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投稿日:2026年10月17日

疲労試験の依頼で決めること——JIS Z 2274・Z 2275 の条件と S-N 曲線の読み方

この記事のポイント(結論先出し)

疲労試験は「疲労試験をしてください」では見積もりが出ない。丸棒の回転曲げは JIS Z 2274、板の平面曲げは JIS Z 2275、ひずみを制御する低サイクル疲労は JIS Z 2279 と、方式ごとに規格が分かれている[1][2][3]。JIS Z 2275 は、試験の前に試験片の形状・応力比・試験の目的・本数と順序・打切りの繰返し数を受渡当事者間で合意しなければならないとし、打切りは構造用鋼で 107 回、その他の鋼と非鉄合金で 108 回が一般的だと注記している[2]。試験片の表面の仕上げで結果が変わるので、回転曲げでは平均粗さ Ra を 0.2 μm 未満に規定することが望ましいとされる[1]。指定した値以上の疲労強度を確かめる「3 本非破断」の方法は、破断確率の推定値が 50 % よりかなり小さくなる応力レベルを求めることになる[1]。

この記事は、材料や部品の疲労試験を試験機関・仕入先に依頼するとき、また仕入先から疲労試験の結果を受け取るときに、何を決め、報告書の何を確かめるかに絞る。引張試験の指定は引張試験(JIS Z 2241)を発注・受入で指定するときで扱った。

まず方式を選ぶ:どの JIS で試すか

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金属材料の疲労試験の JIS は、負荷のかけ方で分かれている。依頼の最初に、どの方式の結果が欲しいのかを決める。

規格 試験の形 規格にある数値
JIS Z 2274:2024 金属材料の回転曲げ疲労試験方法 円形断面の試験片を回転させながら一定の曲げモーメントを加える。1 回転が応力 1 回の繰返し[1] 繰返し速度は通常 15〜200 Hz(毎分 900〜12 000 回)。推奨直径 4・6・8・10 mm[1]
JIS Z 2275:2026 金属平板の平面曲げ疲労試験方法 長方形・面取り断面の板の試験片に、一定振幅のモーメント・試験力・変位を加える。様々な応力比で試せる[2] 室温(理想的には 10〜35 ℃)。打切りは構造用鋼 107 回、その他の鋼・非鉄合金 108 回が一般的[2]
JIS Z 2279:2026 金属材料のひずみ制御疲労試験方法 一定振幅・一定温度・一定ひずみ比のひずみ制御で、試験片を単軸に変形させる[3] 低サイクル疲労は疲労寿命がおおむね 104 回以下の疲労と定義[3]

JIS Z 2274 は、室温または高温の大気中で試験片を回転させる方式の規格で、規格が推奨する以外の大小の試験片や、実物の機械要素と同じ形状の試験片を用いる場合、低温や特殊な雰囲気で試す場合にも、この規格を準用してよいとしている[1]。板金部品やばね板のように板のまま使う部品なら平面曲げ、起動・停止の繰返しや熱の繰返しで大きなひずみがかかる部品ならひずみ制御、と、部品の使われ方に近い方式を選ぶ。

切欠き試験片は、JIS Z 2274 も JIS Z 2275 も適用対象としていないが、規定している手順は切欠き試験片の疲労試験にも適用(準用)してよい、としている[1][2]。切欠きの形状は規格では決まっていないので、使うなら図面で渡す。

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試験を始める前に合意すること

JIS Z 2275 の箇条 6 は、関連する製品規格に別段の指定がない限り、試験を開始する前に受渡当事者間で次の事項について合意しなければならない、としている[2]。

1. 試験片の形状
規格の図のどれを使うか。

2. 応力比
1 サイクル中の最小応力と最大応力の比(Rσ=σmin/σmax)[2]。部品が両振りで使われるのか、片振りで使われるのかで変わる。

3. 試験の目的
指定した応力振幅での疲労寿命を求めるのか、指定した寿命での時間強度を求めるのか、全寿命域の S-N 曲線を求めるのか[2]。

4. 試験片の本数と試験の順序

5. 破損しなかった試験片の試験を終了する繰返し数
構造用鋼は 107 回、その他の鋼と非鉄合金は 108 回が一般的とされる[2]。JIS Z 2274 も、打切りの繰返し数は材料と製品規格または受渡当事者間の協定によって事前に定めておくことが望ましいとしている[1]。

