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二色成形・異材質成形の発注——材料の組合せと方式、接合強度の試験と防水の指定

この記事のポイント(結論先出し)
「二色成形」という言葉は、色の違う同じ樹脂を一体にする場合と、硬い樹脂と柔らかいエラストマーのように違う樹脂を一体にする場合(異材質成形)の両方に使われる[1]。発注書に「二色成形」とだけ書くと、どちらの意味か、どの方式(二色成形機を使うのか、先に成形した部品を別の金型に入れるのか)かが決まらない[1][2]。違う樹脂を組み合わせるときに最も注意すべき点は、くっつきやすい材料の組合せを選ぶことだと成形メーカーの解説は書いている[2]。二段階で成形する従来の二色成形では樹脂どうしの接合強度が十分でないことが課題とされ、接合の強さは成形の条件でも変わる[3][4]。だから発注では、二つの材料のグレード、接合の強さを確かめる試験の方法と合否、防水が要るなら界面の試験まで書いておく[5]。
目次
「二色成形」とだけ書いても、何を頼んだかは決まらない
二色成形は、二つの材料を同じ成形品の中で一体にする射出成形である。成形メーカーの技術者による 1996 年の解説は、言葉を次のように分けている[1]。二色成形法は、色の違う同一の樹脂を組み合わせて二色の成形品をつくる方法で、キーボタンなどに使われる。これに対して異材質成形法は、異なる樹脂を組み合わせて、それぞれの樹脂の特性を一つの製品の中で生かす方法で、ABS と PMMA を組み合わせた家電製品の表示部(窓)などに使われる[1]。
現場では、この二つをまとめて「二色成形」と呼ぶことが多い。発注側として困るのは、硬い樹脂に柔らかいエラストマー(熱可塑性エラストマー、TPE)を一体にしたいのに、「二色成形」とだけ書いて見積を取ることである。同じ樹脂の色違いなら材料どうしがくっつくかはあまり問題にならないが、違う樹脂の組合せでは、くっつくかどうかが最初の問題になる。発注書には、二つの材料が何で、色だけ違うのか材料が違うのかを書く。
色違いの同じ樹脂を一体にする二色成形の代表的な用途として、2 色目で文字を形づくるキーボードのキーと、透明な窓と色のついたケースを一体にする成形品が挙げられている。前者は成形後の印刷の工程を省くことができ、印刷に比べて文字が摩耗しにくい[3]。後者は窓の部品とケースの部品を組み立てる工程を省くことができる[3]。
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方式で、金型と成形機と費用が変わる
異なる樹脂を金型の中で一体にする方法には、二つある[1][2]。
1. 先に成形した部品を、別の金型に入れる方法(インサートする方法)
一次材(たとえば硬い樹脂)を先に成形しておき、これを二次材用の金型の中に入れ、二次材(たとえばエラストマー)を必要な部分に流し込んで一次材と熱でくっつける。
2. 二色成形機を使う方法
一次材用と二次材用の金型を並べ、二つの加熱シリンダーから違う樹脂を交互に射出する。金型の構造には、一次材を成形した側の金型を 180° 回して二次材の型に合わせる方式(コア回転方式)と、金型の中のスライドコアを後退させてできた空間に二次材を射出する方式(コアバック方式)があり、両方を組み合わせた方式も広く使われている[1][2]。
二色成形機を使う方法では、二組の射出ユニットと二組の金型(または二つの成形の工程を持つ金型)が必要になる[3]。成形先がその成形機を持っているかで、引き受けられるかどうかが決まり、金型を別の成形先に移すときにも制約になる。先に成形した部品を入れる方法なら一般の射出成形機で成形できるが、一次成形品を作って保管し、金型に入れる手間が増える。一次成形品を入れる方式は、金属の代わりに樹脂の部品を入れるインサート成形でもあるので、入れる位置の精度の考え方はインサート成形を発注するときと共通である。
どちらの方式にするかは、成形先が数量・設備・金型の費用から提案するのが普通である。発注側は、方式を決めつけるより、予定の総生産数量と、将来ほかの成形先に移す可能性があるかを伝えて、方式ごとの金型代と単価を出してもらうとよい。金型の発注で決めること(取り数・所有・移管など)は射出成形の金型を発注するとき決めることで扱った。
違う樹脂を組み合わせるなら、くっつく組合せかを先に確かめる
成形メーカーの解説は、異材質を熱でくっつける成形で最も注意すべき点として、相溶性(なじみ)の良い材料の組合せを選ぶことを挙げている[2]。同じ解説には、代表的なエラストマーの硬さの範囲と、くっつけられる樹脂の組合せをまとめた表がある。次の表は、そのうち一般的なエラストマーの行を抜き出したものである(その会社が開発した独自のエラストマーの行は除いた)。
