BOM から発注をどう起こすか——所要量を発注数量に変える五つの段階 | newji

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投稿日:2026年9月5日

BOM から発注をどう起こすか——所要量を発注数量に変える五つの段階

この記事のポイント(結論先出し)

部品表(BOM)が答えられるのは「何が何個要るか」までである。そこから発注書になるまでには、引当・ロット・仕入先・発注日の四つを決める工程が挟まる。この四つのうち引当だけは在庫側の情報が要り、残りは品目マスターに要る。どれかが欠けていると部品展開の結果は所要量のまま止まり、あとは人が表計算ソフトで埋めることになる。さらに注文書には、部品表がそもそも持っていない欄がある。受領の期日と場所、検査を完了する期日、代金の額と支払期日、そして外注に材料を出すときの支給条件である。これらは中小受託取引適正化法(取適法)の 4 条明示として書かなければならない事項で、部品表から自動で埋まることはない。この記事は、部品表を発注に変換する手順を、止まる場所と落ちる欄の側から整理する。

部品表そのものの作り方——どの構造で持つか、品目マスターに何の欄を置くか、改訂をどう扱うか——は部品表(BOM)とはで扱っている。ここでは、すでに部品表がある会社が、受注を受けてから注文書を出すまでに何をどの順番で決めるかに絞る。

部品表は「何個要るか」までしか答えない

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受注生産の現場で「部品表があるのに発注が楽にならない」と言われることは多い。原因は部品表の出来ではなく、部品表が担当している範囲を超えたところに作業が残っているからである。

この境目を最初に理論として整理したのが、資材所要量計画(MRP)の考え方である。日本経営工学会誌の解説は、製造品目を独立需要品目と従属需要品目に分ける区別を紹介している。独立需要品目とは、その品目に対する需要が、それより高次のレベルの品目の需要と無関係な場合をいう。従属需要品目とは、その品目の需要が他の品目の需要に関係がある、あるいはそこから導き出される場合をいう。そして従属需要は予測する必要はなく、予測すべきでもない。親品目の需要から直接計算によって求めることができるからである[1]

部品表が持っているのは、この「直接計算」の材料だけである。親が 10 台なら、構成数量 4 個の子部品は 40 個。ここまでは部品表と受注数量があれば機械的に出る。だが 40 個をそのまま注文書に書く会社はない。倉庫に 12 個ある、前月に 20 個発注していてまだ入っていない、その部品は 25 個単位でしか買えない、供給元が 2 社ある、材料手配に 3 週間かかる——所要量が発注数量になるまでに、これだけの判断が挟まる。

調達現場で押さえるポイント

「部品表を入れたのに発注が手作業のまま」という相談を受けたとき、最初に見るのは部品表ではなく品目マスターである。発注ロット・最小発注数・調達リードタイム・仕入先の優先順位のうち一つでも空欄なら、その品目は必ず人の手を経由する。手作業が残っているのではなく、機械が判断するための材料が入っていない。

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所要量が発注数量になるまでの五つの段階

部品表から発注を起こす工程は、次の五段階に分けて考えると詰まりの場所が特定しやすい。

段階 1:展開——親の数量に構成数量を掛ける

受注数量、あるいは生産計画上の数量に、部品表の構成数量を掛けて総所要量を出す。歩留まりや加工ロス率を持っている会社は、ここで割り戻す。

段階 2:引当——手持在庫と入庫予定を差し引く

総所要量から、手持在庫・発注残(すでに出していてまだ入っていない量)・他の受注に引き当て済みの量を差し引き、正味所要量を出す。ここを飛ばすと、倉庫にある部品をもう一度買う。

段階 3:丸め——最小発注数と発注ロットに合わせる

正味所要量が 38 個でも、25 個単位でしか買えない部品は 50 個になる。この差の 12 個は在庫になる。丸めた結果が在庫として妥当かは、次にその部品を使う予定があるかどうかで決まる。

段階 4:割り付け——どの仕入先に出すかを決める

複数の供給元がある品目は、ここで 1 社に寄せるか分けるかを決める。優先仕入先を決めているなら機械的に決まるが、決めていない品目は毎回人が選ぶことになる。

段階 5:逆算——いつ発注するかを決める

必要日から調達リードタイムを引いて発注日を出す。前掲の解説は、この時間軸の扱いをタイム・フェージングと呼び、生起する事象を追って次々と時間域を指示することだと説明したうえで、MRP における計画は製品構成レベルの上から下へと部品の構成レベルを追いながら、また現時点から将来に向かって一度に作ってしまうものだとしている[1]