この 5 項目は平面曲げの規格の要求だが、回転曲げやひずみ制御でも見積の前提になる。試験機関に依頼するときは、この 5 項目を書いた依頼書を最初に出すと、見積の条件がそろう。

試験片の作り方で、結果が変わる

JIS Z 2274 は、試験片の表面状態が試験結果に影響を与え、その影響は表面粗さ、残留応力、材料の微視組織の変化、コンタミネーション(異物の混入)に関連する、としている[1]。どのような試験条件でも、平均粗さ Ra を 0.2 μm(または同等の値)未満に規定することが望ましく、20 倍程度の低倍率の検査で円周方向のきずや異常が認められてはならない、とする[1]。研削は最終直径+0.1 mm から 0.005 mm/pass 以下で行い、最後の 0.025 mm を粒度を小さくした研磨材で除き、最終的な研磨の方向は試験片の軸方向でなければならない[1]。フィレット部から平滑部への移行部に目に見えるアンダーカット(削り込み)があってはならない[1]。

熱処理は一般に粗加工した試験片に行い、その後に最終的な機械加工と研磨を行うことが望ましい[1]。熱処理と機械加工の手順の詳細は試験結果とともに報告しなければならない[1]。試験片の加工を仕入先や加工業者に任せるときは、これらの条件を加工の仕様として渡す。加工の条件が違う試験片の結果は、比べられない。

採取の位置と方向も結果を左右する。JIS Z 2274 は、半製品または部品からの試験片の採取位置と方向が結果に大きな影響を及ぼすことがあるため、各試験片に固有の識別番号を付け、採取位置を記録した採取図を作らなければならない、としている[1]。鋼材から採る場合の採取位置は JIS G 0416 に定めがあり、注文時に合意した受渡し条件や製品規格の受渡し条件がこれと異なる場合は、通常そちらを適用する[4]。

表面処理の影響を見たいなら、それを目的として書く

上の加工の推奨は「材料固有の性質」を調べる試験のためのものである。JIS Z 2274 は、試験プログラムが表面処理や酸化などの特定の要因の影響を調べることを目的としている場合は推奨から逸脱してよく、全ての場合にその逸脱を試験報告書に記載しなければならない、としている[1]。JIS Z 2275 も、実際の用途で使用する表面状態を考慮しなければならない場合は、試験部の少なくとも一つの最大応力面を未加工のままにしておくことが望ましい、としている[2]。

めっき・ショットピーニング・黒皮のままの表面など、実際の部品の表面で疲労強度がどうなるかを知りたいなら、その表面状態の試験片で試すことを依頼書に書く。研磨した試験片の疲労限度を、表面処理をした部品にそのまま当てはめてはいけない。めっきの仕様の決め方は亜鉛ニッケル合金めっきの指定や銅めっきの指定で扱った。

試験中の条件:速度・発熱・再使用

JIS Z 2274 は、高い繰返し速度では試験片が自己発熱して疲労寿命に影響することがあり、自己発熱が起きたら繰返し速度を下げることを推奨し、室温試験で試験片温度が 35 ℃ を超える場合は温度を測定して報告しなければならない、としている[1]。疑義がある場合は、繰返し速度と温度の影響がないことを示すために、より低い繰返し速度と温度で参照試験を行わなければならない[1]。

既に繰返し応力を受けた試験片は、107 回まで負荷して破断しなかったものであっても再使用してはならない[1][2]。未破断の試験片を別の応力レベルで試し直して本数を節約すると、結果が未使用の試験片と同等にならない。破断の位置が試験部の外側にある場合、その結果は無効になる[1]。

本数と、結果の読み方

JIS Z 2274 の附属書 JC(参考)は、S-N 図を得るために多くの応力レベルで試験を行う場合、隣り合う二つの応力の比を、S-N 曲線の傾斜部分では 1.05〜1.5、疲労限度の付近では 1.02〜1.05 となるように選ぶことが望ましいとしている[1]。S-N 曲線によらずに時間強度や疲労限度を求める場合は、各応力レベルで 2 本以上の試験片を試験するのがよい、としている[1]。S-N 曲線は外挿によって引いてはならない[1]。試験していない繰返し数の強さを、曲線を延ばして読まない。