| エラストマーの種類 | 硬さの範囲(JIS A) | くっつけられる樹脂として挙げられているもの |
|---|---|---|
| オレフィン系(TPO) | 50〜95 度 | PP・PE |
| スチレン系(TPS) | 32〜95 度 | PP・PE |
| ポリエステル系(TPEE) | 75〜95 度 | ABS(PC・PBT・PMMA) |
| ウレタン系(TPU) | 70〜96 度 | ABS(PC・PBT・PMMA) |
| ポリアミド系(TPEA) | 75〜95 度 | PC・PA11・PA12 |
表の出典は、ある成形メーカーの 2000 年の解説である[2]。括弧の中の樹脂は、元の表で括弧付きで挙げられているものをそのまま写した。これはおおまかな目安で、くっつくかどうかは、同じ系統の材料でもグレードと成形条件で変わる。発注で使えるのは、「この組合せはくっつく前提か」を、材料メーカーと成形先に確かめる起点としてである。
この表から読めることがもう一つある。ABS や PC のような硬い樹脂にくっつく柔らかい材料は限られ、しかも硬さが高めのものが多い。同じ解説は、家電・弱電・自動車の分野では ABS と PC の使用比率が高いのに、ゴム部品を別に成形しておいてはめ込むタイプが多く採用されていると書き、ABS や PC とくっつく低硬度のエラストマーが必要だった、と開発の経緯を説明している[1]。柔らかさとくっつきやすさは、材料を選ぶ段階で両立しないことがある。
柔らかい側の硬さは、測り方まで書く
表の硬さは JIS A(タイプ A のデュロメータ)で表されている[2]。柔らかい側の部品の硬さを図面に書くときは、デュロメータの種類と測る条件まで書かないと、成形品の上で測った値と材料の値が食い違う。ゴム・エラストマーの硬さの指定と測り方はゴム部品の材質と硬さの指定で扱った。
接合の強さは、条件で変わる。だから試験を決める
二段階で成形する従来の二色成形には、一次射出樹脂と二次射出樹脂との接合強度が十分でないことなどの問題がある、と 1993 年の研究は書いている[3]。同じ研究グループの 1996 年の解説も、既存の二色射出成形(コアバック式・回転式)の問題点として、材料の間の接合強度が確保できないことと、二段階の成形工程があるため成形サイクルが長くなることを挙げている[4]。
1993 年の研究は、二つの材料を同時に射出する方法で、ABS どうし・PBT どうし・ABS と PBT の組合せの接合の強さを調べた。接合の強さは、二つの射出ユニットの圧力の差などの成形条件で変わり、ABS と PBT の組合せでは、圧力の差を与えると壊れ方がもろい壊れ方から延びる壊れ方に変わった[3]。研究は、異種材料の組合せでは単なる接合の強さだけでなく、壊れ方の違いも考える必要があるとしている[3]。この研究の成形方法は一般の二色成形とは違うので数値は持ち込めないが、「同じ材料の組合せでも、成形の条件で接合の強さと壊れ方が変わる」という点は発注にそのまま効く。
そこで、仕様には次を書く(規格の要求ではなく、発注側の進め方の提案である)。
1. 確かめる方法
引きはがす(はく離)のか、引っ張るのか、製品のどの部分で、何個、どの頻度で試験するか。製品そのものから試験片を取れないなら、同じ条件で成形した試験用の形状を決める。
2. 合否の判定
強さの下限に加えて、はがれた面の状態(界面ではがれたのか、材料そのものが切れたのか)を判定に入れるかを決める。研究が壊れ方の違いを重視しているのはこのためである[3]。
3. 変えてはいけないもの
二つの材料のグレード、着色剤、成形条件のうち接合に効くものを、承認なしに変えない。樹脂のグレードを変えるときの承認の手順は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認にまとめた。
防水やパッキンの役割を持たせるなら、界面の試験まで書く
柔らかい樹脂を硬い樹脂に一体にすると、組み立てていたパッキンや O リングを減らせる。成形メーカーの解説は、操作ボタンのキートップとエラストマーを一体にして、上下のケースのはめ合い部分にパッキンの機能を持たせることもできると書いている[1]。
