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投稿日:2026年10月17日

樹脂の着色をマスターバッチで指定するとき——希釈比・ベース樹脂・色見本の管理と受入

この記事のポイント(結論先出し)

樹脂部品の色を発注書に「色番号」だけで書くと、どの方法で着色するかが仕入先任せになる。着色には、粉の着色剤を混ぜるドライカラー、液状のリキッドカラー、着色済みのペレット(カラードペレット)、顔料を高濃度に練り込んだマスターバッチがあり、色の再現しやすさも、物性への影響も違う[2][3]。マスターバッチを使うなら、希釈比を「マスターバッチ 4 に対して樹脂 100」のように比で書く。「〇倍」という言い方は基準の取り方が 2 通りあるからである[2]。マスターバッチのベース樹脂は成形する樹脂と同じとは限らず[3]、顔料は樹脂の熱老化や耐候性に影響することがある[2]ので、着色剤とベース樹脂の変更は承認制にする。マスターバッチは成形のときの混ざり方に色が左右され、厳しい色管理には向かないとする解説もある[3]。ポリオレフィンに油溶性染料は使わない(色移行が起きる)[3]。

この記事は、工業部品の樹脂成形品に色を付けるときに、発注側として着色の方法をどう決め、仕様書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめたものである。マスターバッチの選び方が中心だが、着色の方法の比較から始める。色の測り方と色見本の持ち方の一般的な決めごとは塗装の仕様の決め方で扱ったので、ここでは樹脂の着色に特有の点に絞る。

マスターバッチは「顔料を高濃度に分散させた、薄めて使う材料」

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JIS K 6900(プラスチック-用語)は、マスターバッチを、コンパウンドを作るときに基本重合体と適量混ぜて使うための、その重合体と既知の割合の高百分率の成分(着色剤やその他の添加剤)が十分に分散された混合物、と定義している[1]。着色剤メーカーの技術者による解説(1983 年)は、マスターバッチを、樹脂の中に顔料を高濃度に分散させたもので、原則として成形に使うものと同じグレードの樹脂を使い、形はペレットで、すでに調色した顔料の組成を持ち、着色していない樹脂(ナチュラルレジン)とある比率で混ぜて成形すれば求める色が得られるもの、と説明している[2]。着色ペレットの濃縮品であり、成形工場で樹脂で薄めて使う。

JIS の成形材料の呼び方にも、着色の扱いを表す文字がある。たとえば JIS K 6934-1(ABS)のデータブロック 2 では、C が着色品、N が自然色(非着色品)を表す[6]。材料メーカーから着色済みの材料を買うのか、自然色の材料を買って成形工場で色を付けるのかは、材料の呼び方の段階から別の物である。

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着色の方法は 4 つあり、色の安定と物性への影響が違う

プラスチックの着色を扱った解説(1999 年)は、熱可塑性プラスチックの着色方法として、ドライカラー、リキッドカラー、カラードペレット、マスターバッチの 4 つを挙げている[3]。それぞれの特徴を、同じ解説と前出の 1983 年の解説から並べると次のようになる。

方法 供給される形と使い方 解説が挙げる長所 解説が挙げる注意点
ドライカラー 着色剤と分散助剤の粉。添加量に従って樹脂と混合機でまぜる 最も経済的。厳密な色管理が要らない用途ではコストの利点 粉立ちによる汚染。混ぜ方で分散の程度が変わり、色相に振れが出うる
リキッドカラー 液状の着色剤(ビヒクルに分散) ドライカラーよりよい分散 ビヒクルの物性への影響。色替えに手間がかかり、長く続けて使う場合向き
カラードペレット 樹脂と着色剤を溶融混練した、着色済みのペレット ブレンドの工程が要らず、汚染がなく、色相の再現が安定する 経済性で劣る
マスターバッチ 顔料を高濃度に練り込んだペレット。樹脂で薄めて成形する 扱いやすく、粉立ちがない。練る量が減り、加工費と熱履歴が減る ブレンドが要る。倍率が高いほど成形時の混練による分散が要る。厳しい色管理には不向き

