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投稿日:2026年6月11日

輸出取引で不可欠なSDS(安全データシート)の準備方法

輸出取引における SDS(安全データシート)の不備は、通関停止・クレーム・商談キャンセルに直結する。化管法・労働安全衛生法・各国規制の三層構造を正確に把握し、JIS Z 7253 に準拠した 16 項目を漏れなく揃えることが出発点だ。本稿では調達現場の実態を踏まえ、準備フローから主要輸出先の法的要件、デジタル化対応まで体系的に解説する。

SDS(安全データシート)とは何か――法的定義と国際的枠組み

SDS とは Safety Data Sheet の略で、化学物質または化学物質を含む混合物を事業者間で譲渡・提供する際に、その危険有害性情報や適切な取扱い方法を記載した文書を指す。かつては MSDS(Material Safety Data Sheet)とも称されていたが、2003 年に国連で化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)が採択されて以降、SDS への呼称統一が各国で進んだ。

日本では三つの主要法令が SDS 交付義務を定めている。化管法(化学物質排出把握管理促進法)は平成 11 年 7 月に公布され、平成 13 年 1 月から運用開始された。
化管法 SDS 制度は、指定された「化学物質又はそれを含有する製品」を他の事業者に譲渡・提供する際に、当該化学品の特性及び取扱いに関する情報を提供することを義務づけるとともに、ラベルによる表示に努めていただく制度だ。
加えて労働安全衛生法・毒物及び劇物取締法も独自の SDS 対象物質リストを定めており、事業者はいずれの法令にも目を通す必要がある。[1]

国際的には ISO 11014 が SDS の内容と項目順序の標準を定め、日本の JIS Z 7253:2019 はこれに対応する形で制定されている。
JIS Z 7253 はこの規格の対応国際規格として ISO 11014:2009 を示しており、SDSには 16 の項目及びその情報を記載し、これらの項目の番号・項目名・順序を変更してはならないと規定している。
[2]

調達現場で押さえるポイント

当社では累計 200 社以上のサプライヤー視察・購買監査を行ってきたが、「SDS は化学担当者が管理する社内書類」と位置づけている企業ほど、輸出バイヤーから SDS の再提出を求められた際の対応が遅れる傾向にある。SDS は法令文書であると同時に、バイヤーに対する安全保証の意思表示でもある点を、調達・購買・物流の各部門が共通認識として持つことが体制強化の第一歩だ。

化管法 SDS 制度の対象物質と適用要件

化管法 SDS 制度においては、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在すると認められる物質として計 649 物質が指定されており、これらを含有する製品について他の事業者に譲渡・提供する場合に SDS の提供が義務づけられている。
[1]

649 物質の内訳は、第一種指定化学物質 515 物質(PRTR 制度と SDS 制度の両方の対象)と第二種指定化学物質 134 物質(SDS 制度のみの対象)に分かれる。このうち第一種指定化学物質の中でも発がん性クラス 1 など特に重篤な障害をもたらす物質 23 種は「特定第一種指定化学物質」と位置づけられ、年間取扱量 0.5 t 以上から届出義務が生じる。令和 3 年(2021 年)10 月の政令改正で対象物質が大幅に見直され、令和 5 年(2023 年)4 月 1 日から新たな 649 物質体制が適用された点は見落としがちだ。[1]

また、
化管法とは別の観点から、労働安全衛生法及び毒物及び劇物取締法においても SDS 及びラベルの提供に係る規定があり、同様の制度が実施されている。
化管法対象外であっても他法令で義務が生じているケースがあるため、自社製品が三法のうちどの法令の対象に該当するかを網羅的に確認することが不可欠だ。[1]

JIS Z 7253 が定める SDS 16 項目とその実務的意味

化管法 SDS で提供する情報は SDS 省令第 3 条で定められており、JIS Z 7253 ではこれらの項目名の番号・項目名・順序を変更してはならないと規定されている。
[2]

以下の 16 項目は、JIS Z 7253:2019 および経済産業省の標準書式に準拠した構成だ。
記載項目名は JIS Z 7253:2019 に合わせており、JIS Z 7253:2019 は GHS 改訂 6 版に合わせて制定された。
[2]

