帯電防止袋と静電シールド袋の違い——IEC 61340-5-3 の版と表面抵抗(JIS C 2170)の指定 | newji
品質・加工の困りごとの相談

その不具合、
どこに頼むかから一緒に。

課題の整理と進行は newji、測定・解析・試作は専門の会社。見積のご提示までは無料です。

相談できることを見る技術課題の解決のページへ

投稿日:2026年10月16日

帯電防止袋と静電シールド袋の違い——IEC 61340-5-3 の版と表面抵抗(JIS C 2170)の指定

この記事のポイント(結論先出し)

電子部品の梱包でいう「帯電防止袋」は、袋そのものが帯電しにくく、たまった電荷を逃がす袋である。「静電シールド袋」は、袋の外で起きた放電のエネルギーが中の部品に届かないようにする袋で、役割が違う。静電気対策の国際規格 IEC 61340-5-1 は、静電気対策区域(EPA)の中なら静電気拡散性の材料で足りることがあるが、EPA の外では放電シールド性のある材料を推奨している[1]。包装の要求は IEC 61340-5-3 に分けられ、2022 年の第 3 版で放電シールドの要求が 50 nJ から 20 nJ に厳しくなった[2]。発注では「帯電防止袋」と書くだけにせず、どの性質を求めるか、どの版で、どの湿度で測った値かを書く。表面抵抗の値は湿度と測り方で桁が変わるので、JIS C 2170 の方法と条件をそろえて比べる[3]。

「帯電防止袋で出荷すること」だけでは、守りたいものが決まらない

🛠 この記事のような品質・検査・規格の課題は、ご相談ください。規格の調べ物、仕入先への品質要求づくり、検査・試験先の手配まで一緒に進めます(相談は無料)。相談の例を見る →
相談する →

基板や IC、センサーなど静電気に弱い部品を仕入先から納めてもらうとき、発注書に「帯電防止袋で梱包」とだけ書くことが多い。ところが袋の役割は一つではない。袋が帯電しないことを求めているのか、袋の外から来る放電を遮りたいのか、作業台の上で開け閉めする前提なのか、倉庫や輸送を通って長く運ばれるのかで、選ぶべき袋が変わる。

この記事は工業用途の電子部品の梱包で、帯電防止袋と静電シールド袋をどう区別し、仕入先に何を指定し、受入で何を確かめるかを整理する。衣類の静電気対策の話ではない。実装済み基板の品質の決め方は基板実装の品質の指定、電子部品を買う先の選び方は電子部品の模倣品を避ける調達で扱った。同じ梱包材の束では乾燥剤シリカゲルの指定、ポリエチレンフォームの緩衝材、粉体を運ぶフレコンバッグの発注も書いている。製品の筐体や容器そのものの密閉を確かめる方法は気密試験・リークテストを仕様に入れるときで扱った。

📄 実務で使うなら — 原価のつかみ方(全 5 章・無料サンプルあり)

袋の役割は 2 つ——帯電させないことと、放電を遮ること

静電気放電(ESD)から電子部品を守る管理の国際規格 IEC 61340-5-1:2016 は、まず静電気対策区域(EPA)という考え方を置く。EPA は、静電気の放電や電界によって損傷する危険を受け入れられる水準で、静電気に弱い部品を扱える区域である[1]。そのうえで、EPA の外に出ると、接地や除電といった管理を通常は続けられないので、静電気対策の包装が必要になることがあると書く。静電気に弱い製品は静電気対策の材料で包むことで守れるが、材料の種類は状況と行き先で決まり、EPA の中では静電気拡散性の材料で十分なことがある一方、EPA の外では放電シールド性の材料が推奨される、としている[1]。

同じ規格は、包装の詳しい要求を IEC 61340-5-3 に移したことも明記している(第 2 版で表 4 を削除し、包装の詳細な要求を IEC 61340-5-3 に委ねた)[1]。発注する側の言葉に直すと、次のように分けて考えるとよい。

袋の呼び方 主な役割 向いている場面 発注で確かめること
帯電防止袋(静電気拡散性・低帯電性) 袋自体が帯電しにくく、たまった電荷を逃がす EPA の中での工程間の受け渡し 表面抵抗の値と、測った湿度・方法
静電シールド袋(放電シールド性) 袋の外の放電のエネルギーを中に通しにくくする EPA の外に出る輸送・保管 放電シールドの試験値と、準拠した版(2022 年版は 20 nJ)
普通のポリ袋 静電気への対策はない 静電気に弱くない部品 ESD に弱い部品には使わないことを書く

