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投稿日:2026年10月2日

図面の版を発注書でどう指定するか——改訂を仕入先と合わせる変更通知の8項目と費用の扱い

この記事のポイント(結論先出し)

図面の改訂で揉めるのは、「どの版で作るか」と「改訂がどの注文から効くか」が書面で決まっていないときである。製図の JIS は、出図後に図面を変更するときは変更箇所に記号を付け、変更前の図形や寸法を読み取れるように保存し、変更の事由・氏名・年月日を図面管理部署へ届け出るよう定めている[1][2]。発注側は、発注書に図面番号と版を書き、改訂したら「何が変わったか・どの注文とロットから適用するか・仕掛品と在庫をどうするか・費用と納期をどうするか」を一枚にまとめて仕入先と合わせる。取適法の対象取引では、発注後に設計や仕様を変えて、その対応にかかった費用を負担しないことは違反事例として挙げられており[3]、変更ややり直しをさせた場合はその内容と理由を取引の記録に残す[3]。

図面の改訂で何が起きるか

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設計変更は、量産が始まってからも珍しくない。不具合の対策、コストダウン、部品の廃番、顧客の仕様変更と、理由はいくらでもある。図面を直すこと自体は設計部門の仕事だが、その図面が仕入先の手元に届き、正しい版で作られ、受入で正しい版で検査されるところまでは、購買と品質保証の仕事になる。

実務で起きる事故は、だいたい次のどれかである。仕入先が古い版で作った。新しい版は届いていたが、発注済みの分に効くのかどうかが分からず、旧版で作り続けた。仕掛中の部品を新しい版に合わせて手直しした費用を、誰が持つかで揉めた。受入検査の担当者が旧版の図面で検査し、正しい新版の部品を不合格にした。どれも、図面そのものではなく、図面と注文のつなぎ方が決まっていないことから起きる。

品番を変えるか、同じ品番のまま版だけ上げるかは、新旧の部品を同じ棚に混ぜてよいかで決まる。その判断の分け方は自社品番と相手品番をどう紐づけるかで扱った。この記事では、版の指定と改訂の伝え方に絞る。

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図面の側で残すもの

製図総則(JIS Z 8310)は「図面の変更」として、出図後に図面内容を変更するときは、変更箇所に適切な記号を付記し、訂正又は変更前の図形・寸法・公差などを読み取ることができるように適切に保存し、訂正又は変更の事由・氏名・年月日などを図面管理部署へ届け出ると定めている[1]。機械製図(JIS B 0001)も同じ趣旨を定め、図面には必要に応じて部品欄や変更履歴欄を設けるのがよいとしている[2]。

JIS B 0001 には、CAD を使う図面ならではの但し書きもある。寸法の変更に伴って図形が自動的に修正されてしまう場合は、変更前の図形を残す扱いの例外としている[2]。3 次元 CAD から図面を出している場合、寸法を直すと形も描き変わるので、変更前の形を図面の上に残せないことがある。そのときは、変更履歴欄に変更前の寸法を文字で書いておくか、旧版の図面を別に保存しておく。3D データを図面と一緒に渡している場合の版の合わせ方は3D データで発注するときで扱う。デジタルの製品技術文書を扱う JIS B 0060-1 も、管理情報を更新するときは、変更箇所と変更がなかった箇所が明確に区別できるようにする(例えば訂正又は変更事由・氏名・年月日)と定めている[5]。

図面に残すもの 規格の定め 仕入先に渡すときに足すもの
変更箇所の記号 変更箇所に適切な記号を付記する[1] 記号と変更履歴欄の行を対応させる(どの記号がどの版の変更か)
変更前の内容 変更前の図形・寸法・公差などを読み取れるように保存する。寸法変更で図形が自動修正される場合は例外[1][2] 新旧の対照表(旧の値と新の値を並べる)
事由・氏名・年月日 図面管理部署へ届け出る[1] 変更の理由のうち、加工や検査に効くもの(例: 嵌合の不具合対策)
変更の範囲 変更には追加も含む[2] 注記の追加・普通公差の等級変更も変更として通知する
データの管理情報 変更箇所と変更がなかった箇所を区別できるようにする[5] 3D データも併せて渡すなら、図面と同じ版の識別を付ける

