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投稿日:2026年10月16日

ろう付けの指定——銀ろう JIS Z 3261・りん銅ろう Z 3264 の記号、すきまと継手、はんだ付けとの違い

この記事のポイント(結論先出し)

JIS Z 3001-3 では、450 ℃ 以上の融点をもつろうで母材をできるだけ溶かさずに接合するのがろう付、450 ℃ 未満のはんだで行うのがはんだ付で、どちらもぬれと隙間の毛管現象を使う[1]。ろう材は銀ろう(JIS Z 3261・17 種類)、りん銅ろう(JIS Z 3264・6 種類)、銅及び銅合金ろう(JIS Z 3262・9 種類)、アルミニウム合金ろう(JIS Z 3263)と規格が分かれ、BAg-8 のような記号でろう付温度の目安まで決まっている[2][3][4][5]。継手の強さはろうの強さだけでは決まらず、すきまと欠陥で大きく変わる[7]。ニッケルろう BNi-2 の継手では、すきま 10 μm で約 600 MPa あった強度が 50 μm 以上で約 130 MPa まで下がった報告もある[8]。発注では、ろうの種類(記号)・ろう付方法・すきまの公差・確かめ方(JIS Z 3192 の試験や気密試験)を書く[6]。

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この記事は、熱交換器や配管、電気部品、工具など、ろう付けを含む工業部品を外部に発注するときに、何を図面と仕様書に書き、何を確かめるかを扱う。装飾品の銀ろう付けや、電子基板のはんだ付けの作業手順の話ではない。

母材を溶かして接合する溶接の方法の選び方は同じ束のTIG 溶接と MIG 溶接の違いと発注での指定で、溶接材料の規格は溶接棒・溶接ワイヤの規格と記号の読み方で扱う。溶接を含む部品の発注で決めること(技能者の資格や検査)は溶接を含む部品の発注で指定することにまとめてある。

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ろう付・はんだ付・溶接の違い

2025 年 12 月に改正された JIS Z 3001-3(溶接用語-第 3 部:ろう接)は、ろう接を「はんだ又はろうを用いて母材とのぬれ現象及び隙間の毛管現象を利用し,母材をできるだけ溶融しないで接合する方法」と定義し、はんだ付とろう付の総称としている[1]。はんだ付は 450 ℃ 未満の低い融点をもつはんだを、ろう付は 450 ℃ 以上の融点をもつろうを用いる接合方法である[1]。英語ではろう付が brazing、はんだ付が soldering で[1]、海外の仕入先にはこちらの語で伝わる。

真空学会誌の解説「ろう付の基礎」は、ろう付と溶融溶接との基本的な違いを、ろう付では母材がほとんど溶けないことに置いている[7]。微視的にはろうが母材を溶かしているが、その程度は 1〜10 μm と小さい[7]。同じ解説は、ろう付の特徴として次を挙げている[7]。

1. 寸法精度とひずみ
母材がほとんど溶けないので寸法精度がよく、ひずみが少なく、薄板や精密な接合ができる。ただし、ろうと母材の組合せによっては著しい侵食が起こる場合がある。

2. 多数箇所・複雑形状
ぬれでろうが狭いすきまに入るので、接合部が多数ある複雑な形状の接合が容易で、自動化や大量生産に向く。一方で欠陥の制御が少し難しい。

3. 異種材料
母材どうしが溶け合う必要がないので、ろうと条件を選べば特殊な材料や異種材料の接合が融接より容易である。

4. 見えない箇所・気密・広い面積
トーチや溶接棒が届かないところの接合や、気密性の高い接合、広い面積の接合もしやすい。

購買の立場で言い換えると、ろう付は「熱で形が崩れては困る部品」「接合箇所の多い部品」「異なる金属をつなぐ部品」で選ばれやすく、その代わりに中のすきまにろうが行き渡ったかを外から見て判断しにくい工法である。だから、作り方と確かめ方を発注の段階で決めておく必要がある。