表の内容は、1983 年[2]と 1999 年[3]の解説の記述をまとめたものである。1999 年の解説は、どの方法を採るかは、設備と労力を含めた着色のコストと、製品の色に対する要求の水準との総合判断になる、と結んでいる[3]。発注側から見ると、色の要求が厳しい外装部品と、識別ができればよい内部部品とで、同じ方法を選ぶ必要はない。どの水準の色が要るかを先に伝え、方法は仕入先に提案してもらい、決めた方法を購買仕様書に書く。

希釈比は「〇倍」ではなく比で書く

マスターバッチの使い方で取り違えが起きやすいのが、希釈比の書き方である。1983 年の解説は、マスターバッチと希釈する樹脂の混合比率を希釈比と呼び、10/100、5/100 のように表すこと、10/100 で使うものを 10 倍、5/100 で使うものを 20 倍、2/100 を 50 倍、1/100 を 100 倍のマスターバッチと呼ぶことを説明している[2]。一方で、着色ペレットを基準にして、マスターバッチと樹脂を 1/1 で使うものを 2 倍、1/9 を 10 倍と呼ぶ言い方もあり、実用上は計量の都合から分母を 100 とすることが多い、とも書いている[2]。

つまり「10 倍のマスターバッチ」は、1 対 9(全体の 10%)なのか、10 対 100(全体の約 9.1%)なのか、言い方だけでは決まらない。同じ解説が、平均の顔料濃度 0.5 phr を得るのに必要なマスターバッチの顔料濃度を計算した例を、次の表に写す[2]。

呼び方 希釈比(マスターバッチ/希釈する樹脂) 顔料 0.5 phr にするためのマスターバッチの顔料濃度
10 倍 10/100 5.5%
20 倍 5/100 10.5%
50 倍 2/100 25.5%
100 倍 1/100 50.5%

解説は、この計算が 0.5 phr を 0.5% とみなした近似であることも断っている[2]。表から分かるのは、倍率が上がるほどマスターバッチの顔料濃度が高くなり、少しの計量の狂いが色に大きく効くということである。仕様書には「マスターバッチ(品番):希釈する樹脂 100 に対して 4」のように、何に対する比かまで書く。仕入先が自動計量器で混ぜているなら、その設定値と記録の残し方も確かめておく。

ベース樹脂(ビヒクル)は、成形する樹脂と同じとは限らない

1983 年の解説は、マスターバッチには原則として成形に使うものと同じグレードの樹脂を使う、としている[2]。ただし同じ解説は、用途によって希釈する樹脂より流れやすい樹脂をベースに使う例(ポリエチレンのフィルム用など)も挙げている[2]。1999 年の解説はさらにはっきりと、高濃度のマスターバッチでは必ずしも原料と同じプラスチックに着色剤を練り込むわけではなく、原料と違う樹脂(ビヒクル)は物性への影響をまず考え、製造の加工性と分散性を検討したうえで選ぶ、と書いている[3]。

分散を助けるための滑剤(脂肪酸やその金属塩、ワックスなど)も、プラスチックの物性に影響を与える場合が多い[3]。つまりマスターバッチを入れると、成形品には顔料のほかに、ベース樹脂と分散助剤も入る。強度や難燃、食品への接触、含有化学物質の調査に関わる部品では、マスターバッチの品番と、そのベース樹脂を仕入先から出してもらい、変更は事前承認にする。代替グレードの承認の進め方と、着色の方法を購買仕様書に書く理由は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認で扱った。食品に触れる部品では、着色料の溶出が規格の対象になるので、食品に触れる部品の調達の手順で着色剤も含めて確かめる。

色むらは「混ざり方」で出る

JIS K 6900 は、色むらを、同一見本における故意でない色の変化、と定義している[1]。マスターバッチでは、色むらの原因の多くが成形のときの混ざり方にある。押出機メーカーの技術者による解説(1993 年)は、顔料マスターバッチの製造では一般に 10〜30wt% の高濃度の顔料を高度に分散させる必要があり、マスターバッチの希釈では色むらのない均一な混練が求められる、としている[4]。希釈では、凝集をほぐす分散混合よりも、組成を均一にする分配混合が大きな役割を持つ、とも書いている[4]。

1983 年の解説は、マスターバッチがどの程度樹脂と均一に混ざるかを分配性と呼び、それが樹脂とマスターバッチの溶融特性の差、成形機の混練能力、成形条件で決まるとしている[2]。そして、射出成形はマスターバッチの分配性にとって不利で、押出成形より希釈比を下げたり、マスターバッチのベース樹脂を流れやすいものにしたりする工夫が要ること、流れやすいポリプロピレンでは完全な分配性が得られることは少なく、成形機の側の改良も必要になっていることを書いている[2]。