段階ごとに、どこで止まるか

段階 使う情報 その情報の置き場所 欠けていると何が起きるか
1 展開 構成数量・ロス率 製品構成マスター 数量が出ない。そもそも部品表として成立しない
2 引当 手持在庫・発注残・引当済 在庫マスター この段階を飛ばすと、展開した総所要量がそのまま次の工程へ流れる
3 丸め 最小発注数・発注ロット 品目マスター(仕入先との合意) 仕入先側で数量を切り上げられ、注文書と納品書が合わなくなる
4 割り付け 仕入先・優先順位・単価 品目マスター(購買関連情報) 割り付け先が決まらず、品目の一覧のまま注文書に変換できない
5 逆算 調達リードタイム・必要日 品目マスター+生産計画 必要日から逆算できず、発注日が人の判断に戻る
受領期日・受領場所・検査完了期日・代金・支払期日 部品表の外(契約条件・取引先マスター) 4 条明示の要件を満たさない注文書が出る

最終行が、この記事でいちばん伝えたい行である。上の五段階を全部埋めても、注文書は完成しない。

引当の順序を間違えると、同じ在庫を二度使う

段階 2 の引当は、単に在庫を引くだけの計算に見えて、順序を誤ると結果が壊れる。原因は、同じ品目が複数の親製品に使われることにある。

製品 A と製品 B が同じねじを使っていて、在庫が 100 本あるとする。A の展開で 80 本を引き当て、B の展開でも同じ 100 本を見て 90 本を引き当てれば、帳簿の上では 170 本が確保されたことになる。実在するのは 100 本である。

前掲の解説は、MRP 以前の手配方式について、部品展開に際して各構成部品のレベルを考慮せず、中間レベルの部品に対して在庫引当と正味所要量計算を行わないことを問題として挙げている。そのうえで、生産手配量と受注に対する引当量との間にギャップが生じ、計画サイクルが長いため需要の変化への応答が鈍り、過剰在庫や部品の品切れが頻発したと述べている[1]。半世紀前の記述だが、表計算ソフトで製品ごとに展開表を作っている現場で起きていることと同じである。

避け方は二つある。ひとつは、品目ごとに所要量をいったん集めてから一度だけ引き当てること。もうひとつは、構成レベルの上から下へ順に展開し、同じ品目が現れる最も下のレベルまで来てから引き当てることである。表計算ソフトで回すなら前者が現実的で、共通部品がどの親に何個使われるかを集計するには、部品表のうちマトリクス表と呼ばれる形が向く。この整理は部品表の記事に譲る。

もうひとつ注意したいのが、部品表による展開と発注点方式の混在である。前掲の解説は、発注点方式では製造オーダーの納期があらかじめ設定されたリードタイムだけ先行した時点で決まってしまい、本来は親品目の納期から子部品の納期が決まる必要があるのに、該当品目の在庫水準から独立に決まると指摘している[1]。つまり、部品表で展開している品目と発注点で自動補充している品目が混ざっていると、後者の納期は受注の状況と無関係に動く。どちらの方式で回す品目かは、品目マスターに区分として持たせておく。

まとめて出すか、親製品ごとに分けるか

同じ品目を複数の受注が必要としているとき、注文書を 1 通にまとめるか、受注ごとに分けるかは調達の判断である。まず法令上の制約を確認しておくと、取適法のテキストは、4 条明示について「1 つにまとめて明示できるのであれば発注内容ごとに分けて明示する必要はない」としている[2]。まとめること自体は妨げられていない。

ただし同じテキストは、明示すべき「中小受託事業者の給付の内容」について、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明示する必要があり、中小受託事業者がその内容を見て理解でき、委託事業者の指示に即した給付の内容を作成できる程度の情報を明示することが必要だとしている[2]。まとめた注文書でも、品目ごとの数量と仕様は書かなければならない。「一式」で済ませられるという話ではない。

判断軸 仕入先ごとにまとめて 1 通 受注(親製品)ごとに分ける
事務量 注文書・検収・支払の件数が減る 件数が受注数に比例して増える
単価 数量がまとまり、単価を下げやすい 数量が割れ、小口の単価になる
在庫 丸めと前倒しのぶんが在庫になる 受注に紐づくので余りが出にくい
設計変更 改訂時に使えなくなる量が増える 影響がその受注に閉じる
受注との紐付け 切れる。受注が止まったとき、どの発注を止めるか追えなくなる 残る。受注番号で追える
納入 納期の異なる品目が同じ注文書に載る。行ごとの期日が要る 注文書単位で納期が揃う
向く場面 共通部品・標準品・単価の効く量が出るもの 専用部品・個別仕様・トレーサビリティを求められるもの