ろう材の JIS と記号

ろう材の規格は成分で分かれている。銀ろうは JIS Z 3261 で 17 種類[2]、りん銅ろうは JIS Z 3264 で 6 種類[3]、銅及び銅合金ろうは JIS Z 3262 で 9 種類[4]、アルミニウム合金ろうとブレージングシート(アルミ合金の板にろうを圧延でクラッドしたもの)は JIS Z 3263 に規定がある[5]。銀ろう・りん銅ろう・銅ろうは、JIS の記号 A(BAg-8 など)と、ISO 3677 による記号 B(B-Ag72Cu-780 のように成分と固相線・液相線の温度を並べたもの)を併記している[2][3][4]。

規格の表から何種類かを抜き出すと次のとおりである。温度は規格に「参考」として載っている値である。

種類(記号 A) 主な成分 固相線/液相線(約・℃) ろう付温度(参考・℃)
BAg-1(銀ろう)[2] Ag 44〜46 %、Cd 23〜25 % を含む 605/620 620〜760
BAg-7(銀ろう)[2] Ag 55〜57 %、Cu・Zn・Sn 620/650 650〜760
BAg-8(銀ろう)[2] Ag 71〜73 %、残部 Cu 780/780 780〜900
BCuP-2(りん銅ろう)[3] P 6.8〜7.5 %、残部 Cu 710/795 735〜845
BCuP-5(りん銅ろう)[3] Ag 14.5〜15.5 %、P 4.8〜5.3 % 645/800 705〜815
BCu-1(銅ろう)[4] Cu 99.90 % 以上 1 083/1 083 1 095〜1 150
BA4343(アルミ合金ろう)[5] 合金番号 4343 577/615 600〜620

同じ「銀ろう」でもろう付温度は 600 ℃ 台から 900 ℃ まで開きがあり、母材の熱処理や組立済みの部品への影響が変わる。図面に「銀ろう付」とだけ書くのは、温度の条件を仕入先任せにするのと同じである。アルミのろう付は、BA4343 のろう付温度 600〜620 ℃ に対して、ブレージングシートの心材として規格に載る 3003 の固相線が 643 ℃ と[5]、母材が溶け始める温度との差が小さい。温度管理の能力を仕入先に確かめる理由になる。

りん銅ろうと銀ろうの使い分け

前出の解説は、りん銅ろうはりんが銅の酸化物を還元するのでフラックスを使わずに純銅をろう付できるが、黄銅などの銅合金にはフラックスが必要だと説明している[7]。銀ろうは、マグネシウムとアルミニウム以外の広い範囲の金属のろう付に使われ、一般にフラックスを必要とする[7]。ニッケルろうは高温強度・耐酸化性・耐食性に優れ、ステンレス鋼やニッケル基・コバルト基合金の耐熱部品に使われ、ろう付は普通真空中か水素などの還元性雰囲気で行われる[7]。銅や銅合金の母材の選び方は同じ束の無酸素銅とタフピッチ銅の違いと銅合金の材料記号と質別の指定で扱っている。

カドミウムを含む銀ろう

JIS Z 3261 の 17 種類のうち、BAg-1、BAg-1A、BAg-2、BAg-3 の 4 種類はカドミウムを 15〜25 % 程度含む成分になっている[2]。規格は、包装に亜鉛・カドミウムのヒュームと金属アレルギーに対する注意を表示しなければならないとしている[2]。顧客から含有化学物質の制限を求められている製品なら、銀ろうの種類を記号で指定し、カドミウムを含む種類を使わないことを書く(当方の提案)。含有化学物質の確かめ方はRoHS への適合を仕入先から確かめるで扱っている。

ろう材の形と呼び方

銀ろう・りん銅ろう・銅ろうの形状は、帯状(R)、線状(W)、棒状(B)、粒状・粉末状(P)、プリフォーム(F)で表す[2][3][4]。銀ろうとりん銅ろうでは、線状と棒状の径 1.0〜5.0 mm の許容差は ±3 % で、それ以外の寸法は当事者間の協定による[2][3]。製品の呼び方は、ろうの種類、形状、寸法による[2]。自社でろう材を支給するときや、仕入先のろう材を固定したいときは、この呼び方で書けば足りる。