  1. 化学品及び会社情報
  2. 危険有害性の要約
  3. 組成及び成分情報
  4. 応急措置
  5. 火災時の措置
  6. 漏出時の措置
  7. 取扱い及び保管上の注意
  8. ばく露防止及び保護措置
  9. 物理的及び化学的性質
  10. 安定性及び反応性
  11. 有害性情報
  12. 環境影響情報
  13. 廃棄上の注意
  14. 輸送上の注意
  15. 適用法令
  16. その他の情報

現場で注意が必要なのは「項目 3 組成及び成分情報」と「項目 15 適用法令」の 2 箇所だ。
混合製品中の化管法指定物質の含有率は有効数字 2 桁で記載する必要があり、成分のばらつきがある場合でも適切な推計式による値を算出しなければならない。
含有率を大まかに幅で記載して済ませたり、前回作成時の法令一覧をそのまま流用したりするケースが実務上は絶えないが、いずれも再提出要求や通関リスクに直結する。[2]

輸出取引で求められる SDS 準備の実務ステップ

製造業の調達購買 10 年以上の経験から断言できるのは、SDS 準備の失敗の 8 割以上が「いざ輸出が始まってから慌てて着手する」ことに起因しているという事実だ。理想は製品設計段階から SDS の作成要件を組み込むことだが、現実には見積り段階で要求仕様が変わるため、少なくとも量産準備開始と同時に SDS 管理プロジェクトを立ち上げる必要がある。

Step 1:対象品目のリストアップと優先度分類

自社で取り扱う化学品・原材料・半製品・副資材(塗料・洗浄剤・潤滑油・接着剤・樹脂ペレット等)のうち、どれが SDS 提出対象になるかを網羅した「SDS 管理台帳」を整備する。品目数が多い場合は化管法 649 物質への該当有無・国内三法の義務有無・輸出先国の危険化学品リスト該当有無の 3 軸で優先度を分類すると管理しやすい。

Step 2:輸出先国の規制要件の調査

日本の JIS Z 7253 に準拠して作成した SDS がそのまま通用するわけではない。欧州連合では REACH 規則・CLP 規則、米国では OSHA HazCom 2012、そして対日本最大の輸出相手国グループである中国では GB/T 規格への対応が求められる。
中国向けに危険化学品を輸入する事業者は「危険化学品安全管理条例」及び「危険化学品登記管理弁法」に基づき、初回輸入前に危険化学品登記証を取得する必要があり、登記証の申請には対象危険化学品の SDS とラベルを提出しなければならない。また SDS とラベルには 24 時間対応の緊急相談電話番号の記載が義務づけられている。
[3]

さらに中国では、日本の JIS Z 7253 をそのまま中国語に翻訳しても受理されない。GB/T 16483(項目順序)および GB/T 17519(作成指南)の 2 規格に準拠した書式での再作成が必要であり、特に項目 15「適用法令」は中国国内法令の知識が求められる。

Step 3:GHS 分類の実施と NITE-Gmiccs の活用

SDS 作成の核心は GHS 分類の正確性にある。混合物の場合は個別成分の毒性値(LD50 等)と濃度カットオフ値に基づく計算が必要だ。NITEが開発・運用する無料 Web ツール「NITE-Gmiccs」を使えば、この混合物 GHS 分類を大幅に効率化できる。
2022 年 4 月 1 日より SDS 作成支援機能が NITE-Gmiccs に追加されたことで、ラベルだけでなく SDS も自動的に作成できるようになっている。
[4]

ただし NITE-Gmiccs は健康有害性と環境有害性の計算が主対象であり、物理化学的危険性(引火性・爆発性等)については原則として混合物自体の試験データが別途必要となる。ツールの出力はあくまで「一例」であり、最終的には事業者が責任を持って内容を確認・補完しなければならない。

Step 4:社内多重チェックと第三者レビュー

作成した SDS の品質を担保するには、(1)化学担当者による内容精査、(2)法務・コンプライアンス担当による法令適合確認、(3)輸出先バイヤーへの事前共有と確認、という三段階のゲートを設けることを推奨する。輸出先が欧州の大手企業であれば SDS の審査が購買稟議の必須添付書類になっているケースもあり、書式ミスや古い法令参照が原因で商談が止まった事例を当社は複数件把握している。