実務では、共通部品は仕入先ごとにまとめ、専用部品は受注ごとに分ける、という二本立てにしている会社が多い。分ける基準を品目マスターの管理区分として持たせておけば、展開のたびに人が判断しなくて済む。

部品表から注文書に載せ替わらない欄

取適法の 4 条明示は、法律本文ではなく公正取引委員会規則で内容が定められている。規則の第 1 条第 1 項は、明示は所定の事項を記載または記録した書面の交付、あるいは電磁的方法による提供により行わなければならないとし、当事者を識別できる名称、製造委託等をした日、給付の内容と受領する期日および場所、検査を完了する期日、代金の額と支払期日、一括決済方式や電子記録債権で支払う場合の事項、原材料等を購入させる場合の条件、そして未定事項がある場合の理由と予定期日を列挙している[3]。テキストではこれを 12 項目として整理している[2]。項目の一覧と書式の選び方は発注書とはにまとめてある。

ここで見たいのは一覧そのものではなく、そのうち部品表が持っていない欄がどれかである。品目・数量・仕様は部品表と図面から出る。だが受領する期日と場所、検査を完了する期日、代金の額と支払期日は、部品表のどこにも書かれていない。取引先マスターと契約条件から取ってくるしかない。

「単価が未登録なので空欄」は通らない

部品表から発注を起こす現場でいちばん起きやすいのが、単価欄の空白である。新規部品で見積がまだ返っていない、あるいは品目マスターに単価を入れていない。この状態で数量と納期だけ書いた注文書を出すと、明示義務を満たさない。

規則は、代金の額について具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合には、具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をすることをもって足りるとしている[3]。そのうえでテキストは、代金の額を決定できるにもかかわらず決定しない場合や、算定方法を明示することが可能である場合には、内容が定められないことについて正当な理由があるとはいえず、具体的な代金の額や算定方法を明示する必要があるとしている[2]。単価が未登録であることは、社内の事情であって取引の性質ではない。

やむを得ず未定事項として出す場合も、条件が付く。テキストは、当初の明示で、内容が定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日を明示する必要があるとしている。予定期日は具体的な日が特定できるよう明示する必要があり、「○年○月○日」や「発注日から○日」は認められるが、「納入月」のように具体的な日が特定できないものは認められない。また、すべての発注で一律に「発注日から○日」と明示することは、実際に一律の時期に特定可能となるのであれば可能だが、通常そのような場合は考えにくいとされている[2]

毎回書かなくてよい欄もある

逆に、発注のたびに書き写さなくてよい欄もある。規則の第 1 条第 3 項は、明示事項が一定期間における製造委託等について共通であるものとして、あらかじめその旨を明示したときは、その期間内の明示は、あらかじめ明示したところによる旨を明示することをもって足りるとしている[3]。テキストは共通事項の例として支払方法や検査期間を挙げ、この方法をとる場合には、発注の都度、共通事項の明示との関連性を明らかにしなければならないこと、共通事項の明示にはその明示が有効である期間を明記する必要があることを示している[2]

部品表から機械的に注文書を起こす仕組みを作るなら、この区別をそのまま設計に落とすとよい。毎回変わる欄(品目・数量・納期・単価)は展開結果から埋め、取引先ごとに固定の欄(支払方法・検査期間・受領場所)は共通事項として一度明示し、注文書には参照だけを載せる。埋める欄が減れば、埋め忘れも減る。

条番号の差し替えを自社の書類でやるなら

2026 年 1 月の施行で、発注書・注文請書・購買規程に書いてある条番号と用語は一斉に古くなった。旧 3 条書面は 4 条明示に、旧 5 条書面は 7 条の記録になり、親事業者・下請事業者・下請代金という呼び方も変わっている。どの書類のどこを直すかを 1 枚ずつ潰していく作業は、NEWJI総研の法令改訂対応パック(中小受託取引適正化法)に、対応表と作業の順番としてまとめてある。

外注加工に出すとき——支給の形で、書く欄も原価の科目も変わる

部品表の途中の階層を外注に出す場合、材料をこちらから渡すことがある。このときの渡し方には、無償支給と有償支給の二つがある。外注加工賃を論じた研究は、無償支給を、委託業者に材料を無料で支給して加工させ、部品・半製品として引き取る際にその加工賃を支払う方法、有償支給を、材料を委託業者にいったん買い取らせたうえで加工させ、部品・半製品として引き取る際に材料費と加工賃をあわせた額を支払う方法と整理している[4]

