- お役立ち記事
- 気密試験・リークテスト(JIS Z 2330・Z 2332)を仕様に入れるとき——方法の選び方と許容漏れ量の書き方
気密試験・リークテスト(JIS Z 2330・Z 2332)を仕様に入れるとき——方法の選び方と許容漏れ量の書き方

この記事のポイント(結論先出し)
「気密試験に合格のこと」と書いただけでは、どの方法で、どれだけの漏れまでを許すのかが決まらない。漏れ試験の方法の種類と選び方は JIS Z 2330 がまとめていて、液没(水没)・発泡・圧力変化・ヘリウムなど方法によって検出できる漏れの大きさは何桁も違う[1]。圧力変化による試験の JIS Z 2332 は、合否を試験体の仕様書の指定に従って判定するとしている[2]。つまり許容する漏れ量は発注する側が決めて書くものである。仕様書には、方法、試験圧力と気体、保持・検出の時間、判定の漏れ量(Pa・m3/s など単位つき)、全数か抜取りか、記録の項目を書く。量産の短い検査では温度の影響で誤差が出るので[6]、標準リークを使った確認の方法も取り決める[2]。
目次
「漏れのないこと」は、測り方を決めないと判定できない
水や油、気体を入れる容器、配管部品、密封した筐体、シールで封じたユニットなどを外注するとき、図面や仕様書に「気密試験を行い、漏れのないこと」と書くことが多い。ところが漏れは、測る方法の感度より小さければ「無い」と出る。泡で見る方法と、ヘリウムで測る方法とでは、見つけられる漏れの大きさがまったく違う。どの方法で何を「漏れなし」とするかを決めないと、仕入先が合格とした部品が、組み立てた後に漏れることがある。
この記事は、部品や製品の密閉性を発注で指定するときに、漏れ試験(気密試験・リークテスト)の方法をどう選び、許容する漏れの量をどう表し、受入で何を確かめるかを、JIS Z 2330 と関連の JIS に沿って整理する。非破壊試験全体の指定のしかたは非破壊検査を発注で指定するとき、防水の等級はIP 等級を買う部品に指定するとき、シール部品の指定はO リングとガスケットの発注で扱った。
📄 実務で使うなら — 原価のつかみ方(全 5 章・無料サンプルあり)
漏れと透過は別の現象
まず、何を防ぎたいのかを分けておく。産業技術総合研究所の吉田は、密封性を悪くする要因としてリーク(漏れ)と透過を挙げ、両者を区別している[5]。リークは、製造の過程で意図せずできたクラック、ピンホール、接着や締結の不良部から気体や液体が漏れたり入ったりする現象で、製作不良が原因だから検査して市場に出さないようにする。透過は、密封箇所を構成する隔壁に分子が溶けて拡散し、反対側から出てくる現象で、孔が開いていなくても起きる。有機材料や接着剤、O リングでは気体の透過量が無視できないことが多く、気体透過度は材料固有の値なので、減らすには材料か厚さを変えるしかない[5]。
購買にとっての意味は、漏れ試験は製作の不良を見つけるための検査で、材料を通り抜ける分(透過)を抑える手段ではない、ということである。樹脂の容器や O リングで封じた製品で長期の気密を求めるなら、透過は設計と材料で決め、漏れ試験は製作の不良を見る、と役割を分けて仕様に書く。
方法で検出できる漏れの大きさは何桁も違う
JIS Z 2330:2012 は、一般的に使われている漏れ試験の方法の種類と、それを採用する場合の選び方の指針を定めた規格で、具体的な選び方を強制するものではないとしている[1]。方法は、液体を用いる方法、空気などの気体を用いる方法、特定のサーチガス(ヘリウム、水素、ハロゲン、アンモニアなど)を用いる方法に大きく分かれる[1]。
選び方の指針として、液体を用いる試験は主に耐圧試験を兼ねた水圧試験時や液体の入った容器の検査に、空気などの気体を用いる試験は比較的量の多い漏れの検出に、微少な漏れはサーチガスなどを用いた試験を使うとしている[1]。また、漏れ量を測れる方法、位置は特定できるが量は測れない方法、その両方ができる方法があるので、目的に応じて選ぶとしている[1]。主な方法を表 1 の参考値で並べると次のようになる。
| 方法 | 可検リーク量(一般的な試験) | 漏れの位置 | 漏れ量の数値 |
|---|---|---|---|
