在庫計画と生産計画の違い | newji

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投稿日:2024年10月3日 | 更新日:2026年9月11日

在庫計画と生産計画の違い

この記事のポイント(結論先出し)

在庫計画と生産計画のどちらが先に立つかは、会社の方針ではなく生産形態で決まる。作ってから売る形なら在庫計画が先に立ち、生産計画はその水準を維持するために組まれる。受注してから作る形なら生産計画が受注から直接引かれ、在庫計画が要るのは長納期の資材だけになる。そのうえで、在庫計画の道具のうち経済的発注量・安全在庫・発注点が効くのは、需要が他の品目と無関係に決まる品目に限られる(ABC 分析は金額による手のかけ方の配分なので、品目を選ばない)。構成部品や原材料のように親品目の需要から計算できるものは、1965 年に独立需要品目と従属需要品目が分けられて以来、「予測する必要はないし、予測すべきではない」と整理されてきた。ここを分けずに全品目へ発注点を当てると、在庫は増えるのに品切れも減らない。さらに、計画の誤差を仕入先の在庫として吸収させる方式(一定水準を保たせて使った分だけ払う、倉庫に置かせておく、内示だけ流す)は、取適法上そのままでは通らない。

在庫計画と生産計画とは何か

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在庫計画と生産計画は、製造業において非常に重要であり、互いに密接に関連していますが、異なる目的と手法を持つ独立したプロセスです。
在庫計画は主に、製品や原材料の在庫を最適化し、過剰在庫や欠品を防止することを目指します。
一方、生産計画は、顧客からの需要に応じて効率的に製品を生産するためのプロセスを計画・管理することです。

言い方を変えると、二つは決めているものが違う。在庫計画が決めるのは持ち高——どの品目を、どこに、どれだけ置いておくか、そしていつ補充をかけるかである。生産計画が決めるのは工程の使い方——いつ、何を、どれだけ、どの設備と人で作るかである。前者は倉庫の中身の話で、後者は生産能力の割り当ての話になる。

この違いは、計画が外れたときにどこに現れるかを見ると分かりやすい。

在庫計画 生産計画
決めるもの 品目ごとの持ち高と、補充をかける時点 いつ・何を・どれだけ作るかと、能力の割り当て
数える単位 品目(在庫として置くもの) 製品と工程(作るもの・使う設備と人)
外れると出る場所 在庫金額が膨らむ、または欠品する 納期が遅れる、または設備と人が空く
主に見る相手 仕入先(調達のリードタイムと最小発注数) 自社の工程(段取りと能力)と受注
動かせる範囲 発注のタイミングと数量 作る順番と量、残業や外注

同じ会社の中で両方を持っていても、片方だけを直しても効かないのはこのためである。在庫が多いからといって発注量を絞ると、生産計画の側が必要なときに材料を引けなくなる。逆に生産計画を細かくしても、材料が届く時期が読めなければ計画どおりには回らない。二つは別々のものだが、片方の前提がもう片方の出力になっている

なお「生産計画」という言葉は、期間の長さによって指すものが変わる。年や四半期の単位で数量の枠を決めるものから、日単位で機械への割り付けを決めるものまであり、システムの側から見た整理は生産管理システムとは——生産計画と生産統制の 2 つを回すもので扱っている。この記事では、在庫計画と並べて比べられる粒度で見ていく。

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どちらが先に立つかは、生産形態で決まる

「独立したプロセスでありながら互いに影響し合う」という説明は正しいが、実務で最初に突き当たるのは「どちらを先に決めるのか」という問いである。ここに一般解はなく、答えは生産形態で入れ替わる。

作ってから売る形(見込生産)では、売れる量は予測でしか分からない。だから先に決まるのは「何をどれだけ持つか」という在庫計画で、生産計画はその水準を維持するために組まれる。計画が外れたときに残るのは完成品の在庫である。