表は IEC 61340-5-1 の説明[1]と IEC 61340-5-3:2022 の改正点[2]をもとに、発注の判断に使う形へまとめたものである。袋の細かな分類と性能の限界値は IEC 61340-5-3 の本文で定められているので、指定に使うときは本文を手元に置いて確かめる。

IEC 61340-5-3 の版を書く——2022 年版で何が変わったか

包装の規格 IEC 61340-5-3 は、静電気に弱い部品を製造、手直し、保守、輸送、保管のあいだ守るために必要な包装の性質を定め、包装と材料を評価する試験方法を引用し、性能の限界値を示す規格である。電磁妨害や電磁パルス、電気で起爆する爆発物からの保護は対象外としている[2]。

2022 年 4 月 27 日に第 3 版が出て、前の版から次のような点が変わった[2]。

1. 放電シールドの要求が 50 nJ から 20 nJ に
袋の外で放電させたとき中に届くエネルギーの上限が厳しくなった。

2. 「静電界シールド」という材料の性質を削除
電界のシールドについては附属書 C に手引として移った。

3. 低帯電性の材料の性質を附属書 D に追加
袋の材料が帯電しにくいことを表す性質が加わった。

4. 表示の書き方を「しなければならない」から「推奨する」に変更
袋の表示が必須でなくなった箇所がある。

発注での意味は 2 つある。一つは、仕入先の仕様書に「放電シールド 50 nJ 以下」とあれば、古い版の要求で評価された袋かもしれないこと。どの版のどの試験で何 nJ だったかを書いてもらう。もう一つは、2022 年版では表示が推奨にとどまる箇所があるので、袋の印刷だけで性能を判断しにくいこと。受入では袋の印刷ではなく、仕入先の仕様書と試験成績の番号で確かめる形にしておく。

なお、IEC 61340-5-1 や IEC 61340-5-3 に対応する JIS は、2026 年 10 月 16 日時点の JIS 検索では見当たらなかった。国内の取引でも、包装の性能は IEC の番号で指定することになる。

湿度で帯電の大きさは桁で変わる

袋の性能を考えるときに外せないのが湿度である。電子情報技術産業協会(JEITA)の「半導体デバイスの取り扱いガイド」(EIAJ EDR-4701B)を紹介した日本信頼性学会誌の記事は、代表的な帯電電圧の例を表にしている。たとえば作業台から取り上げたポリ袋は、相対湿度 10〜20 % の乾いた環境で 20,000 V、湿度の高い環境で 1,200 V という値である[4]。同じ記事は、相対湿度が高いほど帯電電圧が低くなるのは、湿度が高いほど物質の表面の電導率が高くなるためと説明し、プラスチック類や化学繊維は帯電しやすいとしている[4]。

項目 数値 出典
作業台から取り上げたポリ袋の帯電電圧 相対湿度 10〜20 % で 20,000 V/湿度の高い環境で 1,200 V [4]
IEC 61340-5-3 の放電シールドの要求 前の版 50 nJ → 2022 年版 20 nJ [2]
JIS C 2170 が対象とする抵抗の範囲 104〜1012 Ω [3]
JIS C 2170 で見込む測定のばらつき 繰返し性は約半桁、同じ条件でも 1 桁の範囲の値が出ることがある [3]
帯電防止処理をしたカバーテープの表面抵抗 108〜1010 Ω/□ の処理品 3 種のうち A・B の 2 種では、処理なし(1015 Ω/□ 以上)より部品の付着などが減らなかった [5]

この記事で使う数字を上の表にまとめた。帯電電圧は日本信頼性学会誌の記事に再掲された表 1 の値である[4]。購買の判断に効くのは、冬の乾いた時期に国内の倉庫や海外の工場から運ばれてくる部品は、夏に評価したときより厳しい条件にさらされる、という点である。袋を選ぶ評価と受入の確認は、低い湿度の条件を前提に組み立てる。

表面抵抗は JIS C 2170 の方法と条件をそろえて比べる

帯電防止袋の性能は、表面抵抗や表面抵抗率で示されることが多い。静電気の蓄積を防ぐ平面材料の抵抗の測り方は JIS C 2170:2004 が定めていて、IEC 61340-2-3:2000 と一致した規格である。対象は 104〜1012 Ω の範囲の材料である[3]。

