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樹脂の押出成形(異形押出)の発注——断面の公差と測る位置、共押出と構造部材の注意

この記事のポイント(結論先出し)
樹脂の押出成形は、溶けた樹脂を口金(ダイ)に通して同じ断面の長い製品を連続してつくる加工で、フィルム・シート・棒・管を除いた断面の製品を JIS は「異形材」と呼んでいる[1]。異形押出の部品を発注するときは、断面図のどの寸法が機能に効くか、長さと切断、反りやねじれ、どの位置を測るかを決めて書く。樹脂によって作りやすさが違い、成形収縮の小さい樹脂ほど精度が出やすい[2]。口金から出た樹脂はふくらむ(バラス効果)ので断面は口金の形そのままにはならず[4]、厚さの片寄り(偏肉)は樹脂の流れからいって避けにくい[3]。発泡させる製品では季節で断面が変わることもある[6]。異形押出品は長手方向の剛性が十分でなく、そのままでは構造部材には使えない[2]。公差は JIS K 7109 の考え方で、機能と損失から決める[5]。
目次
押出成形と異形押出は、何を指すのか
JIS K 6900(プラスチック-用語)は、押出しを「加熱又は未加熱のプラスチックを賦形用絞り口金を通じて押し込んで一つの連続した形状の製品とする工程」と定義している[1]。同じ規格は異形材を、フィルム・シート・棒・チューブを除く、特有の一定の断面をもつ押出しプラスチック製品とし、注記で、四角や丸のような単純な断面ではなく、U 形・T 形・L 形のような断面のものだけを指すとしている[1]。
押出成形でつくるもののうち、板(シート)や管には、材料ごとに JIS の製品規格があることが多い。塩ビ板の指定は塩ビ板(硬質 PVC)JIS K 6745 の発注、押出板とキャスト板の違いはアクリル板(PMMA)の発注で扱った。これに対して、窓枠の部品や配線用のモール、機械のカバーの縁、シール材のような異形材は、製品ごとに断面が違う。製品規格に寸法が決まっていないので、断面の図面と公差は発注側が決めて書くことになる。この記事は異形材の発注に絞る。
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異形押出のしくみと、発注に効くところ
日本機械学会誌の解説(1992 年)は、異形押出の製法を次のように説明している[2]。押出機は投入された樹脂をヒーターで加熱し、スクリューで圧力をかけながら連続的に前方へ押し出す。押出機の先端に取り付けた金型を樹脂が高温・高圧で通過することで目的の形が連続して得られ、金型から出た柔らかい樹脂は形を整えながら冷やし固めたあと、希望の長さに自動で切断される[2]。
この流れから、発注で決めることが三つ出てくる。断面の形と寸法(金型と冷却の工程で決まる)、長さと切断(切断の工程で決まる)、長手方向の形(反り・曲がり・ねじれ。冷却と引取りで決まる)である。射出成形と違い、型に閉じ込めて形を決めるのではなく、出てきた樹脂を冷やしながら形を保つので、断面の寸法は成形の条件と材料の影響を強く受ける。
樹脂によって、作りやすさと精度が違う
同じ解説は、異形押出のしやすさを材料の面から整理している[2]。金型から出た樹脂の粘度が低いと樹脂が垂れ下がったり、面どうしがくっついたりして成形しにくいので、溶けたときの粘度が高いものほど成形しやすい。また、成形品の寸法が金型の寸法より小さくなる率(成形収縮率)が小さいほど精度がよく上がる、としている[2]。次の表は、その解説が挙げている樹脂をまとめたものである。
| 解説の区分 | 挙げられている樹脂 | 解説が挙げる理由 |
|---|---|---|
| 成形性の良好な樹脂 | ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ポリスチレンなど | 溶融粘度が高く、成形収縮率が小さいものほど成形しやすく精度が出る |
| 成形しにくい樹脂 | ナイロン 6・66、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなど | 特に結晶性樹脂は成形収縮率が大きいため成形しにくい |
