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X 線 CT 検査を外注するとき——巣を見る検査と内部寸法の計測を分けて指定する

この記事のポイント(結論先出し)
工業製品の X 線 CT 検査を外注するときは、巣やき裂を「見る」検査か、内部の寸法を「測る」計測かを最初に分ける。産総研の調査報告は、検査用の X 線 CT は結果として欠陥などの寸法が得られてもその値の計測精度が保証されていなかったと書き、計測用 X 線 CT についても測定精度の評価法とトレーサビリティに課題があるとしている[3]。JIS B 7442 は、空間分解能もコントラスト分解能もワークの材質・大きさなどに依存するので、明記するにはそれらを併記する必要があるとしている[1]。だから発注では、目的・対象部位・見つけたいきずの大きさ・判定基準・納品するデータを書く。分解能より小さい巣は写らず、金属の多い部品ではメタルアーチファクト(偽の像)が出る[1]。
この記事は工業用の X 線 CT(産業用 X 線 CT)を扱う。医療の CT とは別の話で、鋳物・ダイカスト・樹脂成形品・電子部品・組立品の内部を、発注側として検査や計測に使うときに、何を指定し、受け取った結果の何を確かめるかに絞る。非破壊検査の方法全般の選び方は非破壊検査を発注で指定するときで扱った。
目次
X 線 CT で何が得られるか
JIS B 7442(産業用 X 線 CT 装置-用語)は、CT(コンピュータ断層撮影法)を、ワーク断面の全周方向から得た放射線投影データによって画像を再構成し、断面画像を得る手法と定義している[1]。断面画像の画素の値は、原理的に線減弱係数(X 線がどれだけ弱められるか)に対応する値で、医療用ではそれを空気-1 000、水 0 の CT 値に校正して使うが、産業用 X 線 CT では必ずしもそうではなく、任意単位が一般的である[1]。
非破壊試験用語の JIS Z 2300 にも X 線 CT の用語の区分があり、CT を試験体断面の全周方向から得た放射線投影データを画像再構成して断面画像を得る手法としている[2]。放射線透過試験(RT)が透過した一枚の像で内部を見るのに対し、CT は断面とその積み重ね(ボリュームデータ)を得る。産総研の報告は、計測用 X 線 CT をワークの外形だけでなく内部の形状・寸法を測定可能な唯一の方式とし、自動車のエンジンなど内部形状が重要な工業製品や、接触式・光学式では測りにくい微小な凹凸の測定に応用が期待されている、としている[3]。
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「見る」と「測る」は別の依頼として書く
X 線 CT は、もともと医療の観察装置として開発され、工業製品の非破壊検査や欠陥検査に使われるようになった。産総研の報告は、それらの用途の目的は検査であり、検査結果として欠陥などの寸法が得られても、その値の計測精度は保証されていなかった、と書いている[3]。そのうえで、計測機器として設計され計測精度を保証した計測用 X 線 CT が市販され始めたものの、測定精度やトレーサビリティの確保に問題がある、としている[3]。
発注の実務に置き換えると、次のようになる。
見る(欠陥の検査)
巣(ポロシティ)、き裂、異物、組立の状態(部品が入っているか、はまっているか)を確かめる。判定は「あるか・ないか」「大きさがしきい値を超えるか」になる。
測る(寸法の計測)
内部の穴の位置、肉厚、組み付けた状態のすき間などを数値で出す。結果は図面の公差と比べることになるので、測定の精度が問題になる。
依頼書でこの二つを区別しないと、検査用の装置で撮った断面画像から寸法を読み、その値を公差の判定に使う、ということが起きる。寸法で合否を決めるなら、計測用として使う装置か、測定の精度をどう表しているかを仕入先に確かめる。
測る場合の精度は、条件ごとに確かめる
産総研の報告は座標測定機を 3 方式に分け、接触式の CMM は測定精度が数 μm 程度で 3 方式の中で最も高く、光学式は高精度なものでも 10 μm 程度、計測用 X 線 CT は限られた条件下で 10 μm 程度を表記しているメーカが現れているが、数値の客観性に課題がある、としている[3]。
| 方式 | 報告にある測定精度の目安 | 内部の形状 |
|---|---|---|
| 接触式 CMM | 数 μm 程度(3 方式で最も高い)[3] | 測れない |
| 光学式 CMM | 高精度なものでも 10 μm 程度[3] | 測れない |