この規格は、材料の静電気的な特性は相対湿度や温度などの影響を受けるので、測定は管理された条件で行うとし、試験の条件は使用中に予想される最も厳しい条件(たとえば最低の湿度)を基本に、製品の仕様書と使い方に従って決めるとしている[3]。また、同じ試料でも測定の再現性は ±10 % にはならず、明らかに同じ条件でも 1 桁の範囲の値が出ることがあるとし、繰返し性は約半桁を見込むとしている[3]。報告には、材料の識別、試料の処理条件、試験条件、計測器、試験電圧と帯電化時間、測定回数と個別の値などを含めなければならない[3]。

購買にとっての意味ははっきりしている。仕入先 A の「109 Ω」と仕入先 B の「1010 Ω」は、測った湿度と方法が違えば比べられない。比べたいときは、JIS C 2170 の方法で、同じ湿度の条件で測った値を出してもらう。仕様書にも「表面抵抗は JIS C 2170 による。前処理と測定は相対湿度○ % で行う」と条件まで書く。

表面抵抗が低ければ十分、ではない

抵抗の値だけで袋の良し悪しが決まらない例もある。電子部品を収めるエンボステープとカバーテープについて調べた研究では、界面活性剤の塗布などで帯電防止処理をして表面抵抗を 108〜1010 Ω/□ にしたカバーテープ 3 種のうち A・B の 2 種では、小さな LED がテープに付着したり、ポケットの中で動いたり転倒したりする不具合が高い頻度で起き、表面抵抗が 1015 Ω/□ 以上の処理なしのテープに比べて優位性は確認できなかったと報告している[5]。研究は、LED の帯電にはテープの帯電防止処理の有無より、LED と接する熱接着層の樹脂組成が影響していると考えた[5]。一方で、処理なしのテープでは LED の帯電が小さいのに不具合が起きたことから、付着を抑えるには部品の帯電を抑えるだけでは足りず、テープの帯電防止処理も同時に要るとしている[5]。

袋の場合も、袋が電荷を逃がすことと、中の部品が袋との摩擦で帯電しないことは別の性質である。IEC 61340-5-3 の 2022 年版が低帯電性の材料の性質を附属書に加えたのも[2]、この区別に関わる。部品が小さく軽い、あるいは袋の中で動きやすい梱包なら、仕入先に袋の材料が部品との間でどう帯電するかを確かめた結果があるかを聞く。

発注書と仕様書に書くこと

1. 袋に求める性質
帯電防止(静電気拡散性・低帯電性)か、放電シールドか。EPA の外を通るなら放電シールドを基本にする[1]。

2. 準拠する規格と版
「IEC 61340-5-3:2022 による」のように版まで書く。放電シールドの試験値も版とセットで出してもらう[2]。

3. 表面抵抗の値と測り方
JIS C 2170 による測定で、前処理と測定の湿度を指定する[3]。

4. 袋の閉じ方
封をした状態で使う前提か、作業台で開け閉めする前提か。シールド袋は部品を包んで使う材料なので、口の閉じ方(ヒートシール、ジッパー、テープ)を梱包仕様に書く。

5. 内側の緩衝材や仕切り
袋の中に入れる緩衝材やトレーも静電気対策品にするかを決めて書く。袋だけ指定して中身を仕入先任せにしない。

6. 受入の確かめ方
袋の種類が発注どおりか、破れや穴がないか、口が閉じているか。印刷が推奨にとどまるので、仕様書の番号と照らす[2]。

実装済み基板の発注では、JIS C 61191-1 が調達文書に書くことが望ましい事項に静電気対策の包装を挙げている。詳しくは基板実装の品質の指定を参照してほしい。輸出で湿気も気になる場合は、防湿の袋と乾燥剤を組み合わせることになるので、出荷時の防錆の指定もあわせて読むとよい。

よくある質問

Q. ピンク色の袋なら帯電防止袋と考えてよいか。
A. 色は性能の証明にならない。表示の書き方も 2022 年版で推奨にとどまる箇所があるので[2]、仕入先の仕様書で、どの性質をどの規格・版で満たすかを確かめる。

Q. 社内の工程間で使う袋と、出荷に使う袋を分けるべきか。
A. IEC 61340-5-1 は、EPA の中では静電気拡散性の材料で十分なことがあり、EPA の外では放電シールド性の材料を推奨するとしている[1]。出荷して EPA の外を通るなら、工程間の袋とは分けて指定するのが筋である。

