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投稿日:2026年10月1日

EUのPFAS規制と部材調達——確定したPFHxA制限と審議中の包括案

この記事のポイント(結論先出し)

2026 年 10 月時点で、EU の PFAS(有機フッ素化合物)規制は「既に決まって適用が始まるもの」と「まだ審議中のもの」に分けて読む必要がある。決まっているものの代表は REACH 規則の PFHxA 制限で、一般消費者向けの衣料・靴・混合物と、業務用を含む食品に触れる紙と板紙・化粧品について、2026 年 10 月 10 日から均質材料あたりの濃度上限が適用される[1]。約 1 万種の PFAS をまとめて制限する包括制限案は審議中で、欧州委員会が規制案を示すのは 2027 年中の見込みとされている[2]。発注側が今やることは、規制の結論を待つことではなく、自社の部材のどこに PFAS が使われているかを仕入先から聞き取れる状態にしておくことと、仕様書の「PFAS 不使用」を測れる言葉に直しておくことである。

2026 年 10 月時点で「決まっていること」と「審議中のこと」

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PFAS の規制は報道で一括りにされやすい。しかし発注の実務で効くのは、どの規制が、どの製品に、いつから適用されるかである。2026 年 10 月 1 日に確認できた範囲を、確定しているものと審議中のものに分けて並べる。

規制 対象 時期 状態
REACH 附属書 XVII 第 79 項(PFHxA) 一般向けの衣料・関連品・靴、食品に触れる紙と板紙、一般向け混合物、化粧品 2026 年 10 月 10 日 確定[1]
同上 衣料以外の一般向け繊維・皮革(カーペット、カーテン、張り地など) 2027 年 10 月 10 日 確定[1]
包装・包装廃棄物規則(PPWR)第 5 条第 5 項 食品に触れる包装 2026 年 8 月 12 日から適用 確定[3]
REACH の PFAS 包括制限案 約 1 万種の PFAS を幅広い用途で 欧州委員会の規制案は 2027 年中の見込み 審議中[2][5]
フランスの国内法 化粧品、スキー用ワックス、衣類・履物とその防水剤 2026 年 1 月 1 日 確定[4]
スウェーデンの国内規則案 衣類・靴、撥水・防汚剤、化粧品、台所用品、スキー用ワックス 2028 年 1 月 1 日施行予定 意見募集中(2026 年 11 月 30 日まで)[2]
日本の化審法(PFHxS) PFHxS とその異性体・塩の製造・輸入・使用、使用製品 10 種類の輸入 2024 年 2 月 1 日(指定)、2024 年 6 月 1 日(輸入禁止製品) 施行済み[6]

この表から言えることは二つある。一つは、2026 年 10 月に適用が始まる規制は、特定の製品分野に絞られていることである。衣料・靴・混合物は一般向けのものに限られるが、食品に触れる紙と板紙と化粧品には「一般向け」の限定が付いていない。もう一つは、工業用の部品や装置まで広く及ぶかどうかは、包括制限案の結論が出るまで決まっていないことである。この二つを混ぜて「EU では PFAS がすべて禁止になった」と社内に説明すると、必要のない材料変更を急いだり、逆に本当に期限のある製品を見落としたりする。

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PFHxA 制限——対象は特定の製品分野に限られている

PFHxA(ウンデカフルオロヘキサン酸)とその塩・関連物質の制限は、2024 年 9 月 19 日付の委員会規則(EU)2024/2462 で REACH 附属書 XVII に第 79 項として加えられた[1]。上限は二つあり、PFHxA とその塩の合計で 25 ppb、PFHxA 関連物質の合計で 1,000 ppbである。濃度は「均質材料(homogeneous material)」で測ると定められている[1]。製品全体の平均ではなく、生地なら生地、コーティングならコーティングという単位で判断するということである。

関連物質とは、分子の構造から PFHxA に分解・変化するおそれがあると考えられる物質をいう[1]。規則の前文は、PFHxA そのものは EU で登録も使用もされていないが、関連物質やアンモニウム塩は登録されていて、食品に触れる紙と板紙、繊維、消火泡に大量に使われていると説明している[1]。つまり実務で問題になるのは PFHxA そのものより、撥水・撥油加工などに使われる関連物質のほうである。

適用の時期は用途で分かれる[1]。

  • 2026 年 4 月 10 日:訓練・試験用と公設消防用の消火泡(産業施設への出動などの例外あり)
  • 2026 年 10 月 10 日:一般向けの衣料と関連品・靴、食品に触れる紙と板紙、一般向けの混合物、化粧品
  • 2027 年 10 月 10 日:衣料以外の一般向けの繊維・皮革・毛皮
  • 2029 年 10 月 10 日:民間航空用の消火泡