どちらを選ぶかで、注文書に書く欄が変わる。有償支給は、規則の明示事項でいう「原材料等を委託事業者から購入させる場合」に当たり、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済の期日および方法を明示しなければならない[3]。無償支給ではこの欄は生じない。部品表から発注を起こすとき、有償支給のこの 6 項目は展開結果のどこにも現れないので、いちばん落ちやすい。

そして、有償支給には決済の時期の制限がある。取適法の第 5 条第 2 項第 1 号は、自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品または原材料を自己から購入させた場合に、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する代金の支払期日より早い時期に、代金の額から対価を控除し、または対価を支払わせることを禁じている[5]。テキストは、早期決済にならないようにするには、納入される物品の代金の支払制度や検査期間、中小受託事業者の加工期間を考慮して、代金の支払と有償支給原材料等の対価の決済が見合い相殺になる仕組みにしておくことが大切だとしている[2]。支給と決済の設計は有償支給材と金型代の記事で詳しく扱っている。

項目 無償支給 有償支給
材料の渡し方 無料で支給して加工させる いったん買い取らせて加工させる
引き取り時に支払う額 加工賃 材料費と加工賃をあわせた額
発注書に要る欄 支給の欄は生じない 品名・数量・対価・引渡しの期日・決済の期日・決済の方法
決済時期の制限 給付の代金の支払期日より早く控除・支払わせることの禁止
原価の科目 外注加工賃が生じる 原価計算の費目分類としては外注加工賃を立てない(実務の科目処理は総額処理か純額処理かで載る金額が変わる)
在庫の見え方 自社の在庫として社外に置かれる 売却して相手の在庫になる
言われている利点 事務的負担が軽い 外注先に材料節約の意識を持たせられる

この表の下三行は、前掲の研究が挙げている整理に沿っている。同研究は、外注加工取引には材料を無償支給する場合と有償支給する場合があり、外注加工賃という費目が生じるのは前者の場合のみであること、実務における選択のポイントとして、無償支給では事務的負担が軽減される、有償支給では外注先に材料節約の意識を持たせることができる、という利点をそれぞれ挙げている[4]

在庫の扱いにも差が出る。同研究は、無償支給の場合でも、受け入れた加工品をただちに製造現場に引き渡す場合と、部品としていったん倉庫に保管する場合の二つのパターンがあり、仕訳処理も異なるとしている[4]。部品表から発注を起こす側から見ると、後者は在庫として引当の対象になり、前者はならない。どちらの運用かを決めずに外注品目を作ると、次の展開で在庫が正しく引けない。

原価にどう効くか

発注の出し方が原価計算に影響するのは、外注に出した瞬間である。原価計算基準は、原価要素の分類について複数の基準を置いている。費目別計算を論じた研究によれば、基準の八(一)は形態別分類を、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であるとし、原価要素をこの基準によって材料費・労務費・経費に属する各費目に分類するとしている。そして基準の一〇は、費目別計算においては原価要素を、原則として形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じて機能別分類を加味して分類するとしている[6]

この二つを掛け合わせると、原価は直接材料費・直接労務費・直接経費・間接材料費・間接労務費・間接経費の六つに分かれる。外注加工賃を論じた研究は、基準の一〇が直接経費として「外注加工賃のみ」を例示していると指摘している。同研究は、参考文献に挙げたテキストのうち直接経費の費目を例示している 34 冊を抜き出して登場回数を数え、外注加工賃 34 回、特許権使用料 29 回、設計費 14 回、仕損費 12 回、金型代 11 回、特殊機械等の賃借料 7 回、試作費 6 回という結果を示している[4]。分母は原価計算のテキスト 34 冊であって、実務調査の企業数ではない。

実務で気をつけたいのは、同研究が「すべての外注加工賃は直接経費である」と考えるのは間違いだとしている点である。同研究は、外注加工費が加工工数に関係なく定額で契約されている場合、すなわち固定費的に発生する場合は間接経費になるものと考えられ、単純に勘定科目名のみによって直接経費か否かを判断することは誤った分類を行う可能性があるとする説明を紹介している[4]。月極めの外注枠を押さえるような契約は、注文書の見た目は同じでも原価の扱いが変わりうる。

社内で「総原価」という言葉を使う前に

原価計算基準の成り立ちを追った研究は、総原価について、調弁価格を決定するための原価で、基準にはない原価概念であると述べている[7]。戦時期の企画院要綱に由来する言葉で、現行の基準の用語ではない。社内の会議で「総原価で比べよう」と言うときは、それが何を指すのか(製造原価か、販売費と一般管理費まで含めるのか)を先に決めておかないと、部門ごとに違う数字を持ち寄ることになる。