| 計測用 X 線 CT | 限られた条件下で 10 μm 程度を表記するメーカがあるが、客観性に課題(2016 年の報告時点)[3] | 測れる |
表の値は 2016 年の報告の時点の整理で、装置の性能を保証する数字ではない。同じ報告は、測定精度の算出方法がメーカごとに異なり、一部のメーカはドイツの VDI/VDE 2630-1.3 などのガイドラインに従って算出しているが、それが X 線 CT の測定能力を正確に反映しているかについて国際的な合意が取れていない、としている[3]。仕入先が精度の数字を示したら、どの方法で、どの条件で求めた値かを聞く。
測り方そのものでも結果は変わる。青森県産業技術センターの研究報告は、アルミ製の段差形状の試験片を CMM で精密測定した値を基準に X 線 CT の寸法測定の誤差を調べ、断面画像上で測定箇所の始点と終点を手動で指定する方法では、撮影条件や試料台への設置状態、手動の設定で精度が左右されやすく、どの条件でも測定ごとのばらつきが 0.05 mm 以上と大きかった、と書いている[4]。一方、撮影データを変換して三次元計測ソフトの自動フィッティングで測ると、撮影条件と設置状態を最適化することで、測定誤差を 0.05 mm 以内にできたとしている[4]。寸法を依頼するなら、測り方(手動で断面上を測るのか、三次元データに形状を当てはめて測るのか)まで決めておく。
温度も効く。産総研の報告は、長さ測定の標準温度が 20 ℃ に定められているので測定対象を 20 ℃ で一定に保つことが不確かさの低減に重要で、外部からの振動も誤差の要因になる、としている[3]。
見る場合は、見つけたい大きさから決める
検査で使うときに先に決めるのは、どの大きさのきずを見つけたいかである。JIS B 7442 は、空間分解能を位置的に接近した 2 点を独立した 2 点として識別できる最小の間隔とし、X 線 CT の空間分解能は装置の MTF 特性と画像雑音に依存し、ワークの材質・大きさ・評価した位置の影響を受けるので、空間分解能を明記するにはこれらを併記する必要がある、としている[1]。コントラスト分解能(濃度の差をどこまで見分けられるか)も、ワークの材質と大きさ、画像処理の有無、計測時間などに依存する[1]。
X 線の焦点の大きさも分解能に関わる。JIS B 7442 は実効焦点寸法の大きさによる呼び名を、おおむね 0.5 mm 以上の普通焦点(ミリフォーカス)、おおむね 0.1〜0.5 mm のミニフォーカス、100 μm 未満のマイクロフォーカス、おおむね 1 μm 未満のナノフォーカスと示している[1]。産総研の報告は、高エネルギーの X 線 CT は実効焦点サイズが大きくなるため分解能が低く、低エネルギーの X 線 CT は小さな実効焦点サイズを実現し得るため分解能が高い、と整理している[3]。厚い鉄の部品を透過させながら微小な巣を見ることは、両立しにくい。
透過できる厚さにも上限がある。JIS B 7442 は透過可能厚さを、検出系の測定レンジの下限になるときの透過距離に相当するワークの厚さとし、表記するときは材質を必ず明記する必要があるとして「100 mm(アルミニウム材質の場合)」の例を挙げ、これを超えるワークでは有効な計測ができず画像にアーチファクトが発生する、としている[1]。仕入先に装置の能力を聞くときは、材質と厚さを添えて聞く。
写らないもの・偽の像が出るもの
CT の断面画像には、ワークに存在しない像(アーチファクト)が出ることがある。JIS B 7442 は、金属など X 線減弱係数の大きい物質の存在によって発生するメタルアーチファクトを、金属部分から放射状にノイズが発生するもの、としている[1]。連続スペクトルの X 線源では低いエネルギーの X 線が多く減弱する線質硬化(ビームハードニング)によるアーチファクトは不可避で、ワークによる減弱が大きく透過光子数が不足すると、ストリーク状のアーチファクトも出る[1]。部分体積効果によるアーチファクトは端面で顕著になる[1]。
発注で問題になるのは、次の二つの組合せである。
1. 分解能より小さい巣を「無い」と判定する
写らない大きさの巣は、写真に無くても部品に無いとは限らない。「巣なきこと」と書くなら、どの大きさ以上の巣を対象にするかを決め、その大きさが見える条件で撮ってもらう。
2. 金属を含む部品で、偽の像をきずと判定する
樹脂に金属のインサートが入った部品や、金属と樹脂の組立品では、メタルアーチファクトがきずのように見えることがある。判定の前に、偽の像の可能性を仕入先と確かめる。