「この値以上の疲労強度があることを確かめたい」という依頼には、3 本非破断の方法を使ってよい。指定した繰返し応力で 3 本を試験し、いずれも所定の繰返し数で未破断であることを示す方法である[1]。ただしこの方法は 3 本とも未破断になる応力レベルを求めることになるので、その応力レベルでの破断確率の推定値は 50 % よりかなり小さくなる、と規格は注意している[1]。材料の疲労限度の平均的な値とは別物である。

二つの材料を比べるときにも落とし穴がある。同じ附属書は、材料や試験条件の異なる S-N 曲線は一般に平行にならないので、2 種類以上の材料の疲労強度を比べる場合は、その疲労強度を定めた繰返し数で直接求めた値を用いることが望ましく、ある繰返し数での差が別の繰返し数でも認められるとは限らない、としている[1]。材料の置き換えで「107 回の強さが同じだから同等」と判断するなら、部品が使われる繰返し数でも確かめる。

測定の不確かさの扱いにも定めがある。JIS Z 2274 は、見積もった不確かさを製品規格の規定値と組み合わせることは、合格の製品を不合格とする危険性があるため不適切だとしている[1]。

報告書に求める項目

JIS Z 2274 は、疲労試験報告書の必須項目として、試験した材料とその金属学的特性、試験片番号、試験片の採取位置と方向、熱処理と機械加工の手順、応力の負荷方法と試験機の種類、試験片の種類・寸法・表面状態、応力繰返し速度、試験温度(自己発熱で 35 ℃ を超える場合はその温度)、室温と相対湿度の最大・最小値、試験終了の判断基準、試験条件との差異、試験結果を挙げている[1]。S-N 図には、破断しなかった試験片の点に右向きの矢印を付ける[1]。受け取った報告書は、この項目が揃っているかから確かめる。打切りの繰返し数と未破断の印が無い S-N 図は、読み方を誤りやすい。

依頼書の書き方の例

「試験方法:JIS Z 2274 による回転曲げ疲労試験(4 点負荷)。材料は支給する S45C 調質材(ミルシート添付)、試験片は JIS Z 2274 の平滑試験片・直径 8 mm、図に示す位置・方向から採取し採取図を作成すること。表面は Ra 0.2 μm 未満、最終研磨は軸方向。目的は 107 回の時間強度の決定、打切り 107 回、応力レベルごとに 2 本以上。未破断の試験片は再使用しないこと。報告は JIS Z 2274 の箇条 11 の必須項目による。」

よくある質問

107 回で破断しなかったら、無限に壊れないと考えてよいですか

言えない。JIS Z 2274 は S-N 曲線を外挿して引いてはならないとしている[1]。打切りの繰返し数は、材料と製品規格や協定で決めるものである[1][2]。部品の使用回数がそれを超えるなら、打切りの回数を上げることを検討する。

試験片の本数を減らしたいのですが

時間強度や疲労限度を S-N 曲線によらずに求めるなら、各応力レベルで 2 本以上がよいとされる[1]。本数を減らすと、得られる値のばらつきの評価ができなくなる。

実物の部品で疲労試験をしてもらえますか

JIS Z 2274 は、実物の機械要素と同じ形状の試験片を用いる場合にもこの規格を準用してよいとしている[1]。ただし負荷のかけ方と治具は部品ごとに決める必要がある。

まとめ

疲労試験は方式で規格が分かれる。丸棒の回転曲げは JIS Z 2274、板の平面曲げは JIS Z 2275、ひずみ制御は JIS Z 2279 である[1][2][3]。試験の前に、試験片の形状・応力比・目的・本数と順序・打切りの繰返し数を合意する[2]。試験片の表面と熱処理の順序で結果が変わるので、加工の条件を渡し[1]、表面処理の影響を見たいならそれを目的として書く[1][2]。未破断の試験片は再使用せず、S-N 曲線は外挿しない[1]。3 本非破断の結果は平均的な疲労限度とは違う[1]。

同じ束では、曲げ試験とX 線 CT 検査の指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS Z 2274:2024 金属材料の回転曲げ疲労試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  2. JIS Z 2275:2026 金属平板の平面曲げ疲労試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 6 月 22 日改正)
  3. JIS Z 2279:2026 金属材料のひずみ制御疲労試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 9 月 24 日改正)
  4. JIS G 0416:2023 鋼及び鋼製品-機械試験用供試材及び試験片の採取位置並びに調製(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)

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