- お役立ち記事
- 注文書に収入印紙は必要か——課税文書になる場合とならない場合
注文書に収入印紙は必要か——課税文書になる場合とならない場合

この記事のポイント(結論先出し)
注文書は申込みの事実を示す書類なので、通常は印紙が要らない。ただし国税庁は、契約書として扱われる注文書を 3 つの型で例示している。基本契約に基づいて自動的に契約が成立するもの、相手の見積書に基づく申込みであると書いてあるもの、双方の署名か押印があるものである。前の 2 つには逃げ道があり、別に請書を作成すると文書に書いてあれば課税文書として扱わない。この分岐を知らずに様式を作ると、貼らなくてよい印紙を貼るか、貼るべき印紙を落とすかのどちらかになる。
目次
印紙税がかかるのは「課税文書」だけ
まず前提を整理する。国税庁は、課税文書とは次の 3 つのすべてに当てはまる文書だと説明している[1]。
1. 印紙税法別表第 1(課税物件表)に掲げられている 20 種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
2. 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
3. 印紙税法第 5 条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと
そして、その判断は文書に記載されている内容に基づいて行い、単にその名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではない、とされている[1]。
ここが出発点である。表題が「注文書」だから不課税、「請書」だから課税、という決め方をしていない。何を証明する目的で作られた紙かを、その紙の文面から判断するという立て付けになっている。
📄 実務で使うなら — 発注の出し方と電子化(全 5 章・無料サンプルあり)
注文書が原則として不課税である理由
契約は申込みと承諾で成立する。注文書は、その前半にあたる申込みの事実を書いたものである。国税庁も、契約の申込事実を記載した申込書、注文書、依頼書などは通常、課税対象にはならないとしている[3]。
言い換えると、注文書だけでは契約が成立していない。成立していないものを証明する文書は、課税物件表の「契約書」に当たらない。だから印紙が要らない。
ところが実務では、注文書 1 枚で取引が始まってしまう形が珍しくない。基本契約を結んでいて、個別の発注は注文書だけで回す運用がそれである。この場合、注文書は申込みの記録ではなく、契約が成立したことを示す紙になっている。ここから課税の話が始まる。
契約書として扱われる 3 つの型
国税庁は、申込書等と表示された文書が契約書に該当するかどうかの判断が実務上むずかしいことから、印紙税法基本通達第 21 条において一般的に契約書に該当するものを例示している[3]。整理すると次の 3 つになる[2]。
| 型 | どういう注文書か | 外れる条件 |
|---|---|---|
| ① 自動成立型 | 基本契約書・規約・約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立する[2] | 別に請書等を作成すると文書に記載されている[2] |
| ② 見積参照型 | 見積書その他、相手方が作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている[2] | 同上[2] |
| ③ 双方押印型 | 契約当事者双方の署名または押印がある[2] | なし(請書を別に作る旨が書いてあっても該当する)[4] |
③ に外れる条件がない点は見落とされやすい。国税庁は工事注文書の解説の中で、双方の署名押印がある注文書について、別途、請書等の契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものであっても、契約の事実を証明する文書だから第 2 号文書に該当すると注記している[4]。相手にも押印してもらう様式にした瞬間、逃げ道がなくなるということである。
① の「自動的に成立するか」は文面と実態で見る
基本契約の書き方で結論が変わる。国税庁は、約款等に「申込書を提出した時に自動的に契約が成立するものとする。」とされている場合は自動的に成立するのは明らかであり、「申込書提出後、当方が審査を行った上了解したものについて契約が成立するものとする。」となっている場合は自動的に成立するとはいえない、と説明している[3]。明文がなければ、事実上その申込みによって自動的に成立するかどうかを判断することになる[3]。
製造業の取引基本契約は、たいてい後者に近い。実際、国税庁の質疑応答事例には、取引基本契約に「個別契約は、甲より前条の取引内容を記載した注文書を乙に交付し、乙がこれを承諾することによって成立する。」という条項がある場合の照会がある。回答は、その注文書は契約の申込みの事実を証明する目的で作成される申込文書であり、契約の成立等の事実を証明する文書ではないから、印紙税法上の契約書には該当しない、というものである[5]。
つまり、基本契約の個別契約成立条項に「乙が承諾することによって成立する」と書いてあれば、その注文書は不課税側に落ちる。逆に「注文書の交付をもって個別契約が成立する」と書いていれば ① に当たりうる。自社の基本契約のその 1 条を読み直すのが、いちばん早い確認になる。
② は「御見積書 No. ○○の通り」の一行が引き金になる
② は ① と違い、自動的に成立するかどうかは要件になっていない。相手方が作る見積書がいわば契約の申込みであり、それに基づく申込書等は請書と同様の性格を持つから、というのが理由である[3]。
注文書の備考欄に見積書番号を書くのは、金額の根拠をそろえるうえで正しい実務である。ただし印紙税の判定では、その一行が ② の入口になりうる。見積書番号を書くのをやめる必要はない。書いたうえで、別に請書を作成する旨も記載しておけば、② からは外れる[2]。見積依頼の側で番号をどう振るかは見積依頼書に書く項目で扱っている。
受付印は署名・押印に当たらない