発注書には図面番号と版を書く

公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、発注書面の書式例の記載要領として、品名及び規格・仕様等の欄には注文品の内容が十分に理解できるように記入し、仕様書・図面・検査基準等を別に交付している場合はそのことを付記するよう示している[3]。図面を別に交付しているなら、発注書の品名・規格の欄に図面番号と版を書くのが、この要領に沿った形になる。

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版を書かずに「図面どおり」とだけ書いた発注書は、仕入先の手元にある図面のうち、どれを指すのかが決まらない。改訂の前後で同じ品番に複数の版があれば、なおさらである。版の書き方は、社内で一つに決めておく。「A」「B」の記号、「Rev.2」の番号、改訂日付のどれを使っても構わないが、図面の版の欄と発注書の欄で同じ書き方にする。

図面が呼び出す規格の版も動く

図面には「JIS B 0405-m」のように規格を呼び出す注記がある。図面の版を変えていなくても、呼び出した規格の側が改正されることがある。製品の幾何特性仕様の基本原則(JIS B 0024)は、標準の仕様を定義する規格は常に図面を準備しているときに利用できる最新版を使い、以前の版を参照する必要がある場合はそのことを明確に記述しなければならないとしている[4]。

実務上は、古い図面を長く使い回していると、図面を描いた時点の規格と、仕入先がいま読んでいる規格がずれることがある。重要な寸法の解釈が規格の版で変わるおそれがある場合は、図面の注記に規格の年を書いておくか、改訂のついでに注記を見直す。一般注記の書き方は図面の一般注記に何を書くかで扱う。

改訂を仕入先に伝える手順

図面を差し替えて送るだけでは、改訂は伝わったことにならない。仕入先が知りたいのは、何が変わったかに加えて、手元の仕事のどこに効くかである。次の項目を一枚の変更通知にまとめて渡す。

  1. 図面番号と、旧版・新版の識別
  2. 変更箇所の新旧対照(旧の値、新の値、変更の理由のうち加工や検査に効くもの)
  3. 適用の起点(どの注文番号から、又はどの納入日・ロットから新版に切り替えるか)
  4. 発注済みで未着手の分、仕掛中の分、仕入先の完成品在庫の扱い
  5. 費用と納期への影響の確認(見積の出し直しが要るか)
  6. 新版を受け取ったことの返信(どの版を受け取ったか)
  7. 旧版の図面の扱い(回収するか、旧版と表示して保管するか)
  8. 新版で作った最初の納入品で、変更箇所を測った記録を出してもらうこと

3 の「適用の起点」は、改訂のたびに決める。安全や機能に関わる不具合の対策なら、仕掛中の分にもさかのぼって適用することがある。注記の誤記訂正のように部品が変わらない改訂なら、次の注文からでよい。どちらにするかは設計と品質保証が決め、購買はそれを注文番号の単位に置き換えて仕入先に伝える。6 の返信は、メールで構わないが、受け取った版の識別を相手に書かせる。「受け取りました」だけでは、どの版を受け取ったかが残らない。海外の工場とのやりとりでは、この返信の取り方が特に効く(中国の工場に図面を出すとき)。

8 の記録は、変更箇所を中心に測ってもらう。全寸法を測る初回品の検査とは目的が違い、変更が正しく反映されたかを見るものである。受入の担当者にも新版の図面を渡し、検査の基準を同じ日に切り替える。受入側だけ旧版のまま残っていると、正しく作られた新版の部品を不合格にしてしまう。

発注済みの注文に効かせるとき

取適法の対象となる取引では、発注した後の設計変更に注意が要る。テキストは、委託事業者が、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに給付の受領前にその内容を変更させ、又は受領後にやり直しをさせることにより、中小受託事業者の利益を不当に害すると違反になると説明している[3]。給付の内容を変更させることとは、4 条明示されている給付の内容を受領前に変更し、当初委託した内容とは異なる作業を行わせることで、発注の取消しもこれに当たる[3]。

一方で、変更ややり直しのために必要な費用を委託事業者が負担するなどして、中小受託事業者の利益を不当に害しないと認められる場合は、この問題にならないとしている[3]。違反の事例としては、機械部品の製造委託で、当初の発注から設計・仕様を変更したことにより、中小受託事業者に変更への対応や当初の納期に間に合わせるための人件費の増加などが生じたのに、その費用を負担しなかった例が挙げられている[3]。同じテキストに収録された振興基準も、発注した物品等の設計・仕様を変更しようとするときは、損失を与えないよう十分に配慮し、変更による追加コストは委託事業者が負担するものとしている[3]。