この区分は 1992 年の解説の一般論で[2]、「成形しにくい」樹脂でも異形押出の製品はつくられている。発注で使えるのは、結晶性の樹脂で断面の精度が要る部品を頼むときは、試作で公差に入るかを確かめる段階を必ず置く、という判断である。材料のグレードの指定と、代替グレードを提案されたときの承認は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認にまとめた。
断面は、口金の形そのままにはならない
口金から押し出された樹脂は、口金の穴より太くなる。この現象をバラス効果(ダイスウェル)という。ポリオレフィンのバラス効果を調べた研究(1981 年)は、異形押出で押出物の円形の断面の部分で特にバラス効果が大きい場合があり、それを小さくするためにその部分の口金の流路の長さ(ランド長)をどう設計するかが問題になる、と書いている[4]。研究は、口金の中で樹脂が蓄える弾性のエネルギーの緩和時間が材料と温度だけで決まり、口金の中にとどまる時間がそれより長いとふくらみが最小に近づくことから、ダイの長さを設計する基準を示している[4]。
発注側にとっての意味は、断面の寸法は金型の加工だけでは決まらず、材料と温度と口金の設計で決まるということである。材料のグレードや押出の温度を変えると、同じ金型でも断面が変わりうる。だから、断面の寸法に効く条件を変えるときは連絡と承認の対象に入れる。
厚さの片寄りは、避けにくいものとして扱う
押出成形の自動制御について書いた 1996 年の解説は、パイプ・シート・フィルムなどの押出成形で起きる偏肉(厚さの部分的な片寄り)を、樹脂の流れの挙動からいって宿命的ともいえるもの、と書いている[3]。パイプでは押出した管の円周の多点で厚さを測り、その結果をもとに口金の中心を調整する方法が紹介されており、超音波の厚さ計の測定精度として ±0.01 mm(測定範囲 0.8〜35 mm の場合)が挙げられている[3]。
異形材でも、断面の場所によって厚さが片寄ることは起こりうる。肉厚に公差を付けるなら、断面のどの位置で測るのかを図面で決める。測る位置を決めないと、仕入先は測りやすい位置で測り、受入は別の位置で測って、合否が食い違う。
発泡させる製品は、季節で断面が変わることがある
自動車のドアのまわりに付くシール部品(ウェザーストリップ)について、ゴム部品メーカーの技術者による 2021 年の解説は、ドアの複雑な形に合わせた異形の断面で数百 μm 単位の高い寸法精度が求められること、成形は押出しながら加硫(ゴムを架橋させること)と発泡を同時に行う連続の工程になることを書いている[6]。ゴム材料の押出発泡は、同じ発泡剤・同じ生産条件で生産しても季節によって発泡性が変わり、ドアのウェザーストリップは異形で複雑な形をしているため、加硫の速さの季節の影響を受けて断面の形が変わる、とされている[6]。発泡の倍率は約 1.5〜2.5 倍で、熱可塑性エラストマーを発泡させる場合も、粘度(温度の管理)・発泡剤の分散・冷却の三つが安定の要素だとしている[6]。
この解説はゴムとエラストマーのシール部品の話だが、発泡させる異形材を買う側にとって、断面の寸法を一年を通して保てるかは、仕入先の工程の管理しだいだということは共通である。量産前の試作が一つの季節で合格しても、別の季節で外れることがある。発泡させる部品では、断面の寸法の測定の頻度と記録を、季節をまたいで出してもらう。
二つの材料を一緒に押し出すとき(共押出)
先の解説は、複数の押出機から色や材質の違う樹脂を一つの金型に押し出し、金型の中で熱でくっつけながら押し出す方法を共押出として紹介している[2]。本体を白にして赤のストライプを入れる、本体を硬い材料にして一部を柔らかい材料にする、といった使い方である。材料を選ぶときは同じ材質がいちばんやりやすく、違う材質の場合は、それぞれの樹脂の溶ける温度があまり変わらないことと、互いに熱でくっつく樹脂であることが必要条件になる、としている[2]。