受注してから作る形(受注生産)では、順序が逆になる。生産計画は受注から直接引かれ、完成品の在庫計画は原則として要らない。在庫計画が必要になるのは、調達リードタイムが「受注から納期までの猶予」より長い資材だけである。この場合、計画が外れると残るのは資材と仕掛品になる。

中間の形もある。共通部品まで作り置きし、受注が入ってから組み立てる形では、見込と受注の境目が工程の途中に置かれる。境目より上流が在庫計画の領域、下流が生産計画の領域になり、実務上いちばん重い判断は「境目をどこに置くか」になる。

生産形態 先に決まる計画 在庫計画が答える問い 外れたときに残るもの
作ってから売る(見込生産) 在庫計画 完成品を何をどれだけ持つか 完成品の在庫
受注してから作る(受注生産) 生産計画(受注が起点) どの資材を先行手配するか 資材と仕掛品
共通部品まで作り置きして受注後に組む 境目より上流は在庫計画・下流は生産計画 見込と受注の境目をどこに置くか 半製品・共通部品

調達現場で押さえるポイント

生産形態は会社単位ではなく品目単位で決まる。同じ工場で、量産の定番品と一品ものの特注品が並んで流れていることは珍しくない。「うちは受注生産だから在庫計画は要らない」と会社単位で言い切ると、実際には作り置きしている共通部品が計画の外に落ちる。

計画をどんな仕組みに載せるか、生産形態の違いをシステム側からどう扱うかは生産管理システムとは——生産計画と生産統制の 2 つを回すものにまとめてある。ここでは計画そのものの側から見ていく。

在庫計画の目的とその重要性

在庫計画は、顧客への供給を滞りなく行いながら、在庫コストを最小化することを目的としています。
適切な在庫計画により、無駄な在庫の増加を防ぎつつ、予期せぬ需要の変動にも柔軟に対応できます。
不良在庫が増加すると、倉庫スペースや資金の無駄遣いとなり、企業の財務状況に悪影響を及ぼします。
また、在庫が不足すると販売の機会を逃し、顧客満足度を下げるリスクがあります。

在庫計画では、ABC分析、経済的発注量(EOQ)、および安全在庫計算などの手法が使用されます。
これらの手法を駆使し、いつ、どれくらいの数量を注文すべきかを決定します。

在庫計画の手法

具体的な在庫計画手法の一つがABC分析です。
これは在庫アイテムを重要度や価値に基づいてA, B, Cの3つのカテゴリーに分け、重点的に管理する手法です。
経済的発注量(EOQ)は、在庫コスト(注文費+保管費)を最小化するための最適発注数量を求める手法で、これにより無駄な過剰在庫を防ぎます。
安全在庫は不確実な需要に対応するための追加在庫で、これにより短期的な需要変動にも対応可能です。

その手法が効く品目と、効かない品目

ここまでの 3 つの手法には、書かれていない前提がある。ABC 分析は「金額の大きいものに手をかける」という配分の話なのでどの品目にも当たるが、経済的発注量と安全在庫と発注点は、その品目の需要が統計的に扱えることを前提にしている。この前提が成り立たない品目に当てると、狙いと逆の結果になる。

この区別は 1965 年に整理されている。日本経営工学会誌の解説によれば、Joseph Orlicky は「生産管理面から、製造品目は、独立需要品目と従属需要品目に分けることができ、この二つのタイプの品目は明確に区分して管理すべきである」と述べた[3]。同解説は両者を次のように説明している。独立需要品目とは、その品目に対する需要がそれより高次のレベルの品目の需要と無関係な場合、すなわちその品目の需要が他の品目の需要の関数でないときをいい、その需要は予測によって求めることができ、統計的在庫管理の対象品目になりうる。一方、従属需要品目とは、その品目の需要が他の品目の需要に関係がある場合、あるいはそれから導き出される場合をいい、予測する必要はないし、予測すべきではない。親品目の需要から直接計算によって求めることができ、統計的在庫管理の対象にすべきではないとされる[3]

