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投稿日:2026年8月27日 | 更新日:2026年8月31日

受発注システムの選び方|電子帳簿保存法と取適法で外せない要件

この記事のポイント(結論先出し)

受発注システムを選ぶとき、機能一覧を並べても差は見えない。判断が分かれるのは法令要件を満たせるか取引先が使えるかの 2 点である。電子帳簿保存法では、メールや Web でやり取りした注文書・見積書・請求書に相当するデータを、改ざん防止の措置をとったうえで「日付・金額・取引先」で検索できる状態で保存しなければならない。さらに 2026 年 1 月施行の取適法では、発注時に 12 項目の明示が求められる。この 2 つを満たせないシステムは、導入しても紙の運用が残る。

受発注システムとは何をするものか

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受発注システムとは、見積依頼・発注・受注・納期管理・検収までの取引情報を一元的に扱うためのシステムを指す。メール、電話、FAX、Excel に分散していた情報を一つの場所に集めることが目的である。

呼び方は複数ある。発注側から見た仕組みを「発注管理システム」、受注側から見たものを「受注管理システム」、両方を扱うものが「受発注システム」と呼ばれる。これに対し、社内の購買申請と承認に重心があるものは購買管理システムと呼ばれ、扱う範囲が異なる(購買管理システムで何が変わるかで扱っている)。発注してからの納期回答・分納・検収・支払予定をどう持つかは発注管理システムに要る機能で別に整理した。機能の境界は製品ごとに違うため、名称で選ぶより自社のどの工程を載せるかから考えたほうがよい。

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選定で最初に確認する 2 つの法令要件

要件 1:電子帳簿保存法(電子取引データの保存)

国税庁は、申告所得税・法人税に関して帳簿・書類を保存する義務のある者が、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合には、その電子データを保存しなければならないとしている[1]。受け取った場合だけでなく、送った場合も保存の対象になる[1]

保存にあたって必要なのは次の 3 点である[1]

要件 内容 システムで見るところ
改ざん防止 タイムスタンプの付与、訂正・削除を禁止するシステム、削除防止に関する事務規程の策定など[2] 確定後のデータを編集できない設計になっているか。変更履歴が残るか
検索機能 「日付・金額・取引先」で検索できること[1] この 3 項目で横断検索できるか。添付ファイルの中身まで辿れるか
可視性 ディスプレイやプリンタ等を備え付け、容易に出力できること[1][2] 画面表示と PDF 出力ができるか。第三者に見せられる形か

保存するファイル形式は問われず、PDF に変換したものやスクリーンショットでも差し支えないとされている[1]。また、システム費用をかけずに導入できる方法として、改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る方法も認められており、そのサンプルは国税庁のサイトに掲載されている[1]

つまり、法令を満たすだけならシステムは必須ではない。システムを入れる意味は、規程による運用を人手で回し続けるコストと比べて判断することになる。

要件 2:取適法(発注時の明示)

2026 年 1 月 1 日に下請法が改正され、取適法(中小受託取引適正化法)になった[3]。委託事業者は、製造委託等をした場合に直ちに、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法その他の事項を書面または電磁的方法で明示しなければならない[4]。明示すべき項目は 12 種類ある[4]。詳細は発注書に明示しなければならない 12 項目で扱っている。

受発注システムを選ぶときは、この 12 項目が発注データの項目として持てるかを確認する。特に抜けやすいのは、検査完了期日、納入場所(自社住所と別)、有償支給の条件、未定事項の予定期日である。標準の発注書フォーマットにこれらの欄がない製品は、備考欄で運用することになり、検索も集計もできなくなる。

なお取適法では、書面交付義務について中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず電子メール等の電磁的方法が使えるようになった[5]。システムから発注書 PDF をメール送信する運用は、この点で扱いやすくなっている。

取引先が使えるか——導入が止まる最大の理由

機能が足りていても、導入が進まないことがある。原因の多くは取引先側の負担である。

受発注システムには、取引先にもアカウントを作ってログインしてもらう方式と、メールのリンクから回答してもらう方式がある。前者は情報が揃いやすい一方、取引先が 50 社あれば 50 社に登録を依頼することになる。零細な加工先ほど「今までどおり FAX で」となりやすく、結局は二重運用になる。

選定時には、次を確認しておきたい。

取引先の登録が必須か

必須の場合、登録しない取引先の分をどう扱うか(自社で代理入力するのか、対象外にするのか)を決めておく必要がある。

取引先側の費用負担があるか

取引先にライセンス費用が発生する製品では、導入を断られる可能性が高い。取適法は購入・利用強制を禁止行為として挙げており[4]、取引上の立場を使って導入を求める形にならないよう注意が要る。

FAX・メールとの併用ができるか

全社が一斉に移行することは現実的にない。移行期間中、システム外のやり取りも同じ場所に記録できるかで、運用の負担が変わる。

機能一覧では見えない 5 つの確認点

1. 数量・単価の変更履歴が残るか

発注後の条件変更は日常的に起きる。誰が・いつ・何を変えたかが残らないシステムでは、金額の食い違いが起きたときに追えない。取適法では不当な給付内容の変更やり直しが禁止されており[4]、変更の記録は自社を守る資料にもなる。

2. 発注残が一覧で見えるか

「発注したが未納のもの」が一覧で出るかどうかで、納期管理の手間が変わる。分割納入がある場合、残数量が自動で計算されるかも確認する。

3. 同じ品目の履歴が横断で見えるか

過去にいくらで、どこから、どれだけ買ったか。この履歴が品目単位で追えると、次の見積の妥当性を判断できる。取引先単位でしか見られない製品は、価格の推移を追いにくい。