ただし、先に成形した樹脂と後から成形した樹脂の界面は、水が入る経路にもなる。自動車用センサーの成形品について、自動車部品メーカーの技術者は、一次成形品と二次成形品の界面から水が入るため、従来は接着剤を塗るなどして隙間を埋める必要があったと書いている[5]。その報告では、一次成形品に突起を設けて溶けやすくし、二次成形の熱と圧力を局所的にかけて突起の先をくっつけることで、成形の工程だけで防水を確保している[5]。言い換えると、界面で防水するには、形状と成形の条件の工夫が要る。
防水が要る部品では、どこからどこまで水が入ってはいけないか、試験の方法と条件を仕様に書く。気密試験の方法と許容漏れ量の書き方は気密試験・リークテストを仕様に入れるときで扱った。
やってはいけない組合せ・使い方
次の使い方は避ける。
1. くっつくか確かめていない組合せで、接着だけに頼る
くっつきにくい組合せは、成形できても界面がはがれる。外れると危ない部品(握る部分の滑り止めが外れて工具が滑る、など)では、くっつきだけに頼らず、二次材が一次材に引っかかる形(穴やアンダーカットで抜けを止める形)を設計で入れる。
2. 同じ樹脂の色違いのつもりで、材料違いの見積を比べる
材料が違えば、成形条件も金型の設計も、試作で確かめることも増える。見積を比べる前に、材料と方式の前提をそろえる。
受け入れるときに確かめること
1. 界面のはがれと隙間
界面の端からはがれていないか、隙間がないかを外観の基準に入れる。決めた頻度で接合の試験を行い、記録を出してもらう。
2. 二次材のはみ出し(バリ)
二次材が一次材の表面に回り込んだバリは、意匠部品ではそのまま外観の不良になる。許せる範囲を限度見本などで決める。外観の基準の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるにある。
3. 色と柔らかい側の硬さ
色の合わせ方と、柔らかい側の硬さを、決めた測り方で確かめる。樹脂の流れが合わさる線(ウェルドライン)の見え方の基準は成形品のヒケ・ウェルドラインの受入基準で扱う。
よくある質問
二色成形とインサート成形は、どちらが安いですか
数量で変わる。二色成形機を使う方法は二組の射出ユニットと二組の金型が要るが[3]、一次成形品を保管して金型に入れる手間は減る。先に成形した部品を入れる方法は一般の成形機でできるが、入れる手間が増える。予定の総生産数量を伝えて、方式ごとの金型代と単価を出してもらって比べる。
硬い樹脂に柔らかい樹脂がくっつくかは、どう確かめればよいですか
まず材料メーカーの資料と成形先の経験で、その組合せがくっつく前提かを確かめる。成形メーカーの解説の表は目安になるが[2]、くっつくかどうかは同じ系統でもグレードと成形条件で変わる[3]。試作で、決めた方法で接合の試験をして確かめる。
量産の途中で、柔らかい側の材料を同等品に変えたいと言われました
接合の強さが変わりうるので、承認の対象にする。変更前と変更後で同じ方法の接合の試験を行い、強さとはがれた面の状態を比べてから判断する。
まとめ
「二色成形」には、色違いの同じ樹脂を一体にする意味と、違う樹脂を一体にする異材質成形の意味がある。発注書には二つの材料と方式(二色成形機を使うのか、先に成形した部品を別の金型に入れるのか)を書き、予定数量を伝えて方式ごとの金型代と単価を出してもらう。違う樹脂の組合せでは、くっつく組合せかを最初に確かめる。接合の強さは成形の条件でも変わるので、試験の方法・合否・はがれた面の判定まで決め、材料のグレードと接合に効く条件を承認なしに変えさせない。防水やパッキンの役割を持たせるなら、界面を含めた試験を決める。外れると危ない部品では、くっつきだけに頼らない形にする。
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同じ束では、インサート成形、樹脂の押出成形(異形押出)、樹脂の切削加工、樹脂金型の鋼材(NAK80・HPM)の発注も扱う。
出典・参考資料
- 小川典孝「異材質成形法における低硬度エラストマーの活用」成形加工 8 巻 8 号(プラスチック成形加工学会/1996 年)
- 小川典孝「異材質成形と携帯機器の筐体への展開と開発事例」成形加工 13 巻 3 号(プラスチック成形加工学会/2000 年)
- 泊清隆ほか「同時複合射出成形法における樹脂接合強度と界面形状制御」成形加工 5 巻 3 号(プラスチック成形加工学会/1993 年)
- 濵田泰以ほか「二色層状成形品への同時複合射出成形法の展開」成形加工 8 巻 3 号(プラスチック成形加工学会/1996 年 3 月)
- 尾上勉ほか「インサート成形に防水シール性を付与する加熱ピン抜き成形技術」成形加工 14 巻 8 号(プラスチック成形加工学会/2002 年)
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