区別せずに全品目へ発注点方式を当てると何が起きるかも、同じ解説に書かれている。組立をともなう生産では、構成部品の需要は親部品の需要に依存するため需要の独立性は保証されない。発注点を切ったからといって、親品目の需要もないのにすぐ補充しておく必要もない。しかも発注点方式では、製造オーダーの納期がその品目の在庫水準から独立に決まってしまい、製品と部品の構成関係と直接の関連がなくなる。その結果は「在庫増の割りには品切れが多く」なることであり、現場は品切れ情報を追いかける非公式な運用に寄っていく[3]

見る点 独立需要品目 従属需要品目
需要の決まり方 他の品目の需要と無関係 親品目の需要から導き出される
予測 予測によって求めることができる 予測する必要はなく、すべきでもない
発注点・安全在庫(統計的在庫管理) 対象品目になりうる 対象にすべきではない
数量の出どころ 需要予測や受注にもとづく基準生産計画 基準生産計画からの展開(計算)
当てはまりやすいもの 最終製品、主要組立部品(モジュール)、サービス部品 構成部品、原材料

ここまで来ると、次章で出てくる基準生産計画(MPS)と資材所要計画(MRP)が、在庫計画の手法と別系統の道具ではないことが見えてくる。同解説によれば、独立需要品目の「何をいつどれだけ」は需要予測や受注にもとづく基準生産計画で決められ、従属需要品目の必要時期と必要量は、独立需要品目の必要時期と必要量から計算によって算出される[3]在庫計画の手法と生産計画の手法は、対立する二者ではなく、品目の性質で使い分けるものである。「在庫計画と生産計画の違い」という問いの実質は、ここにある。

なお、発注点や安全在庫を当ててよい品目かどうか(独立需要か従属需要か)の見分けはこの記事で、当てると決めた品目をどう持つかと計算のしかたは別の記事で扱っている。品目ごとの持ち方(受注生産の材料は安全在庫を持たない、共通部品は統計の式が使える、長納期材は日数で持つ)と、発注点・安全在庫の具体的な計算は適正在庫の決め方——発注点と安全在庫を製造業の実績から出すで扱っている。この記事では計算式に立ち入らない。

生産計画の目的とその重要性

生産計画は、企業の生産能力を最大限に活用して、顧客需要に対してタイムリーに製品を供給することを目的としています。
需要予測に基づいて生産ラインを効率よく運用することで、市場競争力を高め、コストを削減します。
生産計画が不適切だと、資源の無駄、製品の欠品、納期遅延など多くの問題が発生します。

生産計画では、マスタープラン(MPS)、資材所要計画(MRP)、およびキャパシティプランニングなどの手法が使用されます。
これらを用いて、製造プロセス全体の流れを正確に調整し、効率的な生産を確保します。

生産計画の手法

マスタープラン(日程計画)は、製品ごとに月次や週次で生産数量を決定し、生産日程を調整する手法です。
資材所要計画(MRP)は、生産に必要な材料の所要数を計算し、供給のタイミングを決定するための手法で、必需品が適切に供給されるようにします。
キャパシティプランニングは、設備や人員の生産能力を把握し、需要に応じた生産能力の調整を行うことで、生産効率を高めます。

計画の単位を決める——品目・期間・拠点、そして誰が持つか

「在庫計画を立てる」と言うとき、実際に決めているのは 3 つの単位と 1 つの所在である。ここが空欄のまま数字だけ動かすと、計画は毎月作り直されるのに在庫は動かない。

品目の単位——計画で動かせるものと、結果として決まるもの

税務上、棚卸資産は法人税法施行令第 10 条で 7 つに分けられている。商品又は製品(副産物及び作業くずを含む)、半製品、仕掛品(半成工事を含む)、主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のもの、そしてこれらに準ずるものである[4]