Step 5:変更管理と定期メンテナンスサイクルの設計

SDS 省令の令和 4 年改正(令和 4 年 3 月 31 日公布・施行)により、SDS の情報提供方法としてメールの送信やインターネットを利用した方法など、相手方が容易に閲覧できる方法が追加された。
[1] デジタル化が進む一方で、規制の更新に合わせた SDS の改版管理が追いつかない企業も多い。原材料の仕様変更・法令改正・輸出先規制の変更を起点とするトリガー型の改版フローと、最低年 1 回の定期棚卸しの両輪を回すことで初めて「常に有効な SDS」を維持できる。

主要輸出先別 SDS 要件の比較

金属加工・樹脂成形・化学・電気電子・組立完成品の 5 ジャンル横断で対日輸出商流を追うと、SDS に関するトラブルの発生頻度は輸出先国によって大きく異なる。規制改定のスピードが速い中国・EU・韓国での事例が際立って多い。

比較軸 日本(化管法等) EU(REACH/CLP) 米国(OSHA) 中国(GB/T規格) 韓国(K-REACH)
根拠法令 化管法・安衛法・毒劇法 REACH規則・CLP規則 OSHA HazCom 2012 危険化学品安全管理条例等 化学物質登録評価法(K-REACH)
SDS規格 JIS Z 7253:2019(ISO 11014対応) EU規則 No 2015/830 ANSI Z400.6 / OSHA 29 CFR 1910.1200 GB/T 16483・GB/T 17519 KOSHA GUIDE W-10
必要言語 日本語 輸出先EU加盟国の公用語 英語(現場が要求する言語) 中国語(簡体字) 韓国語
GHS対応バージョン GHS改訂6版(JIS 2019)
※2025年改正でGHS改訂9版へ移行予定
GHS最新版(EU独自分類追加) GHS改訂3版準拠 GHS最新版(独自分類あり) GHS最新版
登録・届出義務 PRTR届出(第一種指定物質) REACH事前登録・登録 TSCA登録 危険化学品登記証取得(初回輸入前) K-REACH登録
緊急連絡先記載 任意(記載が望ましい) 必須 必須(CHEMTREC等) 24時間対応番号が必須 必須
書式・フォーマット 経産省標準書式(16項目) EU規定の16項目(拡張記載あり) 16セクション GB/T準拠の16項目(翻訳不可) 16項目(韓国語で作成)
混合物含有率開示 有効数字2桁(化管法指定物質) 濃度範囲での記載可(条件あり) 濃度範囲での記載可 CAS番号100%開示(上海港の場合) GHS基準に準拠
改版・通知義務 変更時に速やかに提供 変更後12ヶ月以内に提供 変更時に更新 登記内容変更時に申請 変更時に速やかに通知
電子交付 令和4年改正で正式に追加[1] 受領者同意のもと可 可(受領者同意) 書面原則・電子化も進展
主な違反リスク 指導・改善命令 市場流通禁止・高額制裁金 OSHA罰則($15,625/件) 通関留め置き・廃棄処分 輸入禁止・過料

この表から読み取れる最大の実務上の含意は、「日本語 SDS を各国語に機械翻訳しただけで提出する」という対応が通じないケースが多い、ということだ。特に中国の場合、SDSの形式要件(GB/T 規格)と内容要件(24 時間緊急連絡先・CAS 番号 100% 開示など)が日本基準と乖離しており、実質的に別ドキュメントとして作成し直す必要がある。
危険化学品のSDSとラベルには 24 時間対応の緊急相談電話番号を記載しなければならない。
[3]

NITE-Gmiccs によるデジタル SDS 作成の実践ポイント

経済産業省の主導のもと NITE(製品評価技術基盤機構)が開発・運用するWeb ツール「NITE-Gmiccs」は、混合物の GHS 分類からラベル・SDS 作成までを一元サポートする無料システムだ。
2022 年 4 月 1 日より SDS 作成支援機能が追加されたことで、GHS 分類の判定だけでなく SDS 様式の出力まで対応できるようになった。
[4]

同システムには約 3,400 件の政府 GHS 分類済み単一物質データが収載されており、組成情報と含有率を入力するだけで健康有害性・環境有害性の自動分類と SDS ドラフト出力が可能だ。国内向け(JIS 準拠)と国連 GHS 改訂 6 版準拠(UN ルール)の 2 種類の分類方法を選択できるため、輸出先の要件に合わせた使い分けもできる。