4. 検収・支払との接続

受発注だけで完結し、検収や請求は別システムという構成だと、突合作業が残る。どこまでを一つにするかは、既存の会計システムとの兼ね合いで決める。

5. データを出せるか

CSV や API で取引データを取り出せるか。将来システムを変えるとき、出せないデータは移せない。導入前に出力形式を確認しておく。

Excel 運用のどこが限界になるか

受発注を Excel で管理している企業は多い。件数が少ないうちは、システムより速く柔軟である。問題が出るのは、次のような場面である。

同時に触れない

共有フォルダの発注一覧を複数人が開くと、後から保存した人の内容で上書きされる。読み取り専用で開いて手元にコピーし、あとで転記する——という運用が始まった時点で、実態は分散管理になっている。

過去の状態が残らない

セルを書き換えれば前の値は消える。納期を 2 回変更した経緯や、単価をいつ改定したかが追えない。前述のとおり、変更の記録は取適法上も自社を守る資料になる[4]

検索が「日付・金額・取引先」で揃わない

電子帳簿保存法は、電子取引データについてこの 3 項目で検索できることを求めている[1]。Excel の一覧と、メールに添付された PDF が別々に置かれていると、一覧では引けても現物のデータに辿り着けない。ファイル名に「日付_取引先_金額」を入れる運用で対応する方法もあるが、命名の徹底が前提になる。

担当者しか分からない

列の意味、色の意味、非表示のシート、手作業の集計手順。作った本人以外が触れない状態になると、休暇や異動のたびに業務が止まる。

これらは Excel の欠点というより、件数と関係者が増えたときに合わなくなるということである。移行を検討する目安は、機能の不足より「同時に触る人が 2 人を超えたとき」「取引先が 20 社を超えたとき」あたりになる。

導入の進め方

いきなり全取引を載せようとすると失敗しやすい。段階を分ける。

第 1 段階:自社内だけで使う。発注データの登録と発注書の発行までをシステムで行い、取引先へはメールで PDF を送る。取引先の協力が不要なので、すぐ始められる。

第 2 段階:協力が得られる取引先から、システム上で回答してもらう。件数の多い数社から始めると効果が見えやすい。

第 3 段階:検収・請求まで接続する。ここは会計システムとの連携が絡むため、社内の経理部門との調整が必要になる。

第 1 段階だけでも、電子帳簿保存法の保存要件は満たせる。取引先の移行を待たずに始められる点は、選定時に見落とされやすい。

費用の見方

受発注システムの費用は、利用人数で決まる製品と、取引件数で決まる製品がある。自社がどちらに寄るかで、適した課金体系が変わる。

担当者が少なく取引件数が多い企業では、人数課金のほうが有利になる。逆に、多くの部門から少しずつ発注する企業では、件数課金のほうが読みやすい。導入前に、直近 1 年の発注件数と、システムを使う人数を数えておくとよい。

加えて、初期費用・データ移行費用・カスタマイズ費用が別途かかる製品もある。月額だけで比較すると、初年度の総額を見誤る。

削減できるコストの側も見ておきたい。見積依頼のメール作成、回答の転記、発注書の作成、納期の確認電話——これらに月何時間かかっているかを数え、人件費に換算する。導入判断はこの差額で決まる。感覚で「高い」と判断すると、実際には既存の手作業のほうが高いことがある。

よくある質問

紙でもらった注文書もデータ化しなければならないか

電子帳簿保存法が保存を求めているのは、あくまでデータでやりとりしたものである。紙でやりとりしたものをデータ化しなければならないわけではない[1]。したがって、FAX で受け取った注文書を紙のまま保管する運用自体は問題にならない。ただしメールに PDF を添付して受け取ったものは、電子取引データとして保存対象になる。

スクリーンショットでも保存として認められるか

保存するファイル形式は問われないとされており、PDF に変換したものやスクリーンショットでも差し支えないとされている[1]。ただし改ざん防止の措置と検索要件は別途満たす必要がある。

システムを入れずに法令を満たせるか

満たせる。改ざん防止については、事務処理規程を定めて守る方法が認められており、サンプルが国税庁のサイトに掲載されている[1]。検索についても、ファイル名に日付・取引先・金額を入れて整理する方法がある。システムを入れる判断は、法令要件ではなく運用を維持する手間との比較になる。

取引先にシステムの利用を求めてよいか

依頼すること自体は問題ない。ただし取適法は、委託事業者の禁止行為の一つとして購入・利用強制を挙げている[4]。取引上の立場を背景に、事実上断れない形で導入や費用負担を求めることにならないよう、依頼の仕方には注意が要る。断られた場合の代替手段(メール・FAX)を用意しておくのが実務的である。

小規模でも導入する意味はあるか

取引件数が月に数十件で、担当者が 1 人なら、Excel と共有フォルダで足りることが多い。導入を検討する目安は前述のとおり、同時に触る人数と取引先数である。ただし電子帳簿保存法への対応が未整備なら、その部分だけでも手を打っておきたい。

まとめ

受発注システムの選定は、機能の多さではなく、法令要件を満たせるか取引先が使えるかで判断する。電子帳簿保存法の「改ざん防止・検索・可視性」[1]と、取適法の明示 12 項目[4]を持てるかが最低ラインである。

製品比較の表を作る前に、この 2 つで候補を絞ると検討が早く終わる。逆に、機能一覧から入ると、どの製品も似た項目が並んでいるため差が見えない。

そのうえで、変更履歴・発注残・品目履歴・データ出力の 4 点を確認する。導入は自社内から始め、取引先の移行は後から進めればよい。

出典・参考資料

  1. 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
  2. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】(国税庁)
  3. 取適法・振興法(公正取引委員会)
  4. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  5. 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)

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