在庫計画の側から見ると、この 7 つは同じ扱いにならない。発注量で直接動かせるのは原材料と消耗品、生産指示で直接動かせるのは製品までである。これに対して半製品と仕掛品の量は、計画の対象というより、生産計画と実際のリードタイムが決めた結果として現れる。仕掛品が多いことを在庫計画の失敗として扱い、発注を絞って対処しようとすると、材料が欠品して仕掛品はむしろ滞留する。触るべきは着手のタイミングと工程間の停滞であって、発注量ではない。

期間の単位——計画を何日刻みで持つか

計画は必ず時間の刻みを持つ。前掲の解説は、資材所要計画が「生起する事象を追って次々とタイム・バケット(時間域)を指示する」という考え方を導入し、その刻みを 1 週間程度に取っている例が多いとしている[3]。刻みを決めると、以降の計画と管理もその大きさで行われることになる。

実務で問題になるのは、刻みが調達リードタイムより粗いときである。月次でしか計画を持たないのに調達リードタイムが 10 日なら、その計画は「今月いくつ要るか」には答えられても「いつ発注するか」には答えられない。結果として発注のタイミングは担当者の勘に戻る。

拠点の単位——手元にない在庫も計画に入れる

外注先に預けた材料、倉庫に置いたままの分、輸送中の分は、置き場所が自社でなくても自社の在庫として計画に入れる必要がある。数え方と、棚卸のときの扱いは棚卸とは——製造業のやり方と手順、仕掛品と預け在庫の扱いにまとめてある。

誰が持つか——数字を出す人ではなく、量を変えられる人

完成品の在庫水準は営業と生産管理、資材は購買、半製品は生産管理が持つのが一般的な分け方になる。ただし決めるべきは「誰が在庫表を作るか」ではなく、誰が発注量や生産指示を変える権限を持つかである。ここがあいまいなまま在庫削減の目標だけが降りてくると、誰も減らせない在庫が残る。受発注・会計・在庫のデータをどこで線引きするかは受発注・会計・在庫はどこで線を引くかで整理している。

在庫計画と生産計画の相互作用

在庫計画と生産計画は、独立したプロセスでありながらも、互いに大きな影響を及ぼし合います。
生産計画によって生産される項目の数量とタイミングは、在庫計画上の在庫レベルと直接関連しています。
適切な在庫計画が行われていると、生産計画の信頼性が向上し、顧客への供給がスムーズに行えます。

例えば、在庫計画が正確に行われている場合、製品の生産に必要な資材の注文タイミングが最適化され、過剰在庫を抑えることができます。
これは生産計画で組まれたスケジュールに対し、無駄のない操業を実現するための基盤となります。

需要予測の重要性

在庫および生産計画を成功させるための共通の鍵は、正確な需要予測です。
需要予測は、未来の製品需要を予測し、それに基づいて適切な生産・在庫レベルを設定するプロセスです。
需要予測が適切であると、過剰生産や欠品を避け、販売機会を最大化できます。
最新の予測技術(AIを活用した需要予測ツールなど)を用いることで、より精緻な予測を行い、計画の正確性を高めることができます。

予測を仕入先と共有するとき、先に決めておくこと

在庫計画を突き詰めると、必ず「先の見通しを仕入先に渡し、こちらの在庫を減らす」方向に進む。内示を出す、一定の在庫水準を保つよう納入させる、倉庫に置いてもらう——どれも自社の在庫は減るが、その分は相手の在庫として残る。ここは制度が細かく決めている領域で、決め方を誤ると計画の巧拙以前の問題になる。

公正取引委員会は平成 15 年 3 月 31 日、需要予測データを共有する受発注方式についての事前相談に回答しており、中小受託取引適正化法テキストに資料 8 として収められている[1]。相談された方式は、週 1 回、先 8 週間程度の需要予測データを提示し、生産リードタイムをおいて発注書面を交付し、納期の 1 日前に納入指示書で数量を微調整し、受領した数量を月末に締めて翌月末に支払う、というものである[1]