判定基準は、発注側が図面で決める
溶接部の放射線透過試験には、JIS Z 3104 のように透過写真の像質を A 級・B 級などに分ける規格がある[5]。CT による内部欠陥の受入については、この記事で確かめた JIS(用語の規格)に合否の基準は無い[1][2]。鋳物やダイカストの巣の受入基準は、発注側が図面か仕様書で決めることになる。その考え方は鋳物の材質と内部欠陥の受入基準で扱った。
CT で受け入れる場合、図面か仕様書に書いておきたいのは次の点である。
1. 対象の部位
全体か、シール面・ねじ穴の周り・薄肉部など特定の部位か(JIS B 7442 の用語では関心領域)[1]。
2. 許す巣の大きさと数
最大の大きさ、部位ごとの個数、表面からの距離。
3. 撮影の条件
ボクセルサイズ(ボリュームデータの最小単位の寸法)[1]、または見つけたいきずの大きさから仕入先に決めてもらう、のどちらか。
4. 抜取りの方法
全数か、初品だけか、ロットごとに何個か。
5. 納品物
断面画像だけか、ボリュームデータか、寸法を出すなら点群やポリゴンデータ(STL など)か。JIS B 7442 は、ボリュームデータからポリゴンデータに変換できるとしている[1]。どの形式で受け取るかで、後で自社で見直せる範囲が変わる。
依頼書の書き方の例
「目的:ADC12 ダイカスト品のシール面周辺の巣の有無の確認(寸法計測は含まない)。対象部位は図に示す範囲。直径 0.3 mm 以上の巣を検出できる条件で撮影し、撮影条件(管電圧・管電流・ボクセルサイズ・焦点の種類)を報告すること。判定基準は図面の注記による。納品物は断面画像(指定位置 3 断面)とボリュームデータ。金属インサート部の像はアーチファクトの可能性を併記すること。」
よくある質問
CT の断面画像で測った寸法を、成績書の値にしてよいですか
検査用として撮った画像の寸法は、計測精度が保証されていないことがある[3]。公差で合否を決めるなら、精度をどの方法で求めたかを確かめ、測り方まで決める[3][4]。
CT で巣が写らなければ、巣は無いと言えますか
言えない。空間分解能はワークの材質や大きさに依存し[1]、それより小さい巣は写らない。対象にする大きさを決めて撮る。
医療用の CT 値で判定できますか
産業用 X 線 CT の画素の値は任意単位が一般的で、同じ材質でも装置によって異なる値になることがある[1]。装置をまたいで数値を比べない。
まとめ
X 線 CT の依頼は、見る(欠陥の検査)か測る(寸法の計測)かを最初に分ける。検査用の画像の寸法は計測精度が保証されていないことがあり[3]、測る場合は精度の求め方と測り方を確かめる[3][4]。見る場合は見つけたい大きさから決め、分解能はワークの材質・大きさとセットで聞く[1]。分解能より小さい巣は写らず、金属があると偽の像が出る[1]。合否の基準は規格に無いので、対象部位・許す巣・撮影条件・抜取り・納品物を図面か仕様書で決める。
同じ束では、曲げ試験、疲労試験、銅めっき、亜鉛ニッケル合金めっきの指定も扱う。接触式で測る場合の依頼は三次元測定の測定データを仕入先に求めるときを参照してほしい。
出典・参考資料
- JIS B 7442:2013 産業用 X 線 CT 装置-用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2013 年 11 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS Z 2300:2020 非破壊試験用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2020 年 11 月 20 日改正)
- 松崎和也「計測用 X 線 CT の高精度化に関する調査研究」産総研計量標準報告 Vol.9 No.3(産業技術総合研究所 計量標準総合センター/2016 年 6 月)
- 髙柳和弘・宮川大志・齋藤幸司「非破壊形状計測評価基盤技術に関する研究」(地方独立行政法人青森県産業技術センター 研究報告)
- JIS Z 3104:1995 鋼溶接継手の放射線透過試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 2 月 1 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
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