発注側にできるのは、試作と量産初期で、色むらを見る面と見る条件を外観の基準に入れておくことである。外観基準の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるで扱った。成形機や工場を変えるときは、同じマスターバッチ・同じ希釈比でも色むらの出方が変わりうるので、変更の連絡の対象に入れる。

顔料は、樹脂と成形温度で使えるものが限られる

1983 年の解説は、プラスチックは成形温度が高いので、塗料や印刷インキより使える顔料の範囲が大きく制限され、成形温度の低い樹脂ほど低級な顔料が使えるが、加工条件が厳しくなるほど高級な顔料に移る、としている[2]。エンジニアリングプラスチックのように成形温度が高くなると、使える有機顔料はほとんどなくなる[2]。ABS ではフタロシアニン系を除いて使える有機顔料がほとんどなく、耐熱が足りないか ABS の変色を進めるためだとも書いている[2]。

顔料は色を付けるだけではない。同じ解説は、ポリオレフィン用のマスターバッチの顔料を選ぶときは、顔料自体の耐熱性・耐候性のほかに、顔料が樹脂の熱老化や耐候性に与える影響を考えなければならないとし、顔料に含まれる金属の接触作用などで熱老化が進むことがあり、ポリプロピレンではカーボンブラックによる老化の促進が目立つこと、顔料が耐候性を上げる場合、紫外線劣化を進める場合、影響しない場合の 3 つがあることを挙げている[2]。熱にさらされる部品や屋外で使う部品で色を変えるときは、色を合わせるだけでなく、熱老化と耐候の確認をやり直す必要があるということである。

使ってはいけない組合せ:ポリオレフィンに油溶性染料

着色剤には顔料と染料がある。1999 年の解説は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂に油溶性染料を加えると、着色剤の色移行という問題が起きるので、使う着色剤は顔料に限られる、としている[3]。1983 年の解説も、スチレンや ABS には染料が使えるのは、オレフィン系の樹脂と違ってブリードや移行がないためだ、と書いている[2]。ポリスチレンや ABS の部品で使っていた着色剤を、そのままポリオレフィンの部品に流用しない。着色剤を変えるときは、樹脂の種類と組み合わせて使える着色剤かを仕入先に確かめてもらう。

色の承認と、マスター色の管理

1999 年の解説は、着色の実務の流れを、調色の段階で作った着色プレートを顧客に出して色の承認を受け、厳しい色管理が要るときはさらに量産状態のサンプルを評価してから量産に入る、と説明している[3]。顧客の承認を得た着色プレートは、調色の処方とともにマスター色として管理される[3]。ただし、同じ処方で混ぜればいつも同じ色が出るとは限らず、原料と着色剤のロット差、秤量の誤差、加工機の条件の差が重なって最終の色に差が出ることがある、とも書いている[3]。

マスター色の着色プレート自体も変わる。同じ解説は、酸化チタンで白く着色したポリスチレンのプレートを、事務所の机の引出し、温湿度を管理した測定室の机の引出し、冷蔵庫の中に 1 年間置き、CIE 1976 L*a*b* による色差 ΔE を月ごとに測った社内評価の結果を示している[3]。明度の高い色で許される ΔE はおおむね 0.5 程度なので、保管の状態によってはマスター色自身が大きく変色してしまうこと、夏場の変色が大きいこと、ポリエチレン製の遮光袋に入れると変色が和らぐことを挙げている[3]。ΔE 0.5 はこの解説の筆者が示した目安で、規格の値ではない。合否の色差は、部品の用途と、測る条件をそろえたうえで当事者で決める。

発注側としては、承認した着色プレートを発注側と仕入先の双方が持ち、遮光して保管し、作成日と処方の識別を記録し、作り直したら新旧の対応を残す、と決めておくとよい。色差を数字で約束するときに測色計の条件まで書く必要があることは塗装の仕様の決め方で扱った。