ただし、この回答は当時の下請法の条番号で書かれている。現行の取適法では、発注時の明示が第 4 条、受領拒否が第 5 条第 1 項第 1 号、支払遅延が同項第 2 号、買いたたきが同項第 5 号、支払期日が第 3 条に当たる[2]。以下は現行の呼び方に読み替えて示す。

回答の骨格はこうである。需要予測データを共有することは、効率的な生産体制の構築や需要の増減への機動的な対応につながり、双方の利益になると考えられる。他方で、提示した需要予測データと実際の委託数量にかい離が生じる際に、部品の引き取り範囲を明確にしていない場合には、受託側に在庫負担を強いるおそれがある[1]。予測を渡すこと自体ではなく、引き取り範囲を決めていないことが問題にされている。

そのうえで、あらかじめ書面で合意する必要がある事項として次の 6 つが挙げられている[1]

  1. 正確な需要予測データを提示するよう努めること。また、提示する需要予測データは予測であり、製造委託を確約するものではないこと
  2. 発注書面の交付時期を、リードタイムを踏まえて明確に定めること
  3. 締切日において実際に受領した数量が発注書面記載の数量の合計を下回る場合、そのかい離の範囲を可能な限り最小限の範囲内にあらかじめ定め、その範囲を超えて下回る数量については締切日に受領すること
  4. 当該部品の製造委託が終了する際には、発注書面記載の数量の部品をすべて受領すること
  5. 数量のかい離があらかじめ合意された範囲内であるとしても、そのかい離によって相手方に生じる費用(保管費用、運送費用等)は発注側が負担すること
  6. 十分な時間的余裕をもって、製造委託の開始時期および終了時期を通知すること

単価についても言及がある。単価を需要予測にもとづく数量を前提に設定したにもかかわらず、実際の委託数量がその予測を著しく下回る場合には買いたたきに当たるおそれがあり、代金の額の見直しが必要になる[1]。また、この方式への参加は相手方の自由な意思によることとし、参加しないことを理由に取引の条件や実施について不当に不利な取扱いをしてはならないとされている[1]

倉庫に置いてもらえば自社の在庫にならない、とはならない

同じ回答は、相手方が発注側の指定する倉庫に部品を預ける方式にも触れている。預けた部品は発注側が自由に出庫して使える状態にあるため、特別の定めがなければ、預けた日が受領日とされる。そこから起算して 60 日の期間内に支払わなければ支払遅延が生じることになる[1]。ただし、受領日前に預けられた分については発注側または倉庫事業者を占有代理人として相手方が自ら占有していることとし、発注書面記載の受領日に所有権が移転することがあらかじめ書面で合意されていれば、その受領日に受領があったものとして取り扱われる[1]

ただし、この合意があれば起算日が納期日で固定される、という話ではない。現行の運用基準は、発注側が納期日より前に出庫して使った場合は、その出庫した日が起算日になるとしている[1]。預けさせるのは必要になったときに出庫するためなので、納期日前の出庫はむしろ常態である。なお動くのは前倒しになる側だけで、自社が消費した時点まで起算を後ろへずらすことはできない。支払サイトの組み方は在庫管理の最適化と製造業での実践方法で扱っている。

つまり、置き場所を移しただけでは支払いの起算点は動かない。占有と所有権の移転時点を書面で合意して、そのうえで出庫の実績から数える。合意は出発点であって、それだけで支払期日が納期日に固定されるわけではない。この論点を含め、支払期日の起算と記録の残し方は購買・調達 研修テキスト ⑩ 検収・支払・棚卸で条文と実務の対応をまとめている。