すきまと継手で強さが決まる

前出の解説は、ろう付継手では母材よりろうの強度が低いのが普通だが、継手の強度はろうの強度で決まるわけではなく、形状が同じで欠陥がなければ、一般に母材の強度が高いほど、また接合部のろうの厚さが薄いほど継手の強度は高くなる、と説明している[7]。狭いすきまに挟まれたろうの変形が母材に拘束されて破断しにくくなるためで、接合すきまを適正にして健全にろう付すれば、継手の強度はろう自体より高く、母材並みにすることもできるとしている[7]。

すきまが広すぎると何が起きるかは、ニッケルろうの例がはっきりしている。ステンレス鋼 SUS316 を真空中でろう付した溶接学会論文集の研究では、すきま 10 μm ではニッケルろう BNi-2・BNi-5 とも約 600 MPa の継手強度だったが、BNi-2 はすきまが大きくなるにつれて急激に下がり、30 μm で約 300 MPa、50 μm 以上で約 130 MPa になった[8]。同じ論文は、ぜい性の組織が生じないすきまの上限は BNi-2・BNi-5 で 20〜40 μm 程度とする先行研究を引き、それを超えるすきまでは継手強度が大きく下がることを確かめている[8]。ただし、すべてのろうで同じように効くわけではない。溶接学会誌の資料は、すきまと強度の関係を認めた研究が多い一方で認めない結果も意外に多く、とくに母材がろう材より軟らかいか弱い場合に多いようだ、と整理している[9]。

試験の側でも、すきまは条件として固定される。ろう付継手の引張・せん断試験方法の JIS Z 3192 は、試験材のろう付継手のすきまを、ろうの種類によって異なるが 0.01〜0.3 mm の範囲とし、試験結果を比べるときはほぼ同一すきまのものを選ぶよう求めている[6]。これは試験片を作るときの条件であって、製品の設計値を決めるものではない。製品のすきまは、ろうの種類とろう付方法に合わせて設計側で決め、図面に寸法と公差で書く。

継手の設計で発注側が見ておくこと

前出の解説が設計の注意点として挙げているのは、次のようなことである[7]。重ね継手が最も多く使われ、突合せ継手は高い強度を要するところにはあまり使わない。重ね継手の端のフィレットは応力集中の場所になりやすく、きれいなフィレットができると応力集中は数分の一に減り、疲労強度にも効く。フラックスが残ると欠陥になるので逃げ口を作る。中空容器などでは加熱で膨張した空気が逃げられないと接合できないことがある。熱容量の極端に違う部材の組合せでは接合部の温度が上がらないことがあり、母材が十分にろう付温度に達してからろうが溶けるようにすべきで、先にろうが溶ける設計にしてはいけない[7]。

図面を受け取った仕入先から、すきまや継手形状の変更を提案されることがある。その場合は、強度・気密・寸法への影響を設計側が判断してから受け入れる。

発注書・仕様書に書くこと

次の項目を書いておくと、見積の前提と受入の判定がそろう(当方の提案)。

1. ろうの種類
JIS Z 3261・Z 3264・Z 3262・Z 3263 の記号で書く[2][3][4][5]。カドミウムなどの制限があれば書き添える。

2. ろう付方法と雰囲気
JIS Z 3001-3 には、トーチろう付、炉内ろう付、誘導加熱ろう付、真空ろう付、雰囲気ろう付、置きろう付・差しろう付などの用語がある[1]。方法を固定する理由があるなら、この用語で書く。フラックスを使う場合は、残渣の除去も指定する。前出の解説は、ろう付後にフラックスや反応生成物の残渣が吸湿すると母材を腐食させるおそれがあるので後処理が必要だとしている[7]。