Q. 仕入先によって表面抵抗の値が 1 桁違う。どちらが良いか。
A. 測った条件がそろっていなければ比べられない。JIS C 2170 は同じ条件でも 1 桁の範囲の値が出ることがあるとしている[3]。同じ方法・同じ湿度で測った値を出してもらい、必要なら自社でも同じ条件で測る。

Q. 湿度が高い時期は袋を簡易なものにしてよいか。
A. 湿度が下がると帯電は桁で大きくなる[4]。季節で袋を変えると、乾燥した時期の出荷で事故が起きる。袋の指定は低い湿度を前提に決め、通年で同じにする。

まとめ

電子部品の梱包袋には、袋が帯電しないようにする役割と、外の放電を遮る役割がある。IEC 61340-5-1 は EPA の外では放電シールド性の材料を推奨し、包装の要求は IEC 61340-5-3 に委ねている。その 2022 年版で放電シールドの要求は 50 nJ から 20 nJ に厳しくなった。発注では求める性質と規格の版を書き、表面抵抗は JIS C 2170 の方法と湿度の条件をそろえて比べる。抵抗が低いことと、部品が袋との摩擦で帯電しないことは別なので、小さく軽い部品では材料の帯電のしにくさも確かめる。

出典・参考資料

  1. IEC 61340-5-1:2016 Electrostatics – Part 5-1: Protection of electronic devices from electrostatic phenomena – General requirements(無料プレビュー)(International Electrotechnical Commission/2016 年 5 月)
  2. IEC 61340-5-3:2022 Electrostatics – Part 5-3: Protection of electronic devices from electrostatic phenomena – Properties and requirements classification for packaging intended for electrostatic discharge sensitive devices(International Electrotechnical Commission/2022 年 4 月 27 日)
  3. JIS C 2170:2004 静電気電荷蓄積を防止する固体平面材料の抵抗及び抵抗率試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2004 年 3 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
  4. 電子情報技術産業協会 半導体信頼性サブコミティ「JEITA Standard EIAJ EDR-4701B『半導体デバイスの取り扱いガイド』」日本信頼性学会誌 信頼性 Vol.24, No.1(日本信頼性学会/2002 年)
  5. 藤村徹夫ほか「エンボステープパッケージングにおける電子デバイスの帯電問題」エレクトロニクス実装学会誌 Vol.6, No.4(エレクトロニクス実装学会/2003 年)

電子機器・基板の生産先を、検査と梱包まで含めて探すとき

newji の OEM/ODM 生産は、国内外のパートナー企業と連携し、品質要求・数量・納期・コストに合う生産先を選んで、試作で検証してから量産に進む製造委託のサービスです。電子機器では PCB・PCBA の調達や、電子部品の組込み・検査・梱包までご相談いただけます。

OEM/ODM 生産について見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

AI 一次診断(無料・お名前の入力なし)

この症状の原因を、AIが分析します

材料・加工方法・条件と、起きている症状を書いてください。考えられる原因、まず確かめること、切り分け方、専門の会社に聞くことを AI が整理します。

1 日 3 回まで0 / 1,500 字

社外秘・機密情報・個人情報・図番など、公開できない情報は書かないでください。

AI の回答は可能性の整理で、原因を断定するものではありません。入力内容は AI 診断と改善のため 30 日間保存し、その後削除します(プライバシーポリシー)。

AI を使わずに直接相談する →

📄 取引先から受け取った仕様書の要求を、1 件ずつ一覧にします — 仕様書の要求事項一覧(無料・社数限定)

𝕏NEWJI総研は、調達・品質・設計の知識を X でも発信しています — @newji_souken をフォロー

NEWJI総研

購買・調達や設計・品質の実務を、
研修テキストと実務書式にまとめています。
無料サンプルで中身を確かめられます。

NEWJI総研の資料を見る

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

AI/DX支援

見積・発注、紙・FAX、品質記録など、
人に頼って回っている業務を、AIと仕組みで回る形に。
まずは無料でご相談ください。

AI/DX支援を見る

見積・発注クラウド Newji one

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page