使った分だけ払う方式は、基本的には認められない

一歩進めて「一定の在庫水準が常に保たれるように納入させ、毎月使用した分について翌月末に支払う」方式については、テキストが明確に答えている。この方式では、発注時の明示がなくても、納期が特定されていなくても、相手方は一定の在庫水準を保つように納入しなければならない。そのため必然的に明示義務違反(不明示、明示遅れ、明示事項の不備)や支払遅延が発生するおそれが強く、このような方式は基本的には本法上認められないとされている[1]

「基本的には」という留保は付いているが、実務上の含意ははっきりしている。在庫計画の誤差を相手の在庫として吸収させるなら、数量と納期を明示した発注に置き換える必要があるということである。

発注の揺れそのものにも基準がある

受託中小企業振興法にもとづき経済産業大臣が定める振興基準(令和 7 年 10 月 1 日付)も、同じテキストに資料 13 として収められている[1]。その第 2 には、在庫計画の常套手段に正面から関わる項目が並んでいる[1]

発注量の大幅な変動をできる限り回避するものとし、特に、発注量を自らの生産量または提供量の変動の増減率以上に変動させないよう努めること。発注量をできる限り平準化させ、将来の発注に関する事前情報の精度の向上に努めること。発注するときは、相手方の生産に必要なリードタイム、原材料の最小購入単位等を十分に考慮すること。そして、発注予定数量を提示した後、合理的理由なく発注予定数量と実際の発注数量に大きな乖離が生じた場合には、費用負担の軽減に配慮しつつ十分に協議を行い、余剰となる製品在庫および残材の買取りを行い、労務費・外注費その他の諸経費の増加分を支払う等の措置を講ずること[1]。納期と納入頻度についても、発注側の都合で多頻度小口配送等を要請する場合には、その必要なコストは発注側が負担するものとされている[1]

自社の在庫を減らすときに最初に思いつく手——発注を細かく分ける、納入回数を増やす、内示だけ先に流して確定を遅らせる——は、そのまま相手のコストになる。基準は、そのコストを発注側が持つ形で書かれている。

やろうとすること 制度上の扱い 先に決めておくこと
内示だけ流し、確定発注を遅らせる 発注時に明示すべき事項は第 4 条で定められている[2] リードタイムを踏まえた発注書面の交付時期
予測どおりに引き取らない 引き取り範囲が不明確だと相手に在庫負担[1] 締切日のかい離の上限と、超過分の受領
かい離で生じた保管費・運送費を持たせる 合意の範囲内でも発注側が負担[1] 費用の負担区分を書面に
倉庫に預けさせ、出庫した分だけ払う 特別の定めがなければ預けた日が受領日。書面合意があれば納期日、ただし納期日前に出庫・使用したらその出庫日[1] 占有と所有権移転の時点
一定水準を保たせ、使った分だけ払う 基本的には認められない[1] 数量と納期を明示する発注への置き換え
発注量を月ごとに大きく振る 自社の生産量の増減率以上に振らないよう努める[1] 平準化の方針と、乖離時の買取り

計画が外れたときに、発注側ができないこと

在庫計画は外れる。予測である以上、当たり続けることはない。したがって計画の良し悪しは「当たるかどうか」ではなく、外れたときに何ができるかを先に決めてあるかで決まる。そして制度が用意している道は、自社の在庫として抱えるか、相手と協議して費用を持つかの 2 つで、相手に押し返す道は用意されていない。

典型例がテキストの違反行為事例に載っている。委託事業者が部品の製造を委託し、相手が既に原材料等を調達しているにもかかわらず、輸出向け製品の売行きが悪く製品在庫が急増したという理由で、相手が要した費用を支払うことなく発注した部品の一部の発注を取り消した、という事例である[1]製品在庫が増えたことは、発注を取り消してよい理由にならない。