硬い部分と柔らかい部分を一体にする考え方は、射出成形の二色成形を発注するときと共通である。違う材料を組み合わせるなら、くっつく組合せか、はがれをどう確かめるかを仕様に書く。
表面の加飾と、ほかの材料との複合
同じ解説は、押出しと同時に表面に模様をつける方法として、冷える前の樹脂に直接印刷する方法、印刷した模様を熱で転写する方法、印刷したシートを貼り合わせる方法、凹凸の模様を付けたロールで押し付ける方法、熱可塑性の接着剤を塗った厚さ 30〜100 μm 程度のアルミ・ステンレス・銅などの箔を樹脂の熱で貼り合わせる方法を挙げ、いずれも後加工としても行えるとしている[2]。電線に樹脂を被覆するのと同じ理屈で、線材を金型に通して樹脂と一体にする複合押出も紹介されている[2]。加飾や複合をするなら、外観の基準と、貼ったものがはがれないことを何で確かめるかを決める。
使ってはいけない所——構造部材にはそのまま使わない
先の解説は、異形押出品は同じ断面で長い製品をつくる技術で、欠点として長手方向の剛性が十分でないことを挙げ、構造部材としては使用できない、と書いている[2]。そのため、アルミの部材や木材で剛性を持たせ、その外側に樹脂を被覆する、といった技術が開発されている[2]。
発注側としては、樹脂の異形材に荷重を受け持たせる設計になっていないかを確かめる。樹脂の部材で長い部品を支える、樹脂の枠で重い物を吊る、といった使い方では、たわみや時間とともに進む変形(クリープ)が問題になりうる。剛性が要るなら、金属の芯を入れた複合の部材にするか、金属の押出形材を使う。アルミの押出形材の寸法許容差の指定はアルミ押出形材の寸法許容差(JIS H 4100)と金型の扱いで扱った。
公差の決め方——JIS B 0405 をそのまま当てはめない
金属部品の図面には「普通公差 JIS B 0405 中級」のような注記がよく書かれる。JIS B 0405 は、金属の除去加工または板金成形によって製作した部品の寸法に適用する規格で、備考で金属以外の材料に適用してもよいとしている[7]。ただ、適用の前提が除去加工と板金成形なので、押出しで断面を形づくる部品にそのまま当てはめると、加工の性質と公差が合わないことがある。押出しで決まる寸法には、個別に公差を書くほうが確実である。
個別の公差をどう決めるかについて、JIS K 7109(プラスチックの寸法許容差の決め方)は、表を引く規格ではなく、使用者の段階と組立者の段階で寸法が外れたときに生じる損失を見積もり、生産者側の損失(購入原価)と比べて許容差を計算する手順を定めている[5]。そのうえで、その許容差に対してどの程度の精度で加工が可能か、判定するのに十分な計測能力があるかを検討し、能力が不十分な場合には改善を行い、加工能力の改善が不可能で許容差が満たされない場合には全数検査をする、としている[5]。
異形材で実務に落とすと、次のようになる(規格の要求ではなく提案である)。
1. 機能に効く寸法を絞る
はめ合う溝の幅、相手部品に当たる面の位置など、外れると組立や機能に効く寸法だけに厳しい公差を付ける。それ以外は、仕入先の工程で安定して出せる範囲を見積の段階で回答してもらう。
2. 測る位置と状態を書く
断面のどの位置を、何本のうち何本、長さのどの位置で切って測るか。樹脂の寸法は温度と時間で動くので、測る温度と、成形後どれだけ置いてから測るかも書く。樹脂の寸法を測る状態の決め方は樹脂成形品の寸法公差の決め方で扱った。
3. 長さ・切断・長手方向の形を別に書く
定尺の長さと切断の公差、切り口の状態(バリ・斜め)、反り・曲がり・ねじれの許容と測り方(定盤に置いて隙間を測るなど)を、断面の寸法とは別の項目にする。
金型(口金)の扱い
異形押出の金型は製品ごとにつくる。射出成形の金型と同じく、所有・保管・費用の負担・他の仕入先に移すときの扱いを、発注のときに決めておく。金型の発注で書いておく項目の考え方は射出成形の金型を発注するとき決めることにまとめた。断面はバラス効果などで口金の形どおりにはならないので[4]、試作で断面を合わせ込むために口金を修正することがある。何回の試作で合わせ込むか、修正の費用をどちらが持つかも書いておく(発注側の進め方の提案である)。