③ について、国税庁は、2 部提出された申込書のうちの 1 部に署名または押印して返却する申込書等が該当するとしたうえで、その署名または押印が意思の合致を証明する目的以外の目的でなされたことが明らかなもの、たとえば単なる文書の受付印と認められるものについては契約書には該当しない、と説明している[3]。ただし頭金や初回金などの受領印は、契約の成立に伴って受け取るものといえるから契約書に該当する[3]。
該当したとき、いくらになるか
製造業の注文書が課税文書になる場合、多くは請負に関する契約書(第 2 号文書)である。国税庁は第 2 号文書の例として「物品加工注文請書」を挙げている[6]。税額は記載金額で決まる[6]。
| 契約金額 | 税額 | 契約金額 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 1 万円未満 | 非課税 | 500 万円超 1,000 万円以下 | 1 万円 |
| 1 万円以上 100 万円以下 | 200 円 | 1,000 万円超 5,000 万円以下 | 2 万円 |
| 100 万円超 200 万円以下 | 400 円 | 5,000 万円超 1 億円以下 | 6 万円 |
| 200 万円超 300 万円以下 | 1,000 円 | 1 億円超 5 億円以下 | 10 万円 |
| 300 万円超 500 万円以下 | 2,000 円 | 金額の記載がないもの | 200 円 |
1 件あたりは小さく見えるが、月に 300 通の注文書を出す会社が全通に 200 円を貼れば年 72 万円になる。逆に、貼るべきものを落とし続けると後述の過怠税がまとめて効いてくる。
そもそも請負でなければ第 2 号文書ではない
もう一つ、判定の前段に置かれる分岐がある。その取引が請負なのか、物品の売買なのかである。
国税庁の質疑応答事例には、カタログ商品の販売を受注した際に「注文請書」を作成交付している場合の照会がある。回答は、第 2 号文書に該当するかどうかの判断はその文書の表題が「請書」になっているかどうかにかかわらず、契約の内容が請負であるか、物品の譲渡契約であるかどうかによって判断することになる、というものである。カタログ商品の売買契約を内容とするものは物品の譲渡契約に当たり、第 2 号文書には該当しない[7]。
製造業の調達では、この線引きが日常的に問題になる。図面を渡して加工してもらうのは請負に近く、規格品を型番で買うのは売買に近い。同じ「注文書」という様式で両方を回している会社は、片方だけが課税になりうることを知っておきたい。
電子データで取り交わせば課税されない
国税庁は、印紙税の課税対象となるのは課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしている。したがって電磁的記録に印紙税は課税されない[8]。照会の事例は、書面で注文請書を作成することに代えて、受注する旨や請負内容等の取引情報を記録した電磁的記録に電子署名を付して取引先に電子メールで送信するというものである[8]。
注意点が 2 つある。
一つ目は、送ったあとに紙も渡さないこと。電子で送った後に現物を別途持参するなどの方法で相手方に交付すれば、課税文書の作成に該当する。電子化したつもりで、控えを持参して押印してもらう運用が残っていると意味がなくなる。
二つ目は、印紙が不要になる代わりに、そのデータの保存が要ること。電子でやり取りした注文書は電子取引データとして保存の対象になる。具体的な進め方は電子帳簿保存法の対応|システムなしで満たす方法で扱っている。
紙で受け取ってしまった課税文書についても、印紙を貼った後であればスキャナ保存に切り替えて紙を捨てられる。その要件は紙の注文書をスキャンして捨てられるか|スキャナ保存の要件で扱っている。ただし印紙税の過誤納還付を受けたい文書だけは、原本を残しておく必要がある。
貼り忘れたときの負担
印紙を貼る方法で納付することとなる課税文書の作成者が、納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合、納付しなかった印紙税の額とその 2 倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の 3 倍に相当する過怠税が徴収される[9]。
ただし、調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときに、印紙税不納付事実申出書を提出した場合は、納付すべき印紙税の額の 1.1 倍に軽減される[9]。また、貼り付けた印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収される[9]。
さらに、過怠税はその全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されない[9]。金額そのものより、この点が効く。
自社の様式を点検する順序
手順 1:基本契約の個別契約成立条項を読む
「注文書の交付により成立する」か「相手方の承諾により成立する」か。後者なら ① には当たらない[5]。ここを読まずに様式だけ見ても判定できない。
手順 2:注文書の文面を 3 つの型と突き合わせる
基本契約や約款に基づく申込みである旨、見積書に基づく申込みである旨、相手方の押印欄。この 3 つがあるかを見る[2]。約款等の記号や番号が書かれているだけでも、実質的に約款等に基づく申込みであることが文書上明らかなものは含まれる[3]。
手順 3:請負か売買かを分ける
加工委託と規格品の購入で様式を分けるか、少なくとも区別できるようにしておく[7]。
手順 4:紙を減らせないかを見る
電子で取り交わせば課税の問題自体が消える[8]。紙を残す理由が「押印の慣行」だけなら、見直す価値がある。
手順 5:判断が割れるものは税務署に確認する
質疑応答事例には、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引等に適用する場合には回答内容と異なる課税関係が生ずることがある、と注記されている[5]。自社の様式そのもので確認するのが確実である。