取消しに至らなくても、受領を先送りすれば受領拒否(第 5 条第 1 項第 1 号)、受け取ったものを引き取らせれば返品(同項第 4 号)に当たりうる[2]。費用の変動その他の事情が生じたのに、代金の額の協議を求められて応じず一方的に決めることも禁じられている(第 5 条第 2 項第 4 号)[2]。どこまでが認められる範囲かは、検査の方法や打切りの伝え方によって変わる。線引きは受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで条件ごとに整理してある。

作りすぎは、その期の損益には出てこない

もう一つ、計画の失敗が見えにくくなる仕組みがある。自己の製造等に係る棚卸資産の取得価額は、その製造等のために要した原材料費、労務費および経費の額の合計額に、これを消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額を加えたものとされている[4][5]作った分にかかった費用は資産として在庫に載り、売れるまで費用にならない。

逆の扱いも定められている。生産を相当期間にわたり休止した場合の、その休止期間に対応する費用の額は、製造原価に算入しないことができる[5]止めればその期の費用として落ち、作れば資産に残る。需要が落ちたときに稼働を維持して作り続けると、その期の損益はかえって良く見えることがある。

保管費用についても線が引かれている。製造等の後の検査・整理等の費用、販売所等へ移管するための運賃等、そして特別の時期に販売するなどのため長期にわたって保管するために要した費用は、これらの合計額が当該棚卸資産の製造原価のおおむね 3% 以内であれば取得価額に算入しないことができるとされている[5]。裏を返せば、その範囲を超えて長期保管の費用がかさめば、原価に載る扱いになる。

したがって、在庫計画の巧拙は当期の利益では測れない。見るべきは在庫金額と滞留期間である。滞留したものをいつどう評価するか(評価損を計上できる場面を含む)は棚卸資産とは——評価方法の選び方と、届け出をしない場合の扱いで扱っている。

外れた原因を 3 つに分ける

「計画が外れた」を一括りにすると、対策が需要予測の改良に偏る。実際には原因は 3 つあり、確かめる順序は逆から行うのが早い。

1. 記録が合っていない。帳簿と現物が合っていなければ、消費量もリードタイムも測れない。予測モデルを触る前にここを見る。差異の原因の分け方は棚卸とはに、受払の記録をどう作るかは在庫管理をエクセルで作るにまとめてある。

2. リードタイムが外れた。仕入先が言う納期ではなく、発注日から実際に入庫した日までの実績で測る。ここがずれていると、需要予測が当たっていても欠品する。

3. 需要が外れた。1 と 2 を潰して初めて、これが予測の問題として切り出せる。なお、外れているのが従属需要品目であれば、それは予測の問題ではなく前述の区分の問題である。

在庫管理そのものの進め方と、既存の記事の読み分けは在庫管理の最適化と製造業での実践方法に地図としてまとめている。

最新の業界動向と技術の活用

現在、製造業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)が進行しており、在庫および生産計画はその恩恵を受けています。
IoT、AI、ビッグデータなどの先端技術を活用することで、リアルタイムでのデータ収集と分析が可能になっています。
これにより、需要予測の精度が向上し、迅速で正確な意思決定が行えるようになっています。

また、サプライチェーン全体の見える化が進み、各プロセス間の連携がよりスムーズになっています。
これにより、在庫と生産計画の統合管理が可能となり、供給チェーン全体の最適化が進んでいます。

よくある質問

在庫計画と生産計画は、どちらの部門が持つべきですか

部門名で決めるより、品目の性質で分けるほうが実務に合う。完成品や補修部品のように需要が他の品目と無関係に決まるものは、需要予測や受注を握る側(営業と生産管理)が数量を決める。構成部品や原材料のように親品目から計算できるものは、その計算結果を受けて購買が発注する。重要なのは、数字を作る担当ではなく、発注量や生産指示を変える権限を誰が持つかを決めることである。