受け入れるときに確かめること
1. 断面の寸法
決めた位置で切った断面を、決めた方法(投影機・画像測定など)で測った記録を出してもらう。初回は全寸法、量産では機能に効く寸法を決めた頻度で。
2. 長さと長手方向の形
長さ、切り口、反り・曲がり・ねじれを、決めた方法で確かめる。
3. 外観と貼ったもの
表面の傷・筋・色、加飾や箔のはがれを外観の基準で見る。外観の基準の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるにある。
よくある質問
押出成形品の図面に、普通公差 JIS B 0405 と書いてもよいですか
JIS B 0405 は金属の除去加工と板金成形の部品を前提にした規格で、金属以外にも適用してよいとされているが[7]、押出しで形づくる断面の寸法に当てると加工の性質と合わないことがある。押出しで決まる寸法には個別に公差を書き、機能に効かない寸法は仕入先の工程で安定して出せる範囲を確かめて決める。
同じ金型なのに、ロットによって断面の寸法が違います
口金から出た樹脂のふくらみは材料と温度に左右され[4]、厚さの片寄りも避けにくい[3]。材料のロットやグレード、押出の温度、冷却の条件に変更がなかったかを仕入先に確かめる。発泡させる製品なら、季節の影響も疑う[6]。
樹脂の異形材でフレームをつくりたいのですが
異形押出品は長手方向の剛性が十分でなく、そのままでは構造部材には使えないとされている[2]。荷重を受けるなら、金属の芯を入れた複合の部材か、金属の押出形材を検討する。
まとめ
異形押出は、口金を通して同じ断面の長い製品をつくる加工で、断面の寸法は金型だけでなく材料・温度・冷却で決まる。樹脂によって作りやすさが違い、結晶性の樹脂ほど成形収縮が大きく精度を出しにくい。口金から出た樹脂はふくらみ、厚さの片寄りは避けにくいので、断面のどの位置を測るかまで決める。発泡させる製品では季節で断面が変わりうる。共押出や加飾をするなら、くっつく組合せとはがれの確かめ方を書く。異形材は長手方向の剛性が十分でなく、そのまま構造部材にしない。公差は JIS B 0405 をそのまま当てず、JIS K 7109 の考え方で機能と損失から決め、長さ・切断・長手方向の形を別の項目にする。
同じ束では、インサート成形、二色成形、樹脂の切削加工、樹脂金型の鋼材(NAK80・HPM)の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS K 6900:1994 プラスチック-用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1994 年 1 月 1 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
- 田中誠「プラスチックの加工技術:異形押出成形について」日本機械学会誌 95 巻 886 号(日本機械学会/1992 年 9 月)
- 沢田慶司「押出成形における偏肉の自動制御」日本ゴム協会誌 69 巻 5 号(日本ゴム協会/1996 年)
- 林田建世ほか「ポリオレフィンのバラス効果」高分子論文集 38 巻 4 号(高分子学会/1981 年 4 月)
- JIS K 7109:1986 プラスチックの寸法許容差の決め方(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1986 年 3 月 1 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
- 黒沢雅和「ウェザーストリップと発泡技術」日本ゴム協会誌 94 巻 10 号(日本ゴム協会/2021 年)
- JIS B 0405:1991 普通公差-第 1 部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
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