屋内で日光の当たる部品の色堅ろう度

窓ぎわに置かれる機器のように、屋内で日光が当たる部品で色の変わりにくさを確かめたいときは、JIS K 7101(着色プラスチック材料のガラスを透過した日光に対する色堅ろう度試験方法)がある。主として屋内で使う着色プラスチック材料を、ガラスを透過した日光で暴露し、変退色をブルースケールで評価する A 法か、変退色用グレースケールや測色計で評価する B 法で調べる、と定めている[5]。屋外で直接光と雨にさらされる部品は対象が違うので、耐候性の試験として別に決める。

購買仕様書に書くこと

1. 色の指定と承認の対象
色番号と、承認した着色プレートの識別。目視で見るのか測色で見るのか、その条件。

2. 着色の方法
着色済みの材料(カラードペレット)か、マスターバッチか、ドライカラーか。

3. マスターバッチの品番と希釈比
「希釈する樹脂 100 に対して〇」のように、何に対する比かまで書く。

4. マスターバッチのベース樹脂
成形する樹脂と同じか違うか。違うなら何か。

5. 色以外の要求
耐熱・耐候・難燃・食品への接触・含有化学物質の調査。色を変えるときにどれを確かめ直すか。

6. 変更の連絡
着色剤、マスターバッチの品番、ベース樹脂、希釈比、成形機・生産場所を変えるときは事前に承認を得ること。

受け入れるときに確かめること

初回は、承認した着色プレートと並べて色を確かめ、決めた面で色むらと色の筋がないかを見る。マスターバッチを使う部品なら、使ったマスターバッチの品番とロット、希釈比の記録を出してもらう。量産に入ってからは、色の比べ方と記録の方法をロットごとに決めておく。マスター色の着色プレートは、遮光して保管されているか、作り直されていないかを定期的に確かめる。

よくある質問

色番号だけ指定して、着色の方法は仕入先に任せてもよいですか

色の要求が緩い内部部品なら任せてもよいが、決めた方法は購買仕様書に書いておく。方法によって、色相の振れ方も、物性への影響も、色替えの手間も違う[3]。後から方法を変えられると、色も性質も変わりうる。

マスターバッチの倍率を上げればコストが下がりますか

練り込む量が減って加工費と熱履歴は減る[3]が、倍率が高いほど成形のときの混練による分散が要り[3]、計量の狂いが色に大きく効く[2]。射出成形はもともと分配性に不利とされる[2]ので、倍率を変えるときは色むらと色の振れを試作で確かめる。

黒い部品でも、着色剤の変更は承認が要りますか

要る。顔料は樹脂の熱老化や耐候性に影響することがあり、ポリプロピレンではカーボンブラックによる老化の促進が目立つとされる[2]。同じ黒でも、着色剤とベース樹脂が変われば性質が変わりうる。

まとめ

樹脂の着色には、ドライカラー、リキッドカラー、カラードペレット、マスターバッチがあり、色の再現しやすさと物性への影響が違う。色番号に加えて着色の方法を購買仕様書に書く。マスターバッチを使うなら、品番と、何に対する比かまで書いた希釈比と、ベース樹脂を決め、変更は承認制にする。マスターバッチは成形のときの混ざり方で色むらが出やすく、射出成形は分配性に不利とされる。顔料は樹脂と成形温度で使えるものが限られ、熱老化や耐候性にも影響するので、色を変えたら性質の確認もやり直す。ポリオレフィンに油溶性染料は使わない。承認した着色プレートは双方で持ち、遮光して保管し、色の比べ方の条件をそろえておく。

同じ束では、AS 樹脂と ABS/PC の選び方、変性 PPE の選び方、成形品のヒケ・ウェルドラインの受入基準、シボ加工の指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS K 6900:1994 プラスチック-用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1994 年 1 月 1 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  2. 鈴木茂「カラーマスターバッチ」日本ゴム協会誌 56 巻 8 号(日本ゴム協会/1983 年)
  3. 森本彰「プラスチック副資材の理論と実際(8)-着色剤-」成形加工 11 巻 5 号(プラスチック成形加工学会/1999 年)
  4. 中村和之「加工機械と充填剤・難燃剤・着色剤などの分散性」成形加工 5 巻 10 号(プラスチック成形加工学会/1993 年)
  5. JIS K 7101:1981 着色プラスチック材料のガラスを透過した日光に対する色堅ろう度試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1981 年 2 月 15 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
  6. JIS K 6934-1:2006 プラスチック-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2006 年 3 月 25 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)

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