全品目に発注点を設定してはいけないのですか

設定してはいけないというより、従属需要品目では期待した働きをしない。前掲の解説は、従属需要品目は統計的在庫管理の対象にすべきではないとし、発注点方式を全品目に当てた結果として在庫が増える割に品切れが多くなることを指摘している[3]。ただし、金額が小さく消費が平準化している共通部品や消耗品まで計算で追う必要はない。品目の区分ごとの割り切り方は適正在庫の決め方にまとめてある。

内示を出すこと自体が問題になりますか

問題になるのは内示を出すことではなく、内示と確定発注のかい離をどう扱うかを決めていないことである。公正取引委員会の回答は、需要予測データの共有そのものは双方の利益になるとしたうえで、引き取り範囲を明確にしていない場合に相手方へ在庫負担を強いるおそれがあるとしている[1]。提示するデータが予測であって委託を確約するものではないこと、締切日のかい離の上限、委託終了時の全量受領、かい離で生じる保管費用等の負担を、あらかじめ書面で合意しておく必要がある[1]

仕入先の倉庫や自社の指定倉庫に置いてもらえば、自社の在庫にはなりませんか

置き場所だけでは決まらない。指定倉庫へ預けさせる方式では、預けた部品を発注側が自由に出庫して使える状態にあることから、特別の定めがなければ預けた日が受領日とされ、そこから起算して 60 日の期間内に支払わなければ支払遅延が生じる[1]。占有代理人とすることと所有権の移転時点をあらかじめ書面で合意していれば、発注書面記載の受領日に受領があったものとして取り扱われる[1]ただし納期日より前に出庫して使った分は、その出庫した日が起算日になる[1]。預託は必要になったときに出庫するための仕組みなので、支払サイトは出庫の実績を見てから組むことになる。

在庫を減らすために納入回数を増やしてもらうのは

依頼すること自体は禁じられていないが、費用の扱いが決まっている。振興基準は、納期と納入頻度は双方が協議して決定するものとし、発注側の都合により多頻度小口配送等を要請する場合には、その必要なコストは発注側が負担するとしている[1]。自社の在庫が減った分が相手の輸送費に移っているだけなら、全体としては減っていない。

需要予測の精度を上げれば在庫は減りますか

減る場合と減らない場合がある。予測の精度が効くのは独立需要品目に限られ、従属需要品目の数量は予測ではなく親品目からの計算で決まる[3]。また、帳簿と現物が合っていない状態では、どれだけ精度を上げても発注点が正しく働かない。予測に手を入れるのは、記録とリードタイムの実績を確かめたあとにする。

まとめ

在庫計画と生産計画は、製造業において欠かせないプロセスです。
それぞれが独立した目的を持ちつつも、相互に連携して最適な生産供給を実現するために必要です。
最新の技術や手法を積極的に活用することで、これらの計画の精度を高め、企業の競争力を維持・向上させることが求められます。
特にデジタルトランスフォーメーションの進展により、さらなる効率化が期待されており、製造業における計画運営が新たな段階に突入することが期待されます。

そのうえで、この記事で確かめた要点を 3 つに絞る。第一に、どちらが先に立つかは生産形態と品目で決まるので、会社単位で「うちは受注生産だ」と言い切らないこと。第二に、発注点・安全在庫・経済的発注量が効くのは独立需要品目に限られるので、全品目に発注点を当てないこと——これは 1965 年に整理され、その後の資材所要計画の骨格になった区別である[3]。第三に、計画の誤差を仕入先の在庫として吸収させる方式には制度上の枠があるので、内示と確定のかい離、引き取り範囲、保管費用の負担、占有と所有権の移転時点を、運用を始める前に書面で決めておくこと[1]

計画が外れること自体は避けられない。避けられるのは、外れたときの後始末を決めないまま走り出すことのほうである。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. MRPシステムについて(中根甚一郎/日本経営工学会誌 29 巻 4 号/1979 年)
  4. 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  5. 法人税基本通達 第5章第1節第2款 製造等に係る棚卸資産(5-1-3〜5-1-7)(国税庁)

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