| 液没法(水没試験・加圧) | 10-2 ml/s | 分かる | やや困難 |
| 発泡法(加圧) | 10-4 ml/s | 分かる | 困難 |
| 圧力変化法(加圧) | 10-3 Pa・m3/s | 困難(全体は分かる) | 可能 |
| 圧力変化法(差圧) | 10-5 Pa・m3/s | 全体は分かる | 可能 |
| ヘリウム 真空吹付け法 | 10-9 Pa・m3/s | 分かる | 可能 |
| ヘリウム 真空外覆法 | 10-10 Pa・m3/s | 困難(全体は分かる) | 可能 |
表は JIS Z 2330 の表 1(漏れ試験方法の種類、適用方法及び特徴)の参考値から抜き出したものである[1]。誤差要因を小さくした特殊な試験ではさらに 1〜2 桁小さな漏れまで検出できるとされる一方、規格は図 1 の値はあくまで目安で、実際の感度は検査剤や装置の製造業者に確かめる必要があるとしている[1]。液没法・発泡法は ml/s、圧力変化法・ヘリウムの方法は Pa・m3/s で示されており、単位が違うことにも注意する。
表から分かるのは、泡で見る方法と差圧で測る方法とヘリウムで測る方法では、見つけられる漏れが何桁も違うということである。表 1 は差圧法を、検出時間が短く感度がよいので量産部品などの自動検査に適しているとし、圧力変化法(加圧)や液没法を、微少漏れ試験の前段で用いることが多いとしている[1]。許容する漏れの量を先に決め、それを検出できる方法を選ぶ、という順で決める。
許容する漏れ量は、発注する側が決める
圧力変化による漏れ試験の JIS Z 2332:2012 は、結果の判定を「試験体の仕様書の指定に従って」合否の判定を行うとしている[2]。試験の圧力も「試験体に要求される仕様による」とし、指定がない加圧法の場合は、試験体の最大許容圧力の 25 % を超えない圧力まで加圧して試験するとしている[2]。圧力計は、仕様で定めた判定漏れ量と計画した検出時間から算出される圧力の変化に対して十分な分解能と精度をもつものを使う[2]。規格は方法の手順と記録を定めているが、何 Pa・m3/s までを合格とするかは決めていない。そこは仕様書で発注する側が書く。
発泡で見る JIS Z 2329:2019 も同じ考え方で、試験の圧力と保持時間が規定されていればそれにより、規定がない場合は、加圧法では試験体と大気圧との差圧が 1.5×104 Pa 以上になるまで加圧し、保持時間は加圧法で 10 分以上、真空法で 10 秒以上としている。合否は、特に規定がない限り、連続する発泡若しくは気泡の成長又は気体の噴出がなければ合格とする[3]。仕様書に何も書かなければ、この既定の条件で合格した部品が届く。それで足りるかを、製品の使い方から判断する。
判定の漏れ量は、単位と条件をセットで書く
判定の漏れ量を書くときは、数値に単位を付け、どの気体で、どの圧力の差で、何度で測った値かを添える。JIS Z 2332 は記録に、試験方法、試験体の内容積、試験圧力、検出時間、試験温度、大気圧、使ったガスの種類、計器の種類と器番を含めるとしている[2]。この記録の項目は、そのまま仕様書に書く条件の一覧として使える。条件が書いていない「10-5 Pa・m3/s 以下」は、仕入先によって違う条件で測られ、比べられなくなる。
量産の検査では、温度と時間で誤差が出る
圧力変化で漏れを見る方法は、量産部品の検査に使いやすい反面、温度の影響を受ける。JIS Z 2332 の加圧法は、試験体の一部に日光が当たるなど環境の影響を受ける場合、検出を 24 時間又はその整数倍の時間で行うことが望ましいとしている[2]。
しかし生産ラインでは、そんなに長く待てない。土屋らは、内容量約 150 L の容器を空気で加圧して圧力の変化で漏れを見る実験を行い、加圧したときの容器内の温度上昇が長く残ること、試験の圧力が高いほど漏れの判定が難しくなること、圧力を測る時間を長くするほど漏れの推定の誤差が小さくなることを報告している[6]。漏れのない容器で温度による見かけの漏れを測っておき、それを差し引いて真の漏れを推定する補正の方法も示している[6]。