よくある質問
注文書に「請書は不要」と書いてあります
それは ① と ② の除外条件を自ら外す記載になる。除外されるのは、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものである[2]。作成しない旨を書けば、この除外には乗らない。そのうえで、課税されるかどうかは型ごとに分かれる。① は基本契約の成立の仕方で決まり、承諾によって契約が成立する形なら申込文書のままだが、申込みによって自動的に成立する形なら課税文書になる[2]。② は違う。見積書等に基づく申込みであることが記載されていれば、基本契約が承諾成立型であっても課税文書になる[3]。前の節で触れた「見積書番号を備考欄に書く」様式は、まさにこの ② に当たる。③ は双方の署名押印があること自体で該当し、請書に関する記載の有無に左右されない[2]。つまり「請書は不要」と書くのであれば、① の自動成立型と ② のどちらにも当てはまらないことを先に確かめる必要がある。安全側に倒すなら、この一文を書かずに実際に請書を作るか、電子データで取り交わす。
注文書と注文請書の両方を紙で出しています
請書を作成する旨が注文書に書かれていれば、注文書は ① ② の除外に乗る[2]。一方で請書のほうは、内容が請負なら第 2 号文書として課税されうる[6]。印紙は 2 枚要るのではなく、請書側に寄るという理解になる。注文請書そのものの実務は注文請書とは|発注書との違いと印紙税の扱いで扱っている。
単価契約で金額が確定していません
第 2 号文書に該当し、かつ契約金額の記載がないものは 200 円である[6]。ただし単価と数量から計算できる場合の扱いなど、記載金額の判定には別の規定がある。金額欄の書き方を変えるだけで税額が動くので、様式を作る前に確認したい。
注文書を電子で送り、控えだけ紙で保管しています
相手方に交付していない控えなら、交付の事実がない。課税の問題になるのは、現物を相手方に交付した場合である[8]。ただし社内控えを紙で持つ運用は、電子データの保存を別途行う必要がある点は変わらない。
金額が 1 万円未満なら気にしなくてよいですか
第 2 号文書は 1 万円未満が非課税である[6]。ただし判定は 1 通ごとに行う。分割して発注すれば非課税になる、という発想で運用を変えるのは筋が悪い。先に決めるのは印紙の額ではなく、契約をどう成立させるかである。
過去に貼っていなかったものがあります
調査を予知しないで印紙税不納付事実申出書を提出した場合は 1.1 倍に軽減される[9]。放置して調査で指摘されると 3 倍になる[9]。気づいた時点で税務署に相談するほうが負担は小さい。
まとめ
注文書に印紙が要るかどうかは、紙の表題ではなく、基本契約の成立条項と注文書の文面の組み合わせで決まる。判定の順序は、請負か売買か、基本契約でどう成立するか、注文書に何が書いてあるか、相手の押印欄があるか、の 4 段である[3][7]。
「注文書に印紙は不要」という一般論だけを信じて様式を作ると、自動成立型や見積参照型に当たっていたときに気づけない。逆に、承諾により成立する基本契約を結んでいるのに念のため貼っている会社もある。どちらも、基本契約の 1 条を読めば分かる話である。
紙を電子に替えれば課税の問題は消えるが、保存の要件が代わりに乗る[8]。印紙代の削減だけを目的にすると、保存の設計が後回しになりやすい。発注書に何を書くかという本体の話は発注書に明示しなければならない 12 項目で整理している。
出典・参考資料
- No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断(国税庁)
- No.7118 申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い(国税庁)
- 質疑応答事例(印紙税)申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
- 質疑応答事例(印紙税)工事注文書等(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
- 質疑応答事例(印紙税)基本契約に基づき下請業者に交付する注文書(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
- No.7102 請負に関する契約書(国税庁)
- 質疑応答事例(印紙税)物品販売の注文請書(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
- 質疑応答事例(印紙税)取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
- No.7131 印紙税を納めなかったとき(国税庁/令和 8 年 4 月 1 日現在法令等)
発注のやり取りを、紙を介さずに残す
Newji one は製造業向けの受発注プラットフォームです。見積依頼から発注までを画面の上で完結できるため、注文書と請書を紙で往復させる必要がありません。取引先はアカウントを作らずに、届いたメールのリンクから回答できます。登録から 14 日間はクレジットカードの登録なしで全機能をお試しいただけます。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
PRODUCT — 製造業向け 調達・受発注クラウド
この記事の課題、
Newji one で解決しませんか?
Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。
- 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
- AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
- 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化
※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます
