にあるか。
注文書の書き方の例
決まった様式は無い。発注側として書いておきたい内容を一例にまとめる。
「つまみ部:アヤ目 m 0.3(JIS B 0951)、範囲は図面による。ローレット後の外径は図面の公差による。かえりは除去し、外観は限度見本による。圧入部のローレットは、抜け荷重と回転トルクを別紙の試験方法で確認し、成績書に記載すること。目の種類・モジュール・加工方法の変更は事前承認を要する。」
よくある質問
図面に「ローレット」とだけ書いてもよいですか
種類とモジュールが決まらないので、仕入先の手持ちの工具で決まってしまう。JIS B 0951 の呼び方(例「アヤ目 m 0.3」)で書く[1]。模様を描くだけでは目の大きさは伝わらない[3]。
ローレットの目の大きさは、どう選べばよいですか
JIS B 0951 は 3 つのモジュールの寸法を定めているが、どの用途にどれを使うかは規定していない[1]。目が大きいほどピッチと目の高さが大きくなるので(m 0.2 でピッチ 0.628 mm・高さ 0.132 mm、m 0.5 でピッチ 1.571 mm・高さ 0.326 mm)[1]、部品の大きさと手触り、相手との関係から設計が決め、試作で確かめる。
アヤ目と平目はどちらが滑りにくいですか
JIS B 0951 は形状と寸法を定める規格で、滑りにくさの比較は規定していない[1]。手で回す方向や手袋の有無などで向き不向きが変わるので、試作で確かめて決める。
モジュール 1.0 のような大きな目は頼めますか
JIS B 0951 のモジュールは 0.2・0.3・0.5 までで[1]、それより大きい目は規格の外になる。工具があれば加工はできるが、図面には特別な目として寸法を書き、JIS 品と同じ扱いにならないことを前提にする。
まとめ
ローレット目の JIS は B 0951 で、種類は平目とアヤ目、モジュールは 0.2・0.3・0.5 の 3 つである。図面には「アヤ目 m 0.3」の形で呼び方を書き、範囲を寸法で示す。JIS B 0122 はローレット切りを転造に分類しており、転造では目が材料を押しのけて作られるので、仕上がりの外径に公差が要るなら目を付けた後の外径で書く。ブランク径を目のピッチの整数倍にする式は参考で、規格の要求ではないが、外径の決め方に効く。圧入用のローレットは形状の規格で性能が決まらないので、抜け・回り止めの性能と試験方法で要求する。
同じ束では、内径を仕上げるホーニング、平面を仕上げるラップ加工、穴の中のキー溝を作るブローチ加工、応力除去焼なましの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 0951:1962 ローレット目(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1962 年 2 月 1 日制定・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 0122:1978 加工方法記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1978 年 2 月 1 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 0001:2019 機械製図(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 5 月 20 日改正)
- JIS B 0031:2003 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状の図示方法(追補 1:2022)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)
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