出した発注は 2 年間残す

発注を起こす仕組みを設計するとき、最後に確認しておきたいのが記録である。取適法の第 7 条は、製造委託等をした委託事業者に対し、給付と受領、代金の支払といった事項についての書類または電磁的記録を、公正取引委員会規則の定めに従って作成し保存することを義務づけている[5]

その規則は、記載しなければならない事項として 13 号を挙げている。部品表から発注を起こす運用で効いてくるのは、給付の内容を変更させ、または受領後に給付をやり直させた場合のその内容と理由、代金の額と支払期日およびその額に変更があった場合の増減額と理由、そして未定事項として明示しなかった事項がある場合の、内容が定められなかった理由・内容を明示した日・その内容である[8]。設計変更で数量や仕様が動くたびに、この三つが増えていく。

電磁的記録で残す場合の要件も同じ規則にある。訂正または削除を行った場合にその事実と内容を確認できること、記録された事項を画面に表示し書面に出力できること、そして検索の機能を持つこと(中小受託事業者を識別できる符号を検索条件に設定でき、製造委託等をした日については範囲を指定して条件を設定できること)である。保存期間は、記載または記録をすべき事項の全部を記録した日から 2 年間である[8]。記録の残し方そのものは取適法が求める記録で扱っている。発注として起こしたあと、そのデータが在庫と会計のどこで別の意味に変わるかは受発注・会計・在庫はどこで線を引くかで整理した。

よくある質問

在庫があるのに発注が出るのはなぜですか

原因は、利用可能在庫(在庫数量−引当済数量)ではなく在庫数量だけを見ていることである。引当は「予約」であって「出庫」ではないので、引当済を別に持たないと、すでに他の受注に割り当てた在庫を空きとして数えてしまう。なお発注残を差し引いていない場合に起きるのはこれとは別の症状で、在庫があるのに発注が出るのではなく、同じ品目に対して発注が二重に出る。

同じ部品が 2 社に割れてしまうのを止めたいのですが

品目マスターに優先仕入先の指定が無いと、展開のたびに人が選ぶことになり、担当者によって結果が変わる。まず優先仕入先を決めて登録し、そのうえで、優先先の供給が止まったときに、どの条件で二番手の仕入先に切り替えるかを別途決めておく。なお、2 社購買そのものの設計は、価格競争と供給安定のどちらを取るかの判断が先にある。

数量を増やすだけなら、注文書は出し直さなくてよいですか

出し直す。取適法のテキストは、発注後に数量を増やすことを、給付内容の変更ではなく増量分についての新たな発注として扱っており、改めて明示が必要になるとしている[2]。部品表を再展開して数量が動いたときも同じで、差分をメールで伝えて終わりにはできない。増量分だけの注文書を足すか、元を取り消して出し直すかを、社内で先に決めておくと迷わない。改訂に伴う扱いは部品表の記事でも整理している。

内示は発注に当たりますか

内示の段階で相手に着手させているなら、それは発注である。テキストは、電話で注文内容を伝える場合であっても電話連絡後直ちに 4 条明示をしなければならず、電話のみによる発注は明示義務違反となるとしている[2]。部品表から展開した所要量を「見込み」として渡し、相手が材料を手配しはじめているなら、注文書を出す段階に来ている。

まとめ

部品表から発注を起こす作業が手間なのは、部品表が悪いからではない。所要量と発注数量の間に、引当・丸め・割り付け・逆算という四つの決定があり、その材料が品目マスターに入っていないからである。そして注文書には、部品表がそもそも持っていない欄——受領の期日と場所、検査を完了する期日、代金の額と支払期日、有償支給の条件——がある。

手を付ける順番としては、まず品目マスターの空欄を埋めること。次に、まとめて出す品目と受注ごとに分ける品目の区分を決めること。そして、毎回書く欄と共通事項として一度だけ明示する欄を分けること。この三つが済むと、部品表から出てくるのは所要量の一覧ではなく、仕入先ごとの発注案になる。

出典・参考資料

  1. MRPシステムについて(中根甚一郎/日本経営工学会誌 29 巻 4 号/1979 年)
  2. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  3. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  4. 外注加工賃に関する一考察(三浦克人/商経論叢(鹿児島県立短期大学)第 72 号/2021 年)
  5. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  6. 「原価計算基準」における費目別計算の意義と解釈上の留意点(山本宣明/LEC 会計大学院紀要 第 15 号/2018 年)
  7. 『原価計算基準』の解明(諸井勝之助/原価計算研究 23 巻 2 号/1999 年)
  8. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))

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