発注済みの分に新版を適用するなら、変更通知の段階で、仕掛品の手直しや作り直し、使えなくなった材料、納期の延長について仕入先から見積を取り、合意してから適用する。取引の記録の側でも、テキストは記録すべき事項として、給付の内容について変更又はやり直しをさせた場合はその内容及びその理由を挙げている[3]。変更通知と合意の書面を、注文の記録と一緒に残しておけばよい。発注の変更・取消しの全体像は発注の変更・取消はどこまで許されるかで扱っている。

仕入先から変更を提案されたとき

改訂は発注側からだけ起きるわけではない。仕入先から「この公差は加工が難しいので緩めたい」「この材料は入手しにくいので替えたい」と提案が来ることもある。了承するなら、口頭ではなく図面の改訂か、少なくとも書面の記録にする。

テキストは、受領を拒むことが認められない場合の一つとして、取引の過程で中小受託事業者が委託内容について提案して確認を求め、委託事業者が了承したので、その内容に基づいて製造したのに、給付の内容が委託内容と異なるとする場合を挙げている[3]。了承した提案を図面に反映しないまま放置すると、次に受入検査をした担当者が旧い図面で不合格を出し、この問題に当たりかねない。了承したら、その日のうちに記録を残し、図面の改訂が追いつくまでの間はその記録を図面と一緒に扱う。

よくある質問

赤ペンで直した図面を FAX で送れば足りますか

急ぎの対応としては使えるが、それを正式な版として扱い続けると、図面管理部署の正本と仕入先の手元の図面が別々の形になる。手書きの修正は、どこまでが正式な変更なのかが読み手によって変わる。急ぎで送った場合も、後から版を上げた正式な図面を出し、手書きの修正版は回収するか、無効と表示してもらう。

版を書かずに発注してしまいました

まず仕入先に、どの版で作っているかを書面で確かめる。正しい版と違っていたら、その時点で正しい版を指定し直す。版を伝えていなかった以上、旧版で作られた分を一方的に不合格にするのは難しい。受領を拒めるのは、給付の内容が明示された委託内容と異なる場合などに限られ、委託内容が明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりしたために委託内容と異なることが明らかでない場合は、受領を拒むことは認められないとされている[3]。旧版で作られた分の扱いは、使えるかどうかを設計と品質保証で判断し、使えないなら費用の扱いを含めて仕入先と協議する。

誤記の訂正だけでも、仕入先に知らせる必要がありますか

知らせる。部品の形が変わらない訂正でも、仕入先の検査成績書は図面の版を基準に作られている。版が上がったことを知らせなければ、仕入先の書類と自社の図面の版がずれていく。知らせ方は簡単でよく、変更通知の「適用の起点」を「次の注文から」、「仕掛品の扱い」を「影響なし」と書けば済む。

まとめ

図面の改訂で起きる事故は、図面と注文のつなぎ方が決まっていないことから起きる。図面の側では、JIS Z 8310 と JIS B 0001 が定めるとおり、変更箇所に記号を付け、変更前の内容を読み取れるように残し、事由・氏名・年月日を記録する。発注書には図面番号と版を書く。改訂したら、新旧対照・適用の起点・仕掛品と在庫の扱い・費用と納期・受領の返信・旧版の扱い・変更箇所の確認を一枚の変更通知で合わせる。発注済みの分に適用するなら、費用を見積もって合意してから適用し、変更の内容と理由を取引の記録に残す。仕入先の提案を了承したら、その場で書面にする。

出典・参考資料

  1. JIS Z 8310:2010 製図総則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 2 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  2. JIS B 0001:2019 機械製図(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 5 月 20 日改正)
  3. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  4. JIS B 0024:2019 製品の幾何特性仕様(GPS)-基本原則-GPS 指示に関わる概念,原則及び規則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 2 月 20 日改正)
  5. JIS B 0060-1:2015 デジタル製品技術文書情報-第 1 部:総則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2015 年 10 月 20 日制定・2025 年 6 月 20 日確認)

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