調達現場で押さえるポイント

NITE-Gmiccs の最大の落とし穴は「物理化学的危険性(引火性・爆発性・自然発火性等)の自動分類が原則として対応していない」点だ。製造業の調達購買現場でよく扱う塗料・洗浄剤・接着剤は引火性液体に該当するケースが多く、この危険性区分はシステムの出力結果に反映されないため、担当者が自ら試験データや既知文献値を参照して追記しなければならない。NITE-Gmiccs の出力は「作業のスタート台」であり、ゴールではない点を肝に銘じてほしい。

現場で繰り返し起きる SDS 作成の典型的な失敗パターン

中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは、「日本のバイヤーから受け取った旧バージョンの SDS をそのまま転用し、成分改良後の製品に古い安全情報が紐づいたまま出回っている」ケースだ。そうした SDS が現地で労働災害や火災の一因となった場合、情報提供者たる供給事業者にも責任が及ぶ。

失敗パターン 1:GHS バージョン不一致

2025 年 12 月 25 日に JIS Z 7252 および JIS Z 7253 の改正が行われており、これらは国連 GHS 文書改訂 9 版を元としたものとなる。
2019 年制定の現行版(GHS 改訂 6 版ベース)と 2025 年版では爆発物の分類カテゴリ等が変わる。改正への対応猶予は原則 5 年程度設けられる予定だが、EU のバイヤーが最新版への準拠を先行要求してくるケースはすでに出始めている。[2]

失敗パターン 2:原材料 SDS へのただ乗り

原材料メーカーから提供された SDS をそのまま「自社製品の SDS」として提出するケースは、混合物製造業者で後を絶たない。しかし混合・加工のプロセスを経た製品は、原材料単体とは異なる危険有害性プロファイルを示すことがある。例えば 2 成分系接着剤は主剤と硬化剤を別々に保管すれば安全でも、混合後は急性毒性やアレルギー性皮膚炎のリスクが高まる場合がある。自社製品としての GHS 再分類は、法的義務であると同時にリスク管理の要だ。

失敗パターン 3:部門サイロによる情報断絶

購買部門がサプライヤーから受け取った最新の成分情報が、品質部門・技術部門・物流部門に共有されないまま古い SDS が流通し続けるケースだ。特に成分変更が製品性能向上のために頻繁に行われる電気電子部品・塗料・接着剤カテゴリで発生しやすい。SDS 管理システム(クラウド型 SDS 管理ツール等)を導入して「一元管理・全部門参照可能」な仕組みを構築することが、このリスクを根本から断つ手段になる。

失敗パターン 4:輸出先ごとの書式対応の後回し

「日本語版 SDS は完備している。輸出が決まったら翻訳すれば良い」と考えている企業は多い。しかし先述のとおり中国向けは GB/T 規格への根本的な書き直しが必要で、専門知識がない状態では作成に数週間を要する。輸出先が決まってから慌てて対応すると、初回納期に間に合わず商談に支障が出るリスクが高い。輸出可能性がある時点で「SDS ロードマップ」を作成し、対応優先度を付けて準備を進めることを強く推奨する。

バイヤーが本当に重視する SDS 品質の 3 要素

バイヤー側の調達担当として数百件の SDS を確認してきた経験から整理すると、SDS の「品質」を左右するのは書式の正確さだけでなく、以下の 3 要素が複合的に評価される。

1. 情報の鮮度と改版履歴の透明性

SDS の作成年月日・改訂履歴(項目 16 に記載)が明記されており、最新の法令・規格に対応した内容かどうかは、バイヤーの目が最初に向かう箇所だ。改版履歴が数年前のまま更新されていない SDS は、それだけで信頼性に疑問符が付く。たとえ内容が正確でも「管理が行き届いていない」と見なされてしまう。

2. 成分情報の開示水準

特に欧州・北米のバイヤーは、混合物であっても GHS 基準で危険有害性に寄与する全成分の化学名・CAS 番号・濃度範囲の開示を要求してくる。「企業機密を理由に成分を開示しない」という対応は、一定の法的許容範囲内であっても取引の障壁になりやすい。秘密保持契約(NDA)を締結した上で詳細成分情報を提供できる体制を整えることで、競合サプライヤーとの差別化につながる。

3. 緊急時対応情報の充実度

漏出時の措置(項目 6)・応急措置(項目 4)・輸送上の注意(項目 14)は、現地での事故対応マニュアル作成に直結するため、バイヤーの安全管理担当者が特に細かく確認する。「担当者に問い合わせてください」のみで実質的な対応情報がない SDS は、後工程で必ず再提出要求が来る。

調達現場で押さえるポイント

当社が関与した調達プロジェクトでは、同じ化学品を扱う 3 社のサプライヤーが競合した際、最終的に SDS の品質(特に中国語・英語の両言語対応の充実度と改版管理の透明性)が選定の決め手になったケースが複数ある。価格差が 5% 以内であれば、SDS の完成度が調達先決定の実質的な評価軸になる場面は珍しくない。

SDS 電子化と標準フォーマット化の最新動向

令和 4 年の SDS 省令改正(令和 4 年 3 月 31 日公布・施行)により、情報提供方法としてメールの送信またはインターネットを利用した情報の提供など、相手方が容易に閲覧できるものが正式に方法として追加された。
[1]

電子 SDS が普及することで、バイヤーのシステムへの自動取り込みや、ERP・SCM との連携が現実的になりつつある。一方で、フォーマットが標準化されていなければ受け取り側のシステムがデータを正しく解析できないという課題も浮上している。厚生労働省・経済産業省・環境省の三省が SDS の標準フォーマット化を進めている背景にはこうした事情がある。

実務上の留意点として、電子 SDS の送付に切り替える場合でも「受領者が容易に閲覧できる」状態を維持することが省令の要件として求められる。パスワードロックされたイントラネットへの掲載や、リンク切れが放置された URL による提供は要件を満たさないと解釈されるリスクがある。クラウドベースの SDS 管理プラットフォームを導入し、常時アクセス可能な URL を商取引書類に明記するという運用が現時点のベストプラクティスと言える。

まとめ:SDS 管理を「守りの書類対応」から「攻めの信頼構築ツール」へ

SDS は法令遵守のために渋々準備する文書ではなく、自社の化学品管理水準・安全文化・グローバル対応力を可視化する「信頼の証」だ。
化学品の適正管理を行うためには有害性や適切な取扱方法などに関する情報が必須であり、化学品の譲渡・提供を行う事業者はこれらの情報を積極的に提供しにくい性質がある一方で、「事業者から事業者へ」の有害性等の情報の確実な伝達の必要が認識されている。
[1]

化管法が定める 649 物質の網羅的な把握[1]、JIS Z 7253 が定める 16 項目の正確な記載[2]、中国向け輸出の際に求められる 24 時間緊急連絡先と中国語 SDS の整備[3]、そして NITE-Gmiccs を活用した GHS 分類業務のデジタル化[4]——これらを組み合わせた体制構築こそが、グローバル商流で選ばれ続けるサプライヤーの条件になっている。

輸出の機会が来てから「SDS どうしよう」と慌てる事業者と、輸出を見据えて先手を打っている事業者の差は、実際の商談の現場でバイヤーに見透かされる。調達・購買・技術・品質・物流の横串組織で SDS 管理プロジェクトを立ち上げ、「攻めの SDS 準備力」を競争優位として積み上げてほしい。


出典

  1. 化管法SDS制度(METI/経済産業省)
  2. 化管法SDS制度 作成・提供方法(METI/経済産業省)
  3. 化管法SDS制度 対象化学物質(METI/経済産業省)
  4. 化管法SDS 標準的な書式(JIS Z7253対応版)(METI/経済産業省)
  5. 有害化学物質の輸出(METI/経済産業省)
  6. 化学品のSDS作成支援システムの運用開始(NITE 製品評価技術基盤機構)
  7. GHS対応ラベル/SDS作成 | 化学物質管理(NITE 製品評価技術基盤機構)
  8. 化学製品の現地輸入規則および留意点:中国向け輸出(ジェトロ)
  9. 化学物質対策に関するQ&A(ラベル・SDS関係)(厚生労働省)
  10. SDS(安全データシート)解説 – 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)

※ 出典リンクは 2026 年 6 月 10 日時点でリンク到達性を確認しています。

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