3. すきまと継手形状
はめあい部の寸法と公差で、ろう付前のすきまが決まるように書く。

4. 確かめ方
強度を確かめるなら、JIS Z 3192 の試験片の種類(1 号〜4 号)と試験の種類を指定する[6]。同規格は試験結果の記録に、ろうの種類、フラックスまたは雰囲気の種類、ろう付方法(加熱方法・ろう付温度・ろう付時間など)を含めるとしている[6]。量産の部品で毎回破壊試験はできないので、量産前の条件確認として求めるのが現実的である。気密が要る部品は、同じ束の気密試験・リークテストを仕様に入れるときで扱う試験方法を合わせて指定する。

5. 作業者
銀ろう付には技能者の評価試験の区分がある。資格の区分の考え方は溶接を含む部品の発注で指定することで扱っている。

6. 変更の連絡
ろうの種類、ろう付方法、炉や治具の変更は、継手の状態を変えうる。変える前に連絡し、承認を受けることを書いておく。

よくある質問

Q. 「ろう付け」と「ろう付」のどちらで書けばよいですか。
JIS Z 3001-3 の用語は「ろう付」である[1]。JIS Z 3261 などのろう材の規格本文では「ろう付け」とも書かれている[2]。どちらでも意味は同じなので、社内の書式に合わせればよい。

Q. はんだ付と比べて、何が違うと考えればよいですか。
線引きはろうの融点で、450 ℃ 以上がろう付、450 ℃ 未満がはんだ付である[1]。ろう付は接合時の温度が高く、母材の熱処理状態や組み込まれた部品に影響しうる。その代わり、継手の強度や耐熱性で選ばれることが多い。

Q. 外観でろうが回っていれば合格と考えてよいですか。
外に見えるフィレットは、すきまの中にろうが行き渡ったことを示すとは限らない。ろう付は欠陥の制御が少し難しいとされ[7]、すきまが広すぎれば強度が大きく下がる例もある[8]。量産前に断面を切って充てん状態を見る、試験片で強度を確かめるといった確認を、条件を決める段階で行う。

Q. 支給したろう材の成分を確かめる方法はありますか。
銀ろうとりん銅ろうの化学分析試験は、それぞれ JIS Z 3901・JIS Z 3903 によるとされ、包装には種類・形状と寸法・質量・製造番号・製造年月・製造業者名を表示しなければならない[2][3]。受入では、包装の表示と注文した記号が合っているかを見る。

まとめ

ろう付は 450 ℃ 以上の融点をもつろうで母材をできるだけ溶かさずに接合する方法で、450 ℃ 未満のはんだを使うはんだ付とは融点で分かれる[1]。ろう材は銀ろう・りん銅ろう・銅ろう・アルミ合金ろうで JIS が分かれ、記号でろう付温度の目安まで決まる[2][3][4][5]。継手の強さはすきまと欠陥で大きく変わり[7][8][9]、試験でもすきまをそろえて比べる[6]。発注では、ろうの種類、ろう付方法、すきまの公差、確かめ方、変更の連絡を書く。

出典・参考資料

  1. JIS Z 3001-3:2025 溶接用語-第 3 部:ろう接(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2025 年 12 月改正)
  2. JIS Z 3261:1998 銀ろう(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1998 年 5 月改正・2023 年 10 月確認)
  3. JIS Z 3264:1998 りん銅ろう(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1998 年 5 月改正・2023 年 10 月確認)
  4. JIS Z 3262:1998 銅及び銅合金ろう(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1998 年 5 月改正・2023 年 10 月確認)
  5. JIS Z 3263:2002 アルミニウム合金ろう及びブレージングシート(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2002 年 3 月改正・2021 年 10 月確認)
  6. JIS Z 3192:1999 ろう付継手の引張及びせん断試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1999 年 3 月改正・2024 年 10 月確認)
  7. ろう付の基礎(恩澤忠男/真空 39 巻 5 号/1996 年)
  8. Ni-Cu 基ろうによるステンレス鋼ろう付継手の機械的特性(斎藤慎二・茅本隆司・恩澤忠男/溶接学会論文集 17 巻 1 号/1999 年)
  9. ろう付継手の強度試験方法(和田次康/溶接学会誌 37 巻 7 号/1968 年)

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