適用除外も明記されている。リスク区分 III の一部の個人用保護具、医療機器規則と体外診断用医療機器規則の対象機器、建設用の繊維は、2026 年と 2027 年の制限の対象外である[1]。また、2026 年 10 月 10 日より前に市場に出された成形品と混合物には、2026 年分の制限は適用されない[1]。

前文によれば、欧州化学品庁のリスク評価委員会は、クロムめっきや産業施設で使う消火泡のような用途については、情報が限られていて制限が最も有効な手段かどうか結論を出せなかった[1]。最終的な制限の対象も、上に挙げた製品分野と消火泡に限られている。工業用の部品・装置を作っている会社にとって、PFHxA 制限そのものが直接かかる場面は多くない。かかるのは、最終製品が一般消費者向けの繊維・靴・混合物にあたる場合、または食品に触れる紙と板紙(業務用を含む)・化粧品にあたる場合と、その部材を供給している場合である。食品に触れる紙と板紙は、EU の食品接触材料の枠組み規則(規則 1935/2004)の範囲にあるものが対象で、売り先が業者か消費者かでは分かれない[1]。

包括制限案——審議中であることを前提に、何が議論されているか

PFAS の包括制限案は、2023 年 3 月から 9 月まで意見募集が行われた[4]。その後、欧州化学品庁の社会経済分析委員会(SEAC)の意見案について、2026 年 3 月から改めて意見募集が行われ、日本経済団体連合会は 2026 年 5 月 22 日に意見を提出している[5]。

JETRO の 2026 年 8 月 13 日の記事は、制限案の骨格を次のように整理している[2]。約 1 万種類の化合物を対象とし、いずれかの PFAS の濃度が 25 ppb 以上、またはすべての PFAS の合計が 250 ppb 以上の場合に製造・使用・上市を禁止する。総フッ素濃度が 50 mg F/kg を超える製品については、そのフッ素が PFAS 由来かどうかを事業者が証明する義務を課す。18 か月の移行期間を置き、その後さらに用途に応じて 5 年または 12 年の適用除外期間を設ける方針である。同じ記事は、欧州委員会が規制案を示すのは 2027 年中の見込みで、拘束力のある法制化までにはさらに 1〜2 年かかる見込みだと伝えている[2]。

経団連の意見書は、PFAS が燃料電池、リチウムイオン電池、半導体製造、自動車部品、産業機械、各種機械器具、通信、医療、建築などで不可欠な素材として使われていると述べ、排出管理・報告・モニタリングなどを条件に継続使用を認める選択肢を優先的に検討するよう求めている[5]。これは業界の要望であって、決まった内容ではない。発注側としては、工業用途に何らかの適用除外や条件付きの継続使用が残る可能性があるが、どの用途に、いつまで認められるかは決まっていない、と理解しておくのが正確である。

ここで気をつけたいのは、制限案の数字が案の段階のものだという点である。社内の部材規格や取引先への要求書に 25 ppb・250 ppb・50 mg F/kg を「EU の規制値」として書き込むと、最終的な規則が違う数字になったときに書類が誤りになる。書くなら「審議中の制限案の数値(2026 年 10 月時点)」と明記し、改訂のきっかけを決めておく。

加盟国が先に動いている

EU の結論を待たずに国内規制を作る国もある。フランスは 2025 年 2 月 28 日に公布した法律で、2026 年 1 月 1 日から PFAS を含む化粧品、スキー用ワックス、衣類・履物とその防水剤の製造・輸出入・市場投入を禁止し、2030 年 1 月 1 日以降は原則としてすべての繊維製品に広げるとした[4]。微量の PFAS は禁止の対象外で、その閾値は政令で定めるとされている[4]。

スウェーデン政府は 2026 年 7 月 23 日に国内独自の規則案を公表した。EU の制限案で提案された閾値を使い、衣類と靴などを対象に 2028 年 1 月 1 日からの施行を予定し、EU の規制が施行された時点で措置を解除する方針である[2]。

輸出先が EU の一部の国に限られる会社でも、仕向け国ごとに要件が違いうる。最終製品の販売国を発注の段階で把握し、部材の仕様に反映させる流れが要る。

食品に触れる包装は、PPWR の上限が既に適用されている

包装・包装廃棄物規則(PPWR)の第 5 条第 5 項は、食品に触れる包装について、個々の PFAS 25 ppb、PFAS の合計 250 ppb、ポリマーを含む PFAS 全体 50 ppm の三つの上限を定め、2026 年 8 月 12 日から適用されている[3]。欧州委員会が 2026 年 7 月 16 日付で公表した作業文書は、リスクに応じた確認、すべての包装を試験する必要はないこと、試験するならできるだけ上流で採取すること、組成や製造工程に大きな変更があったときに試験することなどを勧めている[3]。作業文書に法的拘束力はない[3]。なお、これは段階的な確認を勧めた PPWR のガイダンスとは別の文書である。そのガイダンスは段階的な確認を勧め、第 1 段階として総フッ素量が 50 mg/kg 未満なら適合とみなせるとしていたが、作業文書は三つの上限すべてに適合する必要があると説明している[3]。どちらの文書に沿って確認したかを、仕入先の回答や試験結果に書き添えてもらうと後で照合しやすい。

この作業文書の考え方は、包装以外の部材で PFAS の情報を集めるときにも参考になる。全数を分析するのではなく、仕入先からの情報で危険度を分け、不明なものと危険のあるものだけを試験に回すという順番である。包装の要件全体は EU 包装・包装廃棄物規則(PPWR)と輸出品の包装材で扱う。食品に触れる部品の国内の適合確認は 食品に触れる部品の調達を参照してほしい。

発注側が今やること

1. 自社の部材のどこに PFAS があるかを聞き取る

PFAS は名前の中に「PFAS」と書かれていない。フッ素樹脂の部品、シール・パッキン、ケーブルの被覆、潤滑剤、撥水・撥油加工した繊維や紙、表面処理の薬剤など、使われている場所は部材ごとに違う。まず、製品の部品表を上から見て、フッ素を含む可能性のある部材と加工に印を付け、その仕入先に含有の有無を問い合わせる。

問い合わせは、物質名の一覧を渡して「含みますか」と聞くより、部材ごとに、どの層・どの材料にフッ素系の物質を使っているかを聞くほうが答えやすい。PFHxA 制限が均質材料で濃度を判断することを考えても、製品単位の回答だけでは足りない[1]。含有化学物質の調査の依頼のしかた(様式・物質リストの版・判断の単位の書き方)は 含有化学物質の調査を仕入先に頼むとき——REACH と chemSHERPA にまとめた。

2. 仕様書の「PFAS 不使用」を測れる言葉に直す

仕様書や要求書に「PFAS フリーのこと」とだけ書いている例は多い。これでは、何を PFAS と呼ぶか、どこまでの濃度を許すか、何を根拠に確かめるかが決まらない。書き直すときは次の四つを入れる。

  • どの規制・どのリストに基づくか(例:REACH 附属書 XVII 第 79 項、仕向け国の国内法)と、その版または確認日
  • 濃度を判断する単位(均質材料か、部品か、製品か)
  • 意図して加えたものに限るのか、意図しない混入も含めるのか。PPWR は両者を区別していない[3]
  • 根拠として出してもらう書類(含有の回答、分析結果、加工薬剤の SDS など)と、取り直す時期

化学品(薬剤や加工剤)として仕入れるものは、SDS も一緒に受け取る。国内の SDS の記載事項は 2023 年以降に変わっているので、受け取ったときに確かめる点は 化学物質の自律的な管理と、仕入先から受け取る SDS で扱う。

3. 代替材への切り替えは、品質の変更として扱う

フッ素系の材料をやめると、耐熱性、耐薬品性、滑り、撥水性などの性能が変わることがある。仕入先から「PFAS を使わない材料に変えた」と連絡があったら、それは材料変更である。外観・寸法だけでなく、その部材に PFAS が使われていた理由(どの性能のためだったか)を確かめ、その性能の試験をやり直す。樹脂のグレードを替えるときの承認の手順は 樹脂のグレード指定と代替グレードの承認 と同じ考え方でよい。

4. 切り替えの時期を、市場に出す日で数える

PFHxA 制限は、適用日より前に市場に出された成形品と混合物には適用しない[1]。判断の基準は「製造した日」ではなく「市場に出した日」である。EU 向けの在庫が倉庫にあるとき、輸出の船積みや現地での出荷がいつになるかで扱いが変わる。部材の切り替え日を決めるときは、自社の出荷日ではなく、EU 域内で上市される日から逆算する。

5. 米国と日本の動きも同じ表で管理する

PFAS は EU だけの話ではない。米国では有害物質規制法(TSCA)に基づく PFAS の報告規則があり、製品の輸入者に過去の取扱いの報告を求めている。米国向けに出荷している場合は 米国 TSCA の PFAS 報告規則と、輸出品・輸入品の確認 も合わせて確かめる。日本では化審法により PFHxS とその異性体・塩が 2024 年 2 月 1 日から第一種特定化学物質に指定され、使用製品 10 種類が 2024 年 6 月 1 日から輸入禁止製品になった[6]。輸入した部材や海外で加工した部品を国内に持ち込む場合は、こちらの確認も要る。

国・規制ごとに別々の表を作ると、同じ部材について何度も仕入先に問い合わせることになる。部材ごとに一行を持ち、列に規制を並べる形にすると、問い合わせを一回で済ませやすい。グリーン調達基準そのものを改定するときの進め方は グリーン調達基準を改定するとき、仕入先に何を求めるか で扱う。

よくある質問

工業用の部品しか作っていない。PFHxA 制限は関係あるか

附属書 XVII 第 79 項の対象は、一般向けの衣料・靴・繊維、食品に触れる紙と板紙、一般向け混合物、化粧品、消火泡である[1]。工業用の部品そのものは挙がっていない。ただし、食品に触れる紙と板紙は業務用も対象なので、紙製のトレーや包装材を扱う場合は一般向けかどうかに関係なく確かめる。また、自社の部品が最終的に一般向けの製品に組み込まれる場合や、一般消費者にも売られる混合物(接着剤・塗料・潤滑剤など)を扱う場合は対象になりうる。最終製品が誰に売られるかを顧客に確かめるのが先である。

包括制限案の数値で、今のうちに仕入先の合否を決めてよいか

案の数値は審議の途中のもので、最終的な規則でどうなるかは決まっていない[2][5]。今の段階で合否の基準にすると、規則が確定したときに基準と書類をすべて作り直すことになる。今は、どの部材にどの PFAS が使われているかを把握することを優先し、合否の基準は規則が確定してから決めるほうが手戻りが少ない。

仕入先が「含有は営業秘密なので答えられない」と言う

物質名を明かせない仕入先でも、「フッ素系の物質を意図して使っているか」「どの層に使っているか」「代替の予定があるか」なら答えられることがある。聞く範囲を絞り、秘密保持の取り決めを結んだうえで依頼する。答えが得られない部材は、分析に回すか、代替の候補を探す対象として一覧に残しておく。

「PFAS フリー」と書かれた材料を買えば安心か

何を基準にフリーと言っているかで意味が変わる。特定の物質(PFOA や PFHxA など)を含まないという意味の場合もあれば、意図して加えていないという意味の場合もある。PPWR のように意図的添加と非意図的混入を区別しない規制もある[3]。宣言の根拠(どのリスト・どの濃度・どの単位)を書面で出してもらう。

まとめ

EU の PFAS 規制は、確定して適用が始まるものと審議中のものを分けて扱う。PFHxA 制限は 2026 年 10 月 10 日から一般向けの衣料・靴・混合物と、業務用を含む食品に触れる紙と板紙・化粧品に適用され、均質材料で 25 ppb と 1,000 ppb の上限がかかる[1]。食品に触れる包装には PPWR の上限が既に適用されている[3]。包括制限案は審議中で、欧州委員会の規制案は 2027 年中の見込みとされる[2]。発注側が今やるべきことは、部材ごとに PFAS の使用箇所を聞き取れる状態を作り、仕様書の「PFAS 不使用」を規制・単位・根拠書類まで書き分けておくことである。結論が出たときに一覧の列を一本足すだけで判断できる形にしておけば、規則の確定を待ってから慌てずに済む。

出典・参考資料

  1. Commission Regulation (EU) 2024/2462 amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 as regards undecafluorohexanoic acid (PFHxA), its salts and PFHxA-related substances(欧州委員会・EU 官報/2024 年 9 月 19 日)
  2. スウェーデン政府、国内独自のPFAS規則案を公表、意見募集を開始(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2026 年 8 月 13 日)
  3. 欧州委、食品接触包装のPFAS規則の適合性確認に関する作業文書を公開(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2026 年 9 月 30 日)
  4. 2026年1月1日からフランスでPFAS含有の化粧品、衣類などの製造、輸出入、市場投入を禁止(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2025 年 3 月 6 日)
  5. EUにおけるPFAS規制案へのコメント(日本経済団体連合会/2026 年 5 月 22 日)
  6. 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました(厚生労働省/2023 年 11 月 28 日)

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