吉田も、自動車部品、冷凍・空調機器、電子機器などでは製造ラインに漏れ試験の装置を組み込んで全品検査をすることも少なくなく、1 個あたりの検査時間を 10 秒以下で行う場合もあると書いている[5]。短い時間で判定するほど、温度や試験体の変形による誤差をどう抑えたかが合否を左右する。JIS Z 2332 は、試験体とマスタ容器を同時に試験して温度や気圧の変化の影響を減らすマスタ容器対比法や、差圧法、標準リーク対比法を組み合わせてよい方法として挙げ、標準リークは試験体の合否を判定する漏れ量に近いものを用いるとしている[2]。
発注する側が仕入先に求めるべきは、検査の時間と方法を決めた根拠である。具体的には、判定の漏れ量に近い標準リーク(校正された漏れ)を使って、その検査で実際に不合格になることを確かめた記録を出してもらう。計器は国家標準にトレーサブルな標準器で校正したものを使う、とも JIS Z 2332 は定めている[2]。
ヘリウムを使うときの注意
小さな漏れまで量を測りたいなら、ヘリウムを使う方法になる。JIS Z 2331(ヘリウム漏れ試験方法)は、リークディテクタの表示がヘリウムの濃度に依存するので、定量するときは漏れ箇所に十分なヘリウムを吹き付けるか真空外覆法と併用するのが望ましいとし、測定時のヘリウムのバックグラウンドは目的とする測定値の 1/10 以下で測ることが望ましいとしている[4]。大気中にもヘリウムは体積分率 5×10-6 含まれていて[1]、換気の悪い場所ではバックグラウンドが上がる。仕入先の設備と作業環境で、求める漏れ量を本当に測れるかを確かめる。
発注書と仕様書に書くこと
1. 何の漏れを見るか
中に入る流体(水・油・冷媒・ガス)と、外から入るのを防ぎたいもの。透過は材料で別に決める[5]。
2. 試験方法と規格
「JIS Z 2332 の圧力変化法(差圧)による」のように書く[1][2]。
3. 試験の条件
試験圧力(加圧か減圧か)、使う気体、試験温度、保持時間と検出時間[2][3]。
4. 判定の漏れ量
単位つきの数値と、それを測る条件。泡で見るなら合否の基準も[2][3]。
5. 検査の範囲
全数か抜取りか、どの工程で行うか(シール材の硬化後、塗装前など)。
6. 確認の方法
標準リークで検査が不合格を出せることの確認と、その頻度、計器の校正[2]。
7. 記録
品名、製品番号、方法、内容積、圧力、時間、温度、気体、計器、結果[2]。
8. 再試験の扱い
計器を替えたり補修したりしたら、試験を初めからやり直す[2][3]。
シール材や接着剤で封じる部品は、接着剤・シーラントの指定とあわせて決めると矛盾が出にくい。銘柄と性能のどちらで指定するかは接着剤・シーラントの仕様指定で書いた。同じ束では、梱包材のフレコンバッグの発注、帯電防止袋と静電シールド袋の違い、乾燥剤シリカゲルの指定、緩衝材のポリエチレンフォームの指定もあわせて書いた。
よくある質問
Q. IPX7 などの防水試験に合格しているなら、漏れ試験は要らないのではないか。
A. 吉田は、IP コードによる防水試験は直感的に分かりやすいが試験に時間がかかり、量産品の全品検査には使いにくく、結果を数値で管理できないという課題があると書いている[5]。IP の試験は設計の確認、漏れ試験は量産の製作不良の検出、と分けて考え、量産では工程で測れる漏れ試験の条件を決める。
Q. 「水没させて泡が出ないこと」で十分か。
A. 液没法の可検リーク量は一般的な試験で 10-2 ml/s 程度で[1]、それより小さな漏れは見逃す。冷媒やガスを封じる製品なら、許容する漏れ量から方法を選び直す。
Q. 仕入先が試験時間を短くしたいと言ってきた。
A. 時間を短くすると温度の影響で誤差が大きくなりうる[6]。短くするなら、差圧法やマスタ容器対比法などで誤差を抑えたうえで、判定の漏れ量に近い標準リークで不合格を出せることを確かめた記録を出してもらう[2]。
Q. 漏れ試験の圧力は使用圧力より高くすべきか。
A. JIS Z 2330 は試験の条件を実際の使用条件で行うことが望ましいとし[1]、JIS Z 2332 は指定がない加圧法では最大許容圧力の 25 % を超えない圧力とし、必要以上の高い圧力を加えてはならないとしている[2]。耐圧の確認と漏れの確認は分けて条件を書く。
まとめ
漏れ試験は、方法によって見つけられる漏れの大きさが何桁も違う。JIS Z 2330 で方法の特徴を確かめ、許容する漏れの量を先に決めてから、それを検出できる方法を選ぶ。JIS Z 2332 も JIS Z 2329 も、合否や条件は仕様の指定によるとしているので、判定の漏れ量は単位と条件をつけて発注する側が書く。量産の短い検査は温度で誤差が出るので、標準リークで不合格を出せることを確かめた記録を求める。漏れと透過は別の現象なので、透過は材料と設計で決める。
出典・参考資料
- JIS Z 2330:2012 非破壊試験-漏れ試験方法の種類及びその選択(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2012 年 1 月 20 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS Z 2332:2012 圧力変化による漏れ試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2012 年 9 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS Z 2329:2019 非破壊試験-発泡漏れ試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2019 年 9 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS Z 2331:2006 ヘリウム漏れ試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2006 年 3 月 25 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
- 吉田肇「密封検査・リーク(漏れ)試験の最新動向」表面と真空 Vol.67, No.12(日本表面真空学会/2024 年)
- 土屋順裕・ウーレイレイ・尹鍾晧・香川利春「圧力変化法による容器の漏れ検査について(基礎的特性の研究)」日本フルードパワーシステム学会論文集 第 45 巻 第 5 号(日本フルードパワーシステム学会/2014 年)
密閉が要る部品・製品の生産先を、検査の体制まで含めて探すとき
newji の OEM/ODM 生産は、品質要求・数量・納期・コストをもとに国内外のパートナー企業から生産先を選び、試作で寸法・外観・機能を検証してから量産に進む製造委託のサービスです。量産開始後は工程内検査・出荷前検査の体制をつくり、海外工場の場合も品質管理の仕組みを設計・運用します。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
AI 一次診断(無料・お名前の入力なし)
この症状の原因を、AIが分析します
材料・加工方法・条件と、起きている症状を書いてください。考えられる原因、まず確かめること、切り分け方、専門の会社に聞くことを AI が整理します。
社外秘・機密情報・個人情報・図番など、公開できない情報は書かないでください。
解決しませんでしたか? 入力した内容をそのまま newji に送って、無料で相談できます。専門の会社を探してつなぎ、まとめて進めます。
この内容で相談する →原因をさらに詳しく分析する(有料版・準備中)
AI が複数の質問をしながら原因の候補を絞り込み、原因を確かめる試験・測定の方法、対策案、報告書までまとめます。
※ 現在準備中です。メールアドレスは公開のお知らせにだけ使います。
AI の回答は可能性の整理で、原因を断定するものではありません。入力内容は AI 診断と改善のため 30 日間保存し、その後削除します(プライバシーポリシー)。
📄 取引先から受け取った仕様書の要求を、1 件ずつ一覧にします — 仕様書の要求事項一覧(無料・社数限定)
見積・発